210 去り、或る部分は書き込むだろう」 一そうそうなると主張するだろうか」 「決してそういうことはありません」 「ともかく、この絵はこの上もなく美しいものになるでし 「すると、それでもなお彼らは怒るだろうか、愛知者の種 ようーと彼は一一 = ロった。 「すると」と私は言った、「一生懸命にわれわれに対して族が国の支配者とならないうちは、国にとっても国制にと っても禍の止むことはないだろう、またわれわれの言論を 攻撃してくると君の言 0 た些あの連中を何とか説得し て、このような国制の絵描きが、あの時彼らに向かって推以て物語っている国制が現実に仕上げを受けることはない 奨した愛知者であり、またあの連中を刺激して愛知者にわだろう、とわれわれが言う時にね」 「多分ーと彼は言った、「怒ることは前よりはより少ない れわれが国を任せることに腹を立てさせた者であるとい うことを、信じさせることができるかね、そして今の説明でしよう」 を聞いて、いくらかでも彼らは穏かになるかねー 「ところで、どうだね、怒ることはより少ない、とではな く、むしろ全く彼らはおとなしくなり、説得されてしまった 「ええ、それは大いに穏かになるでしよう」と彼は言っ と言ってやることにしては 別に理由はなくとも、そう た、「もし彼らが思慮をもっていますならね」 どうして彼らは抗議することがで言われたことを恥じて同意するように、ね」と私は言った。 「それでよ、、 「ええ、全くです」と彼は言った。 きようか。愛知者は有るものや真実やの愛人でないと言っ てかね、それとも」 一四「それでは、この連中は」と私は言った、「この点につ 「いや、それはたしかに可笑しなことでしよう」と彼は言 いては説得されたものとしよう。しかし次の点について、 「しかし、われわれの述べた私五〕彼らの本性は最善のすなわち王や権力者からはその本性が愛知的である子供は 生まれてくることはないだろう、ということについて抗議 ものの身内ではない、 と言ってかね」 する者があるだろうか」 「いや、それもね」 「しかしどうだ。このような本性は、それにふさわしい制「ただの一人でもそういう者はないでしようーと彼は言っ 度に巡り合わすなら、完全に善くて、愛知的なものになる のではなかろうか、かりそめにも他の本性がそうなるのな 「しかしこのような子供が生まれてくるなら、もう必す堕 と言うことのできる者があるか らね。それともわれわれの除外したあの連中の方が〔。 〕落させられるに違いない
いはまた将来にもあるとすれば、われわれは言論を以て、 のに、ひどくない人にひどくあたったり、出し惜しみしな このことのためにあくまでも戦う用意がある、すなわち、 い人に出し惜しみをしたりする者があると、君は思うか あのミ = ーズの神〔知〕が国の征服者になる場合は、いつでね。いや実際、私は君の先きをこして言うが、極く少数の もわれわれの述べた国制があったし、あるし、またあるだ人々の間にならともかくも、群衆の間にはそんなひどい本 ろう、ということのために、ね。何故なら、そのミューズ性は生ずることがない、と信ずるんだよ」 はそうなることの不可能なものでもないし、またわれわれ「心配ご無用」と彼は言った、「私も同意見です」 も不可能なことを言っているのではないのだから。しかし 「それなら、他ではない、 このことについても同意見か それらのことが難しいことであるということは、われわれね、大衆が愛知に対してひどい気持ちを持っていることの さえも承認するが、ね」 責任は、あの、外部から酔いどれどものように不当に闖入 「ええ、私にもそう思われますーと彼は言った。 してきて、お互いに罵り合い、喧嘩好きであって、そして、 「しかし、大衆には今度もそうは思われません、と君は一言 これは一番愛知にふさわしくないやり方だが、いつも人に うんだろうね」と私は言った。 ついての話ばかりやっている連中にある、ということにも、 「多分」と彼は言った。 ね」 「いい気なものだ」と私は言った、「そう、君のように無「ええ、全くです」と彼は言った。 下に大衆は非難したものではないよ。