考察 - みる会図書館


検索対象: 世界の大思想1 プラトン
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1. 世界の大思想1 プラトン

128 いうのは、この同じものについて教育によらずにもたらさ た、「またそれの方がさきに明らかにされるのを望みもし れた正しい意見、すなわち動物的なのと奴隷的なのとは、 ないでしよう、もしわれわれがもはや節倒を考察しないこ 決して合法的だとお考えにもならないし、また勇気とは何とになるのでしたらね。むしろ私の意をかなえて下さる気 か別の名前でお呼びになる、と私には思われますから」 がおありなら、それの方よりこれの方を考察して下さい」 「全く君の言う通りだ」と私は言った。 「うん、たしかにそうする気はあるよ」と私は言った、 6 「それでは、これが勇気であると承認します」 「そうしないのは、よくあるまい」 「その上、それは、国民的なそれであると承認してくれ給「じや考察して下さい」と彼は言った。 え」と私は言った、「すると、君の承認するところは、正「考察しなければならないね」と私は言った、「ところで、 しいことになろう。しかしその間題については、何なら、 それは、いきなり見たところでは、これまでのものより以 共鳴和 いっかなおも 0 と立派にわれわれは論じよう。というのは上に、何かシ = ンポ = ア〔 絃の意とか ( ルモニアとかいうも 今われわれの探求しているのは、これではなくて、正義な のに似ているよ」 んだから。だから、あの勇気の探究に対しては、私の思う「どうしてですか」 ところでは、それで充分である」 「思うに節制は」と私は言った、「一種の秩序であり、ま 「ええ、ご尤もです」と彼は言った。 た快楽や欲望の征服である、これは人々が、どうしてか知 らんが、自分自身に打ち勝った者と言うことによって、主 へ「しかしーと私は言った、「国のうちに見つけなければ張しているところだ、またその他のこのようなことが、 ならないものが、なお二つ残っている、節制と、われわれが 一「三それのいわば足跡として言われている。そうじゃな すべてのことを探究しているのもそれのためであるもの、 いか」 つまり正義とが」 「ええ、それは何よりたしかなことです」と彼は言った。 「ええ、全くです」 「ところで、この自分自身に打ち勝った者という表現はお 「すると、どうすれば正義をわれわれは発見できるだろう かしなものじゃないか。というのは、自分自身に打ち勝っ もはや節制にかかり合わないために、こう訊くん た者は、もちろんまた自分自身に打ち負けた者であろう だが」 し、また打ち負けた者は打ち勝った者であろうからね。何 「いや、それは私なんか知っちゃいませんし」と彼は言っ故って同一の者がこれらのすべての場合にそう呼ばれてい

2. 世界の大思想1 プラトン

るべきだね」 「それなら次にわれわれが述べなければならぬのは、より 劣った人々、すなわち愛勝的で愛誉的で、スパルタ的国制「ええ」と彼は言った、「そういう風にすれば、その観察 と判定とはまことに道理にかなったものでしよう に応じた人、さらに寡頭制的な人、民主制的な人、僣主制 的な人だね、それは最も不正な人を見て、最も正しい人に 対置し、そもそもまじり気のない正義はまじり気のない不三「それなら、さあーと私は言った、「どんな仕方で栄誉 正義に対し、それらを持っている人々の幸福と不幸とに関制が貴族制から生じてくることができるか、話すことに努 して、どのような関係にあるのか、というわれわれの考察めてみよう。それともこのことは一般的なことなのか、つ を完成し、かくて、トラシュマコスさんに従って不正義をまりすべての国制の変化は支配を持っている者から、ちょ 追求するか、それともこれから姿を現わしてくる言論に従うどその者のうちに内乱が起こる時に起こってくるが、し って正義を追求するかするためだが、ね」 かしそれが和合している時には、たとえ非常に小人数であ 「ええ、全くです」と彼は言った、「たしかにそうしなけっても、変革されることは不可能だということは、ね ればなりません」 「たしかにそれはそうです」 「それなら、、 しったい」と私は言った、「グラウコン君、 「それなら、個人においてよりもさきに、国制において性 格を考察する方が、それは明らかになるから、始めにそうわれわれの国はどうして変革されるであろうか、また補助 したように〔 IJ 巻、三、 〕今もまたそういう風に先ず最初に愛者たちと支配者たちとはお互いに対して、あるいは自分達 誉的な国制を考察しなければならないね、ーー愛誉的な国同士の間で、どんな仕方で内乱を起こすであろうか。それ ミューズの女神たちに 制、と言うのは他にそれに対して日常使われている名前をとも、どうだ、ホメロスのように、 知らないからだ。さもなければ、それは栄誉繝、あるいは お祈りして、そも如何にして先ず内乱は起こりしか 7 。 そしてこの国に比一六巻、一 栄誉政治と呼ばなければならない 一二行参照〕、われわれに語 0 て下さいとお願いし、そして女 家 神たちはちょうど子供たちにのようにわれわれに冗談を言 べてそのような人間を考察し、それから寡頭制と寡頭制的 し力にも百【面目にっ 人間を、そしてその後で民主制へ眼を転じて、民主制的な い、からかっておいでであるのに、、、 人間を眺め、そして第四番目に僣主に治められている国へ ておられるかのような様子で、悲劇風に荘厳な話し方をな 行って、それを見、再び僣主制的な魂に眼を注いで、われさると、言ったものか、ね」 「それはどういう風にですか」 われがたてた課題について充分な判定者となることに努め

