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検索対象: 世界の大思想1 プラトン
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1. 世界の大思想1 プラトン

194 ないのだ、と彼らは考えます。彼らはそういう羽目になっ 「君は」と私は言った、「比喩によって語られる答えを必 ても、やつばり本当のところは、決してあなたの主張の通要とする質問をしているよ」 りではないのだと考えます。しかし私がこういうことを言 「だのにあなたときたら」と彼は言った、「比喩によって うのは、現状を眺めての上のことです。というのは今あな 語ることには慣れておられない」 たに向かってこう主張する人もあるでしようからね、 なるほど言論を以ては、質問されることにその都度反対す四「よおし」と私は言った、「君はこんなにも証明しにく ることはできないが、事実において見るところは、愛知へ い言論のうちに私を投げ込んでおきながら、愚弄するの 向かっていって、教養のためにそれに触れた後、若い頃に か。が、ともかく、その比喩を聞いてくれ、私がどんなに 立ち去らないで、余りに長くそこで時を過した人々は、そこじつけの比喩を話すか、なお一そうよく君が見るために の大多数の者たちが、極悪な者とまでは言わないが、もうね。というのは、優秀な人々が国との関係で蒙った災難 大変風変わりな男になり、優秀な者だと思われていた者た は、他の何者もそのようなのはただの一つさえ蒙ったこと ちまでが、そう思われていたにも拘らす、あなたが賞めて のないほど、ひどいもので、それを比喩で話して、彼らの いられるその仕事のためにこんな目にあうこと、つまり、 ために弁明するのには、多くのものから、寄せ集めてこな 国にとって無用な者になることだ、と」 ければならないからだよ、ちょうど絵描きが山羊鹿やその ような種類のものを描くのには、交ぜ合わせるようにね。 そこで私はそれを聞いて言った、「すると君はそういう そこで、比喩だが、このようなことが、多くの船について ことを言う人々は、嘘をついていると思うかね」 なり、一つの船についてなり、起こったと考えてくれ給 「私は知りません」と彼は言った、「しかしあなたの思っ え。船主は大きさやカにおいては、船に乗っているすべて ていられるところを聞けたら、嬉しいでしよう」 「聞かせてあげよう、この私には本当のことを言っているの人々より優っているが、しかし耳はいくぶん遠く、また目 は同様に少し近く、また船に関することの知識もやはりそ と思われるのだよ」 「それではどうして」と彼は言った、「われわれが国にとのようなものだ。そして船乗りたちは、それぞれ舵を取ら なければならないと思って、舵取りのことでお互いに内輪 って無用な男だと承認する愛知者たちが、国において支配 いまだかってその術を学ん もめをやらかす、それだのに、 者とならないうちは、国は決して禍から免れないだろうと だこともないし、また自分の先生も、それを学ぶのにかけ 一一一一口うことが、正しいでしようか」

