おそまつ - みる会図書館


検索対象: ワルのぽけっと
16件見つかりました。

1. ワルのぽけっと

ワルのほけっと 250 シンべ工先生はひどくあわてて、お母さんを制した。そんなときのシンべ工先生は、いこ ずらをとがめられた子どものような顔になる。 「おそまつのやっ、おもろいで先生 , カドチンはニャニヤ笑いながら言った。 「またなにかやらかしたか」 「うちに、おぼうさんが来たんや」 「うんうん」 「おきようがすんで、ヨウカンを食べとったら、おそまつが言いよった」 「なに言、った」 「おかしを食べに回ってるみたいってー フフフ : : : とシンべ工先生は笑った。 「おそまつのおばちゃんがあわてて、ちゃんとおきようをあげてるでしよって言ったけど、 そのおほうさん泣きそうな顔をしとった」 ・ : と大声をあげてシンべ工先生は笑った。おそまつは頭をかいている。 「まだあるでえ」 「まだあるのか おそまつは、やめんかい、と言ったがカドチンは続けた。

2. ワルのぽけっと

「このあいだおそまつのおばちゃんに写真をとってもろた」 「、つん、つん 「おばちゃんがおそまつにもっと後ろにさがってと言って、おそまつは後ろにさがったん 「うんうん」 「バチャンとドプへ落ちょった」 みんな、どっと笑った。 ノイ、、つつしますよ って、カチャと 「ほんとにこの子はオッチョコチョイの子やなア、、 シャッターを押したら、おばちゃん、黒いキャップをつけたままうっしててん おそまつは、また頭をかいた。お母さんのかわりに頭をかいているのかもしれない。 「ひとにオッチョコチョイや言うて、自分がオッチョコチョイやないか言うて、おそまつは 一日中うなっとった」 みんな大笑いだ。ドテカボチャは死ぬうーーーと言いながら転げまわっている。カドチンの 話でシンべ工先生のきげんはちょっぴりよくなったようだ。 三十分間ほどトランプをしたり、うでずもうをしたりしていたが、カドチンたちはなんだ かそわそわしはじめた。 カドチンは玉工モンに目くばせをした。

3. ワルのぽけっと

ワルのほけっと 260 あした持ってきてやる、と声があがったが、そばでカドチンが言った。 「おそまつは、今もってるでえ」 おそまつは、喜んで持ってきた。クッキーの空バコに入れてジャラジャラいわせている。 「たくさん集めたなア」 シンべ工先生は感心した。 しよう 「毎日、一一升か三升をお父ちゃんに飲ませんことには、これだけ集めきれんなあ まさか、と、おそまつは言った。 「これはカモヅルや」 シンべ工先生はうれしそうに一つのフタをとりあげて、酒のなまえを言った。 「これはキクマサムネ、これはゲッケイカン、これはイズミマサムネ、こいつはケンビシ、 この酒はうまいねんぞオ」 シンべ工先生は、ちゅるんとよだれをすいあげた。どうやらシンべ工先生もだいぶサケノ 、 0 ミらし ノノタマシイや。めずらしい酒のフタ 「ほくの知らんのがいつばいあるな。あっ、これはハ、 があるなア」 シンべ工先生は授業をそっちのけにして、あれこれ感心して見ている。 「それにしても、これだけ集めるのは苦労ゃな」

4. ワルのぽけっと

っ 校長室に入ると、とっぜん校長先生は立ちあがった。カドチンは逃げ腰になった。 「やあやあー と、校長先生はやわらかい声をだしたので、かろうじてカドチンは、飛び出さないですん ヾ、」 0 「よくやったぞ角田くん」 かた 校長先生はカドチンの肩をがっしりと押さえた。 「金賞だ。金賞なんだぞ。全国でたったひとりなんだ角田くん、先生はうれしい」 校長先生の声はうわずっているようだ。 カドチンはキョトンとした。 「全国動物画コンクールの特賞だ」 と、校長先生が言ったので、カドチンはやっと思いだした。 もう三か月も前の話だ。全校で動物園へ写生に行ったことがある。カドチンはそのとき、 マントヒヒを描いた。チンパンジーを描くつもりだったが、おそまつに冷やかされてやめた。 おそまつは言った。 「きようだいは、描きやすいやろ」 なるほどそう言われてみると、カドチンの顔は少しサルに似ている。二年生のとき、「そ んごく、つ」とい、つあだながあったくらいだから、おそまつの言うことは、まるつきりまとは

5. ワルのぽけっと

「だいいちに男はふけつ。もっときれいにせんとそばへよったらくさい。ふうちんなんか、 顔まっ黒、足まっ黒。カドチンはそこら転げまわって、服ドロドロや」 「おまえもけんかをするとき、転げまわるやないか」 カドチンは怒ってこ、つぎをしたが、 玉工モンはそしらぬ顔で話を続けた。 「きのうのことだってカドチンはコマのひも腰に巻いて、ほうき巻いて新型掃除器やいうて、 フラダンスしとんよ先生。オランウータンはエッチ男。すたこらさっちゃんにポールやコマ をやって詒食を手伝わした。自分は給食当番やのに遊んでるんやもん。テニスのとき、すた っこらさっちゃんに順番をゆずってやってる。おそまつは人にわからん質問をしてエ工カッコ ほをするし、人の描いた絵に、これあかん、というてケチをつける。先生も男やけど、男はカ の スや。へタや」 ワ 「男はヘタか。 シンべ工先生は笑いながら言った。 「先生、ばくに当てて、たのむ、たのむ。 おそまつが両手を合わせた。 玉工モンにやられつばなしでは男がすたると思っているんだ。 「なななな、な、みんな」 おそまつは、あわててどもってしまった。 180

