アイゼンハワー - みる会図書館


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1. 現代世界ノンフィクション全集11

もあるテントや小屋の群れが、一晩かそこらのうちに手をしばられたようなものだった。ただ、天候の回復 沿岸そいに建てられた。彼らは三段式か四段式のべツを待つばかりだった。しかし、何が起ころうとも、 ドで眠った。食事の時間には、腹をへらした男たちのきようのうちに、出撃するかさらに上陸を延期するか 列がしばしば一キロも続いた。師団の数があまりに多という重大な決定を下さねばならなかった。それがど いので、アメリカ軍のためだけで、四千五百人の料理ちらに決められようと、上陸作戦の成否は、この決定 なんびと にかかっていた。そして、他の何人も、彼の代わりに 人を含む五万四千の要員が必要だった。五月の最後の この決定を下すことはできなかった。責任は彼の肩に、 週になると、人員と資材の積みこみが始まった。いよ ただ彼ひとりの肩にかかっていた。 いよ出撃の時が近づいたのだ。 どの数字も想像を越えるものだった。これほどの軍アイゼンハワーは一つのおそろしいジレンマに直面 隊を打ち負かすことは不可能に思われた。そしてこのしていた。五月十七日、彼は、上陸作戦は六月の五日、 信じられないほどの軍隊ーー自由世界の若者たちとそ六日、七日の三日間のうちに決行する以外にないと決 心したのだった。特に都合のよい二つの条件が、この の資源のすべてーーーは、たった一人の男、アイゼンハ 三日のあいだだけ生ずるのだ。おそい月の出と、夜あ ワーの決定を待っているのだった。 六月四日、アイゼンハワーはほとんど一日じゅうひけの直後に起こる干潮である。 とりで自分の軍用車にとどまっていた。彼と部下の将空輸される歩兵部隊と落下傘部隊とが、攻撃の先陣 - 校たちは、最小の犠牲で成功を得るために、打つべきをつとめることになっていた。彼らは月あかりを必要 手段はすべて打っていた。何カ月にもわたる軍事的、 とする。だが、奇襲の効果を発揮するためには、夜の 政治的な細心の準備のあとで、オーヴァーロード作戦暗いうちに攻撃地点の上空に達していなければならな は運命の手にゆだねられていた。アイゼンハワーは、 したがって、おそい月の出は不可欠な条件だった。 、 0 2 5

2. 現代世界ノンフィクション全集11

りたいと思ったのには、特別な、そして人間的な理由 録に、正確な日付けと時間が載っているのが、何よ あがった。その日は、彼女の誕生日だったのだ。 りの証拠である。 ( 原注 ) 戦後、ロンメルの部下の上級将校たちは、 イギリスでは、朝の八時だった ( イギリスのサマ 六月四日、五日、そして・の初めにおける ・タイムとドイツの時間のあいだには一時間のずれ ロンメルの不在を、説明しようと試みた。書物や記があった ) 。ポーツマスに近いとある森の奥の軍用車 事やインタービューの中で、彼らはロンメルが出発の中では、連合軍総司令官ドワイト・・アイゼンハ ヒ したのは五日だと明言した。それは事実でない。 ワ 1 将軍が、一晩しゅう立ち通しで過ごしたあとの、 トラーの総司令部でロンメルの計画した訪間を知っ深い眠りに落ちていた。ロンメルが目をさましたのと フューラー ていた唯一の人物は、総統の副官のルドルフ・シュ ほぼ同じ時刻に、アイゼンハワーは、悪天候のために ムント将軍だった。 O ・・の指揮官づき副官を連合軍の上陸作戦を二十四時間だけ延期するという重 していたワルター 大な決定を下したのだった。悪条件が生じないかぎり、 ワーリモント付平は私に、ヨ 六月六日火曜日が・となるはずだった。 ドルも、カイテルも、そして彼自身も、ロンメルが ドイツこ 冫いたことさえ知らなかったといわれた。 ・にさえ、ワーリモントは、ロンメルは自 分の司令部にいて作戦を指揮していると確信してい た。ロンメルがドイツへ向けてノルマンディをあと にした日付けについていえば、それは確かに六月四 日である。日を追って記録されていた軍団の備忘 4 3