2. 世界の大思想1 プラトン

「それでは」と私は言った、「以上の点をよく調べて、も なければならない」 し誰かが彼らのうちで一番そのような者であり、また学問 「それは幾歳の時ですか」と彼は言った。 においても確固たる者であり、また戦争やその他の法律規 「それは」と私は言った、「彼らが必要な体育から放免さ れる時だ。というのはこの教育の期間は、それが二カ年に定においても、確固たる者であるなら、その人を、三十歳 なろうが、三カ年になろうが、ともかく何か他のことをすをすぎた時に、選び出された人々のうちから、さらに選び ることはできないものなんだから。というのは疲労と睡気出して、もっと大きな栄誉を授け、誰が眼やその他の知覚 から解脱して、有そのものヘ真理を伴にして迫っていくか とは学問の敵なんだからね。それと同時に、各人が体育に を見るために、問答の能力を君は試験してみなければなら おいてどのようなものとして自らを示すかということは、 いいかね、君、それは ないだろう。そしてこの場合こそ、 試金石の一つで、それも非常に重要なものなのだ」 多くの警戒を要する仕事なのだよ」 「ええ、もちろんですーと彼は言った。 「何故特にそうなのですか」と彼は言った。 「では、その期間の後で」と私は言った、コ一十代の者た ちから選び出された者たちは、他の者たちよりも大きな栄「君は気づいていないかね」と私は言った、「今日問答を・ 誉を受け取るだろうが、それと共にこれらの人々は、子供めぐって生じている禍がどれほどのものか」 「どのようなことですか」と彼は言った。 の頃にその教育で無秩序に追求したもろもろの学問を寄せ 「思うに、今日の弁証家たちは、違法に充たされているだ 集めて、それらの学問相互の間の、また有の本性との間の ろうーと私は言った。 親類関係を綜観しなければならない」 「ともかく」と彼は言った、「ただこのような学習だけ「ええ、全くです」と彼は言った。 「ところで」と私は言った、「彼らの陥っている状態を何 が、それをなした人々のうちに、しつかりと留まっている か解せないことだと思って、同情はしないかねー ものですー 「それはいったいどうしてですか」と彼は言った。 「そうだ」と私は言った、「その上弁証術的本性とそうで 「例えばだ」と私は言った、「もし誰か貰い児が多くの財 ない者とを区別する最大の試験なのだ。何故なら綜観する しよう ことのできる者は弁証家で、それのできない者はそうでな産と多人数の大きな家族と多くの追従者たちのうちで育て られ、大人になって、自分は両親と称しているこの人々の いからだ」 児ではないと気づくが、しかし生みの親は発見できないと 「賛成ですーと彼は言った。

3. 世界の大思想1 プラトン

すことだろう、彼の将来の勢力を、前以て諂うことによっ にあるために、そのような者が、一人でも、何とか気づい て、前以て手に入れておこうと思ってね」 て、愛知の方へ向きかえさせられ、ひきすられていくな 「ともかくそういうことになりがちですね」と彼は言っ ら、あの連中、すなわち彼を利用することも、徒党に組み して貰うことも、できなくなると考える者たちは何をなす 「するとーと私は言った、「このような人はこのような事だろうと、君は思うかね。一方、彼については、説得され 青のもとで、何をすることになると思うかね、特にも彼が ないように、他方説得する者については、私には陰謀を企 たまたま大きな国に属し、またその国では金持ちで、名門 むことによって、公けには法廷にもち出すことによって、 で、その上姿もよくて、丈も高い場合にはね。ギリシア人説得できないように、あらゆることを行ない、あらゆるこ たちのことでも蛮人たちのことでも充分になすことができ とを言って、余すところがないとは思わないかねー るだろう、そしてそのおかげで立身出世することができる 「それはもう必ずそうするに違いありません」と彼は言っ だろうと信じ、気取りと理知を欠いた空しい大志とに充た されて、はかりしれない希望でいつばいにされることにな 「すると、このような者が何とか知を愛するようになるこ るのではないかね」 とができるかね」 「ええ、全くですーと彼は言った。 「決してできません」 「それじゃ、彼がこのような状態になりつつある時に、も し誰かが近づいていって、おだやかに真実を述べて、君の 九「すると、君はわかるだろうね」と私は言った、「なん うちには理知がない、しかし必要だ、けれどもそれを獲得と、愛知的本性の部分そのものが、もし悪い養育をうける するには、奴隷のように働くのでなければ、獲得できない 時には、その仕事から離れていくことになる或る意味での のだ、と忠告するなら、そのようなたくさんの悪いことを原因であり、また、善いものと言われているもの、すなわ 排して、その忠告に耳を傾けることが、彼には容易だと思ち、富だとかそのような種類の道具立てのすべてが、やは われるかね」 りそうだとわれわれの言 0 たのは〔間違「ていなか 0 たということをね」 「それはとんでもないことです」と彼は言った。 「ええ、それは間違っていませんでした、いや、正しいこ 「だが、もしともかくも」と私は言った、「よく生まれつ いていて、その生まれつきと忠告される言論とが親族関係とでした」と彼は言った。

