歩い - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集10
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1. 現代世界ノンフィクション全集10

盲導大といっしょに、私はエレベ 1 ターの前へ急いだ。 ところが、エレベ 1 ターの前までくると、、、ハディは急 しつもならエレベ に立ち止まって動こうともしない。、 ーターのところまで歩いて行って、私がベルを捜しあ てやすいように鼻先をあげるパディが、どうしたこと まさに間一髪 ! 私が死の魔手を免れた最悪の経験か近寄ろうともしない。「歩け」という私の命令さえ、 完全に無視している。そこで、気がせいていた私は、 は、オハイオ州デイトン市のホテルの廊下であった。 幸い、一命は取り止めたが、この災厄は私が盲目なる盲導大の持ち主が決してしてはならないことをやって がゆえに起ったことであり、ふつうならば決して起りしまった。私は・ ( ディと私をつなぐ引き具を手放して、 ひとりで歩き出したのだ。 得ないことで、まったく私の落度たった。 その晩、私はデイトン市で開催されたある大きな集するとパディは、すぐさま私の両足のあいだに身を 投げて、一歩も進めないほど強く私を押し返した。 会で講演することになっていた。ところが汽車がおく れたため、すっかり時間につまっていた。私は、私のちょうどそのとき、近くの部屋から廊下に出てきたメ イドが、恐怖の金切り声をあげた。 両目の役を果してくれる盲導大 2 ハディといっしょに、 いけないっ ! 」彼女は叫んだ。 ホテルの十四階の部屋にかけこんだのだった。洗面を「あっー 「動かないで ! ドアはあいているけど、エレベ 1 タ をすませたときは、会場へ行く約東の時間に十五分しか 1 はきてません ! 穴になっています ! 」 がなかった。急いで階下へ降りて、タクシ 1 を見つけな 私の両ひざは、ほとんど締めつけられているようだ 5 のければならない。 った。もしパディが、ほんの二足でも私に前進をゆる 片時も離れたことのないジャ 1 マン・セパード種の 一生への光明

2. 現代世界ノンフィクション全集10

ひとりの友だちがいった。 「よろしい、ラリイ、君はその戦闘に勝ったんだ。犬 ディンディベンデンダイジノグ を手に入れたんだから、どうだい非独立化する 必要もありそうじゃないか ! 」 ラリイは笑った。 「まあ、聞きたまえ。それならそのお金で協会のホー 卒業生たちが、おのおのの社会の貴重な一員として ルのいすを修理しようじゃないか。どうしてぼくが気故郷へ帰り、またわれわれの努力に関する報道が全国 がついたかはともかくとして、あの古いとげだらけの に行き渡るにつれ、私たちはますます有名になった。 籐いすは、もうまいっているぜ。もう巻き直したほうわれわれ小グルー。フの開拓者物語は、世間を魅惑した 力しいころだぜ」 らしかった。盲導犬の事業について話をする講師を派 数週間後、。ヒアノの調律を終えて、ある家から出て遣してもらいたいという要望が、数限りなく寄せられ 来たとき、歩道を歩いていたひとりの婦人が連れの人た。多くは謝礼の支払いを申し出で、事実私たちも金 にいうのが聞こえた。 が必要だった。手紙で依頼してくる大部分のものが、 「あら、ラリイがくるわ。ラリイはひとり前の男にな ほんとに希望しているのは、パディの実際の働きを見 った盲目の子で、慈善は決して受けないんですって」たいということだった。そこで = ースティス夫人 をその一言は、ラリイにとって犬の代価どころの値う これからは「ポスーと呼ぶことにするーーは、私を講 光 ちのものではなかったーーーその犬の代価といえば、か師に仕立てた。連れは、もちろんわが施設の真のスタ 犬 ・ハディである。 のりに純金で払ったとしても、彼女は十分その価値があ る、とラリイはよく私にいったものである。 かくて、パディと私は旅に出た。公開の席上の演説 こ 七聴衆の人気者、、ハディ 34 「

