城山 - みる会図書館


検索対象: そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)
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1. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

直木賞受賞の表題作は、総会屋の老練なボス ムム屋錦成錦城の姿を描いて株主総会のからくりを明か 直木賞受賞す異色作。他に本格的な社会小説 6 編を収録。 神風特攻隊の第一号に選ばれた関行男大尉、 城山三郎著指揮官たちの特攻玉音放送後に沖縄 ~ 出撃した中津留達雄大尉。 ー幸福は花びらのごとくー 二人の同期生を軸に描いた戦争の哀切。 ーフェクトを求め他人を押しのけるこ 城山三郎著打たれ強く生きるとで人生の真の強者となりうるのか ? 著者 が日々接した事柄をもとに静かに語りかける。 城山作品には、心に染みる会話や考えさせる 城山三郎著静かに健やかに遠くまで文章が数多くある。多忙なビジネスマンにこ そ読んでほしい、滋味あふれる言葉を集大成。 強く言えば気概、やさしく言えば男のロマン。 対談集 そこに人生の美しさがある。著者が見込んだ 「気骨」について 八人の人々。繰り広げられる豊饒の対話。 どこにも関係のない、どこにも属さない一人 城山三郎著無所属の時間で生きるの人間として過ごす。そんな時間の大切さを 厳しい批評眼と暖かい人生観で綴った随筆集。 城山三郎著 城山三郎著

2. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

〈怒りたいし、笑いたい。「参った、参った」とロ走りたい。そこをこらえて話し 出し、何とか無事、講演を終えることができた〉 らんまん さらにその後のお二人の言葉のやりとりは絶妙で、容子さんの天真爛漫さと城山 さんの大人振りの対比が面白く、どのような間柄のご夫婦なのかをほのぼのとした 中で早々にわからせてくれるところも秀逸だ。 そもそも容子さんとの初めての出会いは城山さんの学生時代。城山さんの生家の い ある名古屋のとある図書館の前。久し振りに訪れたもののなんとその日は臨時の休 あたか たたず ようせい 齟館日であったため外に佇んでいると、そこに恰も天から舞い降りた妖精のごとく容 子さんが現われたというのだ。しかも、その容子さんを見た瞬間に、城山さんは、 この人こそ生涯をともにする意中の女性と直感したというのだから神懸り的だ。人 そ 間誰しも、とくに男性は、そうした女性に巡り会える瞬間を望んでいるのだが、な かなかそういう機会が訪れないままに結婚してしまいがちなものだ。あるいは、後 ほぞか 年になって、あのときがそうだったのか、と臍を噛んだりするものだが、瞬時にこ たぐいまれ の人こそと直感した城山さんの類稀なる眼力は、その後、作家として数々の作品で うな ほうふつ 読者を唸らせた、人間に対する洞察力の鋭さと眼識の見事さを彷彿とさせてくれる

3. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

は、城山さんの赤裸々ともいうべき心情の吐露は、最愛の妻、ベスト。ハ—トナー、 共に人生をわかち合ってきた戦友ともいえる伴侶を失ったことに誘発された心底か らの愛惜の叫びなのだ。その結果、本書は容子さんへのオマ 1 ジュであると同時に 作家城山三郎が初めて自ら本心を明かした得難き貴重な自分史、つまり自伝の書で もあることがわかったからだ。 であ 僕の城山さんの作品との最初の出逢いは、商社マンの海外での過酷な商いにおけ い る戦いを描いた『輸出』であった。もう五十年以上も前のことだ。 齟それまで小説の世界では何やらおろそかにされていた経済。人間社会の根幹であ もる経済に目を注ぎ、そこに小説の舞台を設定し、そこに生きる人間たちの戦いを、 心の葛藤を、そして人生を物語として紡ぎ出す。経済あってこその人間社会である そ みずみず ことを新たなる斬り口と鋭い洞察力を駆使して読者の前に瑞々しく提供してくれる 城山文学の面白さに僕は夢中になった。 きんじよう ねずみ 『総会屋錦城』『落日燃ゅ』『鼠』『粗にして野だが卑ではない』『男子の本懐』『雄 気堂々』『役員室午後一二時』『硫黄島に死す』などなど、思いつくままにいくつかを 列挙してみたが、長い間に読みつないできた沢山の城山作品の数々によって、知ら つむ

4. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

172 さわ 生れたのだ、と空を仰ぎ流れゆく雲に心を遊ばせたのだが、清らかな一陣の爽やか な風にも似た本書が、いかに読む者の心を浄化し、志をもって生きることの大切さ を教えてくれているかを改めて肝に銘じたのだった。実は、これまでの経験から見 れば、作家の本心とか心の内側というものはなかなか読者には見えてこないものの ように思えるのだが、どうだろうか。しかし、本書によって作家城山さんの心の在 うれ り方、いかに生きてきたかが、嬉しくもしつかりと見えてきた。なんと邪心のない なきれいな心なのだろう。決して美辞麗句ではなく本心からそう思う。それほど城山 君さんも奥様の容子さんも美しい心の持ち主であることがどしんと胸に響いてくる。 城山さんは純なる魂を持って生き続けた。その証しが本書であり、生涯をかけて世 か のすべての矛盾に小説というツールを使って戦いを挑んできた清い心の戦士だった のだ。 城山さんが亡くなられたあと、遺稿として発見された本書は、巻末に記された城 山さんの次女である井上紀子さんの「父が遺してくれたものーーー最後の『黄金の日 日』」の文章で、その事情が明らかになるとともに、その見事な清々しき文章から ご家族の心のあたたかさと豊さが自然の形で伝わってきて、爽やかな余韻に心がま あか

5. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

よろい みじみと読者の心にしみこんでくるのも、城山さんの作家という世間への鎧を脱ぎ す 棄てて書いた容子さんを恋うる熱き語り口にある。 そして、城山さんが世に感動の書を次々と送り出すことが出来たのも、背後に容 たんげい 子さんという端倪すべからざるチャーミングな妖精がいたからなのだなあ、と、夫 の深いため息とともに知ることとなる。いかに城山さんの喪失感が深いか。今は亡 き容子さんをいくら恋焦がれても、もう絶対に戻ってきてはくれない身を切られる い ような空しさ ( の悲痛な叫びが、全編を通して切々と読者の心をも嘖いなむ。容子 たど 郡さん ( の追憶を辿ることによって、ご自分の人生の節目節目の心境が実に鮮やかに 生々しく活写されていくことで城山さんの人と成りが、はじめて生身の人間として 生き生きと行間から立ち上ってくる。 そ 『そうか、もう君はいないのか』は今は亡き妻への熱き愛情の告白の書であること じゅんじゅん すさま が諄々と心にしみてきたとき、初めに抱いた違和感が逆に妻じいまでの共感へと変 っていたことは一一一口うまでもあるまい。 そばにいるのが当り前であった容子さん。お互いに空気のごとくまさに一心同体 であった容子さんに晩年、突然身体の変化が訪れた。体調不良から検査した結果、 170

6. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

解 説 怖だ。できれば妻より先に、と折りにふれそのことを口にすると、いや私の方が先 よと言われ、じゃあ一緒になんてお茶を濁してはたがいに話題を替えるようにして いるものだから、城山一二郎さんの本書『そうか、もう君はいないのか』というタイ トルを目にしたときは、胸に鋭い一撃をくらったような衝撃であった。 さっすく 後に残されてしまった夫の心を颯と掬う、なんと簡潔にしてストレートな切ない はんりよな せきりよう 言葉だろう。最愛の伴侶を亡くした寂寥感、喪失感、孤独感とともに、亡き妻への おも 万感の想いがこの一言に凝縮されている。城山さんの悲痛な叫びが、助けてくれえ という声まで聞こえてくるようで、ドキッとしたのだ。 頁を開くや、東京はお茶の水駅近くの会場での城山さんの講演のときの破天荒な つか エピソードでいきなり心を掴まれた。城山さんが、さて今日はどんな話をしようか よう と考えながら演壇に立って会場内を見渡すと、なんと二階席最前列の端に奥様の容 子さんが座っているではないか。しかも、目が合った瞬間、容子さんはふざけた仕 草で、その当時の人気マンガのイヤミ君の「シェー」をしたというのだ。この冒頭 の一章で、容子さんが実にユニークな、明るくお茶目な楽しい女性であることをす っとわからせてしまうところは、実に見事だ。

7. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

いないのか 蠶軋・イぐ 城山三郎 そ , つか も , つよ そうか、もう君はいないのか城山三郎 城山三郎 Shiroyama Saburö ( 1927 ー 2007 ) 9 7 8 4 1 0 1 1 5 5 5 4 8 彼女はもういないのかと、ときおり 不思議な気分に襲われる 。気骨 ある男たちを主人公に、数多くの経 済小説、歴史小説を生みだしてきた 作家が、最後に書き綴っていたのは、 亡き妻とのふかい絆の記録だった。 終戦から間もない若き日の出会い、 大学講師をしながら作家を志す夫と それを見守る妻がともに家庭を築く 日々、そして病いによる別れ・・・ 定価 : 本体 400 円 ( 税別 ) 没後に発見された感動、感涙の手記。 新潮文庫 城山三郎の本 総会屋錦城 指揮官たちの特攻 役員室午後三時 ー幸福は花びらのごとく一 静かに健やかに遠くまで 雄気堂々 ( 上・下 ) 部長の大晩年 毎日が日曜日 対談集 官僚たちの夏 「気骨」について 男子の本懐 本当に生きた日 硫黄島に死す 無所属の時間で生きる 冬の派閥 そうか、もう君はいないのか 落日燃ゆ どうせ、あちらへは手ぶらで行く 打たれ強く生きる 少しだけ、無理をして生きる 秀 父でもなく、城山三郎でもなく 一目を上げれば海ー ( 井上紀子著 ) わしの眼は十年先が見える ー大原孫三郎の生涯ー 名古屋生れ。海軍特別幹部練習生と して終戦を迎える。一橋大学を卒業 後、愛知学芸大に奉職し、景気論等 を担当。 1957 ( 昭和 32 ) 年、「輸出』 で文学界新人賞を、翌年「総会屋錦 城』で直木賞を受賞し、経済小説の 開拓者となる。吉川英治文学賞、毎 日出版文化賞を受賞した『落日燃 ゆ』の他、『男子の本懐』『官僚たち の夏』『秀吉と武吉』『もう、きみに は頼まない』『指揮官たちの特攻』等、 多彩な作品群は幅広い読者を持つ。 2002 ( 平成 14 ) 年、経済小説の分野を 確立した業績で朝日賞を受賞。 IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII 1 9 2 0 1 9 5 0 0 4 0 0 5 I S B N 9 7 8 - 4 ー 1 0 - 1 1 5 5 5 4 ー 8 C 0 1 9 5 \ 4 0 0 E 城山三郎訳 K ・ウォードビジネスマンの父より息子への 30 通の手紙 カバ 1 装画牧野伊三夫 し 7 新潮文庫 新潮文庫 カバー印刷錦明印刷デザイン新潮社装幀室 400

8. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

説 解 167 うらや 埋没できた城山さん。羨ましさが猛然と湧いてくるほど素敵なカップリングではな うれ いか。安心して後方を妻に委ねて前線で懸命に後顧の愁いなく戦える夫。夫をさり 気ない気配りで明るく支える妻。お二人の幸せ感がひしひしと伝ってくる。 このように冒頭から本書にぐいぐいと引き込まれたのだが、一方で、僕は妙な違 和感といったものも感じたのだが、皆さんはどうだろうか。それは、率直に言えば、 城山さんらしくない、なんとも生々しい、表現は当ってないかもしれないが、剥き 出しの心を見せられた思いがしたからだ。言葉を替えれば、城山さんの筆致の特徴 はつらっ である、抑制された表現とは違った瀑剌さと活発さに戸惑った、というべきか。も っと言ってしまえば、手放しとも思える妻への熱き愛情物語の底抜けの率直さに目 まば が眩ゆくばちばちとしてしまったのだ。沈着冷静、もの静かでふだんあまり感情を 表に出さずに、鋭い眼差しで真実を見抜き、すべての物事に対処する。いっしか城 山さんの数々の作品を通じて心の中に出来上がっていたそうしたイメージが読み進 むほどに激しく初めのうちは揺らいだからだ。 しかし、そうした最初の驚きが、やがて爆発的な喜びへと変っていった。つまり ゆだ む

9. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

解 169 ぬ間に確固たる作家城山像が心の中にできていた。それは一口に言ってしまえば、 愛とか恋とかに無縁な硬骨漢。冷徹な眼を持っ冷静な観察者、感情を決して表に出 さない意志の人といったイメージだ。そうした一方的な勝手な思い込みが、この本 で見事に正されたのだ。卒然としてわかったことは、あの城山さんの厳しい顔、冷 静さや、自らを厳しく戒める知性の裏に、まことに人間味溢れる豊な感情、鋭い感 受性、ユーモアやウィットに富んだ茶目っ気たつぶりな実に素敵な大人の男が隠さ れていたこと : なぜ、筆一本、小説家として生きようとしたのか。これまでにも随所でご自身の ロで語られてきたことではあろうが、本書の語り口によってより想いが深く心に響 いてくるのは僕だけであろうか。国を背負って、また組織のために戦う人間たちの 無残さと孤独。大義のために常に個人は犠牲を強いられる。行き場のない怒り、不 りん 条理と戦う人間の個としての凜とした勇気。不撓不屈の精神といったものに温かい せいち 目を注ぎ、個人を抹殺する大義とはいったい何なのかを精緻に分析する。城山さん の生涯一貫した作家としてのスタンドボイントが本書によってよりわかりやすくし 0 ふとうふくっ あふ

10. そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

解 165 面白いエピソードだ。 だが物事はそう簡単には進まない。当時、まだ高校生だった容子さん。厳しく父 に戒められた容子さんは渋々だが絶交宣言をさせられる。止むを得ず受け人れた城 しばら 山さんが、暫くの時を置いて容子さんと再会する。それがなんとダンス会場であっ たことに、読者は驚かされる。実は僕も驚いた。城山さんとダンスがなんとなく似 合わないというか結びつかなかったからだが、思い出してみれば、終戦後ちょっと してから昭和三十年代の後半までは、ダンスは盛んで、僕なんかも大学の催し物と いえばダンス。ハーテイだった。はるかに城山さんの踊る姿を、容子さんと一緒に踊 にわか よみがえ る姿を想像したら俄に青春が甦り、胸がときめいた。天の偶然の配剤の見事さと、 運命的ともいえる再会から、やがて結婚へといたるドラマチックなプロセスは、 さに前生からお二人が見えない赤い糸で結ばれていたかのようで神秘的だ。 さて、結婚生活がはじまるや、容子さんの本領発揮、城山さんの筆で描かれる容 かわい 子さんはまことにチャーミングで可愛らしく天衣無縫だ。シロヤマサプロウという 。ヘンネームを知らず、文學界新人賞受賞を知らせる電報に「そんな人いません」と 答えて危うく受賞を逃しそうになった逸話も、ペンネームを敢えて教えないでいた