思い出し - みる会図書館


検索対象: だからこうなるの
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1. だからこうなるの

ジュリアン・デュヴィヴィエの名作「舞踏会の手帖」のビデオテープを手に入れた。 この映画を最初に見たのは私が女学生の頃で、その後も折にふれ思い出してはあの美し いロマンチシズムにもう一度触れたいものだと思い思いしていた。映画の思い出を語る 時は必ずこの映画の美しさを語ったものである。もう二度と見ることは出来ないと思う と、「舞踏会の手帖」の思い出は愈々美しく、はかなく切なく胸を締めつけたもので ある。 それがビデオテープに作られたという。早速買った。わくわくしながら見た。暇さえ 私の舞踏会手帖

2. だからこうなるの

「白内障の手術は簡単ですよ」 と手術を勧められる。だが思う。 あと少しの辛抱だ。そのうち死ぬ : : : 。手術のために時間や金を使っても、間も なく死んではつまらない。 私には四十代の頃から「これでなければイヤ」というロ紅がある。だがその口紅は日 本橋の髙島屋へ行かなければ売っていないので、出不精の私は二年に一度か三年に一度、 日本橋の近くへ行った時に髙島屋に寄って、二、三本まとめて買うのを常としていた。 今、使っているものは何年前に買ったものか忘れたが、最後の一本が大分減ってきてい る。たまたま髙島屋に用があって出かけ、そのことを思い出した。そうだ、ついでに しいかけて、待てよ、一本で : と思って売場へ行き、今までのように二本下さい、と、 せししか、と思い直した。二本買っても残ったらもったいない。一本にしておこうか ? にしかしと考えた。今、使っているものは半分と少しある。それを使いきるまで様子を見 た・万がいいんじゃないか ? ごめんなさい。ちょっと : といって私は売場を逃げ出した。なにが「ちょっと : : 」だ、と思いつつ。

3. だからこうなるの

行ったにちがいない。ゥーム ! 約束違反じゃないか , 私は侮辱を覚え、もう一人の彼女にいう。 「あの二人、きっと申し合せてどこかへシケ込んだんだわ ! 」 彼女と共に憤慨するつもりでいっているのに、彼女は何の反応も見せず、気の抜けた ような顔で、「ふーん」というだけだ。なんて鈍感なんだ、この女は。せつかく一緒に : 。「ふーん」とは何だ、「ふーん」とは : 怒ろうとしているのに、なぜ怒らない : はじめは競馬場らしい馬場前の生垣の所にいたのだが、いっか観客席の中ほどに我々 は坐っている。私の隣りの椅子が白々と空席なのを私は横目で睨む あの女は三人の中で一番美人だった。こってり化粧の年の頃は三十八、九。鈍感女も わからない。 それくらいの年。私はいったい幾つなのか ? それにしても菅代表と私の関りは現実では何もない。会ったこともないお方だ。その お方が夢に登場されたとは意表を突く。なぜかと考えてみた。するとあの夜、ある雑誌 で政治評論家が菅代表のことを褒めているのを読みながら眠りについたことを思い出し 退た。それがもとなのかもしれない。 そのうち思い出したことがある。その昔、菅さんが参院選に初出馬した時、送られて

4. だからこうなるの

の大きさと鼻の穴とのバランスがとれてない人 : : : 」 「〇 X △子」 ぶつきらばうに娘に教えられ、 「あ、そうそう、〇 X △子だった : と思い出すが、また数日して、 「あの女優、何ていったつけ、鼻の整形をして、鼻孔とのバランスが : 「〇 X △子」 「あっそうだ。この前も聞いたね」 また数日して、 「あのほら、整形で鼻を : : : 」 「〇 X △子」 しい加減に憶えてよ、とはもはや娘はいわない。 なぜ〇 >< △子のことをそう話題にしたかというと、若い女どもはやたらに整形したが るが、〇 >< △子の鼻を見よ。あれを結構な鼻だと思うのか、と整形についての反対意見 を述べる時に必要だったのだ。

5. だからこうなるの

「ゲンマンてなに ? 」 ン ) ー ) っツ」い 私は思い出す。娘が今の孫くらいの時だ。その頃、私は毎日気が立っていた。気が立 ちながらそれでも娘を寝かせつける時、歌を歌っていた。 「月夜のたんばで コロロコロロ コロロコロコロなる笛は あれはねあれはね あれは蛙の銀の笛 ササ銀の笛・ : ・ : 」 私はこの歌が好きだったのだ。娘は目をつむって静かにしている。やっと眠ってくれ ョたかとほっとする。と、突然、娘は。ハッチリ目を開けていった。 シ ク「ササってなに ? 」 私は詰る。 「ねえササってなに ? 」