4. 世界の大思想1 プラトン

に生き、それに育てられ、こうして陣痛がやむが、しかし 言ったので、その誹謗の原因を詳しく考察しながら、今こ の問題に、つまり、 、ったい何故多くの人々は悪いかとい それまではやまない、とね」 う問題にやってきたのだ、そしてちょうどその問題のため 「それはもうこの上もなく適切です」と彼は言った。 に、再び真の愛知者たちの本性を取り上げて、やななく定 「それなら、どうだ。この人は偽りを愛する心をいくらか でも持っているだろうか、それとも正反対に憎むだろう義せざるを得なかったのだ」 「それはそうです」と彼は言った。 「憎みます」と彼は言った。 「それでは、真実が指導者に立つなら、悪者たちの合唱団六「それではその本性の堕落についてーと私は言った、 はその後に従わないだろう、とわれわれは主張すると思う 「君の言う通り、人々が邪悪の者とまでではないが、しか し無用な者と呼んでいる極く少数の人々はそれを逃 「ええ、もちろんです」 れるけれど、多くの人々においてはどういう風にその本性 「しかし健全で正しい性格は従うと、そしてそれにはまた が亡びていくかを観察しなければならないね。そしてその 節制もついていく、と」 後で今度はその本性を真似、居坐ってそれの仕事に携わる 「仰っしやる通りですーと彼は言った。 本性を観察しなければならない。というのは魂のこのよう な本性が、自分に釣合わない、大きすぎる仕事へやってき 「それじゃ、また愛知的本性の合唱団の残りのものをも、 再び最初からそれの必要なことを示しながら、整列させるて、多くの仕方で、へまをしでかし、あらゆる仕方で、そ 必要がどうしてあろうか。だって君は、勇気、大度量、物してすべての人の眼の前で君の言っているような評判を愛 学びのよいこと、記憶がこれらの団員に属するということ知にくつつけることになったのだからね」 にな 0 たのを凸憶えているだろうからね。そして君「しかしあなたが堕落と仰 0 しゃ 0 ているのは、どんなも は、ロをさしはさんで、誰でも皆われわれの言うことに同のですか」と彼は言った。 意せざるを得ないようにされるが、しかし言論を去り、そ「私が君のために」と私は言った、「努めて、できるなら、・ の言論が問題としている当の人物に着目して、彼らのうちそれを説明してやろう。ところで私は思うが、この点はす べての人がわれわれに同意するだろう、そのような本性、 或る人々は無用な男であり、その多くの人々はどんな悪に もぬかりのない悪人であるのを見る、と主張するだろうとつまり、もし完全な愛知者になろうとするなら、持つよう

