支配 - みる会図書館


検索対象: 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集
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1. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

一合法的支配 制定規則による合法的支配。最も純粋な型は、官僚制的支 配である。根本観念は、形式的に正しい手続で定められた制 定規則によって、任意の法を創造し・変更しうる、というに ある。支配団体は選挙されるか、または任命される。支配団 支配、すなわち一定の命令に対して服従を見出すチャンス体自体およびそのあらゆる部分は経営である。他律的かっ他 は、従順性の種々さまざまの動機にもとづいたものでありう首的な ( 部分 ) 経営は、これを官庁と呼ぼう。行政幹部はヘ る。支配は、純粋に利害状況によって、すなわち、服従者側 ルによって任命される官吏から成り、服従者は団体成員 ( 「市 における・利害得失の目的合理的考量によって、生み出され民」、「仲間」 ) である。 たものであることもある。あるいはまた、単なる「習俗」に 個人が、彼のもっ固有の権利のゆえに、服従されるのでは よって、習い性となった行為に対する無反省な慣れによっ なく、制定された規則に対して服従がおこなわれ、この規則 て、生み出されていることもある。あるいは、支配は、純粋が、誰冫 こ対して、またいかなる範囲まで服従されるべきかを 会に情緒的に、被支配者の単なる個人的な好みによって基礎づ決定するのである。命令者自身も、命令を出す場合、一つの ( 五 ) 社 けられていることもある。しかしながら、このような諸基礎規則に、すなわち「法律」または「行政規則」に、形式的に 配だけにもとづいている支配は、比較的不安定なものであろ抽象的な規範に、服従しているのである。命令者の型は「上 支 う。むしろ、支配は、支配者と被支配者とにおいて、権利根司ーであるが、彼の支配権は、制定された規則によって、一 拠、つまり支配の「正当性」の根拠によって、内面的に支え つの即対象的な「権限」の範囲内で、正当化されている。権 られるのが常であり、この正当性の信念を動揺させるとき限の劃定は、即対象的な合目的性と官吏の仕事に対する専門 正当的支配の三つの純粋型 支配の正当性、正当性の根拠 は、重大な結果が生ずるのが常であゑさて、支配の「正当 性根拠」には、完全に純粋な型としては、ただ三つのものが あるにすぎない 。この三つのそれぞれは、純粋な型において は、行政幹部や行政手段のまったく異なった社会学的構造を 伴っている。 ( 四 ) ( 三 )

2. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

者に対する関係において付与しうる意味、の相違にすぎな官僚制的支配の本質・その諸前提 。すなわち、官吏はまったくそのヘルーーーしたがってここ および展開 では選挙民ーーーの受任者として行動するであろうし、指導者 はもつばらみずから責任を負うものとして行動するであろ う。したがって指導者は、彼が選挙民の信任を効果的に要求 しうる限り、もつばらみずからの判断によって行動し ( 指導 者民主制 ) 、官吏のように、選挙民の ( 「命令的委任ーの形で ) 明示された・または推定された意思にしたがって行動するこ とはしないであろう。 一近代的官僚制の特殊的機能様式 近代的官吏制度に特有な機能様式は次の諸点に表現され によって 一各官庁が、規則ーーーー法律または行政規則 一般的な形で秩序づけられた・明確な「権限」をもつ、とい う原則が存在する。すなわち、①官僚制的に支配されてい る団体の目的上必要な・通常的な活動は、官職的義務として ②これらの義務の履行に必要 明確に分配されている。 な命令権力が、同じく明確に分配されており、また、これら の命令権力に ( 物理的・宗教的その他の ) 強制手段が付与さ れているときには、この強制手段は、規則によって明確に限一 ③このように分配された諸義務が規則 定されている。 的・継続的に履行され、これに対応する権利が行使されるた めに、計画的な配慮が、一般的に規制された資格をもつひと びとを任命するということによって、なされている。 これら三つの契機が、公法的な支配においては官僚制的「官

3. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

暴力性は国家特有の手段であります。とくに今日では、国家権力を求めますが、その場合、彼は、別の目的ーーそれは高 と暴力性との関係は格別に密接なものとなっております。過貴なこともあり、利己的なこともありますがーーのための手 去においては、氏族をはじめとする実にさまざまの団体が物段として権力を求めているか、あるいは、権力を「それ自体 的暴力性を全くノーマルな手段として認めてまいりました。 のために」、それが与えてくれる優越感を楽しむために求め ところが、今日では、私たちは次のように言わなければならているか、そのどちらかなのです。 ないでしよう。すなわち、国家とは、或る特定の地域 国家は、歴史的にこれに先立っ政治的団体と同じように、 この「地域」ということが特徴なのですがーーの内部で、正正当な ( 正当と見られている、という意味ですが ) 暴力性と 当な物的暴力性の独占を要求する ( そして、それが成功し いう手段に支えられた人間対人間の支配関係なのでありま た ) 人間共同体である。というのは、国家の側が自分以外のす。ですから、国家が存続するためには、被支配者が、時の すべての団体または個人に許す範囲でしか物的暴力性の権利支配者の要求する権威に服従することが必要なのでありま を認めないということ、つまり、国家が暴力性の「権利ーのす。いつ、どうして、被支配者は服従するのでしようか。こ 唯一の源泉と看做されているということ、これが現代の特徴の支配のよって立っ内的な正当化の根拠および外的な手段は だからであります。ですから、私たちにとって、「政治」と何なのでしようか。 は、国家間であろうと、国家内の、国家に含まれる人間集団 支配の内的な正当化、つまり、その正当性の根拠には、原 間であろうと、権力に参加しようとする努力、あるいは、権 則として三つのものがあります。先ず、これから始めること 力に影響を及、ほそうとする努力である、と言えると思いま にいたしましよう。第一には、「永遠の過去ーの権成で、こ す。 れは遠い昔から通用して来たため、また、これを守ろうとい これは、大体において、日常の用語法にもよく一致しま う習慣的な態度のために神聖化された風習なのです。これ す。私たちが或る問題を「政治的」問題だと言ったり、或る が、古い型の家父長や世襲領主が振っていた「伝統的」支配 大臣や官僚を「政治的ー官僚と言ったり、或る決意を「政治なのであります。第一一には、個人に与えられた特別な恩寵の 的ーに制約されていると言ったりする場合、必す次のような賜物 ( カリスマ ) の権威で、或る個人の啓示、英雄的行為、 ことを意味しています。つまり、権力の分配や維持や移動にその他指導者的資質に対する全く個人的な帰依であり信頼で 対する関心が、その問題の回答にとっては決定的なものでああります。これが「カリスマ的」支配で、予言者やーー政治 り、その決意を制約し、その官僚の行動範囲を規定する、との領域ではーー選挙侯、人民投票による支配者、偉大なデマ いうことであります。ーー・政治を行なう人間というものは、 ゴーグ、政党の指導者などの行なう支配がこれに当ります。

4. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

的・物質的なまたは名誉上の優位が行政機能および行政義務個人的な威信にもとづく在来の名望家支配ーーーこれは旧保守 と結びつけられるという事実に、何らかの仕方でもとづいて主義政党のみならず旧自由主義政党においてもしばしば支配 いる。そしてこのことは、通常、すべて行政活動がその担い 的であったーーと完全に絶縁し、党役員・職業的な党書記や 手に付与する地位を、直接または間接に経済的に、あるいは組合書記等々の指導の下に、自党を官僚制的に組織するに至 っているのも、決して偶然ではない。フランスにおいては、 また「社会的に」利用することが、行政活動を引受けること の代償をなす、という結果を伴う。したがって、官僚制化お政党組織の厳格化を強要するごとき選挙制度を基礎として、 よび民主制化なるものは、国家的行政に関する限り、右の厳格な政党組織を作ろうとする試みが何回となくおこなわれ 〔非官僚制的〕諸形態に比べて通常より「経済的」な性格をも たが、成功しなかった。その失敗の主たる原因は、地方的名 っているにかかわらず、国庫の現金支出の増大を意味するこ望家層の政党の官僚制化に対する抵抗にあった。彼らは、政 とになる。東部。フロイセン地方においては、地方行政のほと党組織が厳格化されるときは、政党の官僚制化が長い間には んど全部と下級裁判権とが領主に委ねられていたが、これ不可避的に生じ、これが全国を蔽うに至り、彼らの影響力が は、ごく最近に至るまでは、 少なくとも国家会計の見地破られるであろうとして、反対したのである。けだし、数字 からみた場合 、行政への需要を充足する最も安上りの方計算による簡単な選挙技術の一切の進歩は、例えば ( 少なく 法であった。イギリスにおける治安判事の行政についても、 とも大国家の事情の下においては ) 比例代表制は、政党の厳 インターロカール 同様のことがいえる。 格な・超地方的な・官僚制的組織の成立を予示するものであ 大衆民主制は、行政における封建的・家産制的および り、したがって、政党官僚制と規律とが、地方的な名望家層 少なくとも意図としてはーー金権政的特権を廃止するものでを排除して、その支配力を強化することを意味しているから あり、したがって、伝来の兼職的名望家行政を廃して、どうしである。 ても有給の職業労働に置き代えざるをえない。このことは、 国家的行政自体の内部では、フランス、北アメリカ、更に 単に国家的組織について妥当するだけではない。正に民主的現在ではイギリスにおける官僚制化の進歩は、明らかに民主 大衆政党 ( ドイツにおいては社会民主党と大衆農民運動、イ 制の平行現象として現われている。もちろん、この場合、「民 ギリスにおいては、・、 / ーミンガムから始まって前世紀七十年主化」という名称が誤解のもとになることがあるということ 代以降組織された・グラッドストーンーチエム・ハレンのコー を、常に留意しておく必要がある。無組織の大衆という意味 デーモス カス的民主制、アメリカにおいてはジャクソン政権以来の両での民は、比較的大きな団体においては、決してみずから 政党 ) が、自分たち自身の党組織において、個人的な関係や「支配」することはなく、支配されるのであり、支配する行 ( 四二 )

5. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

この問題については、今日のところ、態度を決めないでおこ ということーーー政治組織間および政治組織内における権力の は、「臨時」の政治家や副 うと思います。私たちの考察のためには、次のような純粋に分配を左右しようということ 概念的な事柄だけを確認しておきたいと考えます。ーー近代業的な政治家としても出来ますし、本職の政治家としても出 国家とは、或る地域内で支配の手段としての正当な物的暴力来ます。これは営利事業の場合と全く同じことです。私たち が投票をしたり、これに似た意志表示をする場合、例えば、 性の独占に成功した組織的な支配団体であって、この目的の ために、物的な連営手段を指導者の手に集め、その半面、か「政治的ー集会で拍手をしたり反対したり、「政治的 [ 演説を ってこれらの手段を自己の権利によって握っていた自立的でしたりする場合、私たちはみな「臨時」の政治家なのであり 身分的な役人から残らす剥奪し、その代りに自己をその頂点ます。ーーーそして、多くの人々は、政治というものとこの程 度の関係しか持っておりません。「副業的ーな政治家とは、 に立たせたものなのであります。 ところで、世界各国でさまざまな成果をあげて来た政治的 今日で申しますと、例えば、政治的諸団体の世話役とか幹部 剥奪の過程が進むにつれて、第二の意味での「職業政治家ー といった人たちで、この人たちは一般に、やむを得ない場合 の最初の人たちが君主に仕えるという形で現われて来まし だけ政治的活動をやり、物質的にも精神的にも先す「政治で た。この人たちは、カリスマ的指導者とは違って、自分が支生きる」ということはありません。召集されて初めて活動を 配者になろうとは思わず、政治的支配者に仕えた人たちであ開始する枢密院の顧問官や、これに似た諮問機関のメイ ( ー りました。彼らはこの戦いでは献身的に君主の味方をし、君も同じことです。また、会期中だけ政治を行なうドイツの代 議士諸君のかなり多くもこれと同じです。過去においては、 主の政策を執行することによって一方では物質的な生計をた て、他方では精神生活の内容を手に入れたのであります。こ こういう人たちは特に門閥の内部におりました。「門閥」と の種の職業政治家は君主以外の権力にも仕えましたが、そう は、軍事的運営手段や行政上重要な物的運営手段、あるいは いう姿はこれまた西洋でしか見られないものであります。過人的な支配力を自分で持っている人々を指すということにし 去において、このような職業政治家は、君主にとって最も重ておきましよう。こういう人々の大多数は、自分の生活を全 要な権力の機関であり、また政治的剥奪の機関でありまし面的に政治に捧げるということは愚か、せめて優先的に、あ るいは臨時的以上に捧げるということさえありませんでし こうした「職業た。むしろ、彼らが自分の支配権を利用したのは、地代を取 職業政治家のことを詳しくお話する前に、 り立て、更に金もうけをするためでありまして、政治的団体 政治家」の存在がどういう事態を現わしているかをあらゆる 面で明らかにしておくことにいたしましよう。政治を行なうのために政治的に働いたのは、君主や同じ身分の仲間から特 こ 0

6. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

術者や事務員に対する資本主義的需要とは、それを全世界に占のための普遍的な手段は、今日では「試験ーであり、それ 広めている。 故にこそ、試験が制しがたく進出を続けているのである。し この発展は、とりわけ、専門試験によって獲得される教育かも、教育免状の獲得に必要な教育過程は、多大の費用と長 免状のもっ社会的威信によって、強力に助長される。教育免期の無収入期間とを伴うものであるから、右の努力は、同時 状の社会的威信自体が、更に経済的利益に転化されるのであにまた、財産のために才能 ( 「カリスマ」 ) を押しのけるとい ( 六四 ) るから、なおさらである。過去においては系図の証明が、同うことを意味している。 ーーけだし、教育免状の「精神的」 格出生や聖堂参事会員資格の、また貴族が社会的勢力を維持出費は常に僅少なものであり、しかも免状交付の大量化につ していたところでは、国家的官職就任資格の前提条件をなしれて、増加することはなく、むしろ減少するものだからであ ていたが、今日では教育免状がそれに代わっている。綜合大る。この場合、昔のレーエン受封資格における騎士的生活態 学・工科大学・商科大学の卒業証書の発達、およそあらゆる度という要件の代わりに、それの現代的残滓形態として、わ 領域における教育免状創出の要求は、役所や事務所における が国においては、教育免状を授与する大学の学生組合への参 特権層の形成を助長している。免状をもっているということ 加が要求され、アングロ・サクソン諸国においては、スポー は、名望家との通婚要求資格を基礎づけ ( 事務所において ツやクラ・フの組織がその代わりをしている。 しうまでもな も、ポスの娘に求婚する優先的チャンスは、、 他方において、官僚制は、常に、整備された懲戒手続を作 、免状をもっていることによって期待できる ) 、「名誉法 り出し、官僚に対する「上司」のまったく恣意的な処置を排 典」の階層への加入の要求、仕事量に応じた報酬ではなく除することによって、一種の「官職保持権」を発展させるこ 「身分相応の」支払いを求め、確実な昇進と老後の保証とをとに努め、官僚のために彼の地位・規則正しい昇進・老後の 求める要求、とりわけ社会的・経済的に有利な地位を免状を生活を保障しようとする。官僚制は、この点では、支配の極 小化を求める・被支配者の「民主的な」気分によって支持さ もっている候補者だけで独占せんとする要求を支持してくれ る。われわれは、整然たる教育課程と専門試験の導入を求めれる。けだし、被支配者たちは、官僚に対するヘルの恣意的 な処置が弱められるごとに、そこにヘルの権力そのものの弱 る声が、あらゆる分野で高まりつつあるのを聞くのである 化を認めうると信じているからである。したがって、この限 、がこれは、、 しうまでもなく、突然「教育熱」が高まったと いうようなことではなく、教育免状の所持者のために地位のりにおいて、官僚制は、商人の事務所においても公務につい 供給を制限し、これらの地位を彼らだけで独占しようとする ても、過去のまったく異質的な官職保持者とまったく同様 努力が、その原因をなしているのである。ところで、この独に、特殊「身分制的」な発展の担い手なのである。ところ ( 六五 ) ( 六七 ) ( 六六 )

7. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

的要求との線に沿った・分業化にもとづいている。官吏の型 ( 普通は ) 国家の裁判および警察幹部がこの機能を担当して は訓練された専門官吏であり、彼の勤務関係は契約にもとづ いる。しかしながら、資本主義的経営は、そのーーますます いており、明確な昇進規則によるところのーー労働の量によ官僚制化しつつあるーー管理組織の点では、自首的である。 ってではなく、官等に応じて等級づけられるーー定額の俸給支配団体への加入は形式的には自由意思によっておこなわれ と年金とを伴っている。彼のおこなう行政は、没主観的な官 るが、このことは、支配という性格に何らの変更をも加える 職義務にもとづく職業労働であり、この行政の理想は、「怒ものではない。けだし、解約告知もまた同じく形式的には りも興奮もなくー sine ira et studio 個人的動機や感情的影「自由ーであるが、しかもこのこと〔解約が自由であるというこ 響の作用を受けることなく、恣意や計算不能性を排除して、 と〕が、通常は、労働市場の諸条件の結果、被支配者を経営 なかんずく「人による差別をすることなく」、厳に形式主義規範に服従させているのである。資本主義的経営のもっ支配 的に、合理的規則にしたがって、 あるいはこれが不可能の性格が、近代国家の支配と、社会学的にみて、同質性をも なときはーーー「没主観的」な合目的性の見地にしたがって、 っているということは、支配なるものの経済的基礎を考察す 処置をするということである。服従義務は、下級官職の上級れば、もっと明らかになるであろう。むしろ、「契約」が基礎 官職への服属と秩序ある訴願手続とを伴う・官職階層制によ とされていることは、資本主義的経営を、「合法的」支配関 って、段階づけられている。技術的な機能作用の基礎は経営係の一つの顕著な類型として、特徴づける事情なのである。 規律である。 2 官僚制は、合法的支配の・技術的にみて最も純粋な型 いうまでもなく、国家や公共団体の近代的構造のみ である。しかしながら、いかなる支配も、もつばら官僚制的 、「合法的ー支配の型に属するのでは決してない。私的・ に、すなわち、契約によって雇われ・任命される官吏だけに このようなことはまった 資本主義的経営内における支配関係も、階層的に組織された よって、運営されるわけではない。 多数の管理幹部をもつあらゆる目的団体や社団ーーその種類 く不可能である。政治的団体の最高の首長は、あるいは「君 の内部における支配関係も、同じく のいかんを問わない 主」 ( 世襲カリスマ的支配者、後述参照 ) であるか、あるい 合法的支配の型に入るのである。近代的政治団体は、単にこ は国民によって選挙された「大統領」 ( したがって、人民投 の型の最も顕著な代表者であるというだけである。 票的Ⅱカリスマ的ヘル、後述参照 ) であるか、あるいは議会 私的・資本主義的経営における支配は、確かに一部分は他団体によって選挙されるかである。この最後の場合には、事 律的であり、その秩序は部分的には国家によって指令されて実上のヘルは、議会の成員、あるいはむしろ、議会における いる。また、強制幹部については、完全に他首的であり、 有力諸政党のーー場合によってよりカリスマ的なあるいはよ ( 七 )

8. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

正当的支配の三つの純粋型・ 支配の正当性、正当性の根拠 一合法的支配 一一伝統的支配・ 三カリスマ的支配 官僚制的支配の本質・その諸前提および展開・ 一近代的官僚制の特殊的機能様式・ 二官僚の地位・ 三官僚制化の諸前提と諸随伴現象・ 貨幣経済的・財政的諸前提 : 2 行政事務の量的発達 3 行政事務の質的変化 : ・ 4 官僚制的組織の技術的優秀性・ 5 行政手段の集中 6 社会的差別の水準化 四官僚制的装置の永続的性格・ 五官僚制化の経済的・社会的結果・ 六官僚制の勢力・ 七合理的・官僚制的支配構造の発展段階・ 八教養と教育との「合理化」 訳注 ・一一四三 ・一一五四 実三 ・一石三

9. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

この問題は、あらゆる種類の支配について、したがって、あ心の満足という。フレミアムなどがあるのであります。 くつかの物 すべて暴力的支配を維持してゆくためには、い らゆる形態の政治的支配について、つまり、伝統的支配、合 法的支配、カリスマ的支配についても当て嵌まるものなので的で外的な道具が要りますが、これは経済上の経営と全く同 じであります。ところで、権力者がその服従を前提せざるを す。 どんな支配機構でも、継続的に行政を行なってゆくために得ない幹部の人たちーー官吏であろうと、何であろうと が行政手段ーー貨幣、建物、武器、車輛、馬匹などーーを自 は、二つのことが必要であります。すなわち、正当な暴力の 分で所有するという原則に立っているか、それとも、ちょう 所有者になろうとする支配者に対して人間の行為に服従とい マンやプロレタ う態度をとらせることが一つ。もう一つは、この服従を利用ど、今日の資本主義的経営におけるサラリー リアが物的生産手段から「切り離されている」のと同じ意味 して、いざというとき物的な暴力を振うのに必要な道具を手 中に収めておくことであります。つまり、必要なものは、人で、彼らが行政手段から「切り離されている」かによって、 すべての国家秩序には区別が生じてまいります。したがっ 的な行政幹部と物的な行政手段ということになります。 行政幹部は、行政的な支配機構ーー他のすべての機構でもて、問題は、権力者が自分の組織した直轄機関に行政を行な 同じですがーーを外部に向って現わしているものですが、もわせ、個人的な使用人、雇われた官吏、気にいりの人間、腹 この人たちは、物的な経営手段の所有者で ちろん、この人たちが権力者に服従しているのは、前にお話心のものなど した正当性の観念によるのみではありません。むしろ、物的はなく、つまり、自分の権利によってこれを占有しているり な報酬と社会的名誉という、個人的な関心に訴える二つの手ではなく、その点では支配者の指揮に従っておりますーーに 段によってなのです。その報酬を形作るものは、家臣の采行政を行なわせるか、あるいは、その反対かという区別なの ゅう です。こういう区別は、過去のあらゆる行政組織を通じて現 邑、世襲官吏の扶持、近代の公務員の俸給ーー騎士の名誉、 身分の特権、官吏であることの名誉などで、こういうものをわれております。 物的な行政手段の全部または一部が、権力者に仕える行政 失うのではないかという不安こそ、行政幹部と権力者との連 帯の究極的決定的な基礎を形作っているものなのでありま幹部の手中にあるような政治的団体を「身分的」に組織され た団体と呼びたいと思います。例えば、封建制度の家臣は、 す。これは、カリスマ的指導者の支配についても言えます。 まかな すなわち、軍人には軍人としての名誉や戦利品があり、デマ封土として与えられた地域の行政と司法とを自分で賄い、自 ゴーグの追随者には「官職という獲物ーーーー官職の独占によ分で戦争のための装備や食糧をととのえましたし、彼の部下 る被支配者の搾取ーーーや、政治的な紐のついた利益や、虚栄である家臣たちも同じことをやりました。その当然の結果と

