ほく食べさせてもらわれへん」 「なんでやー 「こえるやろ。サトウは、とくべっ太るんやて」 ああ : : : と、カドチンはうなずいた。だれかていろいろ苦労があるねんナ、とつぶやいて、 カドチンはアヒルちゃんのお母さんに笑われた。 「角田さんは、運動もよくできるし、お勉強もよくできるそうだし、なんの苦労がある の ? へへへ : : : と、カドチンは笑った。笑いながらカドチンは、自分が今いっしようけんめい 笑っているな、と思った。 まか 一アヒルちゃんは、じゅうしまつのほかにカナリヤもかっていた。真っ赤なカナリヤをこし らえて、コンクールに出すんやと張り切っていた。 「真っ赤なカナリヤをこしらえるって、どういう意味や」 きんとき 「金時ニンジンをやるんやあ 「ニンジンをやったらカナリヤが赤くなるんか」 フーンと、カドチンは感心した。 「あてにならへんのよ」 と、アヒルちゃんのお母さんが横から言った。アヒルちゃんは、うーと大みたいに怒った。
カドチンたちは酒のフタになにかいっしようけんめい描いている。もようみたいだ。こ、、 かいを出しあって、赤、青、黄のラッカーを買ってきた。 酒プタの表面はつるつるした金属でできているから水さい絵の具はのらない。ラッカー ずいぶん高かった。一週間ぶんのこづかいがふっ飛んでしまうくらいだった。石油が足りか すくなって、きゅうに高くなったからだそうだ。きようの新聞を見ると、石油はある、と書い デてあったから、カドチンたちはバカをみたことになる。子どもはこんなとき、どこへ文句 等言いに行ったらいいんだろう。 「高いラッカーを買って、こづかいがへったぞ」 プ という苦情は、どこへもっていったらいいのかな。 そんなことに関係なく子どもたちはしんけんな顔をして絵を描いていた。まんなかから ようを広げていく。クジャクの羽根のような、南海のイソギンチャクのような、千代紙を人 れたプリズムのような、そんなもようが次々考えだされた。 「何コたまったア」 カドチンか聞いた。 「十三コ 283
ここまではとても早い。つごうがあるからだ。 ふうちんがコマのひもを出してきた。 「やる ? 」と、カドチンが聞いた。 ふうちんはにたりと笑った。 . り - よ、つ、力し 「り , よ、つ , かし カドチンはもう、うれしくてたまらぬ表情をして、今にも顔がとけてしまいそうだ。 カドチンはロッカーからほ、つきを持ち出してきた。ふ、っちんはカドチンに手伝ってもらっ と って、ほうきにひもを通した。そして、それを腰に巻いた。腰ミノのようになる。 ほカドチンは、あまったほうきを横にかかえてギターにした。ハワイアンをうたいだした。 の ふうちんはおしりをくねくね振って、なかなか上手にフラダンスをおどる。 ワ だあれもそうじなどしない。みんなハワイへ行ったような気分になっている。 しばらくしてドテカボチャが言った。 「もう、やめよう。先生に叱られるでえ」 あかん、とカドチンは言った。 「うち、お習字をならいに行かなあかん。おそうなるやんか と、玉工モンがこうぎした。 「気分こわれるウ たま
みなみだかずえ 南田和江が朝礼に出ようとして、階段をおりていたら、清子が和江に、 「おんぶしてー と一一 = ロった。 「いそぐから」 とことわったのに、首をつかんではなさない。しかたがないので、 「階段の下までやでー と言って、おぶってやった。清子はおんぶおばけみたいに、いつまでたっても和江の背中 からはなれなかった。とうとう和江は泣いてしまった。 みんなが遊んでいると、清子はいばり返って仲間に入ってくる。ほかの子が、「入れて と言うと、「あかん」と言う。それで気の弱い子が四、五人、清子に泣かされた。 かばんやふでばこをよそへかくして、出してやらなかったので、泣きだした子も数人いる。 そ、つい、つことをあげていくと、きりかないくらい、いろいろある。 松田清子はヘんな子プラスわるい子なんだ。 男のところにあった。 それが松田清子の一つの顔。もう一つの顔は、リ 「ばくなあ、死んだひょこを川に捨ててこいと言われるときが、いちばん悲しいねん。川へ なんか捨てたら、うらんでゆうれいになって、ばけて出てくるかもわからんやろ。そやから、
方法を見つけた。それが「きいたり屋」である。 しかし、いくらしんぞうの強いカドチンたちでも、こいつはすぐに実行する気にならなか った。うまくいくかど、つかわからないし、おとなの世界にわりこむことは、子どもにとって おっくうなことなんだ。 みりよく しかし、おはじきのように散らばっている酒のフタは魅力がある。しあんのすえ、そのい いものの魅力にカドチンたちは負けた。 いいだしべえのカドチンが一番手をひきうけることになった。 と っ カドチンとふうちんとおそまつは駅前でお父さんの帰りを待っていることにした。そうい ほうことにしないと、タぐれから外へ出してもらえない。カドチンは友だちの家で勉強してい レることにした。 ワ 「きようはお父さん、何時になるかわからないって言ってたよ」 家を出るとき、ふうちんのお母さんが言ったが、ふうちんは、、、、 ししカらいいからと一言った。 「きようにかぎってなんだね、あの子」 ふうちんのお母さんは、ブップッ言っていた。 三人は駅前で人を待っているふりをしてのみ屋さんの中をちらちらかんさっした。 「あのオッサンどや」 カドチンはひとりのオッサンを指さした。
