笑う - みる会図書館


検索対象: そして、こうなった
178件見つかりました。

1. そして、こうなった

と思わず笑うのではないか ? ・ : 」と喜ぶか。誰が嗟嘆し、誰 「やつばりあの人は : : : 」と嗟嘆するか、「さすがア : が笑うか、喜ぶか、を想像していると、つい本当にそうなってみたい気がしてくる。 はたち かえり 省みれば七十五年の我が人生、二十までは蝶よ花よと育てられ、この幸福は一生つづ くと自他共に信じていたが、二十の結婚を境にドンデン返し、逆落しになった。以来一 ひしめ 年として安泰はなく、大事件小事件が犇いて、「あんたんとこ、一週間会わないと、何 か起きてるわね」とよく友達からいわれたものである。幸せに倦んだ友達は、 「どうしてる ? 何か起きてない ? 」 と楽しみに訊いてくる。連続テレビドラマのスイッチを入れるという気分なのであっ 考えてみると、こけつまろびつの我が人生は必ずしも人から強いられて ( あるいは不 、したいよ 可抗力で ) そうなったわけではないようである。すべていいたいことをいし さが うに突進する我が性のためである。ひと頃は私の人生、「なんでこうなるの」と思って ようや 、こが、そのうち漸く反省して「だからこうなるの」と思い到るようになった。そう田 5 し到りはしたが、だからといって、「だからこ , っしましよう」と改める気にはなかなか っ ) 0

2. そして、こうなった

るが如くサッチーの話になった。 「わたくし、テレビ見てて印象に残ったのは、どこかの駅の構内でサッチーを追いかけ てるカメラマンに向って、彼女がいってるんですよ。『もうよしなさいよ。あなただっ てこんなことはほんとはしたくないんじゃないの』って。そうしたらカメラマンが、 『子供を食べさせなきゃならないんで』と答えてるんです。わたくしその時、佐藤先生 を思い出したんです。これを見て先生はなんてお怒りになるかと : 「いやもう、怒りませんよ。笑うだけよ」 実際、今の世の中、もう笑っているよりしようがないのだ。 「そうしたらサッチーは『この人、かわいいのね』っていいましてね。『しつかり育て なさいよ』といってさっさと行ってしまいました。いったいこの構図って何なんでしょ 気鋭の女史らしくいうことが凝っている。 女 「何なんでしよう ? 」と丸い目を瞠られてもねえ : ・ : ・。要するに正直という美徳をまと え どった気概も見栄も捨てた男が出て来たということじゃないのか。それに比して駅や道端 でサッチーを追って質問を浴びせかける若い女性レポーターのあの勇猛さはどうだ。あ みは

3. そして、こうなった

常に私は娘の先に立っていた。娘に敗けたことがあるとすれば、オセロゲームくらいな ものだった。それがある日ビデオデッキなるものが現れたあたりから怪しくなってきた。 ビデオデッキの操作を何度も教わってやっと憶えた頃、ファクシミリなるものが現れ、 、ヾノ それに用紙を入れる必要が生じるたびに娘に大きな顔をされ、それからワープロ コンが現れた。その頃から向うは不戦勝をつづけ、その後はもう、わしや知らん ! 夢 の話さえもただの聞き役だ。 ししたただ丸いだけの顔の輪廓の中に、 そこへ孫が手製の福笑いを持って来た。紙こ描、 目隠しをして三角や丸や四角の目鼻やロを置くのを何度もやらされる。 「おばあちゃんへただねえ、これ見て : : : 」 いわれて眺める。口が鼻の上へいっている。べつにどうということはない。だがそう だ、正月だ。正月は楽しくやらねばならなかった。笑う門には福来る、だ。そこで私は 笑った。大声で、 負 初と。だが孫はふしぎそうに私を見ただけである。 「おばあちゃん、そんなにおかしいの ? 」

4. そして、こうなった

19 気概の果 なんでこうなるの、だからこうなるの、そして、こうなった : ノジミ目と聞いてみんな、嬉しそうに笑う。友達でない奴ま 誰も同情してくれない。、、 で笑う。親切ごかしにわざわざ見に来る手合がいる。仕方なく自分でも笑い、そして皆 と一緒に笑っていると少しずつ元気が出てきて、シジミ目などたいしたことじゃないと いう気になるのであった。ホントはたいしたことだったのだけれど。

5. そして、こうなった

とでもいわせようか。二人はペッドに入る だが、次の瞬間 : イタ : : : タッ・ : ウメポシ、ウメポシ : 「あツ、イタッ・ これじゃあ話にならないのである。 いや、ホントにむつかしい。小説家としての私の才能は涸れ果てたのだ。そこで仕方 とうもしし言かない。初恋の男性 なく旧友の話を田 5 い出して小説にしようと考えたが、、、 ししし力しさタケナワという時、お腹の上に入歯が落 と廻り廻ってやっと結ばれたのま、 : : 、。 ースのおとな用を穿 ちて来た、とか、財産家のおじいさんに温泉に誘われたが、パンバ 咳をしたり笑ったりするとピュッ、ピュッとおしつこ いて行くかどうかに脳んだ が洩れるからだとか。 いやもう、無理をせずおとなしく枯れていくのがよろしいのである。恋愛小説など書 シけなくてしし ) 。それが自然というものだ。泣いても笑ってもそのうち「第三次その時」 しったいどういう騒ぎになるか、それともならずにスンナリあの世へ行ける ~ が来て 蘊か、それはおあとのお楽しみ。