3. 現代世界ノンフィクション全集11

丿ーの第一〇一空挺部隊では、ドワイ をはずしながらいった。 「なるほど、わかった」ダッチは最後の二十ドルを渡 ト・・アイゼンハワー将軍が、何人かの将校や報道 した。 関係者とともに、最初の飛行機が滑走路に出るのを見 まもっていた。これより先、彼は、一時間以上にわた コランビは走ってまた賭博の仲間にはいった。ダッ チは腕時計をながめた。金製で、内側にコランビの名って、兵士たちに激励のことばをかけてまわった。彼 と両親の手蹟が彫ってあった。そのときだれかが叫んはこの空挺作戦を、この進攻作戦の他のどの部面より も心配していた。何人かの将官たちは八〇パーセント の損害が出ると考えていた。 「来たそ ! 出発だ ! 」 アイゼンハワーは第一〇一師団の指揮官マクスウェ ダッチは装備をつけ、他のパラシュート兵といっ ル・・テイラーにも別れを告げていた。テイラーは しょに倉庫を出た。トラックに乗りこむとき、彼はコ ぎごちない歩き方で、背中を変にまっすぐにして遠ざ ランビのそばへ行って時計を返した。 「おい、時計は二つもいらないよ、おれには」 かっていった。彼は、その日の午後スクオッシ = ( テ = じんたい ダッチにはもう、母が送ってくれた数珠が残って、 しをしていて右膝の靱帯を切 0 たことを、総司令官 るだけだった。数珠はとうとう持っていくことに決心に知られたくなかったのだ。それが知れれば、彼は出 したのだ。トラックがゆっくりと飛行機のほうへ動き発を禁じられるかもしれなかった。 出した。 アイゼンハワーはいま、飛行機が滑走路から一機一 いまやイギリス全土で空挺部隊の兵士たちが飛行機機と舞いあがり、夜空に消えていくのをながめていた。 やグライダーに乗りこんでいた。その降下地域に標識それらは飛行場の上で円を描きながら編隊を組んでい た。ポケットに手を入れたまま、アイゼンハワーはま を立てる任務を帯びた斥候部隊は、すでに離陸してい こ 0 2 9

4. 現代世界ノンフィクション全集11

史上大の作戦 いう巨大な機械はすでに動きだしていた。時間は刻一 刻と過ぎていった。しだいに悪化する天候の下で、史 上最大の陸海空軍部隊がアイゼンハワ 1 将軍の決定を 待っていた。アイクは六月六日を Q ・とするで あろうか ? それとも、英仏海峡に荒れ狂う嵐ーーー一一 十年来最大の嵐ーーーのために、彼はふたたび上陸の延 期を余儀なくされるだろうか ? 十決断 サウスウィック ・ハウスの海軍総司令部から三キロ 離れた雨のしたたる森の奥では、この重大な決定を下 すべきアメリカ人が、質素な設備の軍用車の中で、自 分に課せられた問題と苦闘しながら、何とか神経を落 ちつかせようと努めていた。サウスウィックの大きな 建物でもっと居心地よく落ちつくこともできたのだが、 アイゼンハワーはそれを断わったのだった。彼は軍隊 の乗船する港に少しでも近いところにいたいと思って いた。数日前、彼は、ここに小さな司令部を作らせて いた。参謀たちのためのテントがいくつかと、自分の を含めて、軍用車が何台かあるだけだった。 アイゼンハワーの軍用車は引っ越し用のトラックに かなり似た天井の低い細長い牽引車で、私室と事務室 と小さな客間にあてられた、三つの小部屋から成って 7 4

