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検索対象: グラフィック版 源氏物語
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1. グラフィック版 源氏物語

物き 1 ~ 町三 柏木五十日の祝いに若君を抱く 源氏無心に眠る若君を見るにつ かしトぎ けてもどことなく柏木に似てい る源氏は自分の過ちの報いをし みじみ思うが表情には出さない げんじ ) が対面する。 ゅ - フぎり かしわぎ タ霧は、柏木が年の割に老成しすぎていたので早世す ることになったのであろ、フと、亡き人を悼んだ。 •C ・じ その帰りに致仕の大臣を訪ねると、老いてなお美しく おもかげ・ 達であった、あの面影もなく、おかしいほど気が折れ、 目立ってやつれている。何につけても涙にくれているの が気の毒である。 かしわぎ ゅうぎワ ゆいごん タ霧はこうして、柏木の遺言を守って遺された人々を 慰める。宮中でも、世間でも、何かにつけて「ああ、あ うえもんかみ の右衛門の督が世にあったら」と嘆かぬものはない。老 きせん かしわぎ 第、・りな、せ いも若きも貴賤の別なく、 口癖のように、柏木の名を口 にしていた 若君は秋になると適うようになり、日ましに可愛く成 長していった。

2. グラフィック版 源氏物語

æ若菜下 かしわぎ あら 柏木は無理もないことと思うが、諦めきれないので何 はんもん とかして宮と直接お話したいものと煩悶する。 のりゆみ 三月に六条の院で賭弓が行われる。左右の大将をはじ かしわぎ め、参加者はみな気負い立っているのに、柏木ひとりが ゅうぎり 目立つほどばんやりしているので、親友のタ霧は気にか かってならなかった。 かしわぎ あにぎみとうぐう 柏木は、三の宮の兄君の東宮に、琴を教えて上げるつ いでに、六条の院の三の宮のもとにいる猫が可愛かった かしわぎ 話をする。東宮はその猫をとりよせて柏木に賜った。白 からねこ 木は、あの忘れられない日にみた唐猫を手に入れると、 夏の閨にまで入れて可愛がる。猫を話相手にしてわすか もんもん に悶々の思いを慰めるのであった。 まきよしり ひげくろそくじよ し、、ぶきよら・ 髭黒の息女の真木柱は、祖父式部卿の宮が引き取って、 決して大将のほうへは渡さす、大切にしていられるが、 かしわぎ かしわぎ 柏木へとの内意がある。しかし、柏木が猫ばかりにかま はたるひょうきよう けているので、螢兵立ロ卿の宮の北の方になる。しかし、 真木柱が亡き北の方に似ていないので、それはど大切に しないのは気の毒である。 だじよう と・フちっじよう 年月が重なり、帝は譲位された。太政大臣 ( 頭の中将 ) さだいしさっ いんきょ ひげくろ は辞表を出して隠居した。髭黒の左大将は右大臣となっ しんみかど て天下の政務をみる。新帝の亡き母女御の兄にあたるか らであった。 あかし 立され 東宮には明石の女御の第一皇子が立たれた。譲イ しんいん げんじ ふじつば た新院には御子がなく、藤壺の宮と源氏との密かな恋の 女三の宮 ねや みかど わかな ひそ げんじ 血筋は跡絶えてしまう。源氏は心ひそかに名残り階しく も、又、道ならぬ恋の行くえは末を残さぬものかと反省 する。 むら -5 げんじ 紫の上には出家の志があるが、源氏は許さない。そし げんじ あかし - - ようごらさきうえ あかし おんかた て十月、源氏は明石の女御、紫の上、それに明石の御方、 すみよし にゆうどうふみ その母の尼まで連れて住吉に参詣した。入道の文を読ん でいるので、女御のための御願ほどきのためである。世 あ力し おんかた あまぎみ 間では明石の御方はもとより、尼君の幸運を珍しいこと うわさ さきのだじよう おうみ に噂していた。あの前太政大臣家の近江の君などは、双 あかしあまぎみあかし あまぎみ 六をうっときも「明石の尼君、明石の尼君」といって、 よい賽の目の出る呪いにしていた。 出家されたお完は今もなお、三の宮の身の上を案し みかど られるので、帝は三の宮に「一品の位を授けられた。その みかど ほかにも帝は折にふれて、何かと三の宮のことを配慮さ れるので、源氏も三の宮をおろそかには取り扱えない すざくいん 今年は朱雀院の五十の賀に当り、かねて三の宮に会い わかな たいとの仰せごとでもあるし、氏は御祝に若菜などを ばんたん さし上げようと万端、準備に心を遣っている。音楽を好 まれる院のために、興ある楽を用意してお聞きいただこ うと、この頃になって三の宮には琴を念入りに教えたり もしていた。 むらさき おんながく 翌年、正月二十日には六条の院で女楽が催された。紫 あかし う・んあ・かし の上、明石の御方、それに里下り中の明石の女御と三の あかし 宮の四人が合奏する。明石の御方は琵琶の名手であるし、 むらさきうえ ゅうぎり わごん ひ 紫の上も和琴を見事に弾く。タ霧も調律のために召し寄 むらさきうえ せられたが、紫の上の和琴のひときわ美しい音色には感 嘆した。三の宮の琴は熟練したとはいえないが、熱心に あと うえ あま おんかた おんかた げ じ ド上うご 8

