グレート・ブリテン - みる会図書館


検索対象: 世界の大思想14 スミス 国富論<上>
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1. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

農園と貿易すること、あるいはグレート・・フリテンの沿岸貿られたのである。 易に従事することを、船と積荷の没収という刑罰によって禁 第四に、すべての種類の塩魚、鯨ひげ、鯨ひげ製品、鯨曲、 止される。 鯨脂は、プリテンの船で捕獲され加工貯蔵されたものでなけ 第二に、ひじように多様な、もッともかさばる輸入品目れば、グレート・ブリテンに輸入されたときに、一一重の外国 しまでもなおヨーロッ を、グレート・ブリテンにもってくるのは、上述のような船人税を課せられる。オランダ人は、、 によってか、それらの財貨が生産される国の船、あるいは所において、諸外国民への魚の供給をくわだてる主要な漁業者 有者、船長、四分の三の船員がその特定の国のものである船であるように、その当時においてはそういう唯一の漁業者で によってしか、可能ではない。そして、このあとの種類の船あった。この規制によって、かれらがグレート・ブリテンに で輸入されたときでさえ、それらは一一重の外国人税を課せら 供給することにたいして、たいへんおもい負担が課せられた のである。 れる。もし他のどこかの国の船で輸入されれば、刑罰は船と 積荷の没収である。この条例がつくられたとき、オランダ人 航海条例がつくられたとき、イングランドとホラントと は、いまでもそうであるように、ヨーロ " ノバのおおきな仲継は、じっさいに戦争をしていたのではないとはいえ、両国民 貿易業者であった。そして、この規制によってかれらはまっ のあいだにはもっともはげしい敵意が存在した。それは、こ たく、グレート・ブリテンにたいする仲継貿易業者であるこ の条例をはじめて構想した長期議会の統治時代にはじまった とから、あるいは他のどのヨーロツ。 ( の国の財貨をわれわれのであり、そのごまもなく、護民官およびチャールズ二世の 系に輸入することからも、排除されたのである。 統治時代の、オランダ戦争として爆発した。だから、この有 第三に、ひじように多様な、もっともかさばる輸入品目名な条例の諸規制のうちのあるものが、国民的敵意からでた の ということは、ありえないわけではない。そうはいうものの、 が、それらが生産される国いがいのどの国からも、ブリテン の船によってさえ、船と積荷の没収という刑罰で、輸入を禁それらは、もっとも思慮ぶかい知恵によってすべてが命令さ 治 止される。この規制もまた、おそらくオランダ人にたいしれたかのように、賢明なものである。その特定のときに、国 四て、意図されたものであろう。当時、ホラントは、いまとお民的敵意は、もっとも思慮ぶかい知恵が勧告したであろうの なじように、あらゆるヨーロッパの財貨の大集散地であっ と、まさにおなじ目標をめざしたのであって、その目標と は、イングランドの安全をおびやかしうる唯一の海軍力であ 芻た。そしてこの規制によって、ブリテンの船はホラントで、 ヨーロツ。ハの他のどの国の財貨をつみこむことも、さまたけった、ホラントの海軍力を減少させることである。 ( 四 )

2. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

316 にちがいない。だが、各国の経済政策の大目的は、その国の の可航河川の岸が、勤労にとって有利な場所であるのは、そ 富と力を増大させることである。したがってそれは、消費用ういう余剰が輸出されて、そこでそれよりも需要される他の 外国商業を国内商業に優先させたりそれ以上に奨励すべきでものと交換されるのを、容易にするという理由だけによるの はないし、また仲継商業を一一つのどちらに優先させることもである。 それ以上に奨励することもしてはならない。それは、その二 このようにして国内の勤労の余剰生産物で購入される外国 つの水路のどちらにも、その国の資本のうちで自発的に自然の財貨が、国内市場の需要をこえるならば、それらの余剰部 にながれこむであろうよりもおおくの部分を、強制も誘引も分は、ふたたび国外におくられて、国内でそれ以上に需要さ すべきではない。 れるあるものと、交換されなければならない、約九万六千樽 のたばこが、年々ヴァージニアとメリランドで、ブリテンの しかしながら、商業のそれらのさまざまな部門のどれで も、なんの抑制も暴力もなしにものごとのなりゆきが自然に勤労の余剰生産物の一部によって、購入される。けれども、 もたらしたものであれば、有利であるだけではなく、必要でグレート・ブリテンの需要は、おそらく一万四千樽以上を必 あり不可欠なのである。 要としない。したがって、もしのこりの八万二千樽が国外に インダストリ 勤労のなにか特定の部門の生産物が、その国の需要がもおくられて、国内でそれより需要されるあるものと交換され とめるところをこえるばあいは、余剰は国外におくりだされることが、できなかったならば、それの輸入はただちに消減 て、国内で需要されているあるものと、交換されなければなするにちがいなく、それとともに、その八万二千樽を年々購 らない。そういう輸出がなければ、その国の生産的労働の一入するための財貨を調整するのに、現在使用されている、グ ブリテンの住民のすべての生産的労働も、消減する 9 部分は、消減するにちがいないし、それの年々の生産物の価レート・ 値は減少するにちがいない。グレート・ ・フリテンの土地と労グレート・ブリテンの土地と労働の生産物の一部である、そ 働は一般に、国内市場の需要がもとめるよりもおおくの、穀れらの財貨は、国内に市場をもたないし、国外にもっていた 物、毛織物、金物を生産する。だから、それらのうちの余剰市場をうばわれたので、生産されなくなるにちがいない。そ 部分は、国外におくられて、国内で需要されるものと、交換れであるから、もっとも迂回的な消費用外国商業も、若干の されなければならない。 ばあいには、その国の生産的労働とそれの年々の生産物の価 この余剰が、それを生産する労働と 費用をつぐなうにたりる価値を、獲得しうるのはただ、そう値とを維持するために、もっとも直接的なものとおなじく必 いう輸出によってだけなのである。海岸の近隣地方やすべて要でありうるのである。

3. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

リテンとのあいだの、みじかい海路は、アイアランド家畜のしたと、いわれている。しかし、もし輸出業者が、その商売 輸入を、比較的容易にする。しかし、さいきん一定期間だけをつづけることにいくらかでもおおきな利益を感じたとすれ ゆるされた、アイアランド家畜の自由な輸入が、永久化されば、法律がかれらの味方であったばあいには、かれらはよう いに、この暴徒の反対を克服しえたはずである。 るとしても、グレート・ブリテンの牧畜業者の利益に、とる そのうえ、飼育し肥育する地方は、つねに、高度に改良さ にたりるほどの効果をあたえることはできないであろう。グ レト・プリテンのうちでアイアランド海に接する諸部分れているにちがいないが、それに反して、繁殖させる地方 は、一般に耕作されていない。やせた家畜の高価格は、耕作 は、すべて牧畜地方である。アイアランドの家畜が、それら の地方での用途のために輸入されることは、けっしてありえされていない土地の価値を増加させることによって、改良を 阻止するための奨励金ににている。全体にわたって高度に改 ないであろうし、それらがそのほんらいの市場に到着しうる までには、そういうひじように広大な地方をとおって、すく良されたどんな国にとっても、そのやせた家畜を、繁殖させ なからぬ費用と不便をともなって、かりたてられていかなけるよりも輸入する方が、有利であろう。ホラント州は、した がって、現在ではこの原則にしたがっているといわれる。ス ればならないのである。ふとった家畜は、そのようにとおく までかりたてられえないであろう。だから、やせた家畜だけコットランド、ウェールズ、ノーサン・ハランドの山地はたし かに、あまり改良することができない地方であるし、自然に : 、輸入されうるであろうし、そういう輸入は、飼育あるい は肥育する地方の利益を妨害しえす、繁殖させる地方の利益よって、グレート・プリテンの家畜繁殖地方とさだめられて いるらしい。外国家畜のもっとも自由な輸人でさえ、それら だけを妨害しうるであろう。前の地方にとっては、やせた家 畜の価格をひきさげることによって、それはむしろ有利であの繁殖地方が、王国ののこりの地方の人口増加と改良を利用 して利益をえるのを、すなわち、それらの価格をとほうもな ろう。アイアランド家畜の輸入がゆるされていらい、輸入さ いたかさにひきあげることと、その国のもっと改良され耕作 れたのが少数であることは、やせた家畜がひきつづきなおい リアル・タックス い価格でうれていることとあわせて、グレート・ブリテンのされたすべての部分に実質的な税を課することを、阻止する いがいの効果をもちえないであろう。 家畜繁殖地方でさえ、アイアランド家畜の自由な輸入によっ て、おおきな影響をけっしてうけそうもないことを、証明す おなじようにして、塩づけ食料品のもっとも自由な輸入で るようにおもわれる。たしかにアイアランドの一般人民は、 さえも、生きた家畜のそれとおなじくわずかな効果しか、グ かれらの家畜の輸出にたいして、ときには暴力をもって反対レート・ブリテンの牧畜業者の利益にたいして、あたえるこ

4. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

一一年の安価な年の介在にもかかわらず、総平均より相当たか便宜品の実質的な量は、現世紀の過程において、かなり増加 かったのである。もし前者が、総平均をしたまわったそのおした。それの貨幣価格の上昇は、ヨーロツ。 ( の一般市場での 銀の価値の、いかなる減少のけつかでもなくて、グレート・ おきさが、後者が、それをうわまわったほどでないならば、 われわれはおそらくそのことを、奨励金に帰すべきであろブリテンという個別市場における労働の実質価格が、、その国 う。この変化はあきらかに、銀の価値のなんらかの変化のせ特有の幸福な事情によ「て、上昇したことのけ「かであ「た いにするには、急激すぎたのであ 0 て、銀の価値の変化はっとおもわれる。 アメリカがさいしょに発見されてからしばらくのあいだ、 ねに、ゆるやかで漸次的なのである。けつかの急激さは、急 銀はひきつづきその従来の価格で、あるいはそれをあまりし 激に作用しうる原因によってのみ、説明することができる。 たまわらないで、うられたであろう。鉱業利潤は、しばらく それはすなわち、季節の偶然的な変動である。 のあいだひじようにおおきく、その自然率よりずっとたかか たしかに、グレート・・フリテンにおける労働の貨幣価格は、 ったであろう。その金属をヨーロッパに輸入した人々は、し 現世紀の過程のあいだに上昇した。しかしながらこれは、ヨ かしながら、まもなく、年々の輸入の全体をこの高価格で処 ーロッパ市場における銀の価値のなんらかの減少の、けつか 分することは不可能であると、しったであろう。銀はしだい であるよりも、グレート・ブリテンにおける労働需要の増加 ・に、ますます少量の財貨と交換されるようになったであろ によるもののようにおもわれる。それは、この国のおおきな、 ほとんど普遍的な、繁栄からきているのである。まったくそう。その価格はしだいに、ますますひくく下落し、ついにはそ の自然価格、すなわちそれを鉱山から市場にもってくるため フランスでは、労働の れと同様に繁栄している国ではない、 に支はらわなければならない、労働の賃銀と資財の利潤と土 貨幣価格は、前世紀なかばいらい、穀物の平均貨幣価格とと もに、しだいに下落するものと、いわれてきた。前世紀にお地の地代を、それらの自然率にしたがって支はらうのにちょ いても現世紀においてもともに、ふつうの労働の日給は、そうど十分なだけにまで、低下したであろう。ベルーの銀山の こでは、ほ。ほ一様に、小麦一セティエの平均価格の約一一十分大部分においては、総生産の五分の一にたっするエス。 ( ャ国王の税が、すでにのべられたとおり、土地の全地代をくい の一であったといわれる。セティエとは、四ウインチェスタ . ブッシェルよりややおおくをふくむ、尺度である。すで つぶしている。この税は、もとは二分の一であって、まもな ( ニ五 ) にしめされたところだが、グレート・ ・フリテンでは、労働のく三分の一に低下し、それから五分の一になり、その率でな 実質的報酬、すなわち労働者にあたえられる生活の必需品とおつづいているのである。ベルーの銀山の大部分では、これ ( 二三 ) ( 二四 )

5. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

ば返還された。 奨励金は、あるはじめられたばかりの製造業か、他の種の 第二章国内で生産されうるような、財 産業で特別の支持にあたいすると想定されたものかを、奨励 貨の諸外国からの輸入にたいす するためにあたえられた。 有利な通商条約によって、ある外国において、その国の財 る、諸抑制について 貨と商人のために、他の国々のそれらにたいしてゆるされた ところをこえる、特別の特権がえられた。 高関税あるいは絶対的禁止をもって、国内で生産されうる とおい国々に植民地を建設することによって、特別の特権ような財貨の、諸外国からの輸入を抑制することによって、 だけなく、独占が、それらを建設した国の財貨と商人のため国内市場の独占が、それらを生産するのに使用される国内産 に、しばしばえられた。 業にたいして、おおかれすくなかれ確保される。こうして、 輸人にたいする上述の二種類の抑制は、輸出にたいするこ生きた家畜か塩づけ食料品の、諸外国からの輸人の禁止は、 れら四つの奨励とともに、商業的な体系が、どこの国であグレート・ブリテンの牧畜業者にたいして、食肉についての れ、貿易差額をその国に有利に転化させることによって、金国内市場の独占が確保される。穀物輸人にたいする高関税 . て 銀の量を増大させることを目ざした、六つの主要な手段をな は、一応の豊富さのときには禁止になるのであり、その商品 っ の栽培者に同様な利点をあたえる。外国の毛織物の輸人禁止 すものである。わたくしはそれらのおのおのを、個別的な章 系 は、毛織物製造業者にとって、ひとしく有利である。絹織物 淋で考察するであろう。そして、それらが貨幣をその国にもた らすと想定される傾向について、あまりこれ以上の注意をは製造業は、外国の原料だけを使用するのであるが、さいきん 学 済らうことなく、わたくしは主として、それらのおのおのがそ同一の利点を獲得した。亜麻織物製造業は、まだそれを獲得 . 、しかしそれへむかっておおいにすすみつつ 治の国の産業の年々の生産物にあたえる諸効果が、どんなものしてはいないが でありそうかを、検討するであろう。それらが、この年々のある。おおくの他の種類の製造業者は、おなじゃりかたで、 。クレート・ ブリテンのなかで、かれらの同国人たちにたいす 生産物の価値を、増大させる傾向があるか減少させる傾向が る、まったくの独占、あるいはきわめてそれにちかいもの あるかにおうじて、それらはあきらかに、その国の実質的な を、獲得してしまった。 3 富と収入を増大または減少させる、傾向があるにちがいない のである。 国内市場のこの独占が、しばしば、それを享受する特定の

6. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

毛織物製造業のオランダ人企業家は、同種の事業場がその市大さをわすれて、穀物と食肉をかれらの同国人に供給する排 から三十リーグいないに設立されてはならないと、契約でさ他的特権を要求するまでになったのである。かれらはおそら だめた。反対に、農業者と地方郷士は一般に、かれらの隣人 く、かれらがその実例にしたがった人々にくらべて、貿易の たちの農場と領地の耕作と改良を、さまたげるよりもむしろ自由によってかれらの利益に影響をうけることが、どんなに 促進しようという気持をもっている。かれらは、製造業者のすくなくしかありえないであろうかを、考察するのに時間を 大部分のように秘密をもたず、一般にむしろ、自分たちが有かけなかっただろう。 利であるとおもったあたらしいやりかたはなんでも、隣人た 外国の穀物と家畜の輸人を、永久的な法律によって禁止す ちにったえ、できるかぎり普及させることを、愛好する。老るのは、じっさいは、その国の人口と勤労が、どんなときに 練なカトーは、つぎのようにいっている。正当な利益はもっ おいても、それ自体の土地の粗生産物が維持しうるところ とも確実であって、ねたまれることがもっともすくない。おを、こえないようにと法定することなのである。 なじ職業に従事するものは、悪意をもっことがもっともすく しかしながら、国内産業の奨励のために外国のそれにいく ない。地方の郷士と農業者は、農村のさまざまな部分に散在らかの負担を課することが、一般に有利であろうというばあ しているので、商人や製造業者のように、容易に団結するこ いが、ふたつあるとおもわれる。 とができない。後者は都会にあつまっていて、かれらのあい 第一は、ある特定の種類の産業が、その国の防衛にとって コーポレーション だで支配的な排他的同業組合精神になれているので、しぜん必要であるばあいである。たとえば、グレート・、、フリテンの に、かれらのすべての同国人にたいして、かれらが一般に自防衛は、その船員と船舶の数に依存するところがきわめてお 分たちのそれそれの都会の住民たちにたいして所有しているおきい。したがって、航海条例は、きわめて適切にも、グレ のと、おなじ排他的特権を獲得しようと努力する。それだか ート・ブリテンの船員と船舶に、あるばあいには諸外国の船 らかれらは、自分たちに国内市場の独占を確保してくれるよ 舶にたいする絶対的な禁止により、他のばあいにはそれらに うな、外国の財貨にたいする輸入抑制の、ほんらいの発明者たいするおもい負担により、かれら自身の国の貿易の独占 であったとおもわれるのである。おそらくかれらのまねをしを、あたえるようにつとめている。この条例の主要な構成 て、また、自分たちを抑圧したがっているとおもわれる人々 は、つぎのとおりである。 と同一水準にたとうとして、グレート・ ブリテンの地方の郷 第一に、所有者、船長および四分の三の船員が、ブリテン 士と農業者は、自分たちの地位にとって自然なものである寛の臣民でない、すべての船は、プリテンの植民地および植民

7. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

ある。他方、労働貧民のとぼしい生計は、ものごとが静止し しせまった生計についてまったくわれわれに依存するものと ていることの、そしてかれらの飢餓状態は、ものごとが急速か は、このようにとりあっかわれはしないであろう。かれの に後退していることの、自然の徴候である。 日々の生計は、かれの日々の必要に対応させられるであろう。 現在では、グレート・ 、、フリテンの労働の賃銀は、あきらか 第二に、労働の賃銀は、グレート・ブリテンでは、食料品 とこにおいて に、労働者が家族を扶養しうるのにちょうど必要なところよ価格とともに動揺することがない。食料品は、。 りも、おおいようにおもわれる。この点についてわれわれが も、年々に変動し、しばしば月々に変動する。しかし、おお 満足するためには、このことを可能にする最低額はどんなも くのところで、労働の貨幣価格は、ときには半世紀にわたっ のでありうるかについて、なにも、たいくつな、あるいはうてずっと、一貫して同一のままである。だから、もしこれら たがわしい計算に、はいりこむ必要はないであろう。労働の のところで、労働貧民が、食料品の高価な年にその家族を維 賃銀がこの国のどこにおいても、ふつうの人類愛と一致する持しうるならば、かれらは、かなり豊富なときには、らくで この最低率によって規制されてはいないということの、おおあるにちがいないし、特にやすいときには、ゆたかであるに くの明白な徴候が存在する。 ちがいない。さいきん十年間の食料品の高価格は、この王国 第一に、グレート・ブリテンのほとんどどの部分でも、最のおおくの部分で、労働の貨幣価格の、いくらかでもめだっ 低の種類の労働においてさえも、夏の賃銀と冬の賃銀との区ほどの上昇を、ともなわなかった。ある部分では、たしかに 別がある。夏の賃銀は、つねに最高である。しかし、燃料費がそうであったが、おそらく、食料品価格の増大よりも、労働 よけいにかかるために、一家族の生活維持費は、冬にもっと需要の増大による方が、おおきいであろう。 もおおくかかる。したがって、賃銀はこの経費が最低のとき 第三に、食料品価格は労働の賃銀よりも、年による変動が に最高なのだから、それが、この経費に必要なところによっ おおきいが、他方では、労働の賃銀は食料品価格よりも、と て規制されずに、しごとの量と想定価値によって規制されて ころによる変動がおおきし 、。パンと食肉の価格は、一般に、 いることは、明白だとおもわれる。労働者は、かれの冬の費連合王国の大部分にわたって、同一またはそれにきわめてち 用をまかなうために、夏の賃銀の一部を節約しなければなら かい。労働貧民がすべてのものをかう方法である小売で、う ないとか、一年全体をつうじては、賃銀は、かれの家族を一られるこれらおよびその他たいていのものは、一般に、大都 年全体をつうじて維持するに必要なところをこえないとか、 会においては、この国の遠隔の地方でと、まったくおなじよ たしかにいうことができる。しかしながら、どれいとか、さ うにやすいか、あるいはそれよりもやすいのであって、その

8. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

会の土地と労働の年々の生産物につけくわえる。しかしなが製造するための資本が不足しているからである。グレート物 ら、それは、その国のなかにとどまらないとしても、その国ブリテンには、つぎのようなちいさな製造業都会がたくさん にとってきわめて有用でありうる。・ハルト海沿岸から年々輸ある。すなわちそこの住民は、自分たちの勤労の生産物を、 入される亜麻や大麻をしあげるブリテンの製造業者たちの資それが需要され消費される遠隔の諸市場へ、輸送するにたり 本は、それらを生産する国々にとって、たしかにきわめて有るだけの資本をもたないのである。もし、かれらのなかにな にかの商人がいるとしても、その商人たちは、ほんとうは、 用である。それらの材料は、それらの国々の余剰生産物の一 部であって、それは、そこで需要されるあるものと年々交換もっとおおきい商業都市のどれかに居住する、もっと富裕な されるのでなかったならば、なんの価値もなかっただろう商人たちの代理人にすぎないのである。 し、まもなく生産されなくなっただろう。それを輸出する商 どこかの国の資本が、それら三つの目的のすべてには十分 人たちは、それを生産する人々の資本を回収し、そうするこ でないとすると、そのうちで農業に使用される部分がおおき とによって、その生産をつづけるようにかれらをはげます。 くなるに比例して、それがその国のなかで活動させる生産的 そして、ブリテンの製造業者たちは、それらの商人の資本を労働の量は、おおきいであろうし、その使用がその国の土地 回収する。 と労働の年々の生産物につけくわえる価値も、同様であろ ある特定の国は、ある特定の人物とおなじようにして、そう。農業についでは、製造業に使用される資本が、最大の量 のすべての土地を改良し耕作することと、その土地の全粗生の生産的労働を活動させ、年々の生産物に最大の価値をつけ 産物を直接の利用と消費のために製造し調製することと、粗くわえる。輸出商業に使用されるものは、この三つのうちで 生産物あるいは製造品の余剰部分を、それが国内で需要されどれよりも効果がすくないのである。 るあるものと交換されうるようなとおい諸市場に輸送するこ それら三つの目的のすべてに十分な資本をもたない国は、 ととの、すべてに十分なだけの資本を、もたぬことがしばし じつは、それがほんらい運命づけられているようにみえる富 . ばありうる。グレート・プリテンのおおくのさまざまな部分裕の程度に、まだ到達していないのである。けれども、はや の住民たちは、かれらの土地のすべてを改良し耕作するのに まって、不十分な資本をもって、三つのすべてをしようとく・ 十分な資本をもたない。スコットランド南部諸州の羊毛は、 わだてるのは、たしかに、十分なそれを獲得するための、一 そのおおきな部分が、非常な悪路によるながい陸上輸送のの社会にとっての最短の道ではないし、一個人にとっても同様 ちに、ヨークシャーで製造されるのであって、地元にそれをであろう。一国民のうちのすべての個人の資本は、一個人の

9. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

ある国の資本的資財がたいへん増加して、そのすべてがそとなまれる商業、およびプリテンの商人によってインドのさ まざまな港のあいだでいとなまれる、同種のある商業は、お の特定の国の消費をみたしたり生産的労働を支持したりする のに、使用されてしまうことができぬ程度になると、その余そらく、グレート・ブリテンの仲継商業と正当によびうるも のの、主要な諸部門であろう。 剰部分は自然に、仲継商業にそそぎこみ、他の国々のために 国内商業と、それに使用されうる資本とのおおきさは、必 おなじ職務を遂行するのに、使用される。仲継商業は、おお きな国民的富の自然の結果であり徴候である。だが、それは然的に、その国のなかで相互にそれぞれの生産物を交換する その自然的な原因であるとはおもわれない。それを特別の奨必要をもつ、すべての遠隔の場所の、余剰生産物の価値によ って限定される。消費用外国商業のおおきさは、国全体の余 励で援助しようとしたがった政治家たちは、結果であり徴候 剰生産物とそれをもって購買しうるものとの、価値によって であるものを原因だと誤解したらしい。オランダ〔ホラント〕 は、その土地の面積と住民の数とに比して、ヨーロッパでと 限定される。仲継商業のそれは、世界のさまざまな国のすべ びぬけて富裕な国であるが、それだから、ヨーロッパの仲継ての余剰生産物の価値によって、限定される。だから、それ の可能なおおきさは、他の二つのそれにくらべて、いわば無 商業において最大の分前をもっている。おそらくヨーロツ。、 て 限なのであり、最大の資本を吸収しうるのである。 で第二の富裕な国であるイングランドは、同様に、そのなか 自分自身の私的な利潤についての考慮が、ある資本の所有 にでかなりの分前をもっていると想定されている。もっとも、 ふつうにイングランドの仲継商業とみられているものも、わ者がその資本を、農業に使用するか製造業に使用するか、お ろし売または小売商業のある特定部門に使用するかを決定す かってみれば迂回的な消費用外国商業にすぎないということ るさいの、唯一の動機である。それらのさまざまなやりかた が、おそらくたびたびあるであろう。東西両インドおよびア 性メリカの財貨をさまざまなヨーロッパの市場にはこぶ商業のうちの、どれに使用されるかにおうじて、それが活動させ の は、おおきな程度においてそういうものである。それらの財うる生産的労働の量のちがいや、それがその社会の土地と労 資 貨は、一般に、直接にブリテンの勤労の生産物で購入される働の年々の生産物につけくわえうる価値のちがいは、けっし 一一か、あるいはすでにその生産物で購入されてしまった他のあてかれの思考にはいらない。したがって、農業がすべての業 第 るもので購入されるかであり、そして、それらの商業の最終務のなかでもっとも利潤がおおく、農業経営と改良がすばら の収益は一般に、グレート・ブリテンで利用または消費されしい財産へのもっとも直接的な道である国々においては、諸 個人の資本は、自然に、全社会にとってもっとも有利なやり る。・フリテンの船腹で、地中海のさまざまな港のあいだでい キャビタル・ストック