5. 世界の大思想1 プラトン

ラのために 殺された 〕のために人間の種族を敵視したので、鷲の生活やる者として、一緒につけてや 0 たそうだ。すると、ダイ・ モンは先す最初に魂をクロトの許へ連れていき、紡錘の円 と取りかえたそうだ。また、アタランタ彼女の求婚者は竸走す ければ、殺さ れたという 〕の魂は中ごろの番の籤に当た 0 たが、男の運動運動の回転を掌 0 ている手に渡して、籤の順番に従 0 て魂 が択んだ運命を確証してもらったそうだ。しかし魂がその 競技者の大きな栄誉を眼にとめて、通りすぎることができ ずに、それを取ったそうだ。しかしその魂の次には、パノベ回転に手を触れると、その魂をさらに今度はアトロポスが ト。ィア占領の綣いの魂は技芸の紡むいでいるところへ連れてい 0 て、その運命の糸が変更 ウスの息子の = ペイオス〔い 巧い女の本性のうちに入っていくのを見たそうだ。または され得ないものにしてもらったそうだ。そしてそこから、 「イリア , 」二巻〕魂はふり返らずにアナンケの椅子の下〈いき、そこを通り るか最後の連中のうちに、道化者テルシテス〔一一一二行以下 ぬけ、他の魂たちも通りぬけてくると、皆そろって、レテ が猿の身体を着用するのを見たそうだ。またオヂュスセウ 忘却の意 トロイア戦争におけるギリシア方の名将。 味がある 〕の平原へ進んだが、恐しい炎熱の中を通 0 たそう 〕の魂は偶然皆の一番最〔 特に凱旋の帰途多くの困苦をなめた だ。というのは、その平原は木のみならず、大地に生える 後の籤に当たって、選択に出かけたが、以前の困苦の記憶 ものが皆無だったからだ、という。ところで、すでにタ方 によって名誉心が和げられていたので、長いこと歩き廻っ て面倒のない普通人としての生活を探した挙句、やっとそにな 0 て、彼らはアメレス〔無の意 〕の河のほとりに宿営 れが或るところに他の者たちから気にもとめられずに横た したが、その河の水はどんな容器もそれを貯えておけな わっているのを見つけ、それを見ながら、最初の籤に当た 、とのことだ。ところでその水は一定量すべてのものが っても、同じことをしただろう、と言って、喜んで択んだ是非とも飲まなければならなかったが、思慮の健全でない そうだ。また同様に他の動物から人間のうちに入っていつ者たちはその定量より多く飲んだそうだ。しかしそれを飲ト たものもあれば、また、不正なのは野獣へ、正しいのは家む者毎に皆一切のことを忘れたそうだ。そして床に就い 畜へと変わりながら、お互いのうちに入っていったものもて、真夜中になると、その時雷と地震とが起こり、突然そ あり、その他ありとあらゆる混合がなされたそうだ。 の場所からそれぞれ皆違った道で、流星のように飛びなが しかしともかくも、すべての魂が生活を選択した後に、 ら、上へ誕生するために運ばれていったそうだ。しかし彼 籤の番号通りに整列してラケシスの許へ赴いたそうだ。 自身はその水を飲むことを禁じられたそうだ。けれどもど と、彼女はそれぞれの者に、彼の択んだそのダイモンを、 ういう仕方で、どういう風に彼がその肉体へやってきたの 彼の生活の守護者として、また彼の択んだことを充たして か知らないが、突然眼を開いて、早朝自分が薪積の上に横

6. 世界の大思想1 プラトン

1 一そうよく証明されたとは主張しないだろう、むしろなお いうことを、すなわち、或る人は或ることを容易に学ぶ われわれの守護者たちも彼らの妻たちも、同一の職業に携が、或る人は困難に学ぶ場合のことなのか。また或る人は わらなければならない、と考えるだろう」 短い学習にもとづいて、彼の学んだことに関してたくさん 「それは正しいことでもあるでしよう」と彼は言った。 発見することができるが、他の或る人は多くの学習と練習 「では、その次に、反対なことを言う人に、ちょうどこのとをなしながら彼の学習したものさえも維持できない場合 階題をわれわれに教えてくれるようにとお願いしはしない のことなのか。また或る人には、肉体に属するものがその か、それは、国の組織に係わりのある術、あるいは職業の 心に充分に奉仕することがでぎるのに、他方の或る人に うちの何に対して女と男とは、その本性が同じではなくて、 は、反対する場合のことなのか。これらより以外に、それ。 異なっているか、という間題だが」 によってそれぞれのことに対して善い天性を持っている人 「そうお願いするのは、たしかに正しいことです」と彼は とそうでない人とを、区別するのに君の用いたものが、何 言った。 か他にあるのか』」 「誰も他のものを、言えないでしよう」と彼は言った。 「すると、君が少し前に」〕言 0 たことを、他の人もお そらく言うことだろう、早急には申分なく言うことは容易「『それなら、以上すべてのことに関して男たちの種族が女 ないが、よく考察して見た上なら、難しくはない、とね」 たちの種族より優れていないような何ものかが、人間たち 「たしかに言うでしよう によって練習されているのを知っているか。それとも、機 「それならどうだ、一つ、そのような反対を言う人に、わ織術やパン菓子や料理の製作のことを話して長談議をした れわれに随いてきてくれるようにお願いしては、何とかわものだろうか。実際これらのことにおいては、女の種族は れわれは、国の統治に対して女に固有な職業というものは 一かどのものだ、と思われているので、ここで劣るなら、日 何もない、ということを彼に証明できやしないかと期待し何ものにもましてひどく嘲笑されるのだが』」 て、ね」 「あなたの仰っしやる通りです、ほとんどあらゆることに 「ええ、たしかに」 おいてその種族は男の種族に負かされているのですから。 「「では、さあ、答えてくれ給え」とその人に向かって言けれども多くのことに対して多くの男より優れている女が うだろう、『君が或る人は或ることに対して善い天性を持多くいます。しかし全体としては、あなたの仰っしやって っているが、他のある人は天性がないと言ったのは、こう いる通りです」と彼は言った。

