きいほど、ますます大きな部分を構成するものである。し 都市を離れたり、またそれだけの人間が、あるいはここ 和に、あるいはかしこに参集したりしなければならないわけたがってすべての都市は平等と見なされるべきではなく て、各都市の力と同じく、各都市の権利もまた、その都市 だからである。 自身の大きさによって決定されるべきなのである。ところ 四 で、もろもろの都市を接合して一つの国家を構成させねば じんたい ならない靱帯は、主として ( 第四章の一節により ) 元老院 この問題をどう解決すべきであるか、また、この国家の 諸会議をどう構成すべきであるかということを、この国家と裁判所とである。ではどうすればそれらすべての都市 が、これらの靱帯によって繋ぎあわされながら、しかもそ の本性と成りたちとから正しく結論しうるためには、次の 点を考慮に置かねばならない。第一に、各都市は、一私人のおのおのが、できるかぎり、自己の権利を保持しつづけ るかということを、ここで私は簡略に示すことにしよう。 よりも強力であればあるほど、一私人よりもそれだけ多く の権利をもっこと ( 第一一章の四節による ) 。したがって、 五 この国家の各都市は ( 本章の二節を見よ ) 城壁内すなわち こよれば、各都市の選良たちーーその 自己の管轄範囲内では、自分の力をもってなしうるところ すなわち私の構想冫 に相当するだけの力をもっこと。第二に、すべての都市数は ( 本章の三節により ) 都市の大きさに比例して、ある いは多くあるいは少なくなければならぬーーが、自分の都 は、単なる盟約者としてではなく、一つの国家の構成分と して、互いに提携し結合していること。ただし、おのおの市に対して最高の権利をもち、また彼らが、その都市にお の都市は他の諸都市よりも強力であればあるほど、統治にける最上の会議において、都市を防備し、その城壁を拡張 し、租税を賦課し、法律を制定し廃棄する最高の権力、要 対する権利をそれだけ多くもつ、というふうに。なぜな ら、不平等のものの間に平等を求めることは、背理を求めするに、その都市の維持と膨脹とのために必要と判断され しすれも平等と るすべてのことを行なう最高の権力をもつのである。しか ることであるから。もちろん、市民たちは : 見なされるべきである。市民一人一人の力は、国家全体のしながら、国家に共通の政務の処理のためには、元老院 力にくらべれば、まるでとるに足りないものだからであ が、前章において私が述べたと全く同じゃり方で、作られ る。しかるに各都市の力は、国家自身のカの大きな部分をねばならぬ。したがって、この元老院とさきの元老院との 構成するものであり、しかもその都市自身が大きければ大間には、次のような相違があるだけである。すなわち、こん ( 四一 )
されている。もっとも、罪状が明白に立証された場合や被よそへ移すか、それとも、それらの都市を完全に破壊する ( 四五 ) れ告が自供した場合はこの限りでない。しかしこの点につい のでなければならない てはさらに詳しく立ち入る必要はあるまい 一四 以上がこの国家の基礎にかかわる規定であるが、こうい さて、自己の権利を保持していない諸都市について語る う国家のあり方のほうが、一つの都市だけから名前を得て ことが残されている。もしこれらの都市が国内の一州ある いるあの国家のあり方よりもすぐれていることを、私は次 いは一地方に位置しており、その住民が同じ民族に属し同のような理由によ「て結論する。すなわち、各都市の選良 じ言語を話すとするなら、それらの都市は必然的に、村と たちは、人間的欲望に駆りたてられて、都市ならびに元老 同様、隣接諸都市の一部と見なされるべきであり、したが院における自己の権利を堅持し、できるものなら、それを増 ってそれらはいずれも、自己の権利を保持しているところ大させようとっとめるであろう。このため彼らは、できる の、この都市あるいはあの都市の支配下に置かれるべきで かぎり民衆を自分たちのもとに引きよせようと心がけ、恐 ある。その理由をいうなら、この場合には選良は、国家の怖による統治よりもなしろ恩恵による統治を行なって、自 最高会議によってではなく、各都市の最高会議によって選分たちの数をふやすことに努力するであろう。なぜなら、 、はれ、各都市における選良の数は、その都市の管轄範囲内彼らの数が多ければ多いほど、彼らは自分たちの会議のう における住民の数に比例して、多くも少なくもなる ( 本章ちから ( 本章の六節により ) いっそう多くの元老院議員を の五節による ) 。