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検索対象: 女の怒り方
139件見つかりました。

1. 女の怒り方

79 ついつい工イツ ! 「赤ンポ産んで捨てるくらいなら、これだけの避妊法全部やってみればいいのにねえ」 「そうよ、そうよ」 「ホントにそう」 私は前記の「ついつい、エイツ ! 」の奥さんを思い出した。 確かに避妊の方法はいろいろある。しかしいろいろあるにもかかわらず、大学出の女が 避妊をしないのは不思議でたまらんということはないのである。おそらくは彼女もまた 「ついつい、エイツ ! 」が出たのであろう。 「大学まで出ててなぜ避妊をしなかったのか」 と不思議がっていられるうちが花なのである。

2. 女の怒り方

いる。 今いる雑種のメスは、これはもう大というより猫と呼びたいようなシロモノで、四六時 中、彼女が考えていることは家へ上って人間の膝の上に坐りたいということらしいのであ る。 庭に出てポールを投げてやっても走らない。散歩に連れ出そうとしても、踏んばって歩 しようし かない。居間でテレビを見ていると、内玄関のガ一フス障子が静かに開いて、誰が来たのだ ふく ろう、それにしても声がしないが、と思ってふり返ると、ジリジリ匍匐前進で後ろへ来て いるのだ。 「こらアーツ」 じよう と怒って追い出して錠を下ろす。 プリプリしながら戻ってくると、いつの間にか居間のテープルの下に寝そべっているで はないか。私が内玄関から居間へ戻るより早く、彼女は庭を駆けめぐってテラスのガラス 習戸を開けて人りこんでいるのだ。 の 「こらアーツ」 とまた怒って追い出すが、我が家は人の出人が多い。いっか内玄関の錠を誰かが外して ら こたっ いるので、気がつくとストープの前、あるいは炬燵の前の私専用の座布団の上に丸まって 目を細めているのだ。 ひざ

3. 女の怒り方

の名門の出で騎士道精神を身につけている人なんですね。今は悪名高いギャンプラーに落 ちてはいますが。そして、ホラ、最初にヒゲさんがあの婦人にいうでしよう ? 『いささ か存じあげています。あなたのお父上の連隊にいました』って」 「はあ、そういうところありましたつけ」 「それから馬車の中で水筒の水を飲む時、ヒゲさんが女の人に貸したコップを見て、女の 人がいいましたね。『この紋章、見憶えがあります。確かグリーンフィールド家』と」 「そういえば、ありました : : : 思い出しました」 、思い出しましたか、ヒゲさんは名門グリーンフィールド家の息子さんだったんで よみがえ すね。つまり昔の連隊長の娘さんに会って名門の血が蘇ったんですね。そして名門の男 として死ねたのは満足だったということですね」 「なーるほど : : : そういうことだったんですか ! 」 かんだか という私の声は恥ずかしさのために甲高くなった。 「よくわかりました。スケコマシが女にチョッカイを出そうとした矢先に赤ン坊が生れて 面 場 来たので、ヤケクソになって女を殺そうとしたわけではなかったんですね ! 」 い れ「そうそう、そうじゃないんですね、アハハ」 見 と淀川さんは電話を切った。おそらくは「あれで小説家岬びつくりしましたね工、こ つぶや わいですねェ」と呟きつつ。

