日曜日ねえ、今時分だと、まあ庭下駄でもはいて、庭をノソノソ歩いて : : : 。手紙の五、 , ハ本も書いて、お茶の二、三杯も飲んでると、一日が終るねえ。 差し向かいで奥さまと、世間話をなさるわけですな。 重役いや、それはしない。 ほう、なさらない。 重役日曜日にはうちにおらんねえ、家内は。近頃の女ちゅうのは、何だかんだと付き 合いが多いらしいねえ : そうしますと、お手伝いさんとお話を : 重役いや、それもしない。 なさらない ? そうしますと、重役さんはお独りでお留守番ですか ? 重役いや、日曜日は手伝いの女の子もお休みだからして : : : うちには手伝いの女の子 のそのまた子分、ちゅうのが臨時でね、来とりますわ。 そうしますと、お手伝いのまたお手伝いというわけですか。 重役そういうこったね。もっとも子分といったって相当なバアさんだがね : ええ
お手伝い残酷物語 残酷ムード大流行の昨今ですが、何が残酷だといって、重役さんのお宅のお手伝い さんほど残酷な商売はないといいますぞ。 うちへ。 重役何をいうか。そりやキミ、誤解もはなはだしいよ。うちへ来てみなさい、 お手伝いさん専用のテレビもあるしだな、日曜日には交替でちゃーんと休みもやっとる。 サラリーだって世間相場以上にはらっとるつもりだ。いいがかりもはなはだしいよ。 とまあ、重役さんは大分ご機嫌ななめですが、ま、しばらくお気を静められて、お 手伝いさんたちの声をお聞き下さいまし。 休お手伝いむつかしいですねえ。うちはね、ダーンさんは、あたしだちに、もちっとキ の 役レイにせい。客が来てもあんまり山出しだと、オレが恥かくから、っていうんですけど ね、あんまり口紅なんぞコッテリつけてると、こんだは奥さんの機嫌が悪いんですよね。 アンタたち、いやらしいっていうんですよね。あんまし、胸のあいた服着ても、叱言い
われるしね。 またまたあるお手伝いさんは、こうもいっておりますぞ。 しつべんは、物こわすよね。そんだ お手伝いあたしだちだって、人間だから、三日に、 とき、ごめんなさい、 ってあやまっても、なんだかんだって、なかなかカンべンしてく れないんです。 そいで、あんまし、くやしいんで、やめてやるかな、と思っとったら、坊っちゃんがね、 猫のセイにしなよ、っていうんです。うちのダーンさんは猫キチですから、猫が花びん こわしましたっていうと、フン、そうか : : : で、あんまし怒んないだ。でもさあ、そう : ちっと、いくやしくてさ : すると、あたしだちは猫以下ってことかってね、 重役さんのお宅のお手伝いさんの、かわいらしい抗議は、まだまだあるようですが、 重役さんの奥さんは、逆にこんな心配をしておいでになりました。 夫人あたくしねえ、別の意味であの子たち : : : お手伝いの子たちの将来が心配なんで すよ。だってそうじやございませんの ? 何のなにがし、って世間に名の通ってる男も、 裏に廻ってみりやアラだらけでしよ。こんなもんかってね、まだ若いのに幻滅を覚えち やって : ・・ : あたくしだってこうと判ってりや、オョメに来ませんでしたもの :
難をいえば、プクプクと肥えとることだけど、別にうちが傷むわけじゃなし : くしいのをひきあてたよ。 そのマッ子さんは、おまけに大層小食でした。 お手伝いあんまし、食べるとふとりますから : : : もういいです。ごっつおさん。 ーーー食費まで安上がりなもんですから、ときどき黄色い声をはり上げて : お手伝い惚れエテ : : : 惚れていながら : とかうたっても、奥さまは決してやめて頂戴そんな唄、なんておっしやらずに、 たすら家族の一員として遇した、とのことでした。 ただ、このマッ子さんは、週に二回すっ、行先をつげずに外出をしたそうで、奥さま らその由を聞いた重役さんが。 重役大丈夫なのか。何てったって嫁入り前の娘なんだからね。あとで、おなかが大 廴くなったのどうのということになってもコトだよ、ちゃんと出先を聞きなさい、出ル 役をー と気をもまれたので、奥さまもきつく問いただしたんだそうですが、マッ子さん 人のよさそうな顔で、