3. グラフィック版 源氏物語

柏木 かしわぎ ちょうだい 柏木は、宮を帳台の端に抱き下ろしてかき口説くうち、 ご可愛 三の宮が近寄りがたく気崇い人ではなく、たたたオロ らしくあどけないのに、 いよいよ情念を燃やして契りを 結んでしまう。 あき 宮はただ呆れまどうばかりである。少し眠った間に柏 木は猫の夢をみた、あかぬ別れを階しんで帰ると柏木は、 おきて行く空も知られぬあけぐれに いづくの露のかかる袖なり あかっきやみ ( 帰って行く先もわからない暁闇に、どこの露が私の袖を濡 らすのでしよう。 ) よ と詠み、三の宮は、 あけぐれの空にうき身は消えななむ 夢なりけりと見てもやむべく 何もかも夢だったと思 ( 暁闇の空に私はこのまま消えたい、 ってすむように。 ) と返歌した。 むら・ t 、、うえ しりよっ みやすどころ 重態におちいった紫の上には、六条の御息所の死霊が きとう とり憑いて、一旦は、自 5 も絶えるが、祈疇のカでやっと むら、、う・え じゅ力い 回復した。紫の上はこの機会に受戒する。 げんじ 三の宮は妊娠した。源氏はそれを聞いて長年そんなこ かしわぎ 。柏木は、いの鬼に責め ともなかったのにと、一不審に田 5 、つ あ られながら、堪えかねては、三の宮に逢っていた。ある むら -1 、、うえ 日、紫の上の病気が快方に向「ている暇をみて、氏は かーぎ ふてぎわ 六条の院に三の宮を訪れたが、三の宮の不手際で、柏木 げんじ い、をお からの恋文を見つけてしまう。一切を知った源氏は、置 ふじつば りに身を煮られるように思うが、自分の若き日の、藤壺 の宮に犯した恋の過ちを思い出して、今更ながら宿命の ちぎ げ じ 恐ろしさにおののくのだった。 きりつほいん 父桐壺院も口にはされなかったが、あるいは今の自分 のような苦悩に堪えていられたのではないか、と思うと りつぜん げんじ 栗然として、源氏は三の宮の過失を知らぬふりで過すは げんじ かないと心を定める。三の宮は源氏に秘密を知られたこ かしわぎ もだ とを、幼稚な、いにも苦しみ悶える。柏木は源氏の怒りに ふれることを思、つとそら恐ろしく自殃病気がちになった。 げんじ 既づきょ 腑月夜は念願かなって出家を遂げた。源氏は心をこめ むらミ、 て尼の僧衣などを送る。紫の上の病気や忌日つづきで延 すざくいん 引していた朱雀院の賀は、十二月に行われることになっ 六条の院ではそのための試楽が行われる。引き籠り かしわぎ がちの柏木も、源氏の強ての頼みで伺候したが、心中の かしわぎ げんじ げ . 苦悶を隠しかねている。源氏は表面さり気なく柏木をも てなすが、酒宴になった時、戯れのよ、つにりかけるそ の言葉には鋭い針が含まれていた。 - フえもん かみ 「右門の督が私の酔い泣きするのに眼をとめて笑って いる。まあそれも、 しいさ。年月は逆さには流れないもの 若さに驕っている人も、やがておとすれる老いだけ は免かれないよ」 かしわぎ 源氏の言葉はおだやかであるが、柏木を見る眼には言 い知れぬ贈しみがこもっていた。 かしわぎ さかずき 柏木は源氏に盃を強いられるうちに、気分が悪くなっ て途中で席を立って帰ったが、それからどっと病みつい かしわぎ てしまった。柏木を愛し頼りにしている父母は、一条の かしわぎ おちば 落葉の宮邸から柏木を引きとって介抱するが、病は重る 一方である。 すざくいん 朱雀院の賀は十二月二十五日に行われた。 - しカ / 、 たわむ おも