4. 女の怒り方

「負けん気出してオトコ漁りに行ってるのかねえ。情けない と力がこ・もる。 「公園のべンチ」や「お茶の時間」にはとてもこう迫力ある会話は出てこないのである。 ☆ 話は変るがこのところ、ロッキード公判での、田中元首相の秘書官榎本被告元夫人の にぎ 言がマスコミを賑わせている。元夫人は「ハチは一度刺すと自らも死ぬ。その覚悟は出 ています」とこわいことをいって、元ご亭主のすべてを洗いざらい暴露したのである。 この事件について十月三十日付 ( 昭和五十六年 ) の読売新聞はこう書いている。 「並の男にはマネの出来ない『強さ』と『したたかさ』が感じられ、何となく迫力に欠 るきらいのあった一連の公判にズシンと活を人れた」と。 そして更に、「女は理詰めで物を考えない。だからめったに間違えない」 ( ハズリット ) 男「女の強さは圧倒的な弱さのカである」 ( エマソン ) 「女は愛しすぎたために男を憎まず がはいられない」 ( ラシーヌ ) などとイギリス、アメリカ、フランスの警句を並べて分析し 離婚しても榎本姓を名乗っている元夫人の心情に「涙なしにはいられない母心を、だれ ~ 刺 責められようか」と同情し、かっ、「しかし男としては、どうしても引っかかるものが みえこ る。もちろん『正義』の前には三恵子さんの勇気はいくらほめてもほめ足りない。その一 あさ えのもと

5. 女の怒り方

213 所チ な マ折 ど 、る と 万さ お表 タ雑 かで を 廻 おた ら会 でが せ だん だま す家 だん か庭 いね 、ん 。た 、で 歌前 換は り作 歌ま 作カ 友曲 増と 分て かな プわ 行吹 っき 目の上の怒り虫 れ と も カ フ 像オを ケ ・丿く と う と は る 達 を い 出 し て 頼 み に た の か な そ 力、 の だ ん 込 に ァ で 自 て し き詞冗 オこ っ イ乍 ー歌交 叩 懸 リ ・ヘ糸氏ロ 換 の つ さ も こ う タ キ が え は な ぬ と あ の ア こ の え て う い ッ つ ら 今歌数 を う な ツ と し い の が 日 は プ ク プ ク の ど お し さ の ア プ ク と い よ う な 哥欠 あ る 日 は チ リ う紙紙 コ ツ カ ン 窓 オこ く チ リ コ ッ カ ン コ カ ン カ ン く り か ら く り あ り ま よ タ タ カ ツ タ タ フ フ フ ツ新イ 聞 古 印む ま ド な じ あみ聞 ご し も ら る チ リ 糸氏 父 の 坪 と ひ と り 笑 う と い う こ と つ り 血 球 て た で あ う フ フ フ フ と - マ メ く さ つ て 書 い た そ の お - つ さ ん が と も フ に て 来 た

6. 女の怒り方

「あらツ、佐藤愛子さん ! まあツ、どうしましよう」 どうしましようといわれたって、こっちからかけてくれといったわけじゃないから私と しては無言でいるしかない。 「あらまあ、佐藤愛子さんがジカに電話に出られるなんて ! 」 私は皇族じゃないよ。スターでもないよ。塩昆布煮ながら小説書いている主婦のなれの はてだ。電話にも出る。チリ紙交換のおっさんも呼ぶ。ゴミバケツも出す。なのに世間で はもの書きというものは女王のように暮していると思っているらしい。 ( ま、中にはそう いうお方もいらっしやるだろうけど ) 珍友中山あい子のごときは、管理を頼まれているマンションの、自分のものでもないゴ ミバケツを夜のうちに表に出しておかなければならぬとて、酒席からタクシーを走らせた りしている。 「そんなもの、少しお礼を出して、誰かに頼めばいいじゃない」 「いや、そうはいかないのよ。それに人に頼むより自分でした方が早い」 この中山さんの一「ロ葉に私の胸は締めつけられる。 ナ ば「お互いに亭主なき身、しんどいねえ」 そ 慰め合い励まし合いたい気持なのである。 話を戻そう。

7. 女の怒り方

190 前中に電話をすると、まだ来ていませんといわれる。私の家は会社じゃないから、まだ来 ていません、もう帰りましたとはいえない。会社じゃないから、対談よりもカレイの方が 大事なのである。 私の家は会社じゃない。しかし「マイホーム」といえるような場所でもない。いうなら ばそば屋というところだ。時かまわず電話のベル。 「ザル二枚、急いでネ」 といわれ、たとえ便所に人っている時であろうとも途中で切り上げて走って行き、機嫌 よく、 「毎度ありイ」 といわなければ奴は傲慢だと謗られる。 「何だあのそば屋は ! 生意気なそば屋だ。それが客に対する態度か ! 」 と人々は怒るのである。 ☆ ある夜、読者だという女性から電話がかかって来た。 「佐藤愛子さんいらっしゃいますか」 「はい、私ですが」 やつごうまん そし