10. 世界の大思想14 スミス 国富論<上>

物や家畜より容易に、一国から他国へ輸送される。だから、 う酒の輸人を禁止するのは、妥当な法律であろうか。だが もとめられている諸商品のひとしい量を、諸外国から購買す外国貿易が主として従事するのは、製造品をとってきてはこ るのに必要であるだろうよりも、三十倍おおくのその国の資ぶことである。製造業においては、きわめてちいさな利点 が、外国人が国内市場においてさえわれわれ自身の職人たち 本と勤労を、なにかの業務にふりむけることに、明白なばか らしさが存在するならば、どちらかを三十分の一おおく、あよりも、やすくうることを可能にするであろう。土地の組生 るいは三百分の一おおくでさえ、なにかそういう業務にふり産物においてかれらがそうすることを、可能にするには、き むけることには、それほどまったくひどいものではないが正わめておおきな利点がなければならないであろう。もし、外 確におなじ種類の、ばからしさが存在するにちがいない。ひ国の製造品の自由な輸入がゆるされるとすれば、国内の製造 とつの国が他の国にたいしてもっ有利な点が、自然のもので業のうちのいくつかは、おそらく打撃をうけるであろうし、 あろうと獲得されたものであろうと、この点ではなんの影響それらのうちのあるものは、おそらくまったく破減するにい もない たるであろう。そして、現在それらに使用されている資財と 一国がそれらの有利な点をもち、他国にそれらがな いかぎり、つねに後者にとっては、前者からかう方が、つく 勤労のかなりの部分は、なにかほかの使用をみつけざるをえ るよりむしろ有利であるだろう。ある職人が、他の商業をや ないであろう。しかし、土地の組生産物のもっとも自由な輸 て っているかれの隣人にたいしてもつのは、獲得された有利な入でさえ、その国の農業になにもそういう効果をあたえるこ に点にすぎないのだが、それでもかれらはともに、たがいに相とは、できないであろう。 体手からかう方が、かれらのそれそれの商売にぞくさないもの たとえば、もし外国家畜の輸入が、かりにもそれほど自山 のをつくるよりも、有利であることをしるのである。 になったとしても、きわめてわすかしか輸人されえないであ 済商人と製造業者は、国内市場のこの独占から、最大の利益ろうから、グレート・ブリテンの牧畜業がそれによって影響 をうけることは、ほとんどありえないであろう。生きた家 治をひきだす人々である。外国の家畜および塩づけの食料品 は、海上輸送が陸上輸送よりも費用がかかる、おそらく唯一 の、輸入禁止が、一応の豊作のときは禁止にひとしくなる、 の商品である。陸路によれば、かれらは自分で市場にやって 四外国の穀物にたいする高関税といっしょに、グレート・ブリ テンの牧畜業者や農業者にとって有利であることは、同種のくる。海路によれば、家畜だけでなく、かれらの食物とかれ らの水もまた、すくなからぬ費用と不便において、はこばれ 他の諸規制がその商人や製造業者にとって有利であるのに、 とてもおよばない。製造業、とくに精巧な種類のそれは、穀なければならない。たしかに、アイアランドとグレート・プ