女に - みる会図書館


検索対象: 坊主の花かんざし(一)
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1. 坊主の花かんざし(一)

ないことなのだ。 まあ ! おばあちゃんって人は , そう胸に叫んで一枚人ったトクホンの箱を片手に、きっとおばあちゃんの部屋の方を睨む。ポ イと机の上に置いてタ、タ、タと階段を下りる。 と、次の間の澳がスーツと開いておばあちゃんが姿を現す。ツ、ツ、ツと問題の部屋に入り机 の上のトクホンの箱を取ってポイと屑籠へ。 下では夫人、を使いながらキッと上眼づかいに天井を睨むー」・ まさにこれこそ、男にはサカ立ちしても出来ぬ「女の戦い」なのである。 一一十五年間の嫁と姑の確執 そのとき夫人はいかに興奮し、いかに充実感に慄えたことか , の果に、二人はこういう楽しみに到達したのである。 ーティで名流夫人を見かけた。夫人は娘時代からうたわれた ある時、私はあるガーデン。ハ 美貌に更に磨きのかかった三十歳の女盛り、夫君は実業界にその人ありと知られた人で金に糸目 をつけぬ装いは居合せた者たちの目を奪っているのである。 花そこへ夫人が来られた。 N 夫人もまた若き名流夫人で、夫人に勝るとも劣らぬ才気美貌の 主人、その服装の豪華さはかねてから定評あるところである。 N 夫人はガーデン。ハ ーティの主催者に向ってスイスイスイと歩みを進められた。主催者の傍に は夫人がいて華やかに談笑しておられる。夫人はスイスイと歩み寄って主催者に挨拶された ふる

2. 坊主の花かんざし(一)

49 坊主の花かんざし 宗薫は私の見幕に怖れをなし、 「うん、そうだ、その通りです」 と素直に肯いたあと、小声でひとり言。 「しかし、立たねえときはどうするか」 「立たなくても立たせるのです ! 神の加護を祈り、全身の力をふり絞って立たすのです , れが出来ないようならはじめから口説いたりすべきではない ! 」 つぶや 宗薫はカない声で呟いた。 「女はいいよなア」

3. 坊主の花かんざし(一)

豊田穣四本の火柱 ( 解説・小木曾新 ) 丹羽文雄書翰の人 ( 解説・八木毅 ) 柱旧 ( 解説・八木毅 ) 中村真一郎死の遍歴 ( 解説・平岡篤頼 ) 丹羽文雄有 よ。こ、よ・こカペー氏はレジス ( 解説・千葉宣一 ) 野坂昭如騒動師たち ( 解説・飯島耕一 ) タンスをしたのだ なたいなだクワルテット ( 解説・窪田船彌 ) 野呂邦暢鳥たちの河口 ( 解説・高橋英夫 ) なだいなたおっちょこちょ医 ( 解説・落合恵子 ) 野呂邦暢一滴の夏 ( 解説・高橋英夫 ) ( 解説・上野昂志 ) 夏樹静子影の鎖 ( 解説・山村正夫 ) 長谷川四郎鶴 夏樹静子蒼ざめた告発 ( 解説・野呂邦暢 ) 秦恒平慈 ( あっこ ) 子 ( 解説・野呂芳男 ) 夏樹静子星の証言 ( 著者年譜附 ) 畑山博神さまの親類 ( 解説・笠原伸夫 ) 夏堀正元 北に燃える ( 解説・巌谷大四 ) 原田康子 た亠 , ら ( 解説・寺久保友哉 ) 南条範夫古城物語 ( 解説・桑田忠親 ) 半村良闇の女王 ( 解説・権田萬治 ) 南条範夫続・古城物語 ( 解説・尾崎秀樹 ) 平岩弓枝華やかな魔獣 ( 解説・武蔵野次郎 ) なげがね 南条範夫抛銀商人 ( 解説・尾崎秀樹 ) 平岩弓枝女の足音 ( 解説・伊東昌輝 ) 丹羽文雄悔いなき煩悩 ( 解説・八木毅 ) 平岩弓枝この町の人 ( 解説・伊東昌皹 ) 丹羽文雄 ( 解説・八木毅 ) 平岩弓枝女と味噌汁 ( 解説・伊東昌輝 ) 丹羽文雄再 会 ( 解説・八木毅 ) 藤本義一ふりむけば朝 ( 解説・小松左京 )

