集英社文庫目録 ( 日本文学 ) 阿川弘之こんべいとう石坂洋次郎だれの椅子 ? 遠藤周作埋もれた占城 阿川弘之あひる飛びなさい石坂洋次郎金の糸・銀の糸遠藤周作ぐうたら社会学 川哲也ヴィーナスの心臓石坂洋次郎ある日わたしは大藪春彦東名高速に死す 鮎川哲也企画殺人石坂洋次郎河のほとりで大藪春彦壙野に死 鮎川哲也密室殺人石沢英太郎殺人日記大藪春彦狼は暁を駆ける 舞石原慎太郎野蛮人のネクタイ大藪春彦復讐に明日はない 有吉佐和子連 有吉佐和子乱 舞石原慎太郎野蛮人の大学大藪春彦獣たちの墓 生島治郎汁血流るる果てに石原慎太郎終 幕大藪春彦孤狼は挫けす ス。ホー 石原慎太郎汚れた夜大藪春彦切札は俺た 生島治郎白い。ハ 生島治郎殺しの前にロ笛を石原慎太郎青い殺人者大藪春彦狼は罠に向かう 生島治郎死ぬときは独り五木寛之風に吹かれて落合信彦二〇三九年の真実 生島治郎悪人専用五木寛之ゴキブリの歌梶山季之のるかそるか 生島治郎連命を蹴る五木寛之野火子梶山季之血と油と連河 池波正太郎スパイ武士道五木寛之地図のない旅梶山季之罪の夜想 し・刪冫 池波正太郎幕末遊撃隊遠藤周作愛情セミナー梶山季之黒 池波正太郎英雄につ。ほん遠藤周作勇気ある言葉北杜夫船乗りクプクプの冒
その頃ばくは大金持、祇園の一カ茶屋で、舞妓、芸者をあげて大散財ゃ。『ゃあ、君奴、イ " さかずき バイ飲め ! おう、小花か、まあ、こっちへ来い ! 」と女どもに盃与えておるんだが、突如 オレはわめく。『だまれーツ』とね。オレの脳裏を猫虐めてひとり淋しく暮しておる佐藤愛子 ( 姿が一瞬過るんだ。オレは発作的に内ポケットより小切手帳を取り出して、サラサラと一筆、 百五十万円也 ! 「おい、言か、これを佐藤愛子のところへ送ってくれ ! 』 そしてオレは悲しき酒を飲む。お前さんのためにゃな、オレの歓楽はこうして屡々、さまた 1 られてしまうのや。なあ、 くん ? そう巴わんか ? 北杜夫、川上宗薫、遠藤周作の三人が 月々三万すっ、佐藤愛子に金を送らんならんことになってもかまわんか ? 」 「うーん、それは、ばくだってあんまり気がすすみませんねえ」 「そうだろう。だから、ばくは佐藤愛子を今のうちに結婚させてしまいたいんや。ばくらの老 の平安のためにやね、誰かに彼女を押しつける必要がある」 北杜夫は暫く沈思して、 ざ「それはい、 し考えのようだがねえ」 北杜夫はロごもった。 花 いますかねえ : ・・ : 」 主「相手がねえ : 坊 北杜夫はこのところ風邪をひいて閉じ籠っていたとかで、やや鬱病の気がある。その鬱病が、
不愉快な話 最近のマスコミの話題で最も不輸央だったことは、ジャクリーヌがオナシスの遺産をいくら貰 ったかということである。ジャクリーヌがいくら遺産を貰おうと、我々の知ったことではない。 もと大統領夫人だったかもしれないが、たかがアメリカ女のことではないか。なにゆえ日本の、 しかも大新聞までがやれ増えたの減ったのといい立てねばならぬのか。私は不愉快である。 そういって怒っていると、次に出たのが「高額所得各界ベストテン」という記事だ。これまた、 カネの話である。ひとがいくら稼ごうと、当方のフトコロが潤うわけではないのだ。その人たち のおかげで、当方の税金が安くなった、とでもいうのなら一所懸命に名を覚え、カステラの一箱 ロ でも持って挨拶に行ってもよいが、そっちはそっち、こっちはこっちで税務署にガバガバとふん んだくられている。べつに羨むにも当らないし、尊敬することもないのである。 なのにこれまた、方々で話題になっている。おまけに文壇高額所得ベストテンの中には、遠藤 主周作、北杜夫、川上宗薫の三友人が名を連らねていて、私は美容院、呉服屋、八百屋、プリキ屋、 どこへ行ってもいわれる。 「佐藤さんのお友達はみなさん、たいした方々ですね工。所得ベストテンにクッワを並べて入っ
