ドイツ人 - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集13
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1. 現代世界ノンフィクション全集13

おそろしい戦闘が東部および西部の戦線で、さらに遠 い太平洋でもいまだに行なわれていることを知った。 一九四四年十二月の頃だった。戦いの終りはまだ見え ていなかった。まだ寸だ私は女教師レオンテナ・レリ ッチのままでいなければならなかった。この終りのな い喜劇において自分の役をまだ務めなければならなか 一九四五年は暗い前兆の下に明けた。ドイツ軍がず っこ 0 うっと標榜してきた主義主張はすでに失われていたけ クリスマスのお祭りの前に、私は過ぎさった二カ月れども、戦争はあいかわらず激しかった。ワルシャワ に応ずる最初の月給を受け取った。私はそれをイレナはすべてからたち切られ、誰もそこへ行くことはでき に渡して、小麦粉と肉を買い、それから村の店の借金ず、最近そこから出て来たという人も一人も知られな っこ 0 を払いに行ってきてくれとたのんた。子供たちにとっ 、カ多 / てクリスマスのお祭りは美しく、幸福でなければなら イレナは物狂おしくなりはじめた。 よ、つこ 0 「わたしがルドウィッヒと別れてからもう六カ月経っ わ」と、ある日イレナが私に言った。 「レナ、もしあの人が生きていて、自由の身なら、き っとここへ会いに来る方法を見つけていたでしよう。 わたしには、どう考えてよいのか、どうしてよいのか わからないわ」 私はイレナが安心するようにと努めたが、たいした 七荒廃

2. 現代世界ノンフィクション全集13

これはまさしく昇給ものだと考えた。 に錨を下ろしている巡洋艦を代表していた。 のぼりくる太陽の最初の光が戦闘の舞台を照らし / 璧塁の裏庭にすえられ、巡。 迫撃砲は、 われが無線連絡する目標はどこでも砲撃できる用意を村は私の眼下、わずか七百五十ャ 1 ドのところに、白 ととのえていた。 く美しい円柱のような煙を吐いている、ヴェスヴィア 斥候がしばらくすると帰ってきて、ドイツの迫撃砲ス火山を背景としていた。 