したがって、自己の権利を保持していな選任し、したがって ( 同節により ) 国家においていっそう い都市の民衆が、自己の権利を保持しているところの、他多くの権利を獲得することになるからである。もっとも、 の都市の人口名簿に記載され、その指導のもとに服するこそれぞれの都市が自分の利益のみを念頭に置き、他の諸都 とが必要になる、というわけである。しかしながら、戦争市に対して妬みをいだく時には、しばしば相互の和合を欠 の権利によって占領され、国家の属領となった諸都市に関き、論議に時間を浪費することがある、と言われるかもし していえば、国家はそれらの都市を、あたかも同盟者のよれないが、それは私の見解に対する重大な反論となるもの うに見なして、恩恵によって心服させ繋ぎとめるか、あるではない。なぜなら、「ローマ人が協議する間にサグント いは、参政権の認められた移民をそこへ送って、前住民をウムが減びる」ということがあるなら、これと反対に、少 ( 四六 )
407 政治論 前章の九節および一〇節に示した規定は、貴族国家に共 これまで私は、国家全体の首府である一つの都市だけか ら名前を得ている貴族国家、を考察してきた。いまや、多通の本性から導き出される。選良の数の民衆の数に対する 数の都市が統治権を握っており、私の見るところでは、さ比率を定めた規定や、選良として任命されるべき人々の年 ( 三九 ) きのものよりもすぐれている貴族国家、について論ずべき齢や条件がどうでなければならぬかを定めた規定もまたそ である。しかし、両方の国家がどの点で異なりどの点ですうである。したがって、これらの点に関するかぎり、統治 ぐれているかを知りうるために、私は、さきの国家の基本権を握っているのが一つの都市であろうと多数の都市であ ろうと、何の相違も生じえない。しかし、最高会議に関し 法を一つずっとりあげて、こんどの国家に合わないものは ては、こんどの場合、〔まえとは〕ちがった方針が立てら しりぞけ、そのかわりに、こんどの国家の土台とせねばな れねばならない。なぜなら、もし国内の或る一都市がこの らぬものを据えてゆくことにする。 最高会議の開催地に定められるとすると、その都市は事実 上この国家の首府であることになるからである。それゆえ、 各都市の間で輪番制を布くか、それとも、参政権をもたな 国政にあずかる権利を享受する諸都市は、次のようなぐ いですべての都市にひとしく帰属しているような場所を、 あいに建設され防備されていなければならない。すなわ この会議の開催地に指定することにしなければならないで ち、どの都市も、他の諸都市の援助なしに存続しうるほど 強くはないが、 しかしまた逆に、他の諸都市から離脱してあろう。しかし、どちらの策も、言うは易く行なうは難い も国家全体に大きな損害を与えぬほど弱くもない、というのである。なぜなら、幾千という多数の人間が、しばしば 第九章 、亠のいに。 こういうふうであるなら、諸都市はつねに連合 状態を続けるであろう。けれども、みずからを維持するこ とも、他の諸都市の脅威となることもできぬように造られ ているとするなら、明らかにそういう都市は、自己の権利 を保持しておらす、完全に他の諸都市の権利に服している わけである。 ( 四 0 )
411 政治論 かの村か、投票権をもたない都市かに、常置されねばなら ないこと、をみとめるのである。しかし私は個々の都市に 関する規定に戻らねばならぬ。 それそれの都市の執政官も、やはりその都市の選良によ 一つの都市の最高会議が、都市や国家の役人を選ぶにさ って選ばれねばならぬ。これら執政官たちは、いわばその いし、また議事を決定するにさいして、とるべき手続き は、前章の二七節および三六節に述べたものと同一でなけ都市の元老院を構成することになる。ところで私は、彼ら の数を決定することができない。また、決定する必要もあ ればならない。 さきの場合もこんどの場合も事情に変わり はないからである。さらに、この会議の下には監察官の会るまいと思う。なぜなら、その都市の政務のうち、重要な 議が付置されねばならぬ。そして、この監察官会議は都市ものはその都市の最高会議によって処理されるし、国家全 の〔最高〕会議に対し、前章における監察官会議が国家全体にかかわりのあるものは大元老院によって処理されるか らである。そのうえ、執政官の数が少ない場合には、彼ら 体の〔最高〕会議に対すると同じ関係に立たねばならぬ。 