5. 現代世界ノンフィクション全集11

の上陸企図は失敗に帰し、自分は軍の後退を命じた。 上陸作戦の日時、および地点の決定は入手しうるかぎ幻 りの多くの情報にもとづいたものである。部下将兵、 五歓喜と不安 空軍および海軍は驚くべき義務感と勇敢さとを明らか なんびと にした。もし過誤が犯されたとすれば、また何人かそ イギリスでは、午前九時一一一十分であった。一晩じゅ の過ちの責を負うべきであるとすれば、それは自分で う、アイゼンハワー将軍は、最初の報告を待ちながらある。自分ひとりである」 軍用車の中を大股で歩きまわっていた。いつものよう だが、それから以後上陸予定の海岸に、その麾下部 に西部小説を読んて心を鎮めようとしてみたが、うま隊が歩をしるしたことが確実となったので、アイゼン くいかなかった。そのとき、やっと最初の報告が届い ハワーは全然別のコミュニケの発表を許可していた。 た。それは、脈絡のない断片的なものだったが、大体九時三十三分、将軍付き新聞係官、アーネスト・デ = において悪い報せではなかった。 ピュイ大佐は、全世界に向けて、次のニュースを発表 麾下の空軍および海軍司令官は、攻撃の進展に大いした。 に満足していた。部隊は、五つの海岸に上陸したのだ。「アイゼン ( ワ 1 将軍の最高指揮下に、強力な空軍に 橋頭堡は、まだ確保されたとはいえなかったが、二十よって掩護された連合国海軍は、けさ、北部フランス 四時間前に静かに起草したコミュニケを発表する必要海岸に連合国陸軍の揚陸を開始した」 はあるまいと思われた。上陸攻撃失敗の場合のために、 これこそ、自由世界が待ちにまった瞬間であった。 アイゼンハワーは、こうしるしておいたのだ。 そして戦闘開始の日の到来したいま、人々は奇妙な安 「シェル・フールル・ア ] ヴル地域における連合国軍堵の思いと、熱狂と、不安の入りましった気持ちで、

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はじめる。要するに彼は、必要とされていた最低限のを悩ましていた。出帆準備をしてしまってから基地に 条件よりは悪いが、ともかくも比較的よい天候が、二もどらなければならないようなことになると、七日の 十四時間とちょっとのあいだだけ続くと考えてよいこ水曜日にふたたび出撃することは不可能なのだ。 アイゼンハワーは部下の一人ひとりの意見を聞いて とを、アイゼンハワーに報告したのだった。 いった。スミス将軍は六日に攻撃すべきだという意見 報告が終わると、スタッグと部下たちは矢つぎ早の だっこーー大きな賭けだが、やってみるべきだ。テッ 質問を浴びた。その予報は確かか ? 絶対に誤りはな ・マロリーは、低い空と予想される雲の群 いか ? 情報は十分に検討したか ? 六日以後も天候ダーとリー れが空軍の有効な活動を妨けはしないかとおそれてい の回復はしばらく続くのではないか ? た。すると、攻撃は空からの十分な援護なしに行なわ ある種の質問は気象部員には答えられなかった。情 報は綿密に検討され、計算は何度もやり直されていたれることになろう。彼らの意見では、「それは考えも の意見は、きのう五日に が、天候を確実に予報するというのは不可能なことでの」だった。モントゴメリ 1 ある。彼らはできるかぎりのことを答えて部屋を出て行なわれるはずだった上陸が延期に決まったときの彼 っこ 0 の意見と同じだった。「私は行くほうに賛成です」と 十五分のあいだ、アイゼン ( ワーと将校たちは討議彼はいった。 発言の順番はふたたびアイクにまわった。彼が決定 を続けた。ラムゼイ提督は決定の緊急性を力説した。 ュタの的判断を下すべき時が来た。彼が賛否の意見を秤りに ・・カーク海軍少将の指揮の下にオマハ、 かけているあいだ、長い沈黙が流れた。スミス将軍は、 大海岸へ向かう予定の輸送船団は、オーヴァーロ 1 ド作 上戦を火曜に決行するためには今から一一一十分後には命令手をテーブルの上で組み、頭を下げて考えこんでいる を受けていなければならない。燃料の問題がラムゼイ最高司令官の「孤独さ」に打たれた。何分かが過ぎた。 5

