答え - みる会図書館


検索対象: 人生って何なんだ!
39件見つかりました。

1. 人生って何なんだ!

「どんなって」 困ったよ、つにいっこ。 「普通の女の子です」 「普通の女の子・ : そういう人が好き ? 個生の強い人より ? 」 「いや。そういうわけしゃないけど、手近にいたから : : : 」 「手近に ? で、とりあえすってわけ ? 」 し」 はい」という答え方が自分でもおかしかったのか、青年はもう一度笑った。 「で、つまり、その人とは : : もう、すんでいるの ? 」 「すんでる ? 」 「わからない ? 」 「あ、あのことですか」 「ええ、セックス」 日「そりゃあ : : : 」 の「すんでる ? 」 む . 久 「なるほどねえ、一応、ね」 笑いながらいった。

2. 人生って何なんだ!

155 「だいたい杉野は何をさせても自信のない子供でね。小学校の時は虐められッ子だったんだ。 だから何をしても能力が出しきれない。答えがわかっているのに、もし間違ってたら恥をか くと思って答えないんだな : 邦江は鼻から太い息を吐き、 「よかったわねえ : : これで自信がつくわ」 「どうした ? 眠そうだね ? もう切ろうか ? 」 うううん、まだ大丈夫よ」 いんとう 電話を切りたくなかった。残酷の意識が邦江の肉体をより淫蕩にしている。邦江は受話器 を持ち替えて身体を仰向け、佐久間を受け容れ易いように脚を開いた。そして、 「ああ、あなた ! 」 と邦江は叫んだ。意識的なのかそうでないのか、邦江自身にもわからない。 「ど、つした、邦江」 「ううん、なんでもないの : : : でも : : もう・ダメ。ああ・ : : ・も、 ? : : ・眠いわ : : : 」 「やすみなさい。疲れてるんだよ」 公平の優しい声が邦江の耳の奧まで染み込む。 「おやすみ」 公平はいった。静かに受話器を下ろす音が聞えた。 冬に入って邦江は妊娠していることに気がついた。結婚して間もなく一度流産をした後、

3. 人生って何なんだ!

「去 ? ほんと ? ほんとに私 ? ・」 答えの代りにキスをすると、彼女の大きな前歯がロの中に入ってきた。 彼は味気ない思いを抱えて良作の店へ行った。酒が飲めればャケ酒というテもあるが、オ じちょう レのはヤケマンだ、と自嘲的に告白した。 「兄ちゃん、気イつけた方がいいよ。気持はわからないしゃないけど、ここは慎重にした方 力ししト小」 弟のいう通りだった。その通りだ、と思いながら公平はまたパチンコ屋の女の誘いに乗っ もう満江の顔を見ただけで公平はムカムカする。何としても傷つかないその鈍感な白い肉 を引き裂いて、毒を注ぎ入れてやりたいような気持である。 「思い出さないか、子供のこと」 わざと公平はそんな質問をした。子供への思いを刺激すれば里心がつくかもしれない 「会いたいだろう ? え ? 向うも会いたがってるだろうな。マリは泣き虫だから泣いてる だろ、つなあ : : : 」 そして子供たちがよく歌っていた「金魚の歌」を口ずさんだ。すると満江はどっと公平の 胸に倒れてきて、 悪「あては公平ちゃんがいてくれたらそれでええのん。なんもいらん : : : 」 泣き声でそういって、

4. 人生って何なんだ!

220 と隆はマサオにいっこ。 「へえ、そんなもんですか」 「テッポ玉の資格は、まず根性が坐ってるかどうかやな。なんば射撃の名手でも、向う意気 が強うても、慌てる奴はあかん。冷静沈着が大事や。無鉄砲な奴はやる時はやるけど、しく しりもする。いざという時、モノいうのは自信や。自信は沈着のモトや」 隆まいっこ。 「マサオ、オレは絶対やるで。絶対死なん。射撃は下手でも絶対やれるという自信があるん ゃ。この頃はアメリカ製の防弾チョッキたらつけとる奴がいるが、あんなもの着るなんて極 道の恥晒しゃ。刑事が着るんならともかく、極道がイノチ惜しんでどないすんや」 うなず マサオは目を輝かせて頷き、兄貴はほんま、仁侠道の手本や、と思う。 だがマサオにはこのところ気がかりがひとっ生れているのだった。それはこの三、四日、 隆の様子が時々おかしくなることである。頭をガクガクと振ったり、ブップッ独り言をいっ 、我と我が頭を殴っている。話しかけているのに返事をしなかったり、何もいっていな いのに突然、 「、つるさし 、ツ、ええ加減にせえ ! 」 と怒ったりする。 「オレ、何もいうてませんけど」 といっても聞えていない様子で、 さら

5. 人生って何なんだ!