はその会議において公然と投票すべきであって、もろもろ また、この監察官会議の任務は、都市の管轄範囲内では、 前章における監察官会議の任務と同じものでなければならの大会議におけるように秘密投票を行なってはならないの である。なぜなら、小さな会議の場合に投票が秘密裡に行 ず、両者の受ける収入もまた同じ性格のものでなければな なわれるとすると、いくらか奸智にたけた者なら、それそ らない。しかし、もし都市がひじように小さくてーーーした がって選良の数がきわめて少なくてーー一人か二人の監察れの票の主をたやすく察知することができ、注意の足りぬ 官しか選び出せない場合には、一一人で会議を構成するわけ連中を種々の仕方で出し抜くことができるからである。 にはゆかないから、状況しだいで裁判官が監察官の審問に 加わるよう都市の最高会議によって任命されるか、それと も問題が監察官の最高会議に移されることにしなければな なおまた、それそれの都市においては、裁判官もまたそ らない。〔監察官の最高会議と言ったのは〕各都市からは、 の都市の最高会議によって任命されねばならぬ。しかし彼 やはり若干名の監察官が、元老院の置かれている場所に送らの判決に対しては国家の最高裁判所に控訴することが許 られていなければならぬからである。この人々は、全国家 の法律が侵犯されることなく守られるよう監視し、かっ元 老院にーーー投票権をもたずにーー列席するのである。
る。なおまた、国家の最高裁判官の選任にさいしても、同 またいかなる租税をも「元老院は、臣民に課してはなら れじ手続きが守られねばならぬ。すなわち各都市の選良たちないのであって、元老院の決定に従って国務を遂行するに が自分の同條のうちから、自分たちの人数に比例して、あ必要な経費をまかなうためには、臣民でなしに都市自体 るいは多数のあるいは少数の裁判官を選ぶのである。この が、元老院から税の割りあてをうけなくてはならぬ。そこ ようにすれば、各都市は、役人の選任にさいして、できるで各都市が、その大きさに比例して、あるいは大きなある かぎり自己の権利を保持することになるであろうし、また いは小さな経費を分担しなければならないわけであるが、 各都市は、元老院においても裁判所においても、自己のカこの分担額を各都市の選良たちは、めいめいの都市の住民 に比例しただけの権利を獲得することになるであろう。も このほ から、あるいは直接課税によるなり、あるいは っともこれは、元老院ならびに裁判所が、国務の決定や紛うがずっと公平なやり方であるがーー・間接課税によるな 争の解決にあたって、前章の三三節および三四節に私が述 り、思い思いのやり方で徴収することになる。 べておいたのと全く同じ手続きに従うということを、前提 としての話であるが。 さらに、この国家のすべての都市が沿岸都市であるわけ ではなく、またすべての元老院議員が沿岸都市だけから出 ついで、部隊の指揮官や将校も、やはり選良たちによっ ているわけでもないが、やはり彼らは、前章の三一節に述 べておいたと同じ収入をうけることができる。そしてこう て選ばれねばならぬ。なぜなら、国家全体の共同の安全の ために各都市が、その大きさに比例して、一定数の兵士を いう目的のために、国家の組織に応じて、もろもろの都市 集めなければならないのは当然であり、したがってまた、 を互いにもっと緊密に結びつける手段が、くふうされるで 各都市の選良たちがーー彼らの維持してゆかねばならぬ連あろう。なお前章で元老院ならびに裁判所に関して、また 隊の数に応じてーー彼らから国家に提供しただけの軍隊を 一般に国家全体に関して論じておいたところは、すべてこ の国家にも適用されねばならない。 統率するに必要な人数の連隊長、中隊長、旗手等々を選ぶ こうしていまやわれわ ことを許されるのも当然であるからである。 れは、多数の都市が統治権を掌握している国家において は、最高会議が、一定の時期に一定の場所で召集される必 要のないこと、しかし〔他方〕元老院と裁判所とは、どこ