3. 世界の大思想1 プラトン

というのはまたそのような国をも考察するなら、正義と不 ずからせていられるようですー 「それは本当だ」と私は言 0 た、「私はす 0 かり、彼らは正義とが、い 0 たい、どんな仕方で国々のうちに生まれて くるか、ということをおそらく認めることができようから また肴も持つだろうということを、忘れたのだ、彼らは塩 やオリープ油やチーズを用い、玉葱やキャベツを煮て、ちね。ところで、われわれがこれまで述べてきたものが真実 ようど田舎にあるようなお料理をつくるだろう。そしておの国で、それはいわば一種の健康な国であるように思われ そらくデザートとして彼らの前に無花果やえんどう豆やそる。しかしなお、君が望むなら、また炎症にかかっている ら豆をおくだろう、また、てんにんの実や槲の実を火で彼国をもわれわれは観察してみよう。それには何の妨げもな 実際、どうも、或る人々には、以上のものも、またその らは炒って、それを肴に適度に酒をのむだろう。このよう にして、当然なことながら、平和に健康に生活をしなが暮らしむきも満足がいかなくて、臥床やテーブルやその他 ら、遂には老人になって、子供たちに他のそのような生活の家具、それからまた肴や香油や香料や芸妓や菓子やその ようないろいろさまざまなものが、さらに入用となるよう を譲り渡すだろう と、グラウコンは一言った、「しかし、ソクラテスさん、 だからね。だからまたわれわれが最初にあげたところのも もしあなたが豚どもの国をお作りになるとしたら、それらの、すなわち、家や衣服や靴などだけをもはや必要なもの だとしてはならない、むしろ絵画も色模様も狩り出さなけ のもの以外に何を豚どもに食べさせられるでしようか」 「うん、すると、グラウコン君、あの人々にはどうしてやればならないし、また黄金や象牙なども獲得しなければな るまい。そうじゃないか」 れというのかね」と私は言った。 「そうです」と彼は言った。 「一般に習慣となっていることをです、つまり、惨めでな 「するとまた国を一そう大きなものにしなければならない い生活をしようとする人たちは臥床の上に横たわり、テー ことになる。というのはあの健康な国はもはや充分なもの プルで食事をし、現在の人々のと同じような肴やデザート ではなくて、むしろそうなると、もはや是非とも必要なも 家を持つべきだと私は思いますーと彼は言った。 「もうよい、わか 0 たよ , と私は言 0 た、「どうも、われののために国にあるのではないものどもの堆積と多数とで 国われの考察しているのは、ただの国だけではなく、また贅も「て国をみたさなければならなくなるからね、例えばあ らゆる種類の猟師や模倣家ーーこのうち多くの人々は形態 沢な国がどうして生じてくるか、ということのようだ。と と色彩に関係を持つものだ、また他の多くの人々は音楽に ころで、それを考察するのもおそらく悪くはないだろう。 、 0