3. 現代世界ノンフィクション全集10

わたしたちが少年のころの楽しみには、田圃のあいだを流れる小川で、ドジョウやドンコをすくうということ もあったけれども、なんといっても一ばん心を躍らせたのは、梅雨があけ、夏の訪れるのをまって、くぬぎ林へ カ・フトムシやクワガタムシをとりにゆくことだった。 はじめはおとなの尻について歩いていたが、そのうちに何本もあるくぬぎの木のなかで、この木にはいな、、 しかしこの木ならいるかもしれない、 という見当がつくようになった。そして、いるかもしれないと当りをつけ た木の幹に、目的のクワガタムシを発見したり、その木をゆさぶって、それが眼のまえに落ちてきたりしたとき のうれしさ。 これは採集のよろこびというものだろう。相手がたかの知れた昆虫であるから、採集といったけれども、これ がもうすこし大物になって、キジとかイノシシということになれば、このよろこびは、狩猟のよろこびというこ とになるかもしれない。狩猟だってやはり、獲物のいるところをさきに捜しあて、それから獲物を狩りだして、 これを仕止めるのである。だからこのプロセスには、ちがいはないのだが、一つだけちがったところがある。少 年たちは採集したクワガタムシを、家にもってかえり、かごに入れて、餌を与えたりしながら、これを眺めて楽 しむのだが、ドーンと一発ぶっ放して獲物を殺してしまったのでは、もうそれつきりで、動物と人間のあいだの 動物と人間 今西錦司

4. 現代世界ノンフィクション全集10

ことを聞き及んでいた。私は彼女が、私たちは単にル 「あの木の所まで半マイル足らずよ」 1 ファスのいるかこいの付近まで行くものと、びとり「半マイル ? 」 ぎめにしていることも知っていた。その上、ヴォイに と繰り返した彼女の声は泣き声に近かった。車から 住む主婦が、主人公が公園で働いているあいだ家に一降りた私たち三人は、私が先頭に立って、・フロンが 人取り残されるさびしさも身をもって体験した者だ。 ジオーンと私との間にはいった。私たちは道を横切っ ジョゼフ夫人が私たちと離れたくない気持はよくわかて堤に上り、立木に向かって進んだ。 っこ 0 「まん中にいれば大丈夫でしよう ? 」 と私がいったのに対して彼女の見せた表情は、病院 三人でドライ・フして行くと、様々の思い出が潮のよ うに私の胸によみがえって来た。そしてこの時、私はで瀕死の床についている重病者のようだった。 ジオーンカノ ; 、レーファスが私の家へたどりついた道を私たちの歩いて行く所は、チトセランが繁茂してい て、荒い道で足が痛かった。プロンはかかとの低い白 見るだけでなく、彼の生まれた場所も見ておいた方が 役に立っと考えた。それでルーファスには帰り道に会靴をはいていたが、一陣の風がさっと吹いた時、彼女 うことにして、まず彼の生まれた所へ向かうことにしは立ち止まってたずねた。 「まだ遠いの ? 」 て、車を走らせて行くと、見覚えのある立木が目には 「今出かけたばかりじゃないの」 とジオーンが答えた。この時、私が思い出したこと 車を止めると、・フロンが不安そうにいうのだった。 は、この辺には、ルーファスの母親が時々うろっくこ 「車から降りるんじゃないでしようね ! 」 とがあるということだった。私は紙巻に火をつけた。 「もちろん、降りるのよ」 この時、私はプロンの顔にチラと目をはせた。彼女の 私は彼女の不安を無視していった。 っこ 0 ひんし 8 2