4. 坊主の花かんざし(一)

黒岩重吾夜の挨拶 ( 解説・戸塚文子 ) 後藤明生笑い地獄 ( 解説・種村季弘 ) 黒岩重吾闇の肌 ( 解説・山口洋子 ) 後藤明生ある戦いの記録 ( 解説・磯田光一 ) ( 解説・鏡 源氏鶏太堂々たる人生 ( 解説・駒田信二 ) 小松左京骨 サテライト・ ( 解説・南山宏 ) 仲間 ( 解説・巌谷大四 ) 小松左京 源氏鶏太若 オペレーション 小松左京夜の声 ( 解説・三浦浩 ) 源氏鶏太優雅な欲望 ( 解説・小松伸六 ) 小松左京一生に一度の月 ( 解説・横田預彌 ) 源氏鶏太爽やかな若者 ( 解説・駒田信二 ) 小松左 ~ まぼろしの二十一世紀 ( 小松・土屋対談 ) 源氏鶏太私にはかまわないで ( 解説・巌谷大四 ) 源氏鶏太万事お金 ( 解説・巌谷大四 ) 小松左京猫の首 ( 著者年譜附 ) 源氏鶏太天上天下 ( 解説・末田大輔 ) 五味康祐ザ・おんな刑事 ( 解説・秋山駿 ) 源氏鶏太二十歳の設計 ( 解説・落合恵子 ) 五味康祐女無用 ( 解説・金子嗣郎 ) 小泉喜美子弁護側の証人 ( 解説・青木雨彦 ) 五味康祐色の道教えます ( 解説・虫明亜呂無 ) 小島信夫女 流 ( 解説・河野多恵子 ) 五味康祐風流使者 ( 解説・深野治 ) 小島信夫 銃 ( 解説・長谷川泉 ) 斎藤栄奥の細道殺人事件 ( 解説・中島河太郎 ) ( 解説・著者 ) 斎藤栄禁じられた恋の殺人 ( 解説・山村正夫 ) 小島信夫島 後藤明生挾み撃ち ( 解説・大橋健三郎 ) 斎藤栄ダイヤモンドと暗殺 ( 解説・室伏哲郎 )

5. 坊主の花かんざし(一)

「そんなことをなぜいちいち相手に知らせておく必要があるの ? 」 相手はわかりきったことを聞くな、という顔で、 「あとあとうるさくないようにさ」 「何がうるさいの ? 」 「わからないかなあ。つきまとわれると困るからさ」 でもなぜ : : : 」 といいかけて、私はロをつぐんだ。 なぜ、相手からっきまとわれる心配があると思えるのよ ? と私はいいたかったのである。 金など渡して、「オレとお前はこれきりの関係だよ」ということをわざわざ教えなくても、相 手は相手で、 「これを」りよ」 と田 5 っているかもしれない。 一度きりにしたいんだけど、この人、しつこくつきまとわないかしら ? : ん 花と心配しているかもしれない相手に、安心料として金を渡す、というのならわかる。だが、ご 主当人は「つきまとわれないように」あらかじめ金を渡しておくのだとおっしやる。 女ども数人集りて某氏のこの答を聞き、

6. 坊主の花かんざし(一)

118 女の怒り ある女性にはじめて、漸く恋人が出来た。仮に彼女を子さんとしておく。子さんは三十を 一つ二つ過ぎ、会社勤めをしている。彼女は淋しい生い立ちで肉親に恵まれず、金にも才能にも 美貌にも縁が遠かった。それゆえ、三十を過ぎるまでおよそなまめかしい話というのがなかった のだ。 彼女の友達は一人残らず恋愛をし結婚をし、子供がいる。その人たちは彼女に同情していた。 友達が集るときまって彼女の話題が出、 「いい人いないかしらねえ」 「ホントにいい人なのに気の毒ねえ」 などといい合うのであった。 その >- 子さんについに恋人が出来たのである。 「まあっ ! ホント ! 」 「よかったわねえ : ・ : 」 友人たちは顔を見合せて肯き合った。子さんの恋人というのははや四十の声を聞いた会社員

7. 坊主の花かんざし(一)