4. 世界の大思想1 プラトン

それは、 「同じようなものです」と彼は言った。 かし今はあの考察を仕上げることにしよう、 「それではまた、正しい人間と正しい国とは、ちょうどそ 正義をもっているもののうちの何かより大きなものにおい て、われわれは一人の人間においてよりも、さきに観察をの正義という概念に関する限り、少しも違わないで、同じト ようであろう」 企てたなら、彼において、それがどのようなものであるか 「同じようです」と彼は言った。 六〕のだがね。そ を認め易くなるだろうと考えて企てた してわれわれには、この大きいものというのは国であると 「しかるにだ、国は、そのうちにある本性の違った三つの 思われたのだ。そういう次第で、できる限り一番善い国を階級がそれぞれ自分のことをなした時に、正しいものであ 建設しようとした、善い国には正義があるだろう、と充分るが、しかしまた、この同じ三つの階級の或る別々の情緒 知っていたのでね。だからそこでわれわれに明らかにされや習性によって、あるいは節制のあるものである、あるい たものを、一人の人間に関係させてみよう、そしてもしそは勇気のあるものである、あるいは知恵のあるものである れが正義だと認められれば、それで結構だろう。だがもし と思われたのだ」 一人の人間のうちに、何か別なものが現われてくるなら、 「ええ、本当に」と彼は言った。 再びわれわれは国へ戻っていって、吟味するだろう。そし 「だからまた、一人の人間にしても、ねえ君、そういう風 て両者を互いに並べて眺め合わせたり、擦り合わせたりし に、彼が自分の魂のうちにその同じ部門を持ち、国のと同 ているうちに、おそらく、 いわば、火打石からのように、じ情緒のために当然国と同じ名前で呼ばれている筈だと、。 正義を輝き出させることができるだろう。そしてそれが明われわれは思うだろうー らかなものになったら、しつかりと自分自身のものにする 「ええ、全くそう思わざるを得ません」と彼は言った。 「驚いたね、君」と私は言った、「またも魂に関する下ら ぬ考察に陥ったよ、それがその三つの部門を自分のうちに 「ええ、あなたの仰っしやることは道にかなっています」 と彼は言った、「われわれはそうしなければなりません」 持っているか、持っていないかなんていう 「ところで」と私は言った、「大きなものであれ、小さな 「下らぬ、とは私には思われません」と彼は言った、「だ って、ソクラテスさん、立派なものは難しいというあの諺 ものであれ、われわれが同じ名前で呼ぶことのできるもの は、同じ名前で呼ばれているその限りでは、同じようなも は多分本当でしようからね」 のでないか、同じようなものであるか」 「それはそのようた」と私は言った、「それに、ねえ、グ

5. 世界の大思想1 プラトン

うちに、しかも、またわれわれのうちで非常に節度がある しないのだ。つまり、一口で言えば、無思慮や無恥におい と思われている或る人々のうちにさえ、ある、ということ て欠けるところなし、なのさ」 だ。そしてそれのあることは夢において明らかにされるの 「それは全く本当のことです」と彼は言った。 だ。ともかく、私の言っていることが尤もだと思われる 「しかるに、私は思うが、人がその身は健康で、その心は 冷静であ「て、そして自分の思惟的部分を呼びさまし、立か、そしてそれに賛成であるかどうか、考えてみてくれ給 派な言論や考察で以てご馳走をしてやり、その上で自己反え」 「ええ、賛成ですとも」 省をやって寝に就くが、しかし欲望的部分は眠らされて、 最善の部分に、それが喜んだり悲しんだりして邪魔をかけ ニ「ところで、民主側的な人間がどのようなものであると ず、むしろその最善の部分がただ自分一人だけで浄らかな あこが われわれは言「た八六一〕か、想い出してくれ給え。 ものとして考察し、あるいは何かしら憧憬れ求め、あるい それが過去のものであれ、 そしてそういう人間になったのは、思うに、けちん坊で、 はそれの知らないものを、 ただ生産的な欲望だけを尊重して、必要な欲望ではなく 現在のものであれ、未来のものであれーー・感することを許 て、楽しみやおしゃれのために生する欲望は軽蔑する父親 すように、その欲望的部分に不足を覚えさせることもせ ず、とい 0 てまた満足させることもせす、また同様に気概の許で若い頃から育てられて、であ 0 た。そうじゃない 的部分をも穏かにし、そして誰かに対して怒りを発して、 こころ 「はい 情が乱れたままで眠ることなく、なしろこの二つの部分は 静かにさせるが、思慮の生まれついている第一二の部分は動「しかしも「と利ロで、われわれがさっき述べた欲望でい つばいになっている男たちと交際して、父親のけちん坊に かして、その上で休む時は、君は知っていようが、いつも このような場合は一番多く真理に触れて、そしてその時に対する憎悪から、ありとあらゆる悪事とその男たちのやく ざ渡世とへつつ走るが、しかしその堕落させる連中よりは 家は夢に現われてくる像は一番違法的ではないのだ」 優れた本性を持っているので、両方の側へひつばられて、 「ええ、たしかに全くそうだと思います」と彼は言った。 国 「ところで、つい調子にの「て余計なことまでしゃべ 0 た両方の生活様式の真中辺に落ちついて、彼の考えでは、適 しかし私の知ろうと望んでいるのはただこの点だ、つ度にそれそれのものを享楽しながら自由人らしくなくもな 7 、刀 まり、或る種の恐ろしくて、荒々しい、無法な欲望が皆のければ、違法でもない生活を送るのだ、寡頭制的な人間か