6. そして、こうなった

「そうしよ、そうしよ、遠藤さんのオゴ : : : 」 「リ」、という間もなく、「ワリカンや ! 」ときめられてしまったあの年、彼は死んでし まった。あれからもう七年も経つのか。古くからの大切な友達が櫛の歯の欠けるように ( というのも古い比喩だが ) 死んで行く。 逝く人はぬくし残りし者の寒さかな だ。今は死んで行った人を悼むよりも、羨ましいという心境になっている。どう考え ても今は向うの世界の方が賑やかで面白そうだ。 「なにやっとるんだ、サトくんは。まだ生きとんのか」 と遠藤さんがいえば、川上宗薫は、 モ「しかしなあ、愛子サンが来るとなあ : : : またうるさくなるからなア」 こら ~ といい、菊村到さんはいつも歯イタを怺えているようなあの顔で笑っている 本この秋には私が最も信頼し、私の死後はこの人にすべてを托すつもりでいた池田敦子 さん ( 元週刊読売記者だった ) に先立たれた。私よりも七歳年下の池田さんに逝かれた

7. そして、こうなった

「夢なんて見ませんよ ! 五臓六腑の疲れなんかわたしにはないからね ! 」 と答える声に我ながら険がある。そんな私の気持を知ってか知らずか、娘は調子に乗 ってい , つ。 「この前の夢も面白かったなあ。整体の先生の所の待合室にわたしとママがいるのよ。 向い側の椅子に六十ばかりのオッサンが腰かけているんだけど、そのオッサンの眉毛が 濃くてねえ、八の字なのよ。それでわたし、ママに向って『あの人の眉毛、つば八のロ ゴに似てるね』っていったの。シーシー声でいったんだけど、それが聞えたのね。八字 眉のオッサンはわたしたちに向ってしゃべり出したのよ。『たとえつば八の眉毛と笑わ れようとも、私は一人でも多くの有権者の方に、私のこの顔を憶えていただきたいとい う念願に燃えているのであります。それが政治家としての使命だと考えて、この眉毛を もって頑張っているのであります : : : 』いやもう、しゃべるのしゃべらないのって、た てつづけなの。大きな声でねえ、政治家としての信条をしゃべりまくるの。『どうかこ の眉毛に免じて、有権者の方々の尊い一票を : : : 』といったところでこっちは噴き出し そうになって目が醒めたの」 ああ、我老いたり。衰えたり。かっては娘に一歩を譲るなんてことは何もなかった。

8. そして、こうなった

とくる。 「無ロじゃない、つまらんのよ ! 」 遠慮もなくいい放つが、多勢に無勢、テキは蚊に刺されたほどにも感じず、どういう うなず つもりか「わーツ」と笑って、「相変らずねえ ! 」と頷き合い、そんなこんなで友達は だんだんなくなっていく。 なんでこうなるの、 だからこうなるの、 そして、こうなった、で死ぬ。 なるようになった、死んだ。結構、これでいし この気概がわかるか、と、 気概はわかるけれど現実はどうなるのか、それが問題だね、と娘はいうけれど。 そんな私がこの春突然、白内障の手術をしようと決心した。何年も前から白内障の気 配があって、それが年と共に進行し、ついに新聞も見出ししか読まない、本、雑誌も読 のむ気が起らず、買物に行っても値段札を見ずに買う、という暮しになり果てていた。ス おっくう 概 トッキングがデンセンしてるような気がするが、調べるのが億劫なのでそのまま穿いて 気 1 いる。手伝いに注意されて、

9. そして、こうなった

ハと笑ったのである。 そうして嬉しそうに ( と私は感じた ) アハ 急いで鏡を見に走った。シミシミシワシワにはもう馴れたが、なんと右の目が : まぶた 私は絶句した。瞼が垂れ、目が縮んで歪んでいる。シジミとは何ということをいうー ( しかし、 , つ、まい ) とりあえす私は先生の所へ走った。実は退院した日からテレビも見て、本も読んで、 仕事もしました。そうしたらこんなになって : : : 。説明を聞いた先生は呆れ顔で、 「そんなムチャを」 と一言。つまり手術は名手術なのだが、まだ、人工の水晶体と脳が馴れ合っていない うちに眼を酷使したために脳のキャパシティを越えてしまった、ということらしい。早 くいえば神経がバカになったということか ? 「暫くの間何もせず、何も考えず、ばーっとして暮して下さい」 「ハイ」 たど しおしおと家路を辿りつつ、思い出したのは、あのモヤモャーツとたちこめた煙のこ 。まさしくその予感が当 とである。私が何かすると、必ずフツーでない事態が起る ったのだ。しかもそれは誰のせいでもない。自分が惹き起したことだ。 あき

10. そして、こうなった

ーン、これは娘の入智恵だな、と私は思う。おばあちゃんはゴチャゴチャいうの が趣味なんだから、本気で聞いてはいけないよ、とでも教えているのだろう。 だがそれにもかかわらず孫はテレビを見ながら、 ( 私のように ) 一人でしゃべってい るらしい 「そんなことで泣いてどうする ! 」とか、 「それがどうした」とか、 「警察はなにをやっとる ! 」 などなど。 「なにをやってる、じゃなくて『やっとる』なのよ」 と娘は歎息した。仕方なく、 「 , わははよ と私は笑う。くり返しになるが、笑っているよりしようがないのである。まったく。 ろ 中 背 8