7. 世界の大思想1 プラトン

るだろう。しかし生まれて直ぐに死んだ者や僅かな期間だちょうどそこには獰猛な、見た眼には火の燃えているよう け生きた者たちについては別に記憶に値することは語らな な男たちが傍に立っていて、その吼声に気づくと、そのう かったよ。しかし神々なり親なりに対する不敬や敬虔、まちのある者は両側からひっ捕えて、連れていった、しかし た自分が手を下した殺人に対するもっと大きな報いのことあのアルヂアイオスやその他の者たちは手と足と頭とを一 は、物語った。 緒にくくって、打ち倒し、皮を剥いだ上、路傍に沿って、 すなわち、彼は言った。或る一人の人が、他の人によっ茨の上を、引きずっていって、その刺で羊毛のように彼ら て、アルヂアイオス大王は何処にいるか、と訊かれているの肉を梳いた。そして通りかかる人ごとに、何のために彼 ところに居合わせた。このアルヂアイオスというのは話にらがそんな目にあっているかということ、またタルタロス よると、 。ハム。ヒュリアの或る国の僣主で、その時までに、 〔黄線の国 ( ( デス ) の、も 0 と下に、天が地から離れ 」〕へ投げこまれる もう千年を経過していたが、年寄りの父や年上の兄弟を殺ために連れていかれるのだということを示した。そこで、 したり、その他多くの不敬なことをしたということだった。 自分たちは多くのいろいろさまざまな恐怖を味わったけれ すると、訊かれた男はこう言った、と彼は言った、『きてど、上へのぼっていこうとする時に、自分たちひとりびと ない。またここにくることとては決してあるまい りに対してあの吼声が起こりはしないかという恐怖に優る ものはなかった、そしてそれが黙っていると、ひとりびと りこの上もなく喜んで上へのぼっていった」こう語ったと 一四というのは実際、これもまたわれわれが眺めた恐しい 光景の一つだったから。つまり、われわれはまた他の苦エルは言った。 しみを、みな嘗めた後で、出口の近くにあって、まさに上 さらに彼は言った。実に、刑罰と報いとは何かこのよう っていこうとした時に、突然あの男と他の連中ーーその大なものであり、また他方恩恵はそれらに相応ずるものであ 部分はほとんど僣主だったがーー・を認めた。しかし大罪人る。が、牧場にいる者たちはいずれも七日を経過すると、 に属する普通人もいく人かいた。彼らはもう上にのぼってその時にはそこから立ち上って八日目には道を進んでいか いけるだろうと思っていたが、そのロは受け入れようとは なければならない、そして四日目に或る場所に到着する しなかった、むしろそれほど兇悪さが癒し得ない状態にあが、その場所から天全体と大地とを貫いて上から、柱のよ 的る連中なり、充分に刑罰を受けなかった連中なりの誰か うに、真直ぐな光がのびているのを認めることができた、 が、上に出ていこうと企てると、そのロはいつも吼えた。 その色は虹に一番似ているが、もっと輝いていて、もっと。 ばた 616

