三恵子 - みる会図書館


検索対象: 女の怒り方
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1. 女の怒り方

レビ局のレポーターに対してだ。しかしレポーターの方だって好きで私にマイクをさしつ けているわけではないだろう。このうるさがた、また怒り出すに決ってる。これも仕事だ、 あーあ、イヤダイヤダ : : : そう心に泣きつつマイクをさし向けているのであろうと推察す ると気の毒でたまらない。そんなに気の毒なら愛想よくコメントを出せばいい、と簡単に とっさ いう人は能力のある人であって、不器用な私は咄嗟にそういう芸当は出来ないのである。 そのあれやこれやが矛盾を産んで私はどうしようもなく、憤怒に身を灼く。 この憤怒の辛さが誰にわかるか ! ☆ 三恵子さんが社会正義といったのは、葬式の挨拶みたいなものなんだと私は思う。 「惜しい人を亡くしました。もっともっと長生きして活躍してほしかった : : : 」 というような。 それが今回は通らなかった。あまりにシラジラしいという。社会正義を口に出来るよう いきおい な人間か、お前は、という勢になって来た。この程度のシラジラしい言葉は、政治家は 毎日ロにしているのに。 ( 選挙の際の立候補の弁を見よ ! ) アレよアレよという間に三恵子さんはクモの糸にからみつかれ、いいたくないこと、い おうとも思っていなかったこと、次々といったり書いたりしてしまった。マスコミが次々 あいさっ

2. 女の怒り方

「男にはとてもいえないよなア と男たちはいい合う。苦笑まじりにそういうことによって、妥協に明け暮れている己れ こわ のひ弱さをいたわり合う。ズバリといえる女が怖いというよりは、嫉ましいのかもしれな 「こんな女はわしゃ好かん」 といいたいのをへたにガマンするものだから、こういうことになる。 十一月五日付の読売新聞は、元夫人の記者会見の報道記事の中に一行、こういう文章を 人れている。 「三恵子さんが会見場に現れたのは、約束より一時間遅れの午後九時。″髪のセット〃で 遅れたとか」 で括っている。このククリ。これが私には この記者は髪のセットというところを′ 実に面白い。この不必要な一行、このククリにものごとをハッキリいえぬ弱き男の悲しさ が現れているではないか。 今の男たち、毎日が「お茶の時間」なのですな。 ねた

3. 女の怒り方

生来、興奮性で軽率の振舞の多い私がいうのは滑稽かもしれないが、三恵子さんは証言 の後、記者会見などしない方がよかった。 それから手記なども書かない方がよかった。 いい洋服なんか着ず、寝不足でキリョウのよさを隠し、裁判所から出て来る時は頬に一 筋の涙を伝わらせ、段を踏み外してよろめいたりすればよかった。 わざわい さっそう だがそこは強気が災して颯爽と出て来て、張りめぐらされたマスコミのクモの巣に ひっかかってしまった。 「どういう動機で証言したのですか」 と質問される。訊かれたからには何か答えなければならない。つい「社会正義」という 言葉を口にしてしまった。これが下手だった。いっそ「前夫への失望、ウラミッラミで逆 上したのです」と本音をいってしまった方がましだった。けれどもこの場で「ポンクラ亭 主がアタマにきて」などとは、ヤケのヤン。ハチにならなければいえることではない。人は 通常、本音ばかりいって生きているわけではない。世間に通りのいい言葉を使って、それ やす うんぬん を通しているのである。「社会正義」という一一〕葉は「逆上云々」よりも通り易い言葉であ るからつい使った。私はそう解釈する。 ☆ こつけい お

4. 女の怒り方

と重箱のスミをほじくり出すので、それに対して何かいわなければならなくなる。当然 ( ぼうぎよ けんか ことだがマスコミと喧嘩する力も防禦する技術もないからである。 要するに彼女は、「いささか気の強い一人のただの女」なのである。世の中には彼女ト りももっと計算に長けていて、もっと利ロな女はいつばいいる。 いっきく 私は榎本三恵子さんの世間知らずの気の強さに一掬の涙を注ぎたい。 あば かんぶ そしてまた、前妻によって完膚なきまでに男としての器量のなさを発かれた榎本氏ー それにしても榎本さん、もうちょっとしつかりしはらな、男たるものが女房に仕事のこし をベラベラしゃべったりするからこういうことになるんですがな。普段、頭の上らぬハ一「 イセか、隠し預金に妻を抜かして弟の名儀にしたりするからイカンのだ。いざカマク一フし おおいしくらのすけ いうその時に、「どうしよう、どうしよう」とは何ごとか。大石内蔵助を見なさいよー 男 : と怒ってはみるものの、あまりのその弱さ、踏んだり蹴ったりのその立場に一掬の「 た ぎ を注ぎたい。 す ついでながら伊藤素子さんについては、私の一掬の涙は無用であろう。 ペ や だって新しく来た弟のヨメが猛き女であったおかげで、それまでとやかくいわれてい ペ兄貴のヨメさんのカプが急に上ったようなもんだもん。 もとこ たけ