4. グラフィック版 源氏物語

てんじようびと 0 若菜上覊をする殿上人と垣間みえる三 かしトぎ の宮柏木は三の宮への思慕の念を断てない 三月六条の院で蹴鞠が催されタ霧や柏木も 集まった猫が御簾を引き上げたので柏木は はからすも三の宮の姿を見て胸をかきたてる 物・づきょ 朧月夜 むらさき せい力い 人の父たちが青海波を舞った昔の、世にも稀な美しさに かんたん も劣らないと見物の中から感嘆の声が上がった。 あきこのむちつぐう 十二月には秋好中宮の御催しの盛大な四十の賀が行わ ぎよ、つこ - フ しゅ・しよう れた。主上は六条の院に行幸なさりたいお気持があった げんじ が、世間の迷惑になることを思って源氏の方でご辞退し ゅうぎり うだいしさフ た。そこでタ霧を右大将に昇進させ、自分の名代の心で りんせき だじよう ちよくめい 盛大な賀を行わせた。勅命によって太政大臣も臨席した。 あかし に上うご 翌年の三月に、明石の女御は東宮の第一皇子を安産さ れた。帝、中宮をはしめ諸方からの盛大ながある。 あかし わかみや おんかた 紫の上は母親のように若宮を可愛がるし、明石の御方、 あまぎみ あかし 尼君の喜びはいうまでもない 明石の浦でこの吉報を聞 にゆ、つ、 - フ いた入道は、年来の宿願が叶ったことを喜んで長い手紙 を送って来た。それによると、遠いむかし妻が娘を娠っ すみよし た時、素晴らしい夢を見て以来、今日の幸いを住吉の神 - - ゅ・つ 2 ( ・フ かな に祈り続けて来たというのである。入道は望みの叶った のを知って潔く浮世を去ろうと決心し山奥へこもってし かしわぎ 昔から宮にあこがれていた柏木は、三の宮が上べは大 むら - 、う・え げんじ 切にされながら、内実、源氏の愛情が紫の上の方にずつ と深いのを知って、いよいよ慕情をつのらせてゆく。恐 れ多いことではあるが、自分のもとに降嫁されていれば、 このよ、つなわびしい田 5 いはさせなかったのにと、限めし めのと く思うにつけても、自分の乳母の子で三の宮の侍女であ る小侍従を仲だちにして、しきりに宮への思いを訴える のであった。 うららかに晴れた春の日に、六条の院では、蹴鞠の遊 てんじようびと まりも一・あそ びがあった。 若い殿上人が鞠を玩ぶのを見ているうち、 0 まれ みようだい みごも ゅ - フぎり かーぎ げんじ 源氏がすすめるままに、タ霧も柏木も庭に降りて、桜の かしわぎ ぎりさっ 花で蹴鞠に興じた。柏木の鞠の技倆は群を抜いていて、 げんじ 源氏もそのすばらしさを賞めた。 かしわぎ ゅよフ」り すまい タ霧と柏木が三の宮の住居に近い階段の中はどに腰か けて話ししているとき、可愛らしい唐猫が突然内から走 ひも り出て来た。 、苗には紐がついているので、そのとたん御 90 し す 簾がめくれ上って中が見通された。廂の間に大勢いる女 うちぎ 房たちより少し後の方に、袿姿で立っていられる美しい ゅ - フぎり 人があった。紛れもない三の宮である。タ霧は、はらは らするか御簾を直しにいくわけにもいかない 。気づかせ せきばら ようと咳払いすると、やっと三の宮は内に入り、猫の綱 を放したので御簾が下りた。 かしわぎ 柏木は、あれほどあこがれていた三の宮の御姿をひと 眼見たので、うっとりして胸もふさがる思いである。タ ぎり 霧も、かねて三の宮のことが気にはかかっていたが、あ しつか どけないばかりで確りしたところが見られないようなの ちょうあい むら - 躪、うえ で、父君が紫の上以上に寵愛されないのはそのためであ ろうと思っていた。それだけに今、ゆくりなく美しい姿 を垣間みても、何となく軽々しいと批判するゆとりがあ かーぎ げんじ った。しかし、柏木は、いもそぞろにあこがれて、源氏に - フわ要、ら ゅ・フぎワ もてなされても上の空である。タ霧と同車して帰る車の 中でも、三の宮のことをしきりに話題にしていた げんじしゆっ 源氏が出家するか、万一のことがある場合に、必ず自 かーぎ 分が三の宮を得ようとひそかに思う柏木は、今も父の邸 内にひとり住みをしている。そして、苦しさに堪えかね、 こじじフ 手紙を書いたりす 三の宮の例の小侍従を呼び寄せたり、 こじじゅうしよせん 、寺従よ所詮、無駄なことであると返事をする。 るカ月ィー / ー一 ↓ 6 り 0 ゅう 8