と、相手にしてくれない。 「泣いたくらいでデベソになるもんか。ゃぶやぶやぶやぶさんば」 ゃぶ医者という言葉はあるが、「やぶさんば、なんて言葉はない。カドチンの発明なんだ ろう。どなっているとかならず玉工モンが顔を出す。 「うるさい、カドチン、ドカチン、デベソカド。うちの母ちゃんに文句をつける気イ 助産婦さんは玉工モンのお母さんだ。カドチンのお母さんと玉工モンのお母さんは、とて ときどき、ふたりで話をして泣いていることがある。 す、も仲、かいし ま カドチンと玉工モンは同じ学級のくせに仲が悪い。顔を合わせるとけんかをしている。も ともかく、みような組み合わ あっとも、ほんと、つに仲が亜いのかど、つかは、だれも . 知らない プ 玉工モンのお母さんは、近所の子どもたちにものすごく人気があった。 「おばちゃん。あ、そ、ば」 小さな子どもたちがそう言って遊びにくる。玉工モンに言うのなら話はわかるが、子ども がおとなのところへ遊びにくるとはね。 すたこらさっちゃんが、、つまいことを言った。 「純子ちゃんのおばちゃんは、いつでも自転車の上でおどってはる」 玉工モンのお母さんは自転車にのって、おなかの大きな人の家を回っている。いつだって 203
「おまえら、ちいと反省しとるんか 横田先生が言ったが、だれも返事をしなかった。 「こら ! 」 横田先生はどなった。 ソーメンがびくんと体を震わせた。八人のうち、トメコとソーメンは女の子だが、体の細 いソーメンは、トメコとくらべるとず・つと ~ が小さい。 「ここへ、おまえたちの親を呼ほうか、それとも、警察へつき出そうか 横田先生は八人をおどした。 ソーメンがひいーと泣き出した。 3 ・ツ 1 ツーレロレロと、あ 1 しんど ソーメンは親一人子一人だった。 かんじゃ にんてい ソーメンの父親は公害病患者だったが、公害病患者の認定を受ける前に死んでしまった。 ほしょ - っ 病院が証明を出さないので、補償もなにも受けられないのだった。 ふる
239 ンか 。か ド チ返 んチ チし、 工わ ン の 三先 名ご パ困 、そ 人で けけ みな 。に んれ 時チそ気 、間 え具 、や 、な な絵 どす ジお かは に細 んた だん は園気タ はザ んあ なル と歩 なだ いた つん 。て ろ用 は紙 レ白 でぜ 時ん やカ に時 な間 プウー等あげます き ま し く やたそ聞絵 に り つ け た だ ン べ 。生て に 、見や ら ら な ら れ る と ろ だ り と ば は い し ) んがに 。ほぜ と っ の と ノヾ を む ち カ ド ン は ッ ト の の を だ し ) わ せ て 画 の ろ よ カ ド チ ン は た つが あたかカ つ け カ っ カ れ り や 誉よま の た め に と わ て お く が 彼 は つ も そ つ し て る と つ わ で は な ん ろ ド チ ン は き性こ な格ろ に 用似な わ ず か い と ま で ね い と っ 人 よ る 大 画 糸氏 の ま ん マ ン ト ヒ ヒ を び き 描 き げ と ろ 間 ぎ は じ め る つ て っ と カ ド チ ン ろ筆内 を っ の を 色 が 子 の た か お お た い ・つ ま き を ろ ろ っ り カゝ ら にかそ れ ン ド い し そがお で ン ノヾ ン を う描は く く わたな る さ し、 はたぞはわ ま つ っ し ) っ ま プ の ん や ろ が と つ 、け は し、 た し く . 亜 . を な ン ド
解 しさが生まれるのでしよう。 「チューインガム一つーという詩に出会ったのはもうずいぶん前のことですが、あのやすこ ぬす むかし ちゃんの姿も昔の私と重なってしまう。チューインガム一個を盗んで、お母ちゃんにどっか れて、先生の前でわんわん泣きながら、それでもこらえて「話し」はじめてくれたやすこち ゃん。 説私は四年生のときの事件を思い出しました。苦しくて悲しくて友人に詫びたくてたまらな かったのだけど、それきりうやむやにしてしまった事件。仲よしの男のコと女のコがケンカ さわ ちゅ・つさ、 してしまったのを仲裁してあげるつもりで出した手紙が、騒ぎになったことがあるのです。 ふんいき とくめい 匿名で出したものだから「犯人はだれだ」みたいな雰囲気になって、とうとう名乗ることが できなくなってしまった。私は担任の先生にだけ告白の手紙を出して、ビクビクと毎日を過 ごしました。今思うと全然どうってことのない話だけど、その時の私は本当に世界が終わっ おそろ てしまったような怖しさを覚え、 「先生、怒らんといて」 と祈るような気持ちでいたのです。 やすこちゃんは私にかわって、胸に詰まっていた固まりを一生けんめい吐き出してくれた みたいでした。うれしくて、切なくて、いとおしかった。 325
ワルのほけっと 「けど、その前にうち、セイちゃんにもなんか買うたるわ。な、セイちゃん」 セイちゃんは、きょゅんきょゅんとかわいく鳴いた。 「セイちゃんにイカ焼き買うたれ」 ダボが言った。 「ほな、みんなお金出しイ 「なんでや。おまえが買うたるのやろが」 「あほ。なんでうちだけがお金出さなあかんねん。はよ出し。一一十円ずつでええワ」 トメコは手をつき出した。 「えらいソンや」 「お金へってしまう」 けんきん みんなぶつぶつ言いながら、それでも、セイちゃんのために二十円、献金した。 ・出会ったゲジゲジ セイちゃんのためにイカ焼きを買っていると、オタやんが押し殺したような声で言った。 「あいつ、ゲジゲジとちゃうか」