7. 現代世界ノンフィクション全集11

の手でガス部屋や火葬室で殺された数百万の人々、母 いうしらせをアイゼンハワーに伝えたのは、この里し 電話だった。しらせを受けたとき、彼は何もいわなか国から無理やり連れ去られた数百万の労働者、二度と 帰ってこなかった無数の男女、拷間され、人質として った。彼の副官だった ( リー・ O ・。フッチャ 1 海軍大 迫害され、飢えに死んだ数百万の犠牲者ーーーこうした 将は、総司令官はただ低くつぶやいただけだったとい ナチスの暴虐の全貌は、当時はまだだれにも想像がっ っている。このときにあたって、いったい何をい℃ 、なかった。 ) 大いなる十字軍の使命は、単に戦いに 何をしたらよいというのか。 四カ月前、彼に最高の指揮権を与えた文書の中で、勝っことではなく、ナチズムを破壊し、史上に例を見 ない野蛮な一時代に終止符をうつことであった。 ワシントンの最高参謀本部は、彼の使命を次の簡単な しかし、それにはまず上陸を成功させねばならなか ことばで述べていた。「貴殿はヨ 1 ロッパ大陸に上陸 し、他の連合諸国家との協力の下に、ドイツの心臓部った。それが失敗すれば、ドイツの決定的敗北はまだ に侵入しその兵力を壊減するための軍事行動を展開せ長い年月を要することになろう。 られたし」 全世界が期待しているこの上陸作戦の準備は、すで 侵攻作戦の目的と趣旨はこの簡潔な文章に含まれてに一年以上前から始まっていた。アイゼン ( ワ 1 が連 いた。だが、すべての連合国にとって、それは単なる合軍総司令官に任命されるよりだいぶ前から、英米軍 の将校から成る小さなグルー。フが、イギリスの将軍サ 軍事行動ではなかった。アイゼンハワーはそれを、 ・フレデリック・モーガンのもとで、最初の攻撃計 「大いなる十字軍ーと呼んでいた。それは、世界を血 大みどろの戦いにまきこみ、一つの大陸を破減させ、三画を練っていた。問題は困難たった。資料も乏しく軍 上億以上の人間を奴隷状態に追いやった圧制にとどめを事上の先例もなく、何もかも疑問符だらけだった。ど 9 こを、いつ、攻撃するか ? どれだけの師団が必要 さすための十字軍であった。 ( ハインリッヒ・ヒムメル

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の総司令部が知っていたと推測させるものは何もな う最大の秘密はわからなかった。この秘密はきわめて 、。事件はすぐにもみ消され、大佐の上官たちによ 細心に守られていたので、四月の終わりまでは、数人 って処理された。このイギリス人はあとで国会議員 の連合軍将校が知っているだけだった。だが、この月 になっている。 のあいだに、対諜報部の不断の警告にもかかわらず、 一人の米軍将官と一人の英軍の大佐とが、軽率にもこ さらに、六月四日の日曜には、連合軍司令部をどき の秘密をもらしてしまった。米軍将校は、ロンドンの クラリッジのあるカクテル・。、 ノーティの席上で、上陸りとさせる出来事が起こった。その前夜のこと、 は六月十五日より前に行なわれると二、三の同僚に話通信のあるテレタイ。ヒストが、ひまにまかせて、あい した。英軍の大佐は、民間の友人に、自分の部下はあている機械を使ってスピ 1 ドをあげる練習をしていた。 そこの架空の「至急報」を打ったテー。フが、どうしたわ る種の攻撃目標を襲撃する訓練をしているといい、 の目標がノルマンディにあることをほのめかした。二けか、東部戦線の作戦公報要約の中にまぎれこんでし まった。それは三十秒とたたぬうちに取り消された。 人の将校は直ちに官位を剥奪されて解任された。 だがもう間にあわなかった。米本国に届いた報告は次 の通りだった。 ( 原注 ) このアメリカ将校はウエスト・ポイント でアイゼン ( ワー将軍の同期生だったが、連合軍総「 << ・ p-4 ツウシンシキュウホウニューヨークアイ ゼンハワーシレイ・フ、レンゴウグンノフランスジョ 司令官は彼のために何をすることもできなかった。 上陸の後、この将校のことは明るみに出され、彼がウリクヲョコクス」 あとで大佐の肩書きをもって退役したときにも話題 この通信の結果がどんなに重大なものであろうとも、 になった。イギリスの大佐のことをアイゼンハワー何らかの手段をうつにはすでに遅すぎた。上陸作戦と 6