5. グラフィック版 源氏物語

すざ ( い 4 柏木身を横たえる三の宮と朱雀院と源氏 かしわぎ 柏木は病床に臥し三の宮にあわれな文をだす か朝る 三の宮は男子 ( 薫 ) を生むが産後の容態は よくない出家した朱雀院は三の宮を見舞い 執拗な宮の出家の願いを仕方なく承知した げじ 和の病は央方に向わぬまま、新年とな「た。両親の かじきと - フ 、加持祈疇に心を尽していた。 、い配はひとかたではなく めいすう かしわぎ 柏木は親に先立っ不幸を堪えがたく思うが、命数も尽 こじじゅう きたことを思い、見舞いに来た小侍従に託して、あわれ こじじゅう ふみ な文を三の宮にさし上げる。宮は小侍従にせがまれて、 返事を書いた。 けぶり 今はとて燃えむ煙もむすばほれ かしわぎ ( 柏木 ) 絶えぬ思ひのなはや残らむ ( 今を限りと私を葬る煙は燃えふすぶって、あなたを慕う思 いだけはいつまでも後に残るでしよ、つ ) 立ちそひて消えやしなまし憂き事を けぶり ( 三の宮 ) 思ひ乱るる煙くらべに ( 辛い思いに悩むのはどちらがひどいか較べるために、あな たと一緒に誚えてしまいたい。 三の宮は産気づいて男子を産む。源氏はこれこそ、若 い日の自分の過失の報いなのであろう、現世でこのよう お・ ) ほ・フ な応報を受けたからには、来世での罪は軽くなろうかと 思いもするが、三の宮に対して今までのように愛情を持 っことは出来す、さまざまに思い乱れる。人前はつくろ っているが、三の宮と二人だけのときには、それとなく ろこっ 針を含んだ言葉を口にし、冷たい態度を露骨に見せる。 真相を知らぬ侍女たちは、五十近くなって儲けた若君に げんじ 寸して、源氏が思いのほか喜ばないのを物足りなく思う。 ひだ 三の宮自身も心細く、お産後の肥立ちが悪くて死ぬ女 じじよ かしわぎ