8. 世界の大思想1 プラトン

なら、わたしがメレトスの訴えていることがらに関して、 不正の行ないとなるか、すぐれた人のなすことであるか・ 罪を犯している者ではないということは、多くの弁明を必あしき人のなすことであるかという、ただこれだけのこと ではなくて、生きるか、死ぬかの危険も勘定に入れなけれ 要としないのでして、いま言われたことで、もうたくさん ばならないなどと思っているのだとしたらね。な、せなら、。 だとわたしは思います。しかし、前にもお話ししておいた ことですが、わたしは多くの人たちから、いろいろにくま君のそういう議論からすれば、あのトロイアで生涯をとじ た半神たちは、くだらない連中だったということになるだ れているのでして、そのことは、、、 ' してすか、諸君、たしか に本当なのです。そしてもしわたしが、罪を着せられるとろうからね。なかでも、あのテチスの息子 ( アキレウス ) などは、恥ずべきことを我慢することにくらべるなら、そ すれば、その場合、わたしにそれを負わせる者は、メレト スでもなければ、アニュトスでもなく、まさにいま言われんな危険は何でもないと考えたのだからね。だから、ヘク トル討取りの念に燃えているかれに対して、女神であった、 たことが、その原因となるでしよう。つまり多くの人たち の中傷と嫉妬が、そうするのです。まさにそれこそが、他その母親が、わが子よ、お前が親友。 ( トロクロスの仇を討 おと って、ヘクトルを殺すようなことがあれば、自分も死ぬこ にも多くのすぐれた人たちを罪に陥したものなのでして、 これからもまた罪を負わせることになるでしよう。それがとになるのだよ。すぐヘクトルの後で、死神がお前を捉え わたしで終りになるようなことは、恐らく決してないでし ようと待ち受けているのだからねと、なんでも、こんなよ うなことを言ったと、わたしは思うのですが、するとアキ レウスは、この言葉を聞いても、死や危険はものの数に入 しかし、そうすると、多分、こう言うひとが出て来るかれないで、むしろ友のために仇討ちもしないで、卑怯者と して生きることを恐れ、あの悪者に罰を加えさえしたら、 明も知れません。それでも、ソクラテス、君は恥すかしくな の いのか。そんな日常を送って、そのために、いま死の危険すぐに死んでもかまいません。わたしはこの世にとどまっ へさき ス テ にさらされているというのは、と言うでしよう。しかしわて、地上の荷厄介になりながら、舳のまがった船のかたわ たしは、そのひとに答えて、当然こう言うでしよう。君の らに、笑いものとなっていたくはありませんと答えたので 言うことは感心できないよ。君。もし君が、少しでもひとす。まさか君は、かれが死を心配も、危険を気にしたとは のためになる人物なら、いやしくもことを行なうに当って思わないでしよう。なぜなら、アテナイ人諸君よ、真実 は、次の通りだからです。ひとがどこかの場所に、それを 考えなければならないのは、それが正しい行ないとなるか ( 一四 )

9. 世界の大思想1 プラトン

ていないうちに、ね」 「だから、ちょうどその時に彼らは財産の高をーーそれも 「そのようです」と彼は言った。 寡頭制の程度が強ければ、それだけ多くの高を、それが弱 「第一一に、私は思うが、めいめいが他の人のすることを見ければ、それだけ少ない高を定め、定められた財産評価高 と公 て、互いに竸争しているうちに、自分たちの大部分をそのまで財産を持っていない人は支配の役に与かれない、 ような者に仕上げたのだ」 布することによって、寡頭制的国制の境界石としての法律 「そのようです」 を制定する、そしてそれらのことを武器を用い暴力によっ 「だからその後は、と言えば」と私は言った、「金儲けの て成し遂げるか、あるいはまたそれに及ぶまえに、脅かして 道を前へ前へと進んでいき、お金を一そう貴重なものと考そのような国制を樹立する。それとも、そうじゃないか」 えれば考えるだけ、徳はますます貴重なものではないと考「ええ、そうです」 えていくのだ、それとも富と徳とは、ちょうど天秤の皿に 「では、その国制樹立は、およそのところを言うと、以上 それぞれ二つのものがおかれた時に、、 しつも一方が上がれのようだ」 っ ば、他方が下がるというような風には違っていないかね」 「はい」と彼は言った、「しかしその国制の性格は、い 「ええ、全くです」と彼は言った。 たい、何ですか。そしてさきこ五四 冫〔四。〕その国制が持「てい 「じゃ、国のうちで富と金持ちとが尊重される時には、そるといったその過ちはどのようなものですか」 れに応じて徳と善い人とは尊重されないわけだ」 「もちろん」 七「第一には」と私は言った、「ちょうどそれ、すなわち いつも尊重されるものは精を出されるが、尊重さその国繝がどのようなものであるかを示す境界石だよ。だ れないものは忽せにされるわけだ」 って考えてみ給え、もし人がそういう風に、つまり財産評 「そうです」 価高に基づいて船の舵取りにし、貧乏人には、たとい一そう 家 「じゃ、愛勝的な人間、愛誉的な人間に代わって、金儲け舵取りの心得のある者であっても、委ねないとすればーー・ー」 好きや愛銭的な人間が遂には生じてきたわけだ、そして彼「きっと」と彼は言った、「彼らのする航海は悪いもので らは金持ちを賞讃し、讃嘆して支配の役につけるが、し かあるに違いありません」 し貧乏人は尊重しないわけだ」 「また他のたとい何ものにせよ、それらの支配については 「全くです」 そういう風であるのではないか」 ゆるが