彼らはきっとこれま でとは違った意見を持つようになるのだ、もし彼らと勝利一三「というのは、アディマントス君、思うに、有るもの を争わずに、なだめすかして、愛学に対する誹謗を解きほ どもの傍にその心を本当においている者にとってはね、下 ぐしながら、君が彼ら自身の考えている愛知者のことを言を見て人間どもの所行を眺め、彼らと争って嫉妬や敵意に っているのだと思わないように君の言う愛知者を示してや繝充たされるもないからなんだよ、むしろその者は秩序整 り、さっきのように、彼らの本性と仕事とを、定義してや然としていて、いつも同じままであるものを見、それらがお れば、ね。それとも彼らが君のような見方をした場合で互いに不正をしもしなければ、されもしないで、そのすべ も、君は否定するだろうか、彼らが〔それまでとは〕違っ てが秩序を守り、理性に一致しているのを観察して、それ たような意見を受け入れて、違った答えをするだろうとい らを模倣し、できる限りそれらに似ようと努めるものなの うことを。それとも、出し惜しみしない穏やかな者である だ。それとも君は人が何でも愛して交わるところのそのも
るものを愛するとわれわれが言う場合、それが正しい意味「もしあなたが」と彼は言った、「惚れつ。ほい人々につ で言われているのなら、彼がその或るものの一部は愛するて、彼らがそうするということを私を例にして仰っしやる と言うのではなく、むしろそことを望まれるのなら、私は同意しますよ、言論のために が、しかし一部は愛さない、 の全体を好む者だと言うのではないか」 「しかしどうだ」と私は言った、「愛酒家たちが以上と同 「どうも、想い出さなければならないようです。全然心に じことをするのを、君は気づいていないか。あらゆる酒を とめていませんから」と彼は言った。 「他の人になら」と私は言 0 た、「グラウ = ン君、君の言あらゆる口実の下に歓迎するのを、ね、 「ええ、たしかに」 ったことを言うのがふさわしかったよ。しかし惚れつ。ほい 男にはふさわしくないね、すべて年頃の者は、少年を愛す「それからまた愛名家も、私の思うところでは、君ははっ る惚れ「。ほい男には、面倒を見てやったり、大切にしてやきり気づいていることだろうが、もし将軍になることがで きなければ、トリチ = ス冠→三〕隊長になる、そしてたと ったりする値打ちがあると思われるので、その男を何とか い大物やお偉方によって尊敬されなくとも、小物や賤しい かとか刺激して動かすものだということを、忘れるなんて ことは。それとも君たちは美しい人々に対してそういうふ者らによって尊敬されるなら、満足するのだ ) 彼らは名誉 うには、しないかね。或る人は団子鼻だというので、愛敬を総体として欲求している者なんだから」 「ええ、たしかにそうです」 があると呼ばれて、諸君たちに賞められる、また或る人の 「それじゃ、次の点についてイエスかノーかを言ってくれ 鈎鼻は、王者らしいと諸君は言う、しかしこれらの中間に 給え。もし或る人を或るものの欲求者であるとわれわれが ある人は、全く頃合いだと言い、色の黒い人は見るからに 言うなら、彼は或るものの種類全体を欲求している、とわ 男らしいと言い、色の白い人は神の子供だと言う。それか らまた蜂蜜色という名前も、もし青ざめた色が年頃の者のれわれは言うのだろうか、それともその一部はそうだが、 顔にあるのであれば、あたりのよい言葉で呼んで、気軽にその一部はそうでないと言うのであろうか」 「全体をです」と彼は言った。 我慢する愛人より誰か他の者の作だ、と君は思うかね。っ 「それではまた、愛知者〔哲学者〕も、知恵の欲求者、それ まり一口で言えば、有りとあらゆる口実を口実に持ち出し、 もそれの一部はそうだが、一部はそうでない者というので 有りとあらゆる声を放って、年頃で花の盛りにある人々は はなく、それの全体をそうする者と言いはしないだろうか」 誰一人捨てないようにするのだ」 475