お手伝いそんなんじゃないんです。映画だと思ってください。 それから、四カ月たったある日曜日の昼すぎ、珍しくご夫婦差し向いでお茶を飲ん でいたところへ、どこかへ出かけていたマッ子さんが帰ってきました。 お手伝いただいま ! あの、これ : 差し出したのは、お団子であります。 夫人あらマッ子さん、 いいのよ、あなた、こんな心配しなくても。 お手云、 、え、これ、お祝いなんです。おかげで五十キロになりました : 夫人え ! 五十キロ。 マッ子さんの告白によりますと、彼女が週二回、ひそかに通っていたのは、体重を へらすので有名な、ナントカ美容研究所だったそうで、ここで四カ月オイチニをやり、 四ハイのゴハンを二ハイにヘらしたかいあって、七十五の体重を念願の五十キロにヘら すことができた。お団子は、せめてもの心祝いだというんです。 「そ , つかい、そりやよかった」 と重役さんも、ついニッコリしたんですが、そのあとがいけませんでした。 お手云、 、ろ、ろお世話になりましたけど、今日でおっとめ、やめさせてもらいます
オヤチビガエル 愛犬の友 粉飾決算 反芻 重役またぎ リビング・キッチン いろはかるた マッ子さん Ⅲ重役の休暇 職人 重役の休暇 順不同 お手伝い残酷物語
こ′」と 「叱一一一一口幸兵衛」という落語がありますが、重役さんの中にも、そういうタイプのか たがおいでになります。 今日も、朝から、例によってお叱言であります。 重役オイ、新聞 : : : わたしがね、ひげそってテープルにすわったら、新聞をみること になっとるんだから : : : 毎朝のことなんだから、いわれん先にならべときなさいよ , 夫人すみません。新聞でしたら、さっき一郎が立ちよみしてたんですけど : 重役けしからんねえ。大体ねえ、一家の家長よりも先に、新聞をよむということが、 なっとらんね。長幼序ありですよ。一郎 ! 新聞ー お手伝い坊っちゃんだったら、おトイレです。 重役新聞もってか。けしからん ! 人のまねしおって : 封建制はすたれたというものの、物堅いお宅ですと、今でも新聞にしろ、お風呂に 順不同
ミミズもとってくるー なき、い マサコ、アンタはニギリメシをつくる。なに、ハナさんにやらせろ ? いかんいかん。 アンタもばつばっ嫁にゆく年頃だ。いまどきのアバート住まいやったら、お手伝いさん なんそやとえんよ。ニギリメシひとつにぎれんようじゃ、人に縁談もたのめんからな。 ししか、たのむよ。 それから、ママー ママ ! あんたもどうだい、釣りは ? え、何 ? 美容院 ? バカ バカしい。山に来ておしゃれをするこたあないでしょ ? ああ : これじゃ、鼻つまみになるのもムリありませんでしようねえ : 赤ちゃんのしつけの段階で、ぜひやらなくちゃいけないのが「一人遊び」ということで 、こイ、います % 誰の手もわずらわさす、ある時間の間、 一人でしすかに遊ぶこと。重役さんはご幼少の 休頃、この「一人遊び」のおしつけを、うけておいでにならなかったのかもしれませんね の 重 Ⅲ
しノーーが。は、れ」 「するめの匂いさせ女房こヾ 「んーと引きうけあとは頼むよ」 と、まあこんな具合なんですが、つい かんべんを。 マッ子さん お手伝いさんがいなくてお困りのご家庭が多いそうですね。ですから、運よく、感 じのいいお手伝いさんにめぐり合ったりしますと、運がよかったというんで大よろこび をするんでありますが : ある重役さんも、こんなふうに自慢をしておいでになりました。 重役今どき珍しい子でね、齢は十八なんだが、マッ子さん ! てよぶとね、ハイー ってね、そりや気持のいい返事してくれるんだよ。 田舎の子だから電話なんかかかるとオロオロしとるけど、骨身惜しまずよく働くしね。 ことばのすぎましたところは、門松に免じてご
108 , し。、冫沖力ある 十二月でございます。 重役あーあ、いやだねえ、十二月か : : : あーあ。 冴えませんなあ、重役さん。 重役冴えるはずないじゃありませんか。 、、こゝ、よ、、丁・レ どうも今年は最低でしたなあ。まず、会社の成績はサッパリだめ ね。とくに、アンタ、社運をかけて売り出した新製品がアテ外れでサッパリなんだから、 も , つ、ど , つもこ , つもなりませんわ。 ほ , つ、」り・や 'X ) , つ、も。 重役悪いことは重なるもんで、家内は病気をする、子供は試験におちる、娘は決った 縁談カノ : ヾーになるねえ。お手伝いの子がガス中毒で : え ? じゃあ :