どの元老院は、〔さきの元老院のもっ権限すべてに加えて〕 になり、そうでなければ否決されたことになる。なお、軍 諸都市の間に起こりうる紛争を解決する権限をももつ、と隊の指揮官や外国へ派遣する使節を選ぶさいにも、開戦や いうことである。首府たる都市のないこの国家において平和条件受諾を決定するさいにも、同じ手続きがとられ は、そういう役割は、さきの国家においてのように、最高る。しかし、そのほかの役人を選ぶにさいしては、どうし 会議によってなされるわけにゆかぬからである。 てもちがった手続きがとられねばならない。各都市は ( 本 章の四節に示したように ) できるかぎり自己の権利を保持 しつづけねばならず、また、ほかの諸都市よりも強力であ そのうえ、この国家においては、最高会議は、国家そのればあるほど、国家のうちで、それだけ多くの権利をも ものを改革する必要の生じた場合か、元老院議員たちが自つわけだからである、したがって元老院議員は、各都市の 分たちの力にあまると認める何か困難な問題がもちあがっ選良によって選ばれねばならぬ。くわしくいえば、一つの た場合でなければ、召集されてはならない。したがって、 都市の選良たちが彼らの会議で、同僚の市民たちのうちか すべての選良が会議に召集されるようなことはめったに起ら一定数の元老院議員をーーーこれら元老院議員の数とその こらぬであろう。じっさい、最高会議の主要な任務は、さ都市の選良の数との比率が ( 前章の三〇節を見よ ) 一対十 きに言ったように ( 前章の一七節 ) 、法律を制定し廃棄す二となるようにーー選び、さらにこれらの議員を、それそ ること、ついで国家の役人を選ぶことであるが、法律すなれ適当と思われる部に、すなわち第一部、第二部、第三部 わち、国家全体に共通の規定は、いったん制定されたから等々に指定するのである。同様に、他の諸都市の選良たち には、変更すべきではないのである。けれども、時と事情 も、自分たちの数に比例して、あるいは多数のあるいは少 とによって、何か新しい法律を制定すること、あるいは、 数の元老院議員を選び、これらの議員を、元老院の構成上 すでに設けられた法律を変更することが必要となるかもし必要なだけの数の部 ( 前章の三四節を見よ ) に、それぞれ れない。そういうさいには、まず問題が元老院で討議され配分する。この結果各都市は元老院の各部のうちに、都市 る。そして元老院で意見の一致が見られると、こんどは元 の大きさに比例して、あるいは多数のあるいは少数の元老 ・政 老院自身から諸都市へ使者が送られ、各都市の選良たちに院議員をもっことになる。しかし各部の議長および副議長 は、執政官に選ば 彼らの数は都市の数より少ない 元老院の決定を伝える。こうして最後に、諸都市の過半数 が元老院の決定に同意すれば、その決定は可決されたことれた議員たちのうちから、元老院により抽籤で選び出され ( 四二 ) ( 四三 )
いばかりに、平和の時期に隷属状態をうけいれようとする議にもち出されたあらゆる意見を王の判定にゆだねるのだ % ことになるのであるから。ただしここで平和というのは、 とすると、王はいつでも、少数の票しかもたない小都市 最高権力がもつばら戦争のために一人の人間に譲渡された 〔の意見〕に賛成することになるかもしれない。 というの 国家においても、なお平和というものが考えられるとして は、さまざまな意見を王の判定にゆだねるときには提案者 の話であるが。それゆえこういう人間が、みずからの徳と、 の名をあかしてはならないことが、会議の規約で定められ 万人の彼に期待するところとを、最もよく誇示しうるのは てはいるものの、どんなに警戒を厳重にしても、完全に漏 戦時においてであるが、これとは反対に、民主制の顕著な洩を防止することは不可能だからである。したがって、少 特徴は、戦時よりも平時においてのほうが、はるかによく なくとも百票の賛成を獲得しなかった意見は無効と見なす その徳が発揮される、という点に存する。しかし、どんなという規則が制定されねばならないのである。そしてこの 理由で選ばれようと、王は自分ひとりでは、すでに述べた規則を大都市は全力をあげて擁護すべきであろう。 ように、何が国家にとって有益であるかを知ることができ ないのであって、それを知るには、前章で示したように、 多数の市民を顧問官にもっことが必要である。そして、こ 簡潔を旨としていなければ、ここで私は、この会議の大 うして間題を協議するさいに当然考えられてよい意見の或きな効用をもっといろいろ述べてみたいのであるが〔これ は断念せざるをえない〕。しかしただ一つ、きわめて重要 るものが、かくも多数の人々によって見おとされるなどと いうことは、想像することすらできないのだから、この会と思われる、次の効用だけは、あえて言っておきたい。