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まだ。フリマスの港を出ていない計算だった。 ほかの船影は見えなかった。しかし彼は、および O しかも、ほかにもこれと同じような船団がいくつもの船団が、すぐ近くの海上をノルマンディに向かって 3 あるのだった。十あまりの他の船団が同時に装備を終いるのだと思って、心配しなかった。彼は、定まらな え、あるいはその日のうちにイギリスを出発すること い天候に不安を感じたアイゼンハワーが、歩みの遅い になっている。夜には全船団がセ 1 ヌ川の河口に進行十五ほどの船団だけに昨夜のうちに出発することを許 する。あすの朝には、五千隻からなる信じられないほ可したことを知らなかったのだ。 どの大船団がノルマンディの沖にあらわれるのだ。 突然、艦橋で電話が鳴った。一人の将校が手をのば ホフマンはいらいらしていた。ホフマンの先導するしたが、受話器のそ・よこ を冫いたホフマンがそれをはすし 船団はもっとも長い航程を経なければならなかったの た。しばらく聞いてから、彼はたずねた。 で、早くイギリスを出港していた。船団は、ホフマン 「確かなんだね ? 電信はくりかえされたのだろう が他の数百万のアメリカ人と同様に今まで一度も耳にね ? 」 したことのない地点ーー・暗号で「ユタ」と呼ばれてい 彼はまたしばらく聞いてから、受話器をかけた。信 ゑコタンタン半島の東岸の海風にさらされた砂浜ーじられないことだった。船団全体にイギリスへ引き返 ーに上陸する強力なアメリカ第四師団の一部を載せてせというのだーーしかも理由もいわずに。何が起こっ いた。その二十キロ南東には、三カ月形をした銀色のたのか ? 上陸作戦はご破産になったのか ? 砂丘「オマ ( 海岸ーがあり、そこには第一および第二 双眼鏡でながめると、掃海艇も他の駆逐艦も方向を 十九師団の兵士たちが上陸することになっていた。 かえてはいなかった。通信を受けとらなかったのだろ コリー号の艦長は、この日の朝、ほかの船団の姿がうか ? 彼は、決定を下す前に、自分の目で通信を見 見えるものと思っていた。だが、ドーヴァー海峡には、 ようと決心した。彼は鉄の階段をおりて、下の甲板に

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すようなことになると、船舶に燃料を補給する必要かちがいない。だれにとっても、この大幅の延期は不可 能に思われた。しかし、決定を下すのはアイゼンハワ ら、七日に攻撃を開始することはできなくなるのだっ 1 ただひとりの権限だった。 一つは上 た。そうなると取るべき道は二つしかない。 日暮れ方、最高司令官は何度も軍用車の入り口にあ 陸を潮のぐあいがふたたびよくなる六月十九日まで延 期することであゑだが、その場合、空挺部隊は暗やらわれ、木々の頂に垂れこめている低い雲を見あげた。 へつつ みの中で行動せねばならない。十九日には月はないのときには外へ出て、背中を丸め、手をポケット である。もう一つは七月まで待っことである。しかし、こみ、パイ。フをたて続けにふかしながら森の空地を歩 この大幅の延期は、アイゼン ( ワーが後にいったようきまわった。 この散歩の途中、彼はだれにも出会わないように見 に、「あまりにもつらいこと」であった。 アイゼン ( ワー側近の将校たちはこの長い延期をひえた。しかしいま、彼は総司令部付きの四人の特派員 ュ 1 ラーを見か じように恐れていたので、どんな慎重な者でも、八日の一人、 Z O のメリル・レッド・ミ か九日に攻撃を決行する気になっていた。たとえ訓練けたのだった。 ュ 1 ラー」彼は突 「びとまわりするから来ないか、ミ されているとはいえ、二十万以上の人間が、船や宿営 地や飛行場にとじこめられ隔離されたまま、攻撃の秘然いった。 そしてミュ 1 ラーを待たずに、アイクは、あいかわ 密をもらさず何週間も過ごしうるとは、彼らには考え られなかった。そして、たとえ秘密がもれないとしてらずポケットに手をつつこんだまま、その長い足で歩 ミュ 1 ラ 1 は走って森の中でアイクに追い も、ドイツ空軍の偵察機は、ーーすでに発見していなき出した。 いとしての話だがーーー巨大な船団をかならず発見してついた。 しまうだろう。ドイツのスパイも計画をかぎつけるに それは静かな奇妙な散歩だった。アイクはロをきか 5