テレビ - みる会図書館


検索対象: 女の学校
27件見つかりました。

1. 女の学校

子供のごまかし方 テレビコマーシャルにこういうのがある。 大きな窓の外、若葉が朝の光にキラキラ光っていかにも爽やかな朝である。 部屋の中、子供と青年がテープルに向って。ハンを食べている。子供が、なぜラーマはおいしい のと青年に訊く。すると青年は勢いよくいう。 うまいってことよ ! 「理屈なしツー それから一呼吸おいて、 「朝はうまい ! 」 元気よく叫べば、子供はつられて同じように声をはり上げ、 校「一フーマはうまい ! 」 A 」 女 私はこのコマーシャルが好きである。このコマーシャルが始まると、新聞を読んだり手仕事を したりしていても、必ず顔を上げてテレビを見るので、娘が気がついていった。 0

2. 女の学校

122 「急に思い立って、出て来たんです」 それを聞いて私は、思わず溜息を洩らしそうになった。 東京の空があんまりうっとうしいので、急に思い立って北海道の旅に出た テレビドラマでも見ているようで溜息が出る。そんな女のひとり旅は、テレビの中にしかない と思っているのが、我ら大正女の悲しさである。女がひとりで旅をする時は、身内の葬式とか、 転勤の夫の所へ行くとか、実家の父親が倒れたとか、のつびきならぬ用件を抱えているものと決 っていた。 空がうっとうしいから旅に出る、などといおうものなら、何を寝ポケていると叱られ た。しかも我らの青春時代は、旅に出ると決れば、米の袋を担いで行かねばならなかった。 二人はまるで以前からの知り合いのように、楽しげに談笑している。もしかしたらこのひと時 が彼女の運命のわかれ路かもしれない、と三文作家である私は想像する。 このひと時がきっかけとなって、二人の間に恋が始まる。青年には婚約者がいて、そのため、 三人が三様の苦悩に陥る。 私は改めて青年を眺め、この男は好青年だが、育ちのよさから来る気弱さが欠点かもしれない と田 5 う。彼は恋のために親や婚約者と戦う気力を持続させ得るだろうか ? この出会いはもしか したら、彼女の人生に最初の不幸をもたらすものかもしれない。 二人はテープルから立ち上り、

3. 女の学校

若者よ、この親に一掬の涙をー ある母親が、大学生の娘が酒を飲むので困ります、と歎いていた。すると、 「お酒飲んで、なんで悪いんですかア ? 」 と若い女性が反問した。 「それだけでなく、外泊も多いんです」 と母親がつけ加えると、 「息子だったら、外泊しても何もいわないでしよう。娘が外泊したら、なぜいけないの」 と若い女性はまたいった。 その大学生の娘は、月に十七日外泊をし、小遣いを四万円使い、それでも足りず金をせびる。 与えないとお母さんの指輪を質に入れ、「くれないのなら身体で稼ぐわーなどという。ある日の テレビの身の上相談番組の中でのことだ。 「お母さんの指輪を質に人れてお金を作るなんてガッツがあるわ。大丈夫。ほっといても心配い りませんわ」

4. 女の学校

いやアな気持 もう数週間前のことになるが、テレビニュースを見ていたら、愛人を殺害したという歌手が、 手錠をかけられた姿で飛行機から下りて来て、カメラマンの集中攻撃を受けている情景が写し出 された。歌手は頭を深く垂れてモミクチャになりながら歩いて行く。そのロもとにマイクをさし つけた男が訊いている。 「今の心境は ? 」 歌手は何か答えたらしい。ぼんやり見ていた私には聞きとれなかったが、マイクの男は更に、 「もう一言」 と迫る。すると、 校「おさがわせしてすみませんでした」 のと歌手が答える声が耳に人り、一瞬私は無惨というか、あわれというか、いやアな気持になっ 女 た。殺人者に心境を訊いて、それが何だというのだろう。 「おさわがせしてすみませんでした」

5. 女の学校

人生相談は必要か ? 大分前のことだが、旅先のホテルのロビーでテレビの人生相談を見た。 相談者は若い人妻で、その相談というのは「夫がイヤでたまらないから別れたい」ということ である。 では夫のどういう点がいやなのか ? 彼女はその理由を述べた。 夕飯のときに壁にもたれる。 水ムシの皮をむく。 枕に脱毛がついているのがキモチ悪い。 イビキをかく。 校見ていた私は思わずアハハノ 、と笑ったが、回答の先生方は一様に困惑の態。この回答はやさし のいようで本当に難しい。こういう我儘な感性を一言や二言で変えることは不可能だからである。 女 どういう回答が出たのか、私はそこで出かけなければならなくなったのが残念である。ホテル を出ると同行者が、 わがまま