5. 現代世界ノンフィクション全集10

で、だ。彼女は考えて、そうしたのだ。バディの両目 五日間にわたる午前、午後の遠足をすませたのち、 ジャックは「 こそ、私の「見る目」だった。私は感情をこめて 「おりこう、おりこう ! 」といっこ。 「あすは、ひとりでやってみなさい。私は少し離れて 新しい経験を重ねるごとに、私はますます引き具に ついて行ってあけるが、何も口出しはしないよ」とい っこ 0 敏感になり、くつろぐ能力を増し、そしてパデイへの 信頼を増大させていった。二時間ほど、ジャックは絶私は内心ふるえ上がった。外出のたびごとに、 えず大の動きの意味を私に通訳し、直立して歩くこと、ジャックはますます厳格になっていった。早足の快感 皮の手綱をあまりかたく握らないことなどを注意してに私がうっとりとでもしていようものなら、声をはげ くれた。しつぼを振りながら、・ハディは楽しそうに歩まして、「訓練中なんだそ ! 」と注意して、私を現実 きつづけた、まるで、私より余計にものを知っているの世界に引き戻した。 ことが楽しくてならないかのように。 「もうだれも注意してくれ手はいないんだ。・ほくが教 すばらしい興奮だった。家へ帰って、すわり心地の えたとおりにやらなければ、どえらい衝突をやるかも 、すこ深々と腰をおろすまで、こんなに疲れて いしれない。君の厚い頭蓋骨にも、その痛さはしみとお るとは思わなかった。足は痛いし、ふくらはぎの筋肉るだろう ! 」 は慣れない運動でずきずきし、左腕も痛いし、背中と「けがをするのをほうってはおくまい」私は、希望的 きたら、しよっちゅう引き具を引きかえしていたので、にこう考えて、聞いていた。 これまたずきずき痛むという始末だった。しかし、こ あくる朝、バディと私が入口のドアの前に立ったと れらの痛みは、ここ何年間も味わったことのない満足き、ジャックは、町へ行く途中のすべての曲り角や区 感を味わわせてくれたに過ぎなかった。 画を、くわしく私に復習してくれた。それからーー・ーは 2 2

6. 現代世界ノンフィクション全集10

くちばしのカチッという音とともにガは消えていた。 賞金のついてるのを忘れてるようだ。」 ヨタカは向きを変え、音もなく丘の斜面をかすめて飛 と、私ははっきりと大声で聞かせた。するとたちま ちあくびも足を引きずる音も止んで、しゃんとしてきび去った。丘の上に着くと、猟師はト川は前の谷間に あると言った。谷はお尻の形をしたなだらかな二つの た。カエル一匹に五シリングとは大金であった。 日の曲線は小さな 丘の間にある狭く深い割れ目で、 「ダンナ、覚えときますよ。」 ジャコプが、ずるそうににやりとして見せた。私は木や藪にふちどられてはっきりしていた。暗い谷間に おりると、川床の岩の間を流れる水の音が聞こえてく きびしく言った。 「お前はま「たく破廉恥な西アフリカのシャイロックる。この辺の地面は粘土質なので、すべらないように 注意しながらおりると、足元でズブズ・フと音がする。 だな。」 あいづち いくつもの岩の段を流れ落ちて 小川は広くて浅く、 「ハイ。」と、ジャコ。フは平気な顔で合槌を打った。 、た。段ごとに小さな滝になり、水は一本の美しい柱 のれんに腕押しとはこのことだ。彼は言ってることが になってえぐられたく・ほみに落ち、再び渦巻いて次の わからないと、念のためいつでも合槌を打つのだ。 のふちには金髪をふり乱し ものの三キロも歩くと、猟師は右に曲がり、両側に滝へ向かうのだった。小川 丈高い草のはえた狭い路に入った。路は露に濡れて滑たような草がたれ、岩間には緑のビロードのように広 こけ 人りやすく、先の方は丘をの・ほるジグザグ道とな「てでがる苔の間に、優しげなシダや小さな草がはえていた。 たらめに続いていた。あたりの湿った草のもつれあう岸には小さな桃色やチョコレート色のカ = がたくさん こっそり爪先で歩いていた。彼らは懐中電灯に照らさ 中で、小さなカエルやコオロギが、小人国の百万のメ アトロノ 1 ムのように鳴いていた。大きなガがふわふわれると、威嚇するように ( サミをふり上げ、おずおず と後すさりして穴に入っていった。我々が丈高い草の と舞い上がると、ヨタカが闇の中を矢のように飛び、 はれんち