6. 世界の大思想1 プラトン

ん、敵であることになりますが、正しい人は友人であるこ されたカであるということ 〕ようでないということは、わかり とになります」 ます。しかしまた正しい人々が、不正な人々より善く生活 「言論のご馳走を堪能し給え、ご遠慮なく。私としては君して、より幸福であるかどうか これは後で考察するこ・ に反対するつもりはないんだからね、ここにいる人々に嫌とを提案した問題震駟巴ですが、それを考察しなければ がられることのないようにさ」と彼は言った。 なりません。ところで、われわれがさきに言ったことか 「それでは、さあ」と私は言った、「どうか、ご馳走の残ら、私の思うところでは、今でも彼らはそうだとみえま りをも出して下さいよ、今と同じように、お答えになっす。しかしそれでも、なお一そうよく考察しなければなり ません。というのはこの言論は有りふれたことにではなく て。ところで、正しいん々の方はより知恵もあり、またよ り善くもあり、また事をなす力も一そうあるが、しかし不て、どんな仕方で生きなければならないかということに、 正な人々はともどもに事をなすことさえできないというこ関しているのですから」 とが明らかですーーーしかしまたわれわれは実際、或る人々。 「それじゃ、考察し給え」と彼は言った。 ・、不正なものでありながら、ともども共同してなにかをか 「考察します」と私は言った、「で、私に仰っしやって下 って強力に為したと主張しますが、それは本当のことを言 さい。あなたには何か馬の仕事があると思われますか」 っているのではありません、というのはもしたしかに彼ら 「そうだ」 が不正であるなら、お互いに手を控えてなんか、いやしない 「では、馬にせよ、その他の何ものにせよ、人がただそれ でしようから、いや、明らかに彼らのうちには、一種の正のみを用いてなすか、あるいはそれを用いて最も善くなす 義があって、それが彼らをしてお互いに対しては言わずも かすることがあれば、それをそれの仕事だとなさるでしょ がな、また同時に彼らが襲った人々に対してまでも、不正をうか」 働かせなかったのです。また彼らのなしたことは正義によ 「わからないね」と彼は言った。 ってなしたのです、しかし不正なことを目ざして突進した 「いや、こうです。眼より他に、それを以てあなたが見る のは、不正義によってであって、彼らが半端やくざだった ことのできるものが何かありますか」 からです、何故かと言うと、全く悪い者で完全に不正な者「もちろん、ない」 なら、また為すことも完全に不可能な者だからですーーと 「しかしどうです。耳より他のもので、聞くことができま もかくこれらのことがこうであって、あなたが最初に主張すか」