ることに由来する快楽がどのようなものか、それはすべて れわれの言った快楽のすべてに経験を持っているか。愛利 者が、真理そのものはどのようなものであるかを学ぶことの者が経験者です、しかし有るものの観想がどのような快 によって、知ることに由来する快楽の経験を持っているの楽を持っているかは、愛知者を除いて、他の者には味わう は、愛知者が利益を得ることに由来する快楽の経験を持っことのできないものなのです」 「それでは」と私は言った、「経験に関してはその人間た ているのに較べて、より多いと君には思われるかね」 ちのうちでは、この愛知者が一番立派に判定するわけだ」 「格段の違いですよ」と彼は言った、「と言いますのは、 愛知者は子供の頃から他の一一つの快楽は必然的に味わい始「ええ、全くですー めるに違いありませんが、しかし愛利者は有るものが本来「その上たしかに思慮を伴っ . た経験をしたのは、ただ彼だ どうであるかを学ぶことによって、その快楽がどんなに甘けだろう」 「そうですとも」 美なものであるかを味わう必然性もその経験者になる必然 いや、たとい一生懸命に努めても、それは容易「ところがまた、判定するのに、道具として用いなければ 性もない、 ならぬそれは、愛利者のでもなければ、愛誉者のでもなく なことではないからですー て、むしろ愛知者の道具なのだ」 「それでは」と私は言った、「愛知者はその両方の快楽の 「それはどのようなものですか」 経験においては、愛利者に較べて格段の違いがあるという 「論証によって判定されなければならない、とわれわれは ことになる」 「ええ、全くですとも」 言 0 ただろう〔一一匕、そうじゃないか」 「しかし、愛知者と愛誉者の違いはどうだ。愛知者が尊敬「はい されることに由来する快楽に無経験であるのは、かの者が 「しかし論証は特に彼の道具なのだ」 思慮することに由来する快楽に無経験であるのに較べて、 「それはもちろんです」 より多いかね」 「ところで、もし判定されるものが富や利得によって、一 「いや、栄誉は」と彼は言った、「それそれの者が目ざし番よく判定されるとするなら、愛利者が賞讃したり、非難や て進んできたものを完成すれば、それらの者のすべてに伴したりするそのものが一番本当であるのは必然であろう」 ってきますーーというのは、実際金持ちゃ勇者や知者は多「ええ、全く必然です」 くの人々に尊敬されているのですから・ーー・従って尊敬され 「だが、もし栄誉と勝利と勇敢とによって、判定されると
家 191 国 「すると、どうだ、知恵に真実よりも近しい身内を、何か 彼らが学問は、あの、常にあって、生成消減によってさま よわされない有を、彼らのために明らかにしてくれるもの君は見出すことができるかね」 なら、、 「どうしてできましよう」と彼は言った。 しつでそれを愛するという点だがね」 「すると、どうだ、同一の本性が愛知的でも、また愛偽的 「え ~ 、一致を見たことと致しますー でもあるということが、できるかねー 「それからたしかにまた」と私は言った、「ちょうどさっ 「いや、それは決して」 きのところで〔五 ー四七五〕愛名者や惚れ「。ほい者について 「それなら、本当に愛学的な者は真理全体を、極く若い頃 述べたように、有の全体を愛して、その部分を、小さいの からできる限り欲求しなければならないことになるよ」 にせよ、大きいのにせよ、貴重なのにせよ、下賤なのにせ 「ええ、ほんとに全くですよ」 よ、自らすすんでは放棄しないということも、そうだとし 「ところがね、誰でも人の欲望は何か一つのものに向かっ て貰いたい」 て流れていくと、ちょうどその方へ溝でひかれた流水のよ 「それは、あなたの仰っしやる通りです」と彼は言った。 うに、その他のものに向かっては、前より弱くなるという 「さて、その次に考えてみてくれ、われわれが語ったよう ことを、われわれは知っているだろう」 な者に将来なろうとする者なら、その本性のうちに以上の 「ええ、もちろんですー ものに合わせて、次のものを是非持っていなければならな。 「従って、その欲望が学問やすべてこのようなものに向か いカどうか」 って流れていった人は、魂自身が自分だけでもっ快楽は事 「それはどのようなことですか」 「偽りのない心、つまり、自らすすんでは決して偽りを受とするだろうが、しかし身体を通じて起こる快楽には無頓 着であろう、もし作りもののではなくして、真の愛知者で・ け入れずに憎むが、しかし真実は愛することだ」 あるなら、ね」 「そうらしいですね」と彼は言った。 「それは大いに、そうでなくてはなりません」 「いや、君、らしいだけじゃないよ、また是非ともそうで なくちゃならないよ、本性によって何か或るものを恋して 「少なくともこのような人はほんとうに節制があって、決 いる者がその恋されている者の親族や身内を愛するという して稼ぎ家ではない。だって、お金が熱心に求められ、派 ことはね 手に散財されるのは、目ざすものがあるからだが、そうい 「仰っしやる通りです」と彼は言った。 うものを熱心に求めるのは、この人より誰か他の人に一そ