8. 女の怒り方

「しつこいようですけど、日程のご都合はお合せします。時間も一時間くらいで結構なん です。対談の内容も気らくな放談で」 私はイライラしている。向うは対談が大切かもしれないが、私は鍋のカレイの方が大切 「申しわけありませんが、ダメです」 「どうしてでしよう ? どういうお差支えでしようか、おっしやっていただけば出来るだ けのことを : : : 」 「今、カレイを煮てるからです」 相手絶句。冗談ととるべきか、マジメにとるべきか考えているのだろう。 「昨日はてんぶらを揚げてる最中でした。今日はカレイを煮てます。お断りするのはその ためです」 「はあ」 相手はムッとした声になった。ムッとする気持はわかる。だがこれでも私としては遠慮 しているつもりである。遠慮せずにいうとどういうことになるか。 ナ ば「飯どきに仕事の電話なんかかけるな。アホンダラ ! アタマ使えアタマを ! テメ工の そ 都合を中心にすんな ! 」 これが会社であれば五時以後に電話をかけると今日はもう帰りました、といわれる。午 なペ

9. 女の怒り方

そば屋ナミ たず いったい、どういうわけなのか一度訊ねたいと思っているのだが、新聞社、雑誌社、テ レビ局の人は夕方から夜にかけて電話をかけてくる。 夕方はどの家も忙しい。夕飯の支度がある。夕飯を食べていることもある。後片づけを していることもある。あるいは慌ただしい一日を終え、ほっとくつろいでテレビの前に坐 ったばかりの時もある。 その時に電話のベル。 「うるさいツ、何だツ」 いうまいとしてもいいたくなる。この間はてんぶらを揚げている最中に対談の依頼があ ったのでイツ。ハツで断った。昔は人の家に電話をかける時は、食事どきではないか、早寝 の家ではないか、仕事中ではないかなどと、あれこれ配慮した上でかけるものと決ってい たものだ。それが礼儀、常識というものだった。ところが、知的な仕事に携っている人に かえ 却ってそういう常識知らずが多いのはどういうわけだろう。 翌日、また同じ人が同じ時間にかけて来た。私はカレイを煮ていた。私の家では、家事 手伝いは五時には帰ってしまうのである。

10. 女の怒り方

過ぎ二月が過ぎとうとう春になってしまった。 「何をやっているのよ、ガスのタネ火なんて安いもんじゃないの」 家の者は私がケチでそうしているとしか理解しないのである。 ☆ ゆだ 何か便利なもの、快適なものに身を委ねるとき、私は「ああ私も堕落した ! 」と思う。 そう思いつつ、つい引きずられて「文明の利器」を利用してしまう。そしてまた思う。 と。そのくり返しだ。しんどい。 ああ、とうとう私もここでまた堕落したか , ごく最近まで私の家にはクーラーがなかった。暑さと闘いながら汗みずく、風呂から上 ったような姿で猛暑の午後、原稿を書いたものだ。だが、あなたはそれでいいでしようけ れど、お客さまは気の毒よ、という人がいて ( 全く世の中にはおせつかいが多い ) 仕方な く応接間にコインクーラーというのをつけた。百円玉を人れると一時間作動するクーラー びた である。これによって娘がクーラーの部屋に人り浸ってノラクラするのを防ごうとしたの 「あなたは克己主義者だからいいけど、娘さんは可哀そうよ」 とまたおせつかいがいう。娘は暑くて勉強が出来ないという。娘の部屋はサンルームを 改造したもので、夏の日がカンカン照りつける。それで娘の部屋にだけクーラーをつけた。 こっき