6. グラフィック版 源氏物語

かりゆうぎり 0 横笛幼児に乳を含ませる雲井の雁とタ霧 かしわぎ 柏木の一周忌は盛大に行われタ霧はニの宮 を見舞う柏木の笛を形見にもらったタ霧は 柏木の夢を見た泣き声に目をさますと雲 井の雁は幼児をあやしながら恨みごとを言う 4 横笛 しの 世間の人々が諦めきれすに、その死を偲んでいる間に、 げんじ かしわぎ 早くも月日は移って柏木の一周忌となった。源氏は三の 宮との密通に関して許しがたい点はあるものの、幼い頃 から眼をかけて来た青年でもあり、一方ではそういう特 別の関係もあるだけに、ひとしお彼を階しむ思いも深い わかぎみ ) 、日咸にはすま のであった。また若君の実父と思えばし かしわぎ げんじ ついぜんくよう されす、源氏は柏木の一周忌に追善供養のため黄金百両 ちじ を寄進し、事情を知らない致仕の大臣に感謝された。タ ぎり とむら 霧も手厚く故人の後を弔った。それにつけても、大臣は かしわぎ 柏木の夭折がいっそう残念で嘆きの種となるのであった。 山のお危は二の宮の不幸、三の宮の出家と、重な ひめみこ ごんぎよっ る姫御子の不運を嘆いていたが、だんだんに諦めて勤行 の日を送「ていられる。山の奇、ゃなどを三の宮に贈 って来る。そのお返事に、三の宮はここよりも山寺が恋 げんじ しいと書いているのをみて源氏は嘆く 尼姿も愛らしい三の宮をみると、今更にむ心が動き、 こうむ げんじ きちょう 仏罰も蒙りそうなので、源氏は几帳をへだててこまごま とるのであった。 げんじ わかぎみ 若君はたいそう可愛らしく、源氏に馴れまつわる。や っとよちょち歩きをする頃であるが、その美しさは格別 げんじ で、鏡にうつる自分の影に満更似ていなくもないと源氏 は田 5 、つ わかぎみ たけのこ 若君は、歯が生え始めの頃でむずかゆいので、筍を取 り散らしてかじっている。何と風変りな色好みもあった 横笛 ようせつ 0 よこぶえ 0 た・ ゅう げんじ ものよと冗談をいって、源氏は筍を取り上げた。 くれたけ ふし 憂き節も忘れすながら呉竹の こは捨てがたきものにぞありける ( あの辛い事は忘れられないけれども、やはり子供はいとお しくてならないものだ。 ) わかぎみ ごと げんじ と、源氏はひとり言のようにつぶやくが、若君は無、い に笑っている ゅうぎり 秋の夕暮れ、タ霧は一条の二の宮を訪ねた。宮はくっ 来訪と聞いて楽器も奧へ片 ろいで琴など弾いていたが、 ゅ - フぎり づけ、母君が例によって対面する。タ霧は幼い子供に囲 すまい まれて、ごたごたした住居に馴れているので、ここのも の静かな様子がひとしお心にしみる。琵琶を取り寄せて ゅうぎり わごんがっそう そうふれん 想夫恋を弾きながら、タ霧は宮に和琴の合奏をお願いす る。やっとのことで宮は少しだけ琴をかき鳴らした。 かしわぎ よこぶえ ゅうぎり みやすどころ タ霧の心づくしの礼に、御息所は柏木の遺愛の横笛を 贈った。家に戻ってみると、雲井の雁は不機嫌で、迎え ちわげんか ようともしない。ちょっとした痴話喧嘩のあと、贈物の かしわぎ 笛を枕べに置いて眠ると、夢に柏木が現れて、この笛は 男の人に譲りたい志があったという。理由もきかないう おさなご ちに、幼児の寝おびれた声で目がさめてしまったが、翌 かしわぎ ず 0 “う ゅ - フぎり さっそく 日、タ霧は早速、柏木のために誦経させた。 げんじ あかし ゅうぎワ タ霧が六条の院に参上すると、源氏は明石の女御の方 にようごーら におうみや あかし 走り出て来た明石の女御膓の三の宮 ( 匂の宮 ) は 「宮お抱き申して」などと自分自身に敬語をつかったりし ゅ - フぎり て、タ霧にまつわり付いてくる。 あにみや わかぎみかおる しんてん 女御のいられる寝殿では、兄宮と三の宮の若君 ( 薫 ) と かおる ゅうぎり が仲よく遊んでいる。タ霧はその時はじめて薫をよくみ 0 た・

7. グラフィック版 源氏物語

すざくいん ないしのかみ おつづきょ 。朧月夜の尚侍は亡 御更衣がたもそれぞれに別れてい すまい こきてんおおきさき き弘徽殿の大后のお住居であった二条の宮に下った。 ちょうあい の宮についで院のご寵愛になったのはこの人である。出 家の志はあるが、あまり急ぐことでもないと思い留まっ ている。 げんじおほろづきょ 源氏は朧月夜の君には、心残りがあって、何とか再び じじよ 会いたいものと、侍女やその兄を手なすけて仲だちをさ むらさきうえ すえつむはな せ、二条の宮に出かける。紫の上には、末摘花の病気見 舞いと言いつくろった。 お寧つづきょ そうじ さすがの朧月夜の君も、障子に鍵をかけて逢おうとし げんじ なかったが、源氏にかき口説かれて昔のことを思い出し、 ちぎ いっかうちとけて、十五年ぶりに契りを結んだ。 一方、崢の女御はおめでたの様子で、や「と里下り して来られた。紫の上は女御にご挨拶するついでに三の 宀呂にも御目にかかることにす・る によう ~ ) むら - 」うえ 女御は紫の上を実の母よりも慕っていられる。立派に むら - 、 成人した御姿をなっかしく見上げてから、紫の上は三の あかし 宮に対面した。明石の女御よりは一、二歳、年かさのは おさな ずの三の宮はすっと稚く見える。紫の上は次第に親めい ひいなあそ た気分になって打ちとけ、宮のお気に入りそうな雛遊び の話などして上げる。そして、その後は万事、好都合に 睦まじくつき合、つよ、つになった。 むら、うえ げんじ やくしぶつ 十月に紫の上は、源氏の四十の賀のために薬師仏の供 むらさきうえやーを しさつじん 養をされた。御供養の精進落しの祝宴は、紫の上の邸で ゅ・フぎり ある二条の院で催された。結構すくめの宴の中で、タ霧 かしわぎ いりあや と柏木が連れ立って入綾の一くだりを舞ったときは、二 むら - 、う・ん かぎ