家 189 国 「すると、彼らを愛知者とよりは、むしろ愛臆見者と呼ぶ六巻 なら、われわれは何か度はすれのことを、まさか言ってい ることにはなるまいね。それでも、われわれがそう言うな ら、われわれに対して彼らはひどく腹を立てるかね」 「立てませんよ。もし私の忠告を彼らが聞き入れますなら ね」と彼は言った、「だって真実に対して腹を立てるのは、 法じゃありませんから」 「それでは、それぞれの有るものそのものを歓迎する者は 愛知者と呼ぶべきで、愛臆見者と呼ぶべきではないことに なるね」 「ええ、全くです一 一「それでは愛知者とそうでない者とが」と私は言った、 「やや長い言論の中を通ってきた末、何とかやっとのこと で、両者のそれぞれが誰であるか、その姿を現わしたわけ 「だっておそらくーと彼は言った、「それは短い言論の中 を通ったのでは、容易でなかったでしよう」 ようだねーと私は言った、「ともかく私には、そ の問題は、なお一そう明らかにされ得たろうと思われる よ、もしただこの問題についてだけ語るべきであって、残 りの多くのことを論ずる必要がなかったとすれば、ね。と ころが、どの点で正しい生活と不正な生活とは異なってい るかを、はっきり見きわめようとすると、その必要がある んだよ」 「すると、われわれにとってその次にくるものは何です か」と彼は言った。 「そのつづきになるものより他の何であろう」と私は言っ た、「常に同じままで同じ状態にあるものに、触れること のできる者は愛知者であるが、しかしそうではなくて、多 くのいろいろさまざまな状態にあるもののうちを、さまよ
る者が支配することのできる者の門をたたき、支配者が支がこのことの原因でもないということを、できれば、示す ように努めてみようか」 配される者に支配されてくれるようにお願いしてはならな 「ええ、どうか」 いのだ、いやしくも本当に何かに役立っ支配者ならね。だ が、今日の国の支配者たちをさっきわれわれの語った船乗「では、立派なよい人はその本性がどのようなものとして りたちに比し、またこれらの人々によって役立たす、星に生まれてこなければならないかということを、論じた個所 見惚れる奴だと言われた人々を真の舵取りに比するなら、 気矼〕を想い出して、われわれは聞いたり話したりするこ 君は間違いはしないだろう」 とにしよう。君が憶えているなら、彼のために指導者に立 ったのは先す第一には真実であって、彼はそれをあらゆる 「ええ、全く仰っしやる通りですーと彼は言った。 「だから、以上の理山から、また以上の事情では、最善の仕方で、あらゆる場合に追い求めなければならなかった。 でなければ、彼は駄法螺吹きであって、真の愛知とは絶対 仕事がその反対の仕事をしている人々から好評を博するの は容易じゃない。しかし愛知に対する最大最強の誹謗は主に関わりのない者であった」 として、そのような仕事をしていると称している人々のせ 「ええ、たしかにそういう風に言われていました」 いで起こるのだ。愛知を非難する人は、愛知へ赴く人々の 「だとすれば、それは彼について今日思われていること 大多数の者は碌でなし、非常に優秀な者は無用だと言って に、ひどく反したことの一つではないか」 いる、と君が主張し、また私が君の主張するところは本当「ええ、全くです」と彼は言った。 だと承認したのは、まさにこれらの人々についてだから 「それじゃ、こう言って弁明すれば、適切ではなかろう ね。そうじゃないか」 か。つまり、真に愛学的なるものは有るものを得ようと、 本性上努力するものであって、有ると思われている多くの 個々のものの上に留まらないで、進んでいき、それそれの 五「それなら、優秀な人々の無用の原因は論じたのではな有るものそのものの本性に、魂の部分でこのようなものに ふさわしいのはそれと親 いか」 触れるのにふさわしいもの、 「ええ、全くー 族的なものだがーーそれを以て触れるまでは、怯まず、恋 をやめないだろう、そしてこの部分を以て本当に有るもの 「しかし、何故多くの人々が下劣であらざるを得ないか、 に接して、交わり、理性と真実とを産み、認識して、真実 それを、どうだね、一つ、次に述べてみようか、また愛知