7. 世界の大思想1 プラトン

160 げることができて、私にと「て残るところは、可能であるを先ずさきに、君と一緒に考察し、その後でさきのを考察 力ないかの論だと思っていたんだよ」と私は言った。 してみよう、もし君が許してくれるなら」と私は言った。 「しかし逃げるところが見つか 0 たのです、ともかく両方「ええ、許しますよ。考察して下さい」と彼は言った。 について説明して下さい」と彼は言った。 「じゃ、やるが、苟も支配者たちがこの支配者という名前 「その罰を私は受けなけりゃならないね。だが、これだけに値するものであるべきものなら、またこれらの者の補助 は私の意を叶えて欲しいよ。つまり、私が一つ、祭日のお者たちも同様であるべきなら、後者は命じられたことをし 休みをするのを許していただきたい、ちょうど精神の怠惰 ようと望み、前者は或ることについては自ら法律に従い な者たちが、ただ一人きりで歩く時に、自分で自分を饗応またわれわれが彼らに委したことについては、法律の精神 するのを常とするようにね。すなわち、このような人々はを体して命令することを望むと思うよ」と私は言った。 「そのようです」と彼は言った。 彼らの求めているものの何かがどんな仕方で可能であるか を見出す前に、それが可能であるかないかについて、熟考「それでは、立法者たる君は、男たちを選びだしたよう することによって疲れることのないために、その問題は抛に、また女たちも、できる限り本性の同じようなのを、選 り出し、彼らの望んでいるものは与えられたものとして、 び出して、彼らに妻せるだろう。これらの人々は家や公共 そこにあると仮定し、すぐさまその残りの処置にとりかか の共同食事を有っていて、誰一人個人的にこのようなもの って、それが実現したら、どのようなことをしようかと、 は何一つ所有していないから、従って同じところで過すこ 一々数え上げながら悦に入る、そしてただでさえ怠惰な魂とになるだろう、そして体操においても、その他の日常生 を一そう怠惰にするものである。ところで、私自身も、も活においても、同じところで交わり合っているから、生ま う、くつろぎたい、そしてあのことがどうして可能であるれついた必然性に導かれてお互いに関係することになるだ か、ということの方は投げ出して、また後で考察したい、 ろう。それとも、君には私の言っているのが必然的なこと そして今は可能であると仮定して、もし君が私に許してく だとは、思われないか」と私は言った。 れるなら、支配者たちはそれができるとしたら、どういう 「それは少なくとも幾何学的必然性によってではなくて、 風に処置するだろうかということを、またそれが実行され恋愛的必然性によ「てなのです。しかしこの方が大衆を説 たら、国にと 0 ても、守護者たちにと「ても、何にも優 0 得して強制する点では、さきのより強力であるようです」 て有益であろうということを考察しよう。一つ、それの方と彼は言った。 めあわ

8. 世界の大思想1 プラトン

「それじゃ、親しいアディマントス君」と私は言った、 「いや、断じてそうでないということは、ありません」と 彼は言った。 「それを絶対に投げ出しちゃいけないね、たといその考察 「だが、しかし愛学的であることと愛知的であることと が一そう長いものであっても」 は、同じだね」と私は言った。 「ええ、たしかにいけません」 「たしかに同じです」と彼は言った。 「では、来た、一つ、あたかもわれわれが物語を語って、 「それでは恐れるところなく、われわれはまた人間におい それで閑をつぶす者のように、言論の上でその人々を教育 ても、もし人が身内の知った人々に対しては温和であろう。してみることにしよう」 とするなら、生まれつき彼は愛知的で、また愛学的でなけ「ええ、そうしなけれはなりません」 ればならないとしよう」 「そうしましようーと彼は言った。 宅「では、その教育は何であるか。それとも多くの時間 「では、国の優秀な守護者になろうとする者はその本性が によって発見された教育よりも優れたものを発見するのは 愛知的で、気概があって、速くて、強力であるべきだ」 困難であるか。しかし思うに、身体のための教育は体操術 「たしかにそうです」と彼は言った。 であり、魂のための教育は音楽であろう」 「では彼は以上のような性質のものであるだろう。が、し 「たしかにそうです」 かし彼はどのような仕方で、いったい、養育され、教育さる 「ところで教育は体操術より先に、音楽術によって始むべ べきであろうか。そしてそのことを考察するなら、われわきではないか」 れがすべてのことを考察するに当たって目的としたこと、 「もちろんですー すなわち正義と不正義とはどんな仕方で国の中に生ずるか 「しかし音楽のうちに、君は文学を含めるかね、それと ということを、よく見ることに対して、われわれにはたしても ? ・ーと私は言った。 それは何か役立つかね。ーーと聞くのは、充分に議論をつく 「含めます」 こ及んだりしないためなんだよ」 さなかったり、余分な議論冫 「しかし文学には一一種類あって、一つは真実のもので、他 すると、グラウコンの兄弟が言った、「そうです、少な の一つは偽りのものだね」 くとも私はその考察はそのことのために役立つものと予期「そうです」 します」 「しかしその両方の文学において教育すべきだが、 先す初