8. グラフィック版 源氏物語

世には絶えせぬほのほなりけれ 奈りび はのお はのお ( 篝火とともに燃える私の恋のは、いつまでも絶えない なのですよ。 ) げんじ たま。ら と源氏はよみかけるが、玉鬘は、 行方なき空に消ちてよ篝火の たよりにたぐふ煙とならば カドりび ( 篝火の煙とお 0 しやるなら、どうぞ消して下さいまし。 ) 「人が、めやー ) いことに田 5 いましよ、つ」とさりげな , \ い、つ のだった。 ゅうぎワちゅっじさっ ないナいじん 折しも、タ霧の中将のもとに、内大臣家の若君がたか 来ていて、笛の音を箏に合わせて吹いている。潦氏の方 ゅうぎり ないだいじん かしわぎ から声をかけると、タ霧と、内大臣の長男柏木その他が ないだいじん 打ち連れて来る。内大臣は琴の名手なのでその子息だけ かしわぎ あ「て、柏木のはすばらしい 「御簾の内に楽の音のわかる方がいられるようです」と げんじ 源氏は気を持たせていう。 たまカずら きんだち 玉鬘は血のつながる人々であると思い この公達に人 知れす眼をつけているか、二人はそうともしらす、殊に かしわぎ たま力すり 柏木のほうは、玉鬘を恋い慕っているので、ひどくつつ しんだ態度をとっていた。 源ち沈は照どけう る打のし氏にほ えに月源び火いみし 教氏に一篝し詠て を源た枕がまをし 琴とつをた悩歌惑 につな琴しはは困 鬘やに を一鬘じ氏は 呈もう夜寝呈源一鬘 鬘よの仮た呈 び火 3 玉る秋とれ 一篝けだ一鬘さしが 倉し氏解ん玉ら美る げんじ

9. グラフィック版 源氏物語

藤袴玉鬘を訪ね藤袴の花と歌を贈る多 ち・うぐう 中宮や女御に気兼ねして呈は宮仕えに気 ゆうぎり が進まないタ霧に思いを打ち明けられるが たま 0 イら たまかずら 玉鬘は避けてしまう参内を前に玉鬘を思う 人々は気をもんでしきりと文を寄せてきた によう たまかずらそて の端からさし入れて、取ろうとする玉鬘の袖をとらえ、 幻じばかま 藤袴 ( 蘭の花 ) の歌を詠みかける。 同し野の露にやつるる藤袴 あはれはかけよかごとばかり 9 も ( タ霧 ) ゅうぎり ( 同じ縁につながる私の恋を、少しでも哀れと思って下さい。 ) たまかずら 玉鬘はこれを避けて奧に引き込んでしまった。 ゅうぎり げんじ タ霧は源氏に復命して、玉鬘は宮仕えをしぶってるよ うだという。そして、ふたりで玉鬘について語り合うが ゅうぎり げんじ た - まかずら のわき タ霧は、野分の日に見た源氏の玉鬘に対する態度を思い ないたいじん たまカずらげんじ 父の本心を確かめようと内大臣が玉鬘と源氏の間を疑っ げんじ ていると話す。源氏は笑って取り合わないが内心、気味 わるく田 5 、つ さんたい ないしのかみたまかずら 大宮の喪があけて、尚侍玉鬘は十月参内の予定となっ たまかずら 玉鬘に思いをかけている人々は残念がって何とかし ゅうぎり たいと願、つが、どこにも縁はきまらない。タ ~ 務は拳 ( , 訂な ことをいった心咎めもあって、玉鬘の世話につとめるの たまかずら かしわぎ 玉鬘に思いをかけていた内大臣の長男、柏木は、事実 たまカずら を知ってあっさり思い切り、父の使いとして玉鬘のもと たまかずら に来るが、実の兄妹と分っても玉鬘は遠慮して取次を介 じじよ かしわぎ して返事する。柏木は軽んしている侍女たちに堂々とし ないた、じん たまかずら たやりとりを見せて、内大臣家と親しくするように玉鬘 に申し入れて帰る。 かしわぎ ひげくろだいしさっ 柏木の上役である髭黒の大将は、柏木に語って玉鬘へ の取りなしを頼む。大将は人柄もよく、将来のある人な ので、内大臣は婿にしてもよいと田 5 っている。ただこの むらさきう・え 人には年上の北の方がいて、これが紫の上の腹違いの姉 し、、 、エう にあたる式立ロ卿の宮の姫君である。 さんだい たまか・ずら ふみ 十月の参内を前に玉鬘のもとにさまざまの文が寄せら た - まかずら はたるひト - うぶきよう れるが、玉鬘が返事をしたのは螢の兵部卿の宮だけであ おおみや たまかずら ないだいじん たまかずら たまかずら かしわぎ たまかずら