: 03 国家 「ねえ、君、不思議じゃよ オいか」と私は言った、「最善の のは他の小人どもがその土地は無住になっているが、しか 仕事に関しては、実にこれが最善の本性を亡ぼすものであし巧い言葉といい体裁とに充ちているのを見てとって、ち り、これほどの、このようなのがそれの蒙る堕落なのだ、 ようど牢獄から神殿へ駆込んだ者たちのように、 この連中 そうでなくとも、そのような本性は、われわれが言ったよ も喜んで、いろいろな技術の許から愛知の懐へとび込んで うに〔四九一、稀にしか生まれてこないのにね。そして実くるからだ、自分たちのけちな技術に関しては非常に利ロ にこのような男たちから、最大の悪を国や個人に対してな な者であってもね。というのは、たとい愛知がそんな暮ら す者たちも出てくるし、また善をなす者たちも出てくるの しをしていても、それでも、他の技術にくらべれば、ずつ だ、もし幸いその方向へ流れていく者があれば、ね、しか と高い位が残っているのだ、だからそれを狙って多数の、 しちつ。ほけな本性は、どんな個人にもどんな国にも、大き本性は不完全な上、技術や手職によってその身体が害われ なことは決して何一つなすことはないのだ」 ているように、その魂までもその下賤さによっていじけさ 「それは全く仰っしやる通りです」と彼は言った。 せられ、かたわにさせられている : 。それともそうさせ 「それでは愛知の一番近い親類になるこれらの人々がこんられるのは必然じゃないのか」 な風に逃げだして、愛知 〕を一人。ほ 0 ちで未婚のま。 「それは大いに必然なことです」と彼は言った。 まに残し、自分たちはふさわしくも本当でもない生活をす「それじゃ、彼らは見ていくらかでも違「たところがある るが、しかし彼女は、ちょうど親類のない孤児のように、 と君は思うかね、お銀を手に入れた禿頭の小男で、最近鎖 他の釣合わない奴どもが押入り、辱かしめて、彼女に非難 から解かれたばかりだが、一風呂浴びて、新調の着物を着 をもたらすのだ、それは、君もまた愛知を非難する人々が こみ、花婿のような仕度をし、主人の娘と、その貧乏で一 口にすると一一一口っていること 四八九 〕すなわち、彼女人。ほ「ちなのをいい ことに、結婚しようとする鍛冶屋にく と同棲する者たちの或るものは一文も出す値打ちもない らべて」と私は言った。 が、その多くのものは多くのひどい目に遇う値打ちがある 「ちっとも違いはありません」と彼は言った。 ということに類した非難だが」 「すると、このような奴らはどのような子供を生みそうだ 学 / し、か」 「ええ、たしかに」と彼は言った、「それが彼らの言ってね。まがいものの、くだらぬ子供じゃよ、 いることです」 「それは全くそれに違いありません」 「しかしどうだ。教育を受ける値打ちのない者たちが、彼」 「彼らがそう言うのも当然だよ」と私は言った、「という かね 496
「ええ、本当に」 愛する者を、愛知者とわれわれは呼ぶでしようか」 「それでは、学科を好き嫌いしてブックサ言う者、特に年「いや決して」と私は言った、「しかし愛知者に似た者、 とは呼ぶね」 が若くて、どの学習が有用で、どれがそうでないか、まだ 理由はつけられないのに、そうする者は、愛学者であると も、愛知者であるとも言われないだろう、ちょうど食物を一一 0 「と、仰っしやると、真の愛知者というのは誰のこと 好き嫌いして、ロやかましく言う者を、腹がすいているとですか」と彼は言った。 も、食物を欲求しているとも言わす、また愛食家ではなく 「真実を観ることを愛する者だよ」と私は言った。 て、偏食者であると言うように、ね 「ええ、そのことなら、たしかに仰っしやる通りでしよう。 「ええ、そうです、そしてそう言うのは正しいことでしょ しかしそれはどういうことでしようか」と彼は言った。 「それは他の者には決しておいそれとは言えないね」と私 は言った、「しかし君なら、次のようなことを私に同意し 「しかしね、あらゆる学科を気軽に味わおうと望み、喜ん で学習に向かっていき、飽くことを知らない者、これを愛てくれると思うよ」 「それはどのようなことです」 知者と言うのは正しいだろう。