7. 現代世界ノンフィクション全集10

「な・せ、ころぶ前に助けてくれなかったんだろう ? 「幸運の園」への帰り道は、よほどうまくいった。気 なんだって、ちょっとしたことを教えるために、わざ持もくつろぎ、私の案内人にのんきな足どりでついて わざ大の足を踏んだりする必要があるんだ ! 」 しつナが、ジャックに対する気持は、いささかもゆ ヴェヴィーでは、勇気がなくなり、しかもジャックるなところがなかった。 のことをまだ憤慨しながら、私は気抜けがしたように 「おひるの食事はいりません」 パディのあとをついて行った。 : 、バディは、、 しつも帰り着いた私は、そういって、さっさと二階の私の のように敏活に動いてくれた。私の右肩は、何人かの部屋に引きこもった。 人にぶつかった。右腕を脇腹にビタリとつけておく、 私に対する仕打ちがどんなにひどいものであるかを、 バディ相手にこぼしているとき、ドアがあいて、だれ という教訓を、荒つぼくかっ屈辱的に思い出させるの 、カ、刀。ぐし 、よ、って来た。 に十分だった。 最初の曲り角に来たころ、私はにえくりかえるよう「いい力い、君ー ジャックの声だった。彼はつづ に怒っていた。そしてジャックの教えを忘れて、往来けた する車馬の音に耳を傾けなかった。無鉄砲にも私は、 「いっさいは君の選択一つなんだよ。ふつうの盲人で 「進め ! 」と命令した。道を半分わたりかけたところ一生を終えることもできれば、バディの両目の助けを で、バディが突然立ち止まった。そして、私を引きずかりてひとりだちの人間になることもできるんだ。君 りながら、急にあとずさりをした。車輪がはねかえすは・ほくによりかかっているわけにはゆかないんだ。も 砂利が私の顔に当るほどの近さを、一台の車がサアッし、・ほくが君につきっきりで何から何まで教えていた と通り過ぎた。向こう側の安全のところへたどりつい ら君は君の大にたよれるようにはならないんだ。犬と たとき、私は心からしつかりとバディを抱いてやった。の合図を覚えこむことさえできなくなる」

8. 現代世界ノンフィクション全集10

の女であることを、いささか手痛く思い知らさ に七月の休みをモリスタウンで過ごした。彼女と私の 友人たちとのなかがうまく行かないようなら、結婚申れた。食料品店に買物にでかける彼女は、 し込みなどは忘れてしまおうと私は覚悟していた 「私の留守中に、広間と台所の床をみがいておいて ハケツのなかにシャポンと雑きんをい 盲導犬学校は、私の家庭なのだから。ロイスと知り合ちょうだいー いになったみんなは、ロを揃えていった。 れておきましたから、ね。水は自分でいれられるで 「モリス、もしあの娘さんが承諾すれば、君は幸福だしよう ? 」と私に命じた。不思議に思った私は、 「なんだって ? ぼくには床みがきはできないよ。一 ペんもやったことはないし、きれいになったかどうか、 ロイスの帰宅後、中西部の志願者や卒業生、あるい は私たちの組織とかすかなつながりを持っこの地方の・ほくにはわからないじゃないか ! 」 「モリス、よくお聞きなさい。あなたは全国の目の見 だれでもが、急に絶大な特別サービスを受けるように えない人に、ふつうの人のやることをなんでもやれる なった。シカゴを中心とする半径百マイルの円周内に 生じた仕事は、手紙、電報、または電話で処理されるようになるのに、必要なのは一匹の犬だけだって話し わけにはゆかなくなった。それは私が自分ででかけてて回っているじゃないの。だから、あなたも自分でた 取り仕切らねばならないのであった。仕事がないときめしてごらんなさい ! 」 たは、昼間列車に乗るのが、私の道楽になったーー - ・週末それだけいって、さっさと出て行ってしまった。 をごとにシカゴへ、意中の人に会いに。彼女を得るまで 一家の主人としての独立を、一個人の独立を立証す 光 に、二年かかった。 るために放棄することに、若干の心もとなさを感じな の結婚数カ月後、ロイスこそは私がいつも求めつづけがらも、両ひざをついて仕事に取り組んだ。台所の向幻 こ 4 こうの壁際からはじめて、だんだんにこっちへさがり、 ていたタイ。フーー・私の盲目に対してなんの譲歩もしな