そ 議によって王の手もとに提出されるあらゆる意見のほかにれは、ひとを徳行にかり立てる刺激として、この最高の栄 は、人民の福祉に役立つ意見は、何ひとっ考えられないは職につきたいという共通の望みにまさるものはありえな ずだということになる。しかも、人民の福祉こそ至上の 、ということである。『 = ティカ』のなか〔感情 法、すなわち王の最高の権利なのであるから、この帰結と 定義で詳しく示しておいたように、われわれはみな、何 よりも名誉心によって動かされるものだからである。 して、王の権利は、会議によってもたらされたもろもろの 意見のうちから一つを選ぶことであって、会議全体の意向 に反して決定をくだしたり意見を表明したりすることでは ないことになる ( 前章の二五節を見よ ) 。しかしながら、会 この会議体の大部分が決して戦争の遂行に没頭すること
数の人々が感情のおもなくままに万事を決定する間に自由りできなかった。この結果、反対派の者どもは、しばしは と公共の利益とが減びる、ということもあるからである。 おそれげもなく彼らに対する謀略をたくらみ、遂には彼ら じっさい人間の精神は、一切を一瞬に洞察しうるにはあまを打倒することに成功したのである。こういうわけで、ら りにも鈍重であり、自他の意見をやりとりし論議をかわすの共和国の突然の倒壊〔←齔占は、評議に時間が空費され たということに起因するものではなく、その国制の不備と ことによって鋭敏にされるのである。そして人々は、あら いうことと支配者の数の僅少ということとに起因するもの ゆる手段を試みるうちに、遂には自分の望みの手段ーー万 だったのである。 人の是認するものでありながら、これまでだれもが思いっ かなかった手段ーーを見いだすものであって、こういう事 例をわれわれはオランダにおいて数多く実見してきた。も しもだれかがこれに対して、オランダ国は伯爵または伯爵 なおまた、多数の都市が統治権を掌握しているこの貴族 . の代理者たる総督なしには維持されなかったではないかと国家のほうが、さきの貴族国家よりすぐれたものだとされ 言って反撃しようとするなら、次のように応酬することが る、もう一つの理由は、この貴族国家においては、さきの できる。オランダ人たちは、自由を獲得するには、伯爵貴族国家においてのように、不意の襲撃によって国家の最・ = リ当一世フ〕をしりぞけ、国家という身体から頭を切り落高会議が一挙に壊減せしめられることを警戒する必要がな とすだけで充分だと考えた。そして彼らは、国家を改革す 、ということである。なぜなら ( 本章の九節により ) こ ) ることには思いいたらず、そのあらゆる部分を、以前に組の会議の召集には時も場所も定められてはいないからであ 織された状態のまま放置したので、オランダは、頭を欠い る。なおまた、この国家においては、強力な市民たちをそ た身体同様、伯爵を欠いた伯爵領として放置され、統治形れほどおそれなくてもすむ。なぜなら、多数の都市が自山 態そのものが名状すべからざる姿で残されたのである。そを享受しているところでは、支配への道を開こうとっとめ れゆえ、臣民のほとんどが、だれの手中に統治の最高権力る者が、一つの都市を手に入れても、それだけではまだ、 が帰しているかを知らなかったのも、あながち驚くにはあ他の諸都市に対する支配権を獲得するにはほど遠いのだか 政 らである。最後に、この国家においては、自由は大多数の たらない。またそれほどのことはなかったとしても、じっ さいに統治権を握っていた人々は、あまりにも少数であつ人間のあずかりうるものである。というのは、これと反対 一つの都市だけが支配するところでは、他の諸都市の たため、民衆を指導したり強力な反対派一「己を制圧した ( 四七 )
戦争との術に通じていればいるほど、また徳行のゆえをも 一つあるいは数個の都市を建設して、これらに防備を施 0 て臣民たちに慕われていればいるほど、それだけい「そさねばならぬ。これらの都市の市民はすべて、城壁の内部 う恐れるのである。その結果、王たちは、恐怖のたねがな に住むと、農耕に従事するため城壁の外部に住むとを問わ くなるようなぐあいに王子たちを教育しようとっとめるこず、ひとしく一国の市民たる権利を享受する。ただしこれ とになる。この点では廷臣たちも、ためらうことなく王に をいずれの都市も、自己防衛ならびに共同防衛のために 従い、王位の継承者を、自分たちのたくみにあやつりうる 一定数の市民を保有しているという条件のもとでのことで 無教養な人間に仕立てあげるよう、あらゆる努力をはらうある。