10. 世界の大思想1 プラトン

か。なぜなら、わたしは自分が、大にも小にも、智慧のあ思っているけれども、そうではないのだということを、は る者なんかではないのだということを自覚しているからで つきりわからせてやろうと努めたのです。すると、その結 す。すると、そのわたしを一番智慧があると宣言すること果、わたしはその男にも、またその場にいた多くの者に によって、いったい何を神は言おうとしているのであろう も、にくまれることになったのです。 か。というのは、まさか嘘を言うはずはないからだ。なぜ しかしわたしは、自分ひとりになった時、こう考えたの なら、神にあっては、それはあるまじきことだからです。 です。この人間より、わたしは智慧がある。なぜなら、こ そして玉、司、 フしドいったい何を神は言おうとしているのであの男もわたしも、恐らく善美のことがらは、何も知らない ろうかと、わたしは思い迷っていたのです。そして全くやらしいけれども、この男は、知らないのに、何か知ってい っとのことで、その意味を、何か次のような仕方で、たするように思っているが、わたしは、知らないから、その通 りに、また知らないと思っている。だから、つまりこのち ねてみることにしたのです。それは誰か、智慧があると思 よっとしたことで、わたしの方が智慧のあることになるら われている者のうちの一人を訪ねることだったのです。ほ しい。つまりわたしは、知らないことは、知らないと思 かはとにかく、そこへ行けば、神託を反駁して、ほら、こ う、ただそれだけのことで、まさっているらしいのです。 の者の方が、わたしよりも智慧があるのです、それだの に、あなたはわたしを、智者だといわれたという風に、託そしてその者のところから、また別の、もっと智慧がある と思われている者のところへも行ったのですが、やはりま 宣にむかってはっきり言うことができるだろうというわけ た、わたしはそれと同じ思いをしたのです。そしてそこに・ なのです。ところが、仔細にその人物ーーというだけで、 特に名前をあげて言う必要は何もないでしよう。それは政おいてもまた、その者や他の多くの者どもの、にくしみを 明界の人だったのですがーーその人物を相手に、これと問答受けることになったのです。 のしながら、観察しているうちに、何か次のようなことを経 テ験したのです。つまりこの人は、他の多くの人たちに、智 それで、それ以後、今日まで、次から次へと歩いてみた ク慧のある人物だと思われているらしく、また特に自分自身のです。自分がにくまれているということは、わかってい でも、そう思いこんでいるらしいけれども、実はそうでは たし、それは苦にもなり、心配にもなったのですが、しか 5 ないのだと、わたしには思われるようになったのです。そしそれでもやはり、神のことを一番大切にしなければなら してそうなった時に、わたしはかれに、君は智慧があると ないと思えたのです。ですから、神託の意味をたすねて、