6. ワルのぽけっと

プウー等あげます 275 「うすきみわるい子だね ふ、っちんのお母さんはあきれて言った。 おそまつの家とて、似たようなもんだ。妹が一つちょうだいと言った。これをあげるくら いなら、ほく、家出しますねん、とおそまつは言って、お母さんに叱られた。酒プタの入っ たチョコレートのカンをしつかり抱きしめて、ざしき中転げまわっている。 五時間めがすんで帰りじたくをしていると、シンべ工先生が紅白のまんじゅうをくばって くれた。紅白のまんじゅうは、なにかおめでたいことがあったときにくれるもんだ。 「なに ? みんながたずねた。 シンべ工先生はそれにちよくせつ返事はしないで、うっとうしい顔をして印刷物をくばっ た。厚くてつるつるしたとくべつ上等の紙にの会長さんの写真が印刷されてあった。 その横にくんしようの写真が金ぶちで印刷してある。あいさつの文もあった。写真はいずれ もカラーで、ずいぶんお金のかかったらしいすりものだ。 くん 《勲五等》と、大きな活字がなんだかいばっているようだ。 「へえ、ジャガイモトッチャン、くんしようもろたんか」 しか

7. ワルのぽけっと

「まだまだやなア 子どもたちはまた絵筆を動かした。 その日の朝、ジャガイモトッチャンは子どもたちのまえで演説をした。いろいろしゃべっ ていたけれど、カドチンたちはおおかた忘れてしまった。一つだけ忘れられないところがあ っ , 」 0 : 役にたっことを考えてください。このごろわたしの会社にも、酒のフタを集めるため へいをのりこえてくる子どもがいますが、酒のフタなど集めてなんの役にたちますか。 っ あほうなことです。もっと世の中のために : ほ長い話を聞かされてカドチンたちは教室に帰ってきた。 の 「おもろない ワ と、カドチンはどなった。 「おもろない」 と、ふ、っちんもどなった。 「おもろない と、おそまつもどなった。 みんなで、 「おもろない」

8. ワルのぽけっと

プウー等あげます 279 ハナの穴が大きいのでトンネルみたいだと言っているんだ。 「たれ目、さがり目、すけべえ目 ふうちんはポケットから三色ボールペンを出して写真にいたずらがきを始めた。ハナの穴 に赤い毛を描いたので、へんな顔になってしまった。 ジャガイモトッチャンは子どもたちにまんじゅうまでごちそうしてこんな目にあわされて いるんだから、わりにあわない。 と、ドテカボチャが笑っている。ドテカボチャは、少し気分がはれたようだ。 「五等と書いとるけど、なんで一等もらわんかってん」 おそまつが言った。 「一等は大臣がもらうねん」 もの知りのアヒルちゃんが答えた。 「フーン。そしたら二等は」 「二等は裁判官や」 「三等は」 「大学の先生ー 「四等は」

9. ワルのぽけっと

カドチンは、ほ、つきを口に当ててラッパを吹いた と っ玉工モンに手をひかれてシンべ工先生が姿を見せた。みんなものすごい拍手をした。 ふうちんが大きな声を張り上げて言った。 の 「ただいまから、くんしようをおくる式をおこないます。たくばしんきちく 1 ん」 ワ 「はあ 1 シンべ工先生はうれしそうな顔をして子どもたちのこしらえた台の上に立った。恥ずかし そ、つだ。 「てれたらあきませんー と、カドチンがちゅ、ついした。 シンべ工先生は頭をかいた。 げつけいかん おそまつがしずしず進んでシンべ工先生の頭の上に月桂冠をおいた。カラタチの枝でこし ホン みんな喜んで手をたたいた。それから子どもたちは集まって相談をした。 ふ はくしゅ えだ

10. ワルのぽけっと

プウー等あげます 「ジャガイモトッチャンよりシンべ工先生のほうがよっほどええのになア」 「あったりめえのコプ、つどん と、ふ、っちんが言った。 「すすんどるのオッサンもくんしようはもらわれへんなア」 カドチンは「きいたり屋をして、知りあった酔っぱらいのオッサンと友だちになってい る。あいかわらず、このごろの教育はすすんどると、大声を張り上げるので、カドチンたち はすすんどるのオッサンと名づけていた。 「ぜんぜんー と、おそまつは言った。 「それでヒャトイはクズって言うとったんやなア カドチンはざんねんそうに言った。 「ジャガイモトッチャンよりすすんどるのオッサンのほうがええなア」 「あったりめえのオケうどん」 と、またふうちんが言った。 「ジャガイモトッチャンもまんじゅうくれたやんかあ アヒルちゃんは気のどくそうに言ったが、 「まんじゅうみたいなもん、食うたらしまいや」