6. 女の学校

女が見たロッキード事件 ロッキード事件の証人喚問のテレビを見ていると、傍にいた女の人がいった。 「男ってすごいもんですねえ」 すると別の人がこういった。 「出世する人ってすごいものねえ」 全くその通りだと私も同感した。 断乎として真実はいうまい、真実を掘り起される手がかりを与えるまいと決意した ( それゆえ、 能面のように無表情になっている ) 顔が、言葉少なく答える。怒号されようと、詰め寄られよう と、その表情には毛ひと筋の動きも起らない。 校「私たち女は、いくら強くなっても、とてもああはいきません」 さたん のと我々は嗟歎した。 女 あれは、やつばり男の「ハラ」というべきものなのであろうか ? いじよう 敵に囲繞されて、ばっともろ肌ぬぎ、「斬るなと突くなと好きにしてくれ ! 」とわめく。殴ら

7. 女の学校

少しもふしぎではない 歌手が殺人を犯した。 とん 早速、新聞、テレビがそれについて分析論評を加えているが、その殆どが、この歌手はおと・ しくマジメな紳士であったという知人の言葉を紹介している。彼を知る人は異ロ同音に、あの ジメな男がなぜ人を殺したのか信じられません、といっているのである。 それを読んで私は、あるふしぎを覚えた。そのふしぎというのは「おとなしくてマジメない 男が人殺しをしたことをふしぎに思う」ことに対するふしぎである。 何か事件が起る。すると近所の人とか学校の先生とか友達とかが、その事件を起した人物に ( いて語る。 校「あんなマジメないい人がこんなことをするなんて信じられません」 のそんなとき私は「なぜそう思える ? 」という反問がいつも胸に湧き上る。そして、 女 「いい人」とはどういう人だろう ? 「マジメ」とはどういうことだろう ?

8. 女の学校

「なに、すみませんでしただと ? キャッチボールして隣の窓ガラスを割った場合とはちがうん だぞ ! 」 と怒るのは簡単だが、しかし、考えてみるとこの場合、彼としてはそう答えるほかに一言葉がな いであろう。人殺しをしてそれが発覚したときに、現在の心境を述べることの出来る人間なんて ザラにいるものではない。頭が混乱して何もいえないのが普通である。 だから、本当は何もいわず、沈黙を守っていればよいのだ。だが、彼は「おさわがせしてすみ ませんでした」と答えた。 それを彼の律義さと判断しようか、それともマスコミの世界に生きる者の、マイクロホンに対 する悲しい習性と考えようか。 また別のテレビでは、捕縛されて車で連行される彼に、こんなことを訊いていた。 「お嬢さんに会いたいと思いますか ? とても可愛かったんですってね」 さなか これから連行されていくという最中、何のためにこういうことをいう。私はますますいやアな 気持になった。大衆のお涙をねらう一二文小説にも、これほど卑しく低俗な意識はない。このいや らしさにくらべれば、殺人者に向って、 「鬼 ! 畜生 ! ケダモノ ! 」 あくば と怒りに燃えて投げつける大衆の悪罵の方がよほど爽やかではないか。

9. 女の学校

男の修業 数日前、テレビにこんな人生相談が出ていた。相談者は月収四十万円もある美しい人妻である 彼女の夫は、妻が自分よりも多額の収人があること、彼女が何かというとそれをハナにかける能 度をとることを耐え難く思って、家出をしてしまったのである。 その家出のきっかけとなった出来ごとというのは、彼は奥さんに時々、金の融通を頼むが、 の朝、奥さんがつつけんどんに、 「お金いるの ? いくら ? 」 といった。そのえらそうないい方がカンにさわったのが直接原因であるという。 「いくら ? 」といったいい方が、本当にハナにかけたえらそうないい方であったのか。それとも その夫のヒガミ根性が、それを「でかい態度」ととったのか。その解明は困難である。 学 の「この夫は小心すぎる。もっと大きくなれ」という意見もあるだろうし、「女はあくまで女らー 、夫の気持を察して夫を立てるようにするべきだった」という意見も意見としてはもっともた 意見であろう。

10. 女の学校

154 相手は私の見幕にびつくりして、 「はあ、つまり、そのう : : : あのですネ、つまり、あの、何です」 とくり返すばかり。 「あなたのその発想は実に老人を侮辱しています。なぜ、″老人に愛される若者になるためには〃 という発想がないんですかッ ! あるいは″若者を愛する老人になるには〃となぜ考えないんで 「はあ、なるほど」 「なるほどじゃないッ ! 怪しからん ! 私はそんなことを考えてまで愛されようとは思いませ んよ ! 私は孤独に徹します。わかる奴はわかる。わからぬ奴はわからなくていい。愛さない奴 は愛さなくていい ! 私はそう思っています。それくらいの気概がなくて、どうしますか。長い 人生を苦闘して来てですよ、その果てに若者に愛されることをなぜ考えねばならんのです ! 思 い上るな、それが私の答えです」 相手は閉ロして引き下って行った。 九月十五日は敬老の日だという。私は老人の日、母の日、父の日、すべて嫌いである。老人の 日だというと、急にテレビタレントなどがしみじみした口調になって、 「おじいさん、おばあさん、いついつまでも ( いつまでも、といわずに " いついっ〃と重ねてい