はず 本来なら肩身狭く暮していなければならない筈なのに、隣室の男はえらそうな顔をして ざら 堂々と廊下を歩いている。洗い晒しのジーンズに手編みの丸首のセーターをだらんと着て、 ゴム草履の音をベタベタいわせて階段を降りている。痩せぎすで脚が長いので、ジーンズが 似合う。頭髪は長く伸ばして、後ろでゴム輪でまとめている。 伸吉と出くわしても、目礼ひとっしたことがない。伸吉と目が合っているのに、まるで何 も見えていないような顔つきで、ペタンペタンと通り過ぎる。はしめの頃、伸吉は彼と出会 うたびに、薄いテレ笑いに親しみを籠めたものだった。伸吉は出来れば彼と友達になりたか ったのだ。だが彼ー まそんな伸吉を黙殺した。 伸吉がこのマンションの三〇二号室に住むようになって二年目に入った。三〇二号室はみ どりが借りている部屋だから、ドアーの脇には「芳村」という白いプレートが懸っている。 男 のみどりの留守に、ドアーの外から、 り「芳村さーん」 と声がかかることがあるが、そんな時伸吉は返事をせすにしっとしている。 順「答えちやダメよ」 わき ころ

6. 人生って何なんだ!

いつつ春子はそのつもりになっている。オットセイの粉末は利かなかったのだ。風呂に入り マッサージにかかったために、身体がゆるんで蠅ってどっと疲れが出て来た。このまま、何 もせすにどしんと転がって眠りに入りたいという気持でいつばいだ。しかし、ここで挫けて はならないのである。そんなことになれば生霊はますます力を増すだろう。どんなことをし てでもやり遂げねばならない。 啓介は消していた天井の電気をつけた。その真下に照らし出された春子の裸の両脚を思い こら きり広げて睨んだ。何年ぶりかで見る景色だった。顔は老けたが変っていないな、と思った。 よみがえ 暫く睨みつけていたが駄目だった。昔の興奮は蘇ってこない ついに啓介は断念した。 「すまん。酒を飲んだのが悪かった」 といった。春子は何もいわすに起き上り、黙ったままムームーを着、パンティを穿いた 「ちょっと待ってくれ」 といったが答えすに立って行ってしまった。 キャパレー経営という仕事がいかに啓介の心身をすり減らしているかということを再一二啓 介は話題にしたが、それを口にするたびに春子の疑惑は深まるのだった。春子は啓介に女が いると思い込んでいる。あれもこれも皆、その女のためだと思っている。 「おかしいな、一度医者へ行ってこようかな」 といった一言が、更に疑惑を招くという事態になった。

7. 人生って何なんだ!

「ええ加減にさらせ ! 退けッ ! 退けというたら退けツー それから隆をふり返っていった。 「退いたで」 亠めっさりいっこ。 「ヘイ、三千円」 隆は腰が抜けたようにポカーンとして祈鑄師を見ている。 「しつかりしなはれよ。しつかりせんと今、出た奴がまた戻ってくるで。あの耳なしは今頃 どこへ行ったやろとか、何してるやろとか、ゆめ、思たらいかん。思うと気イが動いて戻っ てきよるで」 「へえ。ありがとさんでおました。こんでもう、治りましたんやな ? 」 「しつかりすることや。人よしやめることやな」 隆は車に乗って前庭を出た。時計を見て、今から飛ばしたら間に合う、と思った。拳銃は 肌身離さすつけている。昨夜から一一十時間近くも車を走らせた疲労が肩にかぶさっているが、 あいつがいなくなった分、頭は冴えている。 隆はスピードを上げ、自分を励ますためにロ笛を吹いた。 枚方市の市営プールに着いた時は、プロレス興行が終って、場内から客が出てくるところ だった。あらかた出たところへ、組員に囲まれた間崎親分が出てきた。その後ろから白いト ックリセーターの原島がゆっくり肩をゆすって歩いてくる。隆は人に紛れて後ろに廻った。

8. 人生って何なんだ!