9. 世界の大思想1 プラトン

に生き、それに育てられ、こうして陣痛がやむが、しかし 言ったので、その誹謗の原因を詳しく考察しながら、今こ の問題に、つまり、 、ったい何故多くの人々は悪いかとい それまではやまない、とね」 う問題にやってきたのだ、そしてちょうどその問題のため 「それはもうこの上もなく適切です」と彼は言った。 に、再び真の愛知者たちの本性を取り上げて、やななく定 「それなら、どうだ。この人は偽りを愛する心をいくらか でも持っているだろうか、それとも正反対に憎むだろう義せざるを得なかったのだ」 「それはそうです」と彼は言った。 「憎みます」と彼は言った。 「それでは、真実が指導者に立つなら、悪者たちの合唱団六「それではその本性の堕落についてーと私は言った、 はその後に従わないだろう、とわれわれは主張すると思う 「君の言う通り、人々が邪悪の者とまでではないが、しか し無用な者と呼んでいる極く少数の人々はそれを逃 「ええ、もちろんです」 れるけれど、多くの人々においてはどういう風にその本性 「しかし健全で正しい性格は従うと、そしてそれにはまた が亡びていくかを観察しなければならないね。そしてその 節制もついていく、と」 後で今度はその本性を真似、居坐ってそれの仕事に携わる 「仰っしやる通りですーと彼は言った。 本性を観察しなければならない。というのは魂のこのよう な本性が、自分に釣合わない、大きすぎる仕事へやってき 「それじゃ、また愛知的本性の合唱団の残りのものをも、 再び最初からそれの必要なことを示しながら、整列させるて、多くの仕方で、へまをしでかし、あらゆる仕方で、そ 必要がどうしてあろうか。だって君は、勇気、大度量、物してすべての人の眼の前で君の言っているような評判を愛 学びのよいこと、記憶がこれらの団員に属するということ知にくつつけることになったのだからね」 にな 0 たのを凸憶えているだろうからね。そして君「しかしあなたが堕落と仰 0 しゃ 0 ているのは、どんなも は、ロをさしはさんで、誰でも皆われわれの言うことに同のですか」と彼は言った。 意せざるを得ないようにされるが、しかし言論を去り、そ「私が君のために」と私は言った、「努めて、できるなら、・ の言論が問題としている当の人物に着目して、彼らのうちそれを説明してやろう。ところで私は思うが、この点はす べての人がわれわれに同意するだろう、そのような本性、 或る人々は無用な男であり、その多くの人々はどんな悪に もぬかりのない悪人であるのを見る、と主張するだろうとつまり、もし完全な愛知者になろうとするなら、持つよう

10. 世界の大思想1 プラトン

295 国家 「どのような男ですか」 て、奴隷たちを恐れないね」 「それは」と私は言った、「僣主的な者であって、私人と 「いったい何を恐れるでしようか」 しての生活を送らず、不運にも何らかの廻り合わせで僣主 「何もないよ」と私は言った、「しかしその原因がわかる になるような羽目になった者のことだよ」 かね」 「私はさきに言われたことから推測して、あなたの仰っし 「はい、それは国全体が一般人の個々の者を助けるからで すよ」 やることは本当だと思います」と彼は言った。 「そりやそうだ」と私は言った、「しかしこのようなこと 「うん、それで結構だ」と私は言った、「しかしどうだ。。 に関しては思うというのではいけない、むしろ、このよう もし神々のうちの誰方かが、五十人あるいは、またそれよ な二人を言論によって充分によく考察しなければならない りもっとたくさんの奴隷を持っている男を誰か一人、彼自 よ。たしかに考察は最も重大なこと、すなわち、善い生活身と妻と子供たちとを、その他の財産や奴隷たちと一緒に と悪い生活とに関するものなのだからね」 国から引き上げて、自由人たちの誰一人彼を助けに来そう 「全く仰せの通りです」と彼は言った。 もない荒野のうちにお置きになるなら、彼は彼自身と子供 たちと妻とについて、奴隷たちによって殺されはしないか 「それでは、はたして私の言うことが尤もであるかどう と、どのような、またどれほどの恐布に陥るだろうと思う か、考察してみ給え。こういうことについて考察しようと するなら、次の点から考えてみなければならない、と私にかね」 は思われるのだから」 「それは全くの恐怖にだ、と私は思いますよ」と彼は言っ 「どんな点から、ですか」 「国々においてたくさんの奴隷を所有している金持ちの一 「そうなると、もう、彼はほかならぬその奴隷たちの幾人四 般人の個々の者からだよ。というのはこの連中は少なくと かのご機嫌をとったり、多くのことを約東したり、またそ もこの点、すなわち多数のものを支配しているという点で の必要もないのに、自由にしたりしなければならないこと は、僣主たちにほぼ似ているのだからね。尤も僣主の支配になり、何のことはない、自分自身の方が奴僕たちのおべ する人数は格段だがね」 つか使いということになるのではなかろうか」 「ええ、たしかに格段です」 「それは彼にとって全く必然なことです」と彼は言った、 「ところで、君は知っていようが、この連中は安心してい 「でなければ亡びなければなりません」