めに涼しい木陰をつくったり、兄貴分のダニエルからいろいろなことを教えてもらっ たりして、フレディはやがて秋を迎え、赤や黄にと美しく紅葉し、そして木枯らしと ともに地上に舞い降りました。 親木から離れて、初めて木全体を見ることができたフレディは、ダニエルから聞い ていたいのちという一一 = ロ葉を思い出します。 森繁久彌の朗読は続く。 《いのちというのは、永遠に生きているのだということでした。フレディが降りたと ころは、雪の上です。柔らかくて、意外に暖かでした。引っ越し先はフワフワして、 居心地のよいところだったのです。フレディは目を閉じ、眠りに入りました》 やがて春になり、雪が溶けると、枯れ葉のフレディは水に溶け、新しい葉を生み、 木を育てる力となってゆく・ : 、むり・よ、つじ 車は無量寺の玄関に着きましたけれど、私は車の中に座ったまま、最終章まで聞か せてもらいました。 木の葉の物語は、 《大自然の設計図は寸分の狂いもなく、いのちを変化させ続けているのです。また、 7 イ 2
第 1 話他は是れ、吾に非ず。あなたの人生を決めるのは、あなた自身です。 古今の名僧の言葉を見つめ直す。 若い尼僧や一般の人々に向けて、禅、茶道、生け花の心を次々に文章として書き綴 った。初期の随筆集『美しき人に』は、 5 カ国語に翻訳され、宗教の違いを超えて世 界中の人々に愛読されているほどだ。 ド大学などに招かれて行った講演も、アメリカの聴衆に深い感動 を呼び起こし、近く英訳出版される。 日本一の尼僧は、いま世界の″となった。 ーー開け放った茶室の窓から残雪を戴く信州の山々が見える。 そこに母の面影を探すように、遠くを見やりながら俊董さんは言う。 「母は限りなく優しく、また厳しい人でもありました。そんな母親の生きる姿勢に、 面影に励まされて、私は修行を続けることができたのです」 幻世紀の日本は女性が変える 「ここでお茶やお花のお稽古をしていますから、たくさんのお母さん方がみえます。 ここん 3
驚きであったと同時に、がっかりもしてしまいました。 2 時間もかけて、一生縣大叩、 「お化粧ではない、お手入れではない、衣装や持ち物ではない。洗ったらはげてしま うような、年をとったら色あせてしまうような、そんな金メッキみたいな美しさでは なく、生き方による内からにじみ出る美しさこそ、本当の美しい人と言うのですー と、ロを極めてお話ししたのに、この人々はいったい何を聞いていてくれたのかし らと、寂しくさえ思いました。 と同時に人というものは、それそれ生きてきた角度、経験した範囲、持ち合わせた 心の受け皿の範囲内でしか受けとめることができないのだなということにも、気づか せていただきました。 明治の女流歌人・与謝野品子は、長い黒髪や白いやわ肌など、歌を通して推察する 限りにおいては、とても美しい人であったように思われます。 ところが、晩年の晶子と親交のあった先生は、 「生まれつきの器量はあまりよくなかった。しかし、晩年の品子は、惚れ惚れするほ どに美しかった」 きわ 2
若いだけの美しさや、親からいただいてきた美しさには、私は何の魅力も感じませ うぬぼ ん。若さや天性の美しさは、自慢できることでないばかりか、かえって自惚れの材料 になりかねません。 『老いたるはなおうるわし』が、とってもいいと思いませんか ? 白髪がなくて す 美しいというんじゃないのです。 あ どなたの人生にも、必ず山坂がありましよう。その山坂を、悲しみや苦しみを、ど きざ う越えてきたか。その生きざまが白髪の一本一本に光る、深く刻まれたシワに光る、 え 教 の それが『老いたるはなおうるわし』というのではないのでしようか。 っ その人の人生が幸せであったか不幸であったかということとは、関係ありません。 どんなに恵まれた環境のなかにあっても、不満や愚痴という形の受けとめ方しかでき 「がに / 、 ない人は、年を重ねるほどに醜くなってゆくのでしよう。 美 しようか 花 折り重なる悲しみや苦しみを、肥料に転じ、栄養として昇華してゆくことのできる 老 人は、年をとるほどに美しくなり、いぶし銀のような、内からにじみ出る人格の輝き 老 を備えてゆくもの。年をとるということは楽しいことであって、私もそんな年のとり 方をしたいものです。 = 一口 5 2
第 1 話他は是れ、吾に非ず。あなたの人生を決めるのは、あなた自身です。 いうことをわかってほしいという、切なる母親の思いが今こそわかります〃と。 母親の力は、偉大です。その育て方ひとつで、子供はどのようにも変わります。 幻世紀は、女性こそが混乱しきった日本を立て直す時代なのです。 び ) ・ほ , フ 私たち女性はそれだけの力を持っているのに、物やお金、美貌という見せかけの幸 せばかりを追って、本来の姿を見失っていたのです。 日本の子供たちを、男性たちを、社会を変えていくために、まず私たちは本当の揺 るぎない幸せとは何かを考え直しましよう。と同時に、女性はもっと美しくならなけ ればなりません。お化粧のように洗えば落ちてしまう美しさではなく、本当の美しい 人に : せつ ※この第 1 話のみインタビュー形式となっており 第 2 話からは語りおろしとなっております。 ゅ 5