6. だからこうなるの

ジャンケンポン ! わーっ、と私はひっくり返った。孫の奴め、考えたとみえて、今 度はグーを出しおったのだ。 フタゴのケットシー 「さあ、お勉強よ。書いて下さい : と始まった。 私は考え、炬燵で蜜柑を食べながら本を読むことを提案する。孫は炬燵が大好きだ。 ししつか娘がいっていた 「えーと、何のお話がいいかなあ」と本箱を眺めているうちこ、、 ことを思い出した。 「モモ子にアンデルセンの『錫の兵隊』を読んでやっていたら、シクシク泣き出したの。 それでもかまわす読んでたら、ワアワア泣いて、しまいに歯ギシリまでして泣いたのよ そうだ、「錫の兵隊」を読んでみてやろう。これは面白いぞ、とアンデルセンを持っ て来て炬燵に入った。テキは何も知らず、蜜柑を剥いている。 「男の子は二十五人の錫の兵隊を持っていました。でもその中に一人、錫がほんの少し 足りなくて、足が一本だけになってしまった兵隊がいました :

7. だからこうなるの

ル 2 それはかって彼が口ずさんでいたヴェルレーヌの詩である。ジョーは彼女に気づく テープルへ来て今のクリスチーヌの身の上 ( 未亡人になったこと ) を知っていう。 「何か用でも ? : ・・ : 金かい ? 」 だが、彼女がただ会いに来ただけと知ってから、次第にジョーは消えて昔のピエール が戻ってくる。彼は囁く。 「凍てつける公園を 影ふたっ過ぎ去りぬ 古き愛を今も思うやと なぜに君聞きたもうや : ・・ : 」 キザというなかれ。乙女の日の私はこのあたりからもうわくわくしてきて殆ど泣きた くなったものだ。そして今の私はあの頃の「泣きたくなった私」を思い出して胸迫り、 やつばり泣きたくなるのである。 私のそんな述懐を聞いて、若い友人は私の「舞踏会の手帖」を書けという。 だが私の若き日なんて、なーんにもない。驚くべく殺伐たる青春なのだ。 この非常時に何ごとかー 「舞踏会とは何だッ ,

8. だからこうなるの

艸ない病を正当化するためにドッグフードを目の仇にして、「あれは犬を毒するもので す ! 」などと根拠もなくいいふらしていたのだ。 今、タローが死に瀕しているとなると、俄かにあのことこのこと、つまりあんまり可 愛がらなかったことが思い出されてきて胸が絞られるのである。 アニマルクリニックに入院したタローは、食欲がなく舌も動かないので薬も飲めない。 点滴によって栄養と薬を与えられている状態である。だがいろいろ検査した結果、内臓 はどこも全くキレイで、とてもじいさん犬とは思えない若さを保っていると聞いて私は いくらか気が晴れた。早速、 「ごらん、昆布とヒネジャガごはんのおかげよ ! 」 といえば娘は間髪入れず、 「そういうだろうと思ってた」 しかし今のところ、タローの病気の正体はわからない。ぐったりと一方を向いたまま で何も食べないので、先生は床ずれを心配しはじめた。 タローの好きだったもの、カステラ、饅頭など甘いものなら食べるかと持って行って も力なく横を向くだけである。雑種ながらも凜々しい顔をしていたのが、見るからに病

9. だからこうなるの

「ササってのは、ササってのは : : : ササはササよ」 「ササはササってなに ? 」 「ササはサササの : ・ : ・エイ、もう、うるさいなあ ! 早く寝なさいツー ぎんき と怒った。あれを思い出すと私は慙愧の念に駆られる。哀れ、四歳の娘は四六時中、 殺気立っている母親が撃ちまくる鉄砲の流れ弾にしよっちゅう当っていたのだ。 その点私の母は鉄砲を撃ちまくることもなかった代り、子守歌を歌って寝かせつけて くれたこともなかった。子供 ( つまり姉と私 ) が生れても ( 母乳が出なかったこともあ るが ) すべて乳母まかせだった。乳母はこんな子守歌を歌ってくれた。 「ねんねんようおころりよ 坊やはよい子だねんねしな 小さいとーきに母さんがア お耳をくわえて引っぱったア それでお耳がなーがいの : : : 」 お母さんはなんでお耳を引っぱったん ? と私は何回も乳母に訊いた。その度に乳母 はと、も、なげ . に、

10. だからこうなるの

だとしたら私は憤怒する。 一掬の涙を注ぐか、憤怒の途に入るか。私は悩むのであった。 ある日、風呂に入っていて、ふと私は思った。は治療費を一時間でも二時間でも五 千円以上、取ったことがない。そりゃあ安い。普通なら二万円くらいするよ、と中山あ い子にいわれたことを思い出し、そうか、それなら一回につき一万五千円トクをしたこ とになるな、と気がついた。平均して月に二回治療したとして、一か月三万円のトクだ。 一年に三十六万円。とのつき合いは五年になるから、五年で : : : ええと、五六の三十、 ・ ( と計算し ) 、百八十万 ! 三アガッテ、三五の十五に三タシテ : そうだ、百八十万円のトクをしている。 とすると、百万円の貸しは帳消しにしてお釣りがくるくらいではないかー る それにそうだ、あれはいつだったか、明日は飛行機で北海道へ行かねばならないとい こった時、フライトは何時ですか ? その時間なら空港まで送りますよ、といって送って くれたことがある。羽田までタクシーで七千四百円だ。それを五回ほど行ってくれた ・ ( と計算し ) 、三万七千円を百八十万に から、えーと、四五の二十の、二アガッテ : みち