「そんなん、一対百五十円くらいのもんやわ」 「そや、あんたええこというわ。こら、おっさん、高いで。暴利むさばるな。一対百五十円 にせえ。そしたらこの人ら買うわ。三人いるから四百五十円や」 「いやや、そんなもん、なんば四百五十円でもわたし、買わへんわ」 ともう一人の娘がいった。これは可そうなほど不器量で色黒の上にがむやみに出っ ばっている。 「けど商売繁昌するんやで。百五十円で一対買うて、百万儲けたら安いもんや」 「百万儲かる ? なんでそういえるの ? 」 「わたしらなんも商売してへんのに」 三人は笑いこける。それほどおかしいことでもないのに大笑いしている。つまりオレと話 して浮かれとるのや。こいつらすぐに引っかかりよるな、と隆は田 5 う。どれがええやろ ? ホ丸顔ならあっという間や。けどオレの好みとしては三人目の色の白いのがええ。スタイルも 瑪ええ。足首も締ってる。丸顔はマサオに向けよう。 の「そんならオレはこれ奉納して、ええョメさんくるよう・に拝んでこ、つ」 「ヨメさんやて。商売とヨメさんはちがうでしよ」 カ ン丸顔がいった。 「ここの稲荷さんは、商売繁昌だけやない。縁も結ばはるのや」 「あんなええ加減なこというて : ・・ : 」

9. 人生って何なんだ!

マサオが重ねていうのに、 「けど、楽しいねんからそんでええやないの」 と丸顔かいい切った。 社の前に出ると隆は持ってきた狐を台の上に置き、真面目に両手を合せてした。 仁侠の智仁勇を兼ね備え、仁侠道を全うできますよう、何卒お守り下さい 隆は神社仏閣、どこへ行 0 てもそう祈る。祈り終えると左手の木箱の中をルいた桝型の 箱の中にいっからあるのか十個余りの古い瀬戸物の狐が入っている。隆が覗いている所へ三 人の娘はもの珍らしげに寄ってきた。 「このうち気に入ったんを一対もろて行って、家の神棚に祀るんや。どれがええかなあ」 とんきよう 言にいうともなくいうと、色白の娘か頓狂にいっこ。 「ひやあ、この狐、片つば耳がないわ」 ホ「よ「ばど古いんやね。埃かぶ 00 応色にな 0 てる」 馬「耳が欠けてるからいつまでも残ってるんやね」 娘たちが口々にいうのを聞いて隆はその狐を手に取った。 ラ「おもろい。これにしよ」 ン「兄貴。そんなん、やめときなはれ。耳が欠けてるやなんて縁起でもない」 「ええのや、これがええ」 もう一つ選んで一対にし、隆はマサオに手渡した。 よこ一と、

10. 人生って何なんだ!

ために死すのや」ともいう。そういう時、隆の目には、我と我が言葉への感激の涙がふと光 る。 インテリになった山本親分は、「愛されるやくざ」を主張するようになった。 「共産党かてな、愛される共産党にならないかんというて路線変更したんや。やくざも時代 の変遷にデて、ここらで熟考せないかん」 親分が「変遷」という一言葉を使ったので隆は驚いた。愈々、親分は「ほんまもんのインテ リ」になったのだ。親分のいう「愛されるやくざ」とは、ます「素人さんを布がらせたらい かん」ことであり「素人さんの役に立つ」ことである。女のヒモになっても、女を泣かした らいかん。泣かさずに、頼りになってやって、喜ばせて働かせる。女をいたわりながら金を もろ 貰てくる。ええか、取る、ふんだくるという気持でしてはいかんのや。女をええキモチにさ せて、進んで金を出させるよう努力すること。お茶もいれ、あんま、マッサージもし、、ンエ ホックスの方かてがんばって、十分満足させて、そんでから働いてもらうのや。素人さんに対 馬してかて、むやみに恐喝したらいかん、債権取り立ての時は、頭ごなしに怒鳴ったりせんと、 の一緒になって何とか解決しょやおまへんか、という態度で、心配してやりながら取り立てる。 ラつまり、技術的にやるんや。譓当的態度を一小すんや。肩ふ 0 て歩いたらいかん。篠を絶や ンさす、ああ、ええ人やなあ、頼もしいなあ、警察より親切ゃなあ、と親しんでもろて、そん でからに貰うもん貰うのや。 「そんなことしてたら、金は一文も入りまへんわ」 いよいよ