110 「つきまとわれると思ってんのかいな、アホらし ! 」 と叫ぶ人、 「この用心深さは男性特有の楽天性から来ているもののようね」 と肯く人、 「ウソよ、そんなこと ! 金をやるのは男の虚栄心よ ! 」 と断定する人、 「もてようと思ってるのよ。金でも渡さなきやもてないから : : : 」 と口を歪める人、 「自分ばっかり楽しんで、相手を堪能させることが出来なかったお詫びやないのん ? 」 と好意的な人、 「自分のような者の申し出をよくぞ受け人れてくれたという感謝じゃないの ? 」 と好意的なのか悪意的なのか、よくわからぬ人、 「けどお金を貰っても、それは別としてつきまとう人がいるかもしれないわねえ」 という心配性の人、 「もっと貰おうとして、しつこくつきまとう女がいたらどうするのよ ! 」 と怒りを押えかねている人、 いろいろであったが、結論としてはどの派もみな、 「男って、こういうところで無イミな金を使うのねえ」

8. 坊主の花かんざし(一)

悪運 私が二度目の結婚式をした日は十八年前の四月一日、仏滅といわれる日であった。仏滅でエイ プリルフールの日だというので、招待状を出しているのに宴席に来なかった人がいる。 「本当なの ? 」 と私の甥は確かめの電話をかけて来た。 おまけにその日は四月だというのに、大きなぼたん雪の降った日で、私の母は不吉なことが外 あんたん ければよいがと、暗澹とした表情であった。その答は約十年後に現れた。私たちは離別したの「 ある。 それが仏滅のせいかどうか私にはわからない。もともと私は亭主運の悪い女であるから、仏 であろうと大安吉日であろうと、ダメになっただろうと私は思っている。私がそういうと遠藤雪 作はこんなことをいった。 「それはだな、お前さんの亭主運が悪いというのやのうて、お前さんの亭主になると、運が悪 - ( なるということや。頼むから、オレのそばへあんまり近づかんといてくれよな」

9. 坊主の花かんざし(一)

いつまでも若く美しい老女になろう : 何という空々しい一「ロ葉であろうか。こういうことをいう雑誌社やテレビ局にはばあさんがい、 いから平気でいえるのだ。 若く美しい老年とは何か。 身体の中は適度に枯れ、外側を美しく若々しくとりつくろえということなのか ? みずみす すると、いやちがう、身も心も常に瑞々しく保っということなのですという。だからその、 「身も心も」の、身の方がいつまでも瑞々しいということが悲劇のモトなんだよう、このアホ ダラ、と怒鳴りたいのをこらえ、大半の初老の女性は、 「そうなれたらいいわねえ」 とおっき合いの徴笑を泛かべるのである。 いつまでも若々しく美しい老女 せきりよう そう見えたところで、寂寥に満ちた秋風は彼女の身体の中を吹くのをやめない。 深沢七郎の名作『山節考』のおりんばあさんはまっ白で丈夫な歯を自ら欠いて、山に捨て、 ん れる用意をする。このおりんばあさんこそまことの女の鑑ではあるまいか。私はそう思う。 の 主

10. 坊主の花かんざし(一)

佐藤愛子談、 「そういう奴は殴るよりしようがないです ! 」 私はふくれ面のまま呆然となった。こんなコメントが新聞に出ることは、おそらく日本ジャア ナリズムはじまって以来、最初にして最後であろう。 xx 新聞に私のコメントが出たかどうか私は知らない。私は怖くて xx 新聞を開くことが出来 ないのである。ホントは私は人が思っているような勇猛果敢な女ではないのである。 このコメントの話を川上宗薫にすると、彼呆れて曰く 「そういうときははじめに断ればいいんじゃないか。今、テレビを見てるからって」 仰せの通り。はじめに断ってしまえば、「殴るしかないです」などとムチャクチャをいうこと もないのだ。ところが、それが私には出来ない。 「出来ない ? なぜだ ? 」 宗薫は不思議でたまらんという顔。 「だって、せつかく聞いて来てるのに、悪いと思うのよ」 「殴れ、なんていう方がよっぽど悪いだろ」 「そうなんだけど : : : それがどういうわけだか、いえないのよ : : : つまり、気が弱いのね。わた しって。人がいいのかな。優しいのかな」 「気が弱い ? 殴れなんていってかい」