そうじゃないか」 するとグラウコンは言った、「だとすると、あなた、多「美は醜の反対であるから、それらは二つであるというこ 数の奇妙な連中がそのような者だ、ということになりますとだが」 よ。だって愛観者は皆学び知ることを喜ぶので、そのよう「ええ、もちろんのことです」 な者だと私には思われますし、また愛聴者の或る者は、愛「それらは二つであるから、それらのそれぞれはまた一つ 知者のうちに数えるのには、非常に奇妙な者です、というであるということも」 「ええ、それも」 こよ自らすすん のは哲学的な言論やそのような種類の談話冫を 「それなら、また、正や不正や、善や悪やすべてのエイド しかしまるで耳を賃貸したかのよ で行こうとはしないが、 ス〔形相〕についても同一のことが一 = ロえるのだ、つまり、 うに、あらゆる合唱団を、街であるのでも、田舎であるの でも、一つ残さず聴いてやろうと、ヂオニュソスの祭礼にそれぞれのものは、それ自身としては一つであるが、しかし はかけすり廻るのですからね。だとすると、これらの人々 行為や物体との結合、また相互の結合によって、あらゆる や何かこのような種類のことを学ぶ者や、しがない技術をところに現われて、それぞれ一つのものが多と見えるのだ」 4 了 6
「しかしそれでもやはり」と彼は言った、「それを明らか 「正反対だよ。青少年や子供の頃は、青少年向きの教育や にして証明の仕上げをして貰いたいものです」 愛知に携わり、成長して大人になりつつある間は、身体に 「それを邪魔するのは」と私は言った、「欲しないという よくよく気をつけて、愛知に奉仕することができるように ことではない、、 しや、もしあるとすれば、その力がないとすることだ巻「一〕。しかし、年がすすんで、魂が一人 いうことだ。そして私の熱心さは君が傍にいて、やがて知 前になり始めた時には、それの体操を引きしめてやる。し ってくれるだろう。しかし今でも見てくれ給え、如何に熱 かし体力が衰えて、政治や軍務に適しなくなった時には、 心に、また如何に危険をものともせす、私が、国は現在とその時こそもう勝手に牧草を食み、片手間仕事でなら別だ は反対な仕方でその仕事〔の〕に手を出さなければなら が、愛知以外のことは何もしないことだ、幸福に生き、死 と言おうとしているかをね」 んで後はその生きて来た生活を、それにふさわしいあの世 「それはどんな仕方ですか」 での運命で飾ろうとする者は、ね」 「現在では」と私は言った、「ともかくそれに携わる者は 子供の域を出たばかりの青少年〔二 + 一歳ま・、 〕て家政と金儲三「全く本当にあなたは、ソクラテスさん」と彼は言「 けとに入るまでの間、それの最も困難な部分に近づいて、 た、「熱心に話していられるように私には思われます。け それから立ち去るのだ、ところがこの連中が世間で最もでれどもお話を聞いている者の多くは、何としてでも説得さ きた愛知者だとされる者なんだよ。ーー今最も困難な部分れないように、あなたより一そう熱心に反対することと思 と私が言ったのは、一一一口論に関する部分のことだよ、 います、トラシュマコスさんを初めとしましてねー してその後では、もし招待されて、それをやっている人々 「仲を割いてはいけないよ」と私は言った、「私とトラシ の聴き手にな 0 てやる気にでもなれば、大したことだと考、 = スさんとはさ「き〔一巻〕三五〕親しくな 0 たばかりな える、それは片手間仕事にやらねばならぬと思っているの のに。しかし以前も敵ではなかったがね。だって私の努力 で、ね。しかし老年になると、極く少数の人々以外には、 を少しも緩めるつもりはないんだから、この人をもその他 の人々をも説得するか、あるいは彼らが再び生まれてき 〈ラクレイトスの太陽〔は太陽を日《に新しく燃え上 るかに多く、火の気をなくするのだ、彼らの方は再び燃えて、このような言論にめぐり合った場合に、その世の生活 上がらされることがないのだから、それだけに、ね」 のために何か役立っことをしてやるまでは、ね」 「じゃ、どうしなければならないのですか」と彼は言った。 「〔生まれるなんて、〕そんなこと暫時先きのことでしよう