10. グラフィック版 源氏物語

かおる 出て来た侍にたすねると、宮は山寺にお籠りだという 薫はこのまま戻るに忍びず、楽の音を忍んで聞かせても - す - いカ、 のぞ らうことにする。透垣の戸を少し押しあけて覗くと、簾 を高く巻き上げて坐っている女たちの姿が見えた。雲に 隠れていた月がちょうど顔を見せたところで、大そう可 れん 隣で匂いやかな姫がそれを眺めて、 まね 「一扇でなくて、この撥でも月は招けるものですわ」という もうひとりの姫は琴に身をもたせ、 「風変りな思いっきだこと」とほほえんでいる。何ほど かおる のことはあるまいと、薫の君が想像していたのとはまる ふう さぶらい 宇治橋橋姫以後は宇治が舞台となる かおる かおる かおる たしな で違い、奥ゆかしい嗜みもうかがえる、姫君たちのあわ れ深い様子である。 ひめぎみ かおるあいさっ そのあと、薫が挨拶を取次がせると、姫君たちは思い がけぬ人に琴の調べを聞かれたと思う恥しさで、消えも ふぜい 入りそうな風情であった。そこへ多少心得のある老女が かしわぎ めのと 現われて応対するが、これが実は柏木の乳母の娘で弁の きみ かしわぎかおる みや 君とし 、い、柏木と薫の母三の宮との間を取り持ったト侍 べんきみかおる じっ 従の従妹だったのである。弁の君は薫の出生をほのめか すような昔話をして、いすれ改めてゆっくりお聞かせ申 かおる しあげましよ、つと董にい、 かる べんきみ 京へ戻った薫は弁の君の話を気にかけながらも、趣深 ひめぎみ おもかげ い姫君たちの面影を思いうかべ、常の道心とは裏腿な、い におうみや 弱い自分を思い知らされる。また親しい仲の匂の宮に、 ひめぎみ ・フじ 宇治の山奥で出会った思いがけない姫君の話を持ち出し におう て匂の宮の気を揉ませたりするのだった。 みや 十月になって薫がふたたび字治を訪ねると、八の宮は 薫の好意を喜んで、姫君の行末などを相談したりする。 みやごん・う 薫は以前聞かされた昔話が気がかりで、宮の勤行の間に かしわぎ べんきみ 弁の君に会う。薫がこの老女から手渡されたのは柏木の 臨終の文であり、自分の父が柏木であると知らされて、 かおる 薫の、いは千々に乱れるのだった。世の中にこのようなこ とかまたとあろうかと物思いに沈む薫は、京へ戻っても さんだい ど、 - う 参内する気にもなれない。母宮のもとへ行くと、読経さ れていた三の宮は恥すかしそうにお経を隠してしまう。 薫はその様子を見て、この方に何もわざわざ秘密を知っ たと申上げることかあろ、つかと、そのことをひとり胸に 秘めてさまざまな感既にるのである。 かおる かおる かおる ひめぎみ べん 118