もしこの条件を充たしえないなら、そういう都市 は、それぞれの事情に応じて、他の都市の支配下に置かれ ことであろう〔フ の均」一・の一の一〇、〕。 ねばならない。 八 これらすべてのことから、一国の権利が一人の王に無制 限にゆだねられていればいるほど、王が自己の権利を保持 軍隊は、もつばら市民たちでーーだれも免除されること することはそれだけ少なくなり、臣民たちのあり方もまた 組織されるべきであって、市民以外の者たちで組 . それだけみじめになる、ということが帰結する。したがっ織されてはならぬ。したがって市民はみな武器をとる義務 て、君主国家をりつばに安定させるためには、それを堅固 があるわけであり、何人も、軍事上の訓練をうけ、毎年指 な基礎の上に築きあげて、君主には安全が、民衆には平和定された時期にそれを実習する誓いを立てたうえでなくて が得られるようにし、その結果、君主は、民衆の福祉のた は、市民の数に加えられない。さらに各氏族の軍隊はいす めに最も尽力しているときに、最もよく自己の権利を保持れも部隊と連隊とに区分されねばならず、部隊の指揮官に . していることになる、というふうにする必要がある。そこ選ばれるのは築城術に通じた者でなくてはならない。なお で私は、このような君主国家の基礎がどういうものである また、部隊と連隊との指揮官たちは終身官として任命され かをます手みじかに述べ、ついでそれらを順を追って説明るが、一氏族の軍隊全体の指揮をとる者は戦争のさいにの するとしよう。 み選出され、せいぜい一年間だけ指揮権を握りうるのであ って、ひきつづぎ留任したり、のちに再選されたりするこ とはできない。そしてこの指揮官は、王の顧問官 ( これに
考えられない。したがって、隣接諸都市にも国政に参与すの 変革〕のもととな 0 たのはまさしくこういう事態であ「た。 なぜなら、そういうことは、多数の最良者たちの大きな蛛 る権利が認められ、各都市から二十人、三十人、あるいは 四十人 ( この人数は都市の大きさに応じて規整されねばな妬をあおり立てずにはすまないからである。そしてじっさ 議員の識見にではなく下級の役人の意見に知恵を借り らぬ ) の人々が市民として選ばれ、選良の仲間に加えられ ることが必要である。これらのうちから三人、四人、あるているような元老院が、概して無能な連中のより集まりで このような国家の状態は、王 いは五人が毎年元老院議員に選ばれ、一人が終身の監察官あることは疑いをいれない。 の顧問官が少数で支配している君主制の状態よりもたいし に選ばれるべきである。そして、これらの元老院議員が、 てまさっていないであろう。この状態については第六章の それぞれの選出された都市の知事として、監察官とともに 五節、六節、七節を見よ。しかしながら、国家がこの禍い 派遣されるのである。 を蒙る程度は、国家の体制のよしあしにかかっているので ある。すなわち、国家の自由が充分に堅固な基礎をもた なお、各都市に配置されるべき裁判官も、それぞれの都ぬとすると、それを擁護するには必ず危険が伴うものであ る。この危険を避けるために選良たちは、名誉欲に燃えた 市の選良のうちから選ばれねばならぬ。しかしこの点につ いては詳しく論する必要はないと思う。それは〔貴族制と庶民を役人に選出するが、これらの役人は、国家がくっ いう〕この特殊な政体の基礎に特有の問題ではないのであがえると、自由の裏切り者の怒りをなだめるため、いけに . えとして虐殺されるのである〔年ン総督「ウリ , ツによグて死刑に るから。 処せられ、ヤン・デ・ウ・ , トは一六七 - 二年〕。けれども、自由の基礎 - 四四 が充分に堅固なところでは、選良自身が自由を守る名誉を みずからに要求し、ものごとを処理する知恵を彼らの識見 おのおのの会議における書記官やほかの同種の役人は、 投票権をもたないのであるから、庶民のうちから選ぶべきのみからひき出すことにつとめる。さて、この政体の基礎 である。しかし彼らは長期にわた「て実務を扱い、事情にを据えるにあたって、私はとくに二つの規則を守 0 てき、 た。すなわち、〔第一に〕庶民を審議にも票決にも参与さ はなはだ通暁しているので、彼らの判断に不当な重みがか かり、国家全体のあり方がほとんど彼らの指導に依存すせないこと ( 本章の三節および四節を見よ ) 。〔第二に〕国 ( 三八 ) 一六家の最高権力は選良全体の手中に置き、執行権は監察官と る、とい 0 た事態がしばしば生する。オランダの破減〔七一一