神経細胞 - みる会図書館


検索対象: 自分らしく生きて、死ぬ知恵
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1. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

別なのだ。 また、中年になるとい、つことは、自意識から自由になることでもある。 人間は若いときのほうが、自意識が過剰なぐらい働いて、そのために悩 んだり葛藤したりすることがある。 人間は三歳ぐらいまでに、脳の神経細胞の軸索というものが伸びてシ ナプスにつながり、ほかの神経細胞と情報をやりとりするネットワーク を構築する。この神経細胞のネットワ 1 クが組まれていくということが、 外界を認識していく過程なのだ。つまり、他人の目を意識するーーー自意 = 一ⅱが生まれるとい、つことである かたよ る 自意識過剰になるのは、他者との関係が自分本位に偏りがちなために す 全起こる。それが「自分さえよければ、 しいーという自己中心的な考えを生 生 み、ひどいときには「なぜ自分だけが不幸な目にあうのかーと被害妄想 て し に陥ったりする。 A 」 然 泰 しかし、歳をとるにつれて、自分と他者との関係にバランスが取れる じ′、さ′、 215

2. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

だいのうしゅうえんけい 人間が記憶することは脳の大脳周縁系という箇所がっかさどっている。 そこにある海馬という脳の組織が記憶と深く関わっているといわれてい る。この海馬の神経細胞は、四〇歳を過ぎると、一〇年ごとに五 % ずつ 死んでいくことが研究結果から明らかになった。 脳の神経細胞は一度死ぬと二度と再生しないから、海馬の神経細胞は 二〇年間で一割、五〇年たっと四分の一になってしまう。だから前述の 彼が、歳とともに記憶力が衰えていったのも無理からぬことなのだ。 ある程度の記憶力の低下は年齢によるものとして、さっさと受け入れ てしまったほうがいし記憶力ではなく、これまでの経験によって、想 像力や応用力など脳の別の部分が発達しているはずだから、そちらに目 を向けていったほうが気は楽である。

3. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

もちろん、これらの病気が「頭にくる」といったストレスで起こるわ けではないが、ひとつの原因にはなる。怒っていると周りの人も傷つけ るが、自分の体も傷つけているのである。 一方、笑いはというと、興奮している交感神経をなだめ、自律神経の 働きを調整する役目があるのだ。イライラしているときは笑うことすら 忘れているか、いつも笑うことを意識していれば、「何だそうか。とば かりにカラッと夭、んる。 笑いは若さを保つ秘訣であると同時に、ポケ防止にもなるということ だ。ただ、ひとりでテレビやラジオに向かって笑っているだけではポケ 防止になるとは思わない。人の輪の中に入っていき、何かおもしろい話 をしようとしたり、笑えるところはないかと思いながら人の話を聞いて いることで、脳が活性化されポケ防止になる。 おっく・つ 歳をとると、とかく人付き合いが億劫になるものだ。孤独は老化を早 める。出不精は今日からやめにして、人の輪に積極的に入って一緒に笑 ひけっ

4. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

「一怒一老」「一笑一若ーという一一一一口葉を、私は自著のタイトルで使った ことがある。私の造語である。読んで字のごとし、ひとっ怒ればひとっ 老けるし、ひとっ笑えればひとっ若々しくなるという意味である。 逆に、イライラすると体によくないことは医学も証明している。「頭 にくる」ような出来事があると、まず自律神経の交感神経がすぐに反応 してノルアドレナリンという物質が放出されるが、これが血管を収縮さ ふくじん せ血流を乱すのである。そして、副腎という組織から放出されるアドレ ナリンが血小板を刺激して、体にさまざまな悪影響を及ばすようになる。 血小板は出血したときに血を固めて止める作用があるが、この血小板 が作用しすぎると血流に支障をきたし、体にも不具合が出てくるのであ る。通常、血小板は血管壁には近づかないようになっているのだが、頭 に血がのばるようなことがあると、血小板が血管壁にくつつきやすくな けっせん 血栓ができる。脳の血管に血栓ができると脳血栓になり、心臓の冠 しんきんこうそく 明動脈で起こると狭心症や心筋梗塞になる。

5. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

私、斎藤美智子の夫であり、精神神経科を掲げる斎藤病院の名誉院長 であり、作家であった斎藤茂太は、平成一八年一一月二〇日、心不全で 他界いたしました。 歌人斎藤茂吉の長男として生まれ、明治大学文学部、昭和医科大学を 卒業後、慶應義塾大学で精神医学を専攻、以後、精神科医として多くの 患者様を診てまいりました。 また、医療に従事するかたわら、日本精神科病院協会会長、アルコー ル健康医学協会会長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長を歴 任、早稲田大学文学部、昭和大学医学部、跡見短期大学、昭和女子大学 ー、たします・ 夫・茂太の遺作をお届す、 かか 248

6. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

真面目さが出てしまい、「もうちょっとで一〇〇点」とがんばってしまう。 老年といえる時期に差しかかったら、六〇点で十分なのかもしれない。 また、自分の性格と照らし合わせてみて、完璧主義である人ほど歳を とってからペースダウンする生き方をしたほうがいい 私ぐらいの老年という時期になると、脳細胞の四〇 % は壊死している のだそうだ。なるほど道理で人の名前やメガネのありかがわからなくな るわけである。ならばそんな自分を受け入れて、六〇点で十分と悟って 生きていくほうが楽である。 若いころと同じ考えでは、健康につつがなく人生を送れない。歳をと ったら、それ相応の考え方に成熟させていくものである。 本当にしなければいけないことは何もない 224

7. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

あるが、私の感性にどこかひっかかった事柄ばかりである。機体ナンバ 1 などを見返してみると、そのときの旅行の思い出がよみがえってきて、 また旅行をした気分になれてそれだけで楽しい。 他人が見れば「だから何なのだ」といわれてしまうものでも、私にと ってはこうした随筆や旅行記を書くときの資料になるし、好奇心を保つ ための手段になっている。メモを見返すことで書いた当時の状況を思い 出すことができ、人の名前を忘れて恥をかくことがなくなるという実益 もあるが、何より脳細胞の活性化になり、ストレス解消の効果もある。 この性分は父親ゆずりらしく、父・茂吉は作歌や随筆のネタとなるよ うなことから、日常のことに至るまで詳細なメモをとる正真正銘のメモ 魔だった。 あるとき、父はメモで埋め尽くされた自分の手帳を、旅先の山陰のあ る地方で落としてしまったことがあったが、執念でそれを探し出した。 その経緯が書かれた父の随筆があるから本当だろう。どれだけ父がメモ

8. 自分らしく生きて、死ぬ知恵

はなく、たとえば上衣、シャツ、ズボン、靴下、靴、ネクタイが各三点 すつあれば、それをどのようにコーディネートしてその日の気分や時間 帯、場所を考慮した格好ができるかということを考えるものだ。 各三点ずつであっても数十通りの組み合わせがあるから、考えるだけ で脳細胞は忙しく働き、ポケているヒマなどなくなるのである。 っちか こうしたコーディネートカは船旅で培った。持ち込む荷物には限りが あるから、そうそうたくさんの衣服は持ち込めない。ならば、短くても 三か月をかける船旅でマンネリ化しないためには目先を変える必要があ るのだ。 いつもと同じ無難な格好ばかりしていないで、ときには派手な色のも のを身につけてみるのも「今日は華やかですね」などといわれておおい る に刺激になる。私はいまでも、ネクタイ選びだけは妻に任せすに自分で 生 買いに出かけるが、いかにも年寄りがしそうなグレイや茶色といった地 明味な色よりは、燃えるよ、つな赤いネクタイに目がいく