9. 現代世界ノンフィクション全集10

米最優秀の選手のひとりのようだった。 段の寝台に寝ていた私を、車掌が起しにきた。 ディは、大成功をおさめた。フィラデルフィアを「大が放れてしまったんです。どうかつないでくださ あとにするころには、同市のあの有名な「友愛」の大い」 部分を、運び去ってしまった。 私は、ぶスロ 1 ブを引っかけてスリッパをはき、せ シンシナティ市のシントン・ホテルにつくと、ここまい通路をすこぶるあやしげに歩いて行った。パディ では私の家を知っている人がいるという幸運にめぐまは、大喜びで私を迎えた。まるで何日も会わなかった れた。母の伯母にあたるやさしい老婦人の招きをうけようなはしゃぎ方だった。私が抱きしめているうちに、 たのだ。私たちが、その玄関の踏段を上ろうとすると、車掌はどこかへ行ってしまった。私がバディをつない 「モリスや、犬は外において、あなただけはいっておで、寝台に帰ろうとすると、かの悪漢めがみごとに私 いで ! 」と彼女は叫んだ。 をとじこめてしまったことを発見した ! 私はすわり 彼女のこうした態度に、私はわれにかえって、私の場所を捜したあげく、壁ぎわに細長いぐあいのよさそ とりかかった仕事の重大さを思った。盲導犬の真価をうな箱があったので、ようやく身を横たえた。。ハディ 認めさせるのには、私たちはまだほんの表面を引っか は私のそばに寄りそった。汽車がルイスヴィュにとま いたにすぎなかった。私の両目をポーチにおきつばな ったとき、数人の人が荷物車にはいって来た。だれか しにする、まったくそのとおりだ ! 「ハディがいなのお棺の上に寝ていたのだと教えられて、私は恐怖に ければ、モリスもいません」と私は説明した。そして、震えた。 私たちは愉快な訪問の一刻を過ごした。 あまり恐ろしかったので、停車中に私は・ハディを連 シンシナテイからの汽車では、なんと抗議しても、れて汽車を降り、。フラットホームに出てしまった。・そ ・ハディは荷物車にのせられてしまった。真夜中に、下して。フルマン特別車をやっと捜し当て、乗ってしまっ

10. 現代世界ノンフィクション全集10

私も同様すわりこ に、角の薬屋まで、いつも通り慣れているほんの一・フまんなかにすわりこんでいたが ロックを歩いてみた。毎日歩いているのに、そこにはんでしまったー 私が考えていたよりはるかにたくさんのでこ・ほこや棒「オ 1 ケー、りこうだなあ ! 自分でそういったんだ や枝のぶら下がったのがあった。 から、自業自得さ ! 」と。ハディがロに出していったと またあるときは、電車を降りて家へ帰る道で、町角しても、これほどあざやかな通信方法はなかったろう。 にさしかかったのでパディに「左へ ! 」と命令した勤労を終えたあるタ方の帰り道、ナッシュヴィルの が、不思議なことにパディは曲ろうとしなかった。向ウエスト・ エンド街を横ぎろうとすると、・ハディは歩 こうのほうで犬の鳴き声や子供の遊んでいる声がした調をゆるめて、大層慎重な足どりになった。一日のう ので、。ハディはそこを通って、いま仕事からの帰りだちに十何回もいろいろな合図を受ける私は、・ハディと が、じきにいっしょに遊べると知らせたかったのかと、同じ慎重さでついて行った。向こう側に渡り終ると、 私は推測した。 子供に話している母親の声が聞こえた。 自分勝手な行動を許すのは、訓練上よろしくないと「ごらん、ダニイ。りこうな犬だねえ。溝と給水自動 考えた私は、、、ハディに従うのをこばみ、きびしく叱っ車の間のせまいところを、なんと上手にご主人を引っ た上で、もう一度「左へ ! 」と命令した。彼女は、ま張って来たじゃないの ? 」 えたもや聞こうとしなかった。憤慨した私は、ちょっと「ママ、・ほくも見ていたよ。まるでサーカスの曲芸み をむきになって叱った。今度はすなおに命令に服従して、たいだった。まるで綱渡りする人みたいだったね ! 」 光 ワシントンに住なある娘さんは、犬のジューンのす 勢いよく左へ曲ったが、とたんに私はスチーム・ロー のラ 1 の胴体にいやというほどぶつかってしまった。運ばしつこい頭の働きが、彼女を救った驚くべき実例を 送会社のトラックを待っていたらしく、それは歩道の話してくれた。デュポン広場の近くを歩いているとき、 こ