イジワル - みる会図書館


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1. 女の学校

イジワル合戦 たいへん早起きの姑さんがいた。五時になると起き出して、水道の水をジャアジャアと流して 顔を洗い、ガラガ一フガーツとものすごい声でウガイをし、仏壇の鐘をチーンチーンチーンと三つ も鳴らして拝む。 「私の一日の苦業は、この音から始まるのです」という切々たる訴えを受けたことがある。訴え の主は、姑はとてもイジワルな人で、多分、イジワルが生き甲斐になっているんです、といった。 早起きをしてガラガラとウガイをするのも、仏壇の鐘を鳴らすのもイジワルである。もしイジ ワルでなかったら、仏壇の鐘を一二つも叩かないだろう。三つどころか、仏壇を拝むのは皆が起き てからにするのが普通ではないか。 それに姑は肉を食べないという。嫌いなのではなく、イジワルのために肉を食べない。つまり 嫁に肉を食べさせまいとして ( 嫁さんが肉好きなので ) 自分も我慢しているのだという。肉は肉 体労働者である主人だけが食べればよいと姑はいう。 また姑は。ハーマネントをかけない。それもイジワルのためであって、自分がかけないことによ

2. 女の学校

当にイジワルかどうかがわかるのである。 神経質な人はそれを確かめずに、鐘が鳴ると飛び起きる。ウガイのガラガ一フでもう目が覚めて いる。ウガイの前にもう目を覚ましていて、ガラガラがはじまるのを今か今かと待ち構えている のかもしれない。そこへ、 「ガラガ一フガーツ」 「ほら ! また ! こうして私にアテつける」 お嫁さんはカッとなる。先に目が覚めていたものを、「姑のために起された」と思う。もしか したらそういう風に思うことが、お嫁さんの気に人っているのではないか。 こう考えて来ると、イジワルなのは姑の方ではなく、本質的には嫁の方だといえるかもしれな い。「イジワルをされていると思うことが好き」という厄介な性質が、なぜか女にはある。 姑が鐘を鳴らしてもグウグウ、ウガイのガラガラガーツでもグウグウ、肉をたらふく食ってみ たらどうですか、と私がいうと、そのお嫁さんは、 たださえ、イジワルされてたいへんなのに」 「そんなこと、どうして出来るんですかー・ と気色ばんだ。 学 の「どうして出来るんですか」 と気色ばんでいわれると、 「どうして出来ないんですか」

3. 女の学校

118 せいちゅう って、嫁を掣肘している。旅行も行かない。芝居も見ない。テレビも歌謡番組はつまらないとい って ( 嫁さんが歌謡曲を好きなので ) 教養特集にチャンネルを廻す。 「私たちが中国語講座を聞いて何になりますか : : : 」 と彼女は私にまで喰ってかかった。 すると、つまり姑さんは嫁さんにイジワルをするために、中国語講座を聞いたり、肉を食べな かったり、自分も一生懸命、我慢をして一切の欲望を押えているということになる。 「もしそうだとしたら、姑さん自身だってつまらないじゃありませんか」 私がいうと嫁さんは力をこめて答えた。 「だから、イジワルが生き甲斐なんですよ ! それほど私がニクいんです」 こういう話を聞かされると、私は困ってしまう。姑さんはイジワルのために仏壇の鐘を一二つ打 つのではなくて、もしかしたらただ鈍感な、自分勝手な人であるだけなのかもしれない。鈍感だ から人の立場がわからない。わからなければいけないとも思わない。自分は目が覚めたが、嫁は 眠いだろうとは思わない。いや、眠いだろうとは思うが、仏壇の鐘ぐらい叩いてもかまわないと 思っているだけかもしれない。 それをイジワルと思い決めるのは、お嫁さんの感受性が鋭敏すぎるためであって、もしお嫁さ んも鈍感な人であれば、鐘が三つ鳴ろうと五つ鳴ろうとグウグウ寝ているだろう。グウグウ寝て

4. 女の学校

コドモはたいへん・ 人生相談は必要か ? ・ 食べる 女はいい・ 子を叱る・ 無駄は無駄でない 少しもふしぎではない・ お父さん頑張れ・ いやアな気持 : 子供のごまかし方・ 勿体ない病・ 子供は知らない : 人間の愛らしさ : まことの女 : イジワル合戦・ 合理的・ 失ったもの : ・一 0 九

5. 女の学校

120 と私はいいたくなる。試みてみようとせずに、 ( 自分を変えようとせずに ) 私の毎日は苦業の 日々です、と思い決めて歎いている。そういう返事に会うと、この人は何のかのいっているが、 このイジワル合戦が好きなんだな、と私は思うことにしている。 いさかい 嫁と姑の諍をどうすることも出来ないあの男はフヌケだというような批評を耳にすることが ある。しかし、こういう次元での諍に男が出場を失って、手も足も出なくなるのは当然だと私は 田 5 う。 私が男性に同情するとしたら、まあ、このへんです。