5. 女の怒り方

「つまりこれは、男一般の気持を代弁しているつもりなのよ」 と娘がいった。 なるほど代弁ねえ。そういえば、「週刊朝日」の記事にもこういう箇所があった。 「一七〇センチの長身、ショートカットの髪に明るいスーツ。薄化粧の三恵子証人は最後 まで背筋をピンと伸ばしたまま、はっきりした口調で証言を続けた。検事の質問に答える 証言の一つ一つが、田中、榎本側のこれまでの主張をガラガラと突き崩していった : : : 」 と、格調正しく書きはじめ、それからだんだん、だんだん、変調になって行く 「若い首相首席秘書官夫人は、自分が美しい女であることを自覚し、時には『私は美人だ から』というセリフをはいて周辺を驚かせることもあったという」 「別居したとき長男は小学生。空腹で朝礼で倒れたり、一フンドセルに教科書は一冊もなく ぼうぜん カラッポ。教室でもしばらく茫然としていたといわれる」 それがどないしたんや ! と私は叫ぶ。問題はどこにある、問題は ! 本来、男という 男ものは問題の核心を考察し論じるものではなかったのか。美人だと思っていたとか子供が がどうしたとかいうことは、女性週刊誌の領域だ。 れこのような記事の後ろには、いいたいことをはっきりいえぬ男の悲哀が籠っている。男 どもがウジウジと悩むところを、女がズ。ハッといった。その時の男の驚きは、もしかした きようがく ら足もとを掬われたような驚愕であったかもしれない。 すく

6. 女の怒り方

「負けん気出してオトコ漁りに行ってるのかねえ。情けない と力がこ・もる。 「公園のべンチ」や「お茶の時間」にはとてもこう迫力ある会話は出てこないのである。 ☆ 話は変るがこのところ、ロッキード公判での、田中元首相の秘書官榎本被告元夫人の にぎ 言がマスコミを賑わせている。元夫人は「ハチは一度刺すと自らも死ぬ。その覚悟は出 ています」とこわいことをいって、元ご亭主のすべてを洗いざらい暴露したのである。 この事件について十月三十日付 ( 昭和五十六年 ) の読売新聞はこう書いている。 「並の男にはマネの出来ない『強さ』と『したたかさ』が感じられ、何となく迫力に欠 るきらいのあった一連の公判にズシンと活を人れた」と。 そして更に、「女は理詰めで物を考えない。だからめったに間違えない」 ( ハズリット ) 男「女の強さは圧倒的な弱さのカである」 ( エマソン ) 「女は愛しすぎたために男を憎まず がはいられない」 ( ラシーヌ ) などとイギリス、アメリカ、フランスの警句を並べて分析し 離婚しても榎本姓を名乗っている元夫人の心情に「涙なしにはいられない母心を、だれ ~ 刺 責められようか」と同情し、かっ、「しかし男としては、どうしても引っかかるものが みえこ る。もちろん『正義』の前には三恵子さんの勇気はいくらほめてもほめ足りない。その一 あさ えのもと

7. 女の怒り方

。ヘラ。ヘラしゃべりすぎた男 あっち向いても榎本一二恵子、こっち向いても榎本一二恵子。もうもう、榎本一二恵子の悪口 は聞き飽きた。よくもまあ男、女こぞってこれだけ嫌ったものだと私は感心してしまう。 あいびき ついにはスター気どり、英雄気どりが許せんとて、彼女との過去の逢引の写真を公開し て憤る男性とかも登場して来ているが、私なんかの目にはべつに「英雄気どり」には見え だた ない。検察側に乗せられ、マスコミに乗せられてフクロ叩きに遭っている世間知らずの気 の強い女性ーーただそれだけである。 私は物ごと、すべてハッキリしていることが好きであるから、動機がどうであろうと、 男計算ずくであろうと、ウ一フミツ一フミであろうと、いつも政治家が権力という雪の中で我 す我にはわからないことをいろいろやっている、その雪隠の中の模様が一部分でもハッキリ だんな べ見えたことはとても気持がいい。あちこちの雪隠の中の旦那がたも、さぞかしギョッとな や しさったであろうことも愉快である。 ペ この愉快を味わわせてくれた榎本一二恵子さんを、なにゆえマスコミこぞってフクロ叩き にするのか。あんたたち、どこかの雪隠の中から何か貰って、雪隠派の仕返しの手先にな ってるんじゃないのと勘ぐられても仕方ないような仕うちではないか。 もら ′し、ん一