第 25 話あなたがいいことをしたら、すぐに忘れなさい。 心の深みの悲しみ、そっとしておいてほしい痛みを、ことさらにあばき、白日のも とにさらし出し、しゃべりまくる人のことです。かたわらで聞いているだけでも胸が キリキリと痛みます。だからこそ良寛さまは「人のかくす事を、あからさまに言う」 ことをつつしめ、とおっしやっておられるのです。 自分の非を認められるのが大人 一、悪しきと知りながら言い通す 皆さんも思いあたることがありませんか。自分で悪かったと気づいても、自分の面 子が立たないような気がして、素直に「悪かった」と、その非を認めることができま せん。 精神的に大人になっていない証拠といえましよう。 相手が先輩であろうと後輩であろうと、自分より年下であろうと、あるいは我が子 であろうと教え子であろうと、相手のほうが正しくて自分のほうがまちがっていたな 幻 3
春の章春。章第、話 夏の章夏。章第 7 話 春の章第 2 話 春の章第 3 話 春の章第 4 話 春の章第 5 話 春の章第 6 話 夏の章第 8 話 他は是れ、吾に非す。 あなたの人生を決めるのは、あなた自身です 言葉には姿がある 美しい心の人は、言葉も美しい。 老化は老花。 美しくなる " 3 つの教え。があります。 子育ては農業。 良き土としての親づくりが大切です。 親と子は同い年。 子供の " 信。に応える親になってください。 笑いもお布施。私たちは朝から晩まで、 お布施のなかで生きているのです。 い + りばん悲しいことが、 あなたを輝かせるのです。 人間を駄目にする " 一一一毒。さえも 大切な命のエネルギー 0 4 4
第 3 話老化は老花。美しくなる、、 3 つの教え″があります。 かをかい と、深い感慨を込めて打ち明けてくださいました。 てつかんした 堺のいとはん ( お嬢さま ) として育った晶子が、与謝野鉄幹を慕って家出をし、た ひんこん くさんの子供を抱え、貧困のどん底にあえぎながら夫の鉄幹を励まし、歌や文学の道 を生き抜いた厳しい生きざまが、晩年の晶子を、このうえなく美しく深いものとした のでありましよう。 泥かぶらが実践した、美人になる老法師の教え まやまみほ 何年か前、真山美保作・演出の『泥かぶら』を観劇しました。 その昔、顔の大変醜い少女がいました。あまりに醜いので″泥かぶら〃とあだ つば ちょ、つしよう 名され、人々の嘲笑の的になり、石を投げられたり、唾を吐きかけられたり : 少女の心は、日一日とすさんでいきます。 わけもなくいじめられ続ける口惜しさに荒れ狂い 「きれいになりたい ! 」 」、つこく と、慟哭している″泥かぶら〃に、通りかかった旅の老法師が、美しくなる方法を幻 じっせん 0
第 2 話言葉には姿がある。美しい心の人は、言葉も美しい。 その声からにじみ出るものが、とても優しく温かく、感じのいい方は直接お会いし ても声から感じたお人柄とまったく同じなんですね」 そくざ と、即座に応じてくれました。そして、 「反対に、その声を聞いただけでなんとなく嫌な、厚かましい感じであったり、冷た かったり、威圧的だったりする方は、お会いしてみてもやはりその通りのお方ですね。 声は、声の良い悪いではなく、その声を出す人の人柄を隠しようもなく表します。私 どもは声を道具としての勤めですので、とても恐ろしいと思っております」 と。 ことば直しからぬは、彼は貌よき人にあらす いちこえにかおさんすがた 歌舞伎の世界には″一声一一顔三姿〃というジンクスがあります。化粧と衣装と様 しきび みりよ、つ 式美で人の心を魅了するかに見える歌舞伎の世界で、第一に大切にするのが声であり、 同時に一言葉であるということは考えさせられることです。 一場の歌舞伎を美しくあたたかく、深みのあるものに仕上げる第一の要素が声であ幻 いあっ みめ よう
部屋に一輪の花がある。庭やマンションの小さなべランダに一輪の花が咲いている。 それだけでホッとし、嬉しくなり、明るくなるものです。地上に花がなかったら、 どんなに寂しいことでしよう。 その人がそこに居るというだけで、その人がお部屋に入ってこられたというだけで、 花が咲いたように部屋中が明るくなり、楽しくなる人がいます。その人と共にあると いうだけで、その人の笑顔に接しているだけで苦しみが癒され、生きる勇気が湧いて くる、そんなお方もおられます。 反対に、その人の顔を見たたけで腹が立つ、イライラしてくる、そんな方もありま す。暗い顔やトゲのある表情や一一 = ロ葉で、相手を立ちあがれないほど打ちのめしたり、 芽吹きそめた若芽さえも凍え死にさせる、霜の役をつとめてしまう人もいます。 あなたの笑顔で、あなたの「お疲れさま」というねぎらいの一言で、あなたの職場 の人々のすべてが今日一日の疲れを忘れ、安らぎと喜びをいただくーー、そんなあなた であることは、なんて素晴らしいことでしよう。 「笑う」という言葉には、「花咲く」という意味もあります。部屋に一輪の花を飾る ことを忘れない人になるということは、あなたが一輪の花そのものになるということ 0 5