10. 世界の大思想23 ウェーバー 政治・社会論集

り名望家的な ( 後述参照 ) ーー指導者たちである。同様に、 行政幹部も、ほとんどどこにおいても真に純粋に官僚制的で 一一伝統的支配 はなく、あるいは名望家や、あるいは利益代表者が、種々さ 伝統的支配は、昔から存在する秩序と支配権力との神聖 まざまの形式で行政に参加するのが常である ( これはいわゆ 性、を信する信念にもとづいている。最も純粋な型は家父長 る自治行政において最も著しい ) 。 ( 九 ) 制的な支配である。支配団体は共同社会関係であり、命令者 しかし、決定的なことは、継続的な仕事が、主として、ま た次第に多く、官僚制的な力によっておこなわれる、というの型は「主人ーであり、服従者は「臣民」であり、行政幹部 は「しもべーである。個人が、伝統によって聖化された彼自 ことである。とりわけ、近代国家の全発展史は、近代的な官 ( 一 0 ) 吏制度と官僚倒的経営との歴史に帰着し ( 後述参照 ) 、同様身の権成によって、ビエテートの念から、服従されるのであ る。命令の内容は伝統によって拘東されており、ヘルの方で に、近代的な高度資本主義の全発展は、経済経営の官僚制化 この伝統を無思慮に破るときは、もつばら伝統の神聖性のみ の進展と一致する。官僚制的支配形態の役割は、いたるとこ にもとづいている彼自身の支配そのものの正当性を、危殆に ろで増大しているのである。 3 官僚制は合法的支配の唯一の型ではない。輪番制・抽瀕せしめることになるであろう。伝統的規範に反する新たな 籤制・選挙制の官吏制度、議会や委員会の行政、あらゆる種法を作ることは、原理的には不可能と考えられている。しか 類の・合議制的な支配団体や行政団体も、その権限が制定さ し、新法の制定は、実際上は、ある命題を「昔から妥当して れた規則にもとづいており、支配権の行使が合法的な行政行 いるもの」として「認識する」という方法によって ( 「ヴァ 為の型に合致しているときは、やはり合法的支配に属するのイストウーム」 Weistum によって ) 、おこなわれる。これ である。近代国家の成立期においては、合議体が、合法的支に反して、伝統の諸規範の範囲外においては、ヘルの意思 配形式の発展に、きわめて重要な貢献をしている。とりわけ、 は、個々の場合に衡平感情によって設定される制限によって 学 「官庁」という概念は、その成立を合議体に負っているので のみーーしたがって極度に伸縮自在な仕方でーー拘東される 会 社ある。他方、選挙制の官吏制度は、近代的官吏制度の前史に にすぎない。それ故、彼の支配は、厳格に伝統によって拘束 配おいて ( 民主倒においては今日なお ) 、重要な役割を果してされた領域と、自由な恩恵と恣意との領域に分れるわけであ る。この後者の領域においては、彼は、気の向くままに、好 悪の感情にしたがって、純粋に個人的な見地ーーーとりわけ個 人的な好みの影響をも受けるような見地ーーにしたがって、