もの書きの友達 世の中にはものを書く人間を特別偉い人間であると思いこみ、先生と尊称してその前に出ると 緊張するという人、また、もの書きなんぞ人間のクズであると怒っている人、あるいはまた、 「なに ? あの男は小説を書く ? 娘を二階へ隠しなさい」 もの書きはすぐ女に手を出す行儀の悪い者だと思い決めている人などいろいろだが、私の母の ように、夫も息子も娘ももの書きとなった一家の主婦は、 「もの書きとは、キチガイと常人の中間人間やと思てたら間違いおません」 と断定していた。 凵よく人から、あなたたち作家のお仲間はどんな話をするの ? と聞かれる。改まってそんなこ ざとを質問されると、世間の人は作家というものをよくよく特殊な人間だと思っておられるらしい かことが窺われるのである。 の ところで秋雨の一日、私は遠藤周作、北杜夫ご両人と久しぶりで閑談した。遠藤、北両氏は学 主 坊 識深く英智秀で現代を二分する人気作家である。その両巨頭の談話とは次のようなものであった。 、士ロ
「いますかねえ : ・・ : 」 と低く呟くと、へんにリアリティが出て私の方の気も何となく滅入るのである。しかもこの沈 鬱なる「いますかねえ」の一言に、遠藤周作が俄かに夢醒めたる人のごとく、眼を。ハチクリさせ いらえ しばらくして、彼は気をとり直そうとするもののごとく、 て答がない 「なんかいるやろ : ・・ : 探したら : : : 」 大掃除の手伝い探してる話じゃないんだよ、全く。 「君、おらんのかしオ よ。一人ぐらし候補者は」 その遠藤さんの一一一一口葉に、思わす、 しいかけて私は迷った。 実は半月ほど前から、私は一人の男性につきまとわれて閉ロしているのだ。その男性は千葉県 の人で、朝にタに私の家を訪うて来る。電話の回数は数知れす、彼は私に結婚の申し込みをして いるのである。 その人は何やら海洋発明とかにたすさわっている人で、金も地位もないが、心だけは誰にも負 けぬ、といって来た。はじめは「、いの友」になりたいという申し込みであったのが、一度も会っ てないのに「恋いこがれています」というあたりからおかしくなって来た。 「わたしはね、海水から石油を取る発明を近々、完成させることになっとります。その暁はノー ベル賞は間違いありませんから、そうしたら、あなたの小説をベストセラーにしてあげますよ。
返答の苦しさ、お察し下されたようであった。 帰る道すがら、私はだんだん気が滅入って行った。何ともいえない恥かしさと情けなさ。ああ、 こんなごま化しをいってまて、娘を学校に入れねばならぬものか ! しかし、よりにもよって、 「よく勉強しますか ? 」とはねえ。 「してるかしてないか筆記テストの点を見ればわかるではないかッ 、、「 ) ゝつ ) 0 ホントはそれくら、 かくて我が娘は落第した。 「落第 ! 落第なんて少しも恥かしくありません ! 遠藤周作さんをごらん、あの人は劣等生で 二年も浪人してやっとこさ慶応へ入れた人です。しかし今日の遠藤さんを見よ ! 今や彼はすべ ての劣等生の輝やける希望の星である ! スラスラと合格するだけが人生ではないのだ ! 」 私は茶の間の炬燵を叩いて演説した。 「受験の意味は結果にあるのではない , あなたがこのたび、受験に立ち向うことによって努力 するということを経験しました ! 苦しさに堪えることを体験した ! それが受験の意味なので ある。落第、結構 ! 挫折、結構 ! そこから立ち上る時に人は意志力を体得するのだ ! 落第 ハンザーイい . 」 そのとき電話のベルの音。何とか育英所の所長さんからで、 「えー、お嬢さんが学園へ入学なさったそうで、その感想をひとっ :
「じゃ、あなたの説は確かですね。この説を私が発表したために楠本憲吉、赤恥をかいても知ら んわよ」 「大丈夫、大丈夫」 次に私は秋野卓美画伯に電話をかけた。この方のことを遠藤周作氏は「下痢のキリスト」と名 づけている。いつも機嫌に変化のない親切なキリストなので、何か困ったことがあると私は彼に 電話をかけたくなる。 「秋野さん、あのね、処女マクって、どんなものか、教えていただきたいんだけど、知ってます 知ってますか ? と聞くのは、非礼に当るのか当らぬのか、どっちだろう ? 「はア、処女マクねえ、ばく、よく知らないですねえ」 極めて素直な返事が返って来た。 つまり、出るものを出すための穴が」 「あれは真中に穴があいているんでしよう ? ロ「はあ、それくらいは私も知っているんですけど、つまりオプラートみたいなものだという説と、 シャプシャプ用牛肉風かつのれん風だという説と二つあるんですけれど」 ん 「はーア、ばくはよく知らないんですけど、ばくとしてはその中間説をとります」 主「中間説とい , っと ? 」 「オプラートのように薄くて、しかし、ノビチヂミするもの、ゴム様のものですね」 下痢キリの秋野さんはあくまで真面目である。
浦悪いこといわん、結婚しろよ」 私「結婚 ? なんで急にそんなこといい出すのよ ? 」 遠藤「君ももうそろそろ五十一やろ、結婚した方がええ」 「もうそろそろ三十やろ云々」といういい方は知っているが、「そろそろ五十一やろ云々」と、 ういい方は聞いたことがない 「なあ結婚しろよ。頼むわ、結婚してくれ」 次第に遠藤さんの語調は懇願の調子を帯びて来る。 「なんで私が結婚せんならんのよ ? その理由は何 ? 」 やや居直る感じで問うと遠藤さんはいった。 「ばくは君がそうしてひとりでブップッ怒ってばかりいるのを見るとやね、これから十年先、一 十年先のことをつい思うんや」 「何です、十年先のことて ? 」 ナ′学 / ・子 / し子 / . し 、君の頭はポケて、小説もたいしたもんが書けんようになって市 るわな。そこへもって来て、響子嬢 ( 私の娘の名 ) は結婚することになる。そうしたら君は暇〔 まかせて、ムコさんの悪口をいい出すやろ。『何です ! あの柔弱なツラは ! ・』とか『ノラク = 者 ! グウタラ ! それでも男か ! 』などとわめく。そうなったら響子さんが可哀想や。ムコ亠 んも可哀想や。しかしもっと可哀想なのが君、佐藤愛子や。娘夫婦はもう寄りついてくれん。 は野良猫か何かを拾うて来て、猫に八ッ当りして暮しおる。
合がやたらに威張った時期がある ) 。そのほか、怖いものを数え上げればキリがない。勿論、地 震、雷、火事、親爺、隣の親爺、向いの親爺、みな怖かった。 その頃、さる雑誌のアンケートで怖いものは何ですか、と聞かれ、はたと答に詰った。 「布いもの・・ : : ・何かしら ? 」 と考えていると、相手はいった。 「地下鉄で大地震に会った時のこと思うと怖くないですか ? 」 私は考える。その時は仕方ない、度胸定めて死ぬ、と。相手はいう。 「では強盗、強姦のたぐいは如何ですか」 いつだったか、有名人強盗というのが出て、曾野綾子さんや犬養智子さんや俵萌子さんなどが 襲われた。その強盗は有名人の美女を襲うのである。 それで実をいうと私はひそかに強盗がやって来るのを待っていた。べッドの枕許に壊れたテー プレコーダーとか、欠けた花瓶とか、別れた亭主が忘れていった太身のステッキなどを並べて、 強盗が入って来たときに投げつける練習などもしていたのである。 にもかかわらす強盗はいつまで待っても現れす、遠藤周作は、 「君はついに強盗にまで見捨てられたか ! 」 と喜ぶ始末。 「なぜ来ぬ ! 」 と私は叫び、その時から私は強盗など少しも怖くなくなったのである。
集英社文庫目録 ( 日本文学 ) 黒岩重吾幻への疾走源氏鶏太銀座立志伝斎藤栄占都殺人事件 黒岩重吾タ陽ホテル小泉喜美子弁護側の証人斎藤栄愛と血の 斎藤栄危険な水 黒岩重吾紅ある流星小松左京骨 サテライト・ 小松左京 斎藤栄王将殺 黒岩重吾飢えた渦 オペレ : ション 黒岩重吾景 彡に棲む它 璽小松左京夜の声早乙女貢奇兵隊の叛乱 黒岩重吾どかんたれ人生小松左京一生に一度の月早乙女貢維新の旗 小松左京ま・ほろしのこ + 一世紀早乙女貢赤 黒岩重吾夜の挨拶 黒岩重吾闇 の肌小松左京猫の一目早乙女貢血槍三代 ( 青存編 源氏鶏太堂々たる人生五味康祐ザ・おんな刑事早乙女貢血槍三代 ( 愛欲当 仲回 五味康祐女無用早乙女貢血槍三代 ( 風雲当 源氏鶏太若 源氏鶏太優雅な欲望五味康祐色の道教えます笹沢左保破壊の季 源氏鶏太爽やかな若者五味康祐風流使者笹沢左保白昼の囚 源氏鶏太私にはかまわないで斎藤栄奥の細道殺人事件笹沢左保孤独なる追跡 源氏鶏太万事お金斎藤栄禁じられた恋の殺人笹沢左保絶望という道連れ ト斎藤栄ダイヤモンドと暗殺笹沢左保結婚関係 源氏鶏太天上天 源氏鶏太二十歳の設計斎藤栄「伊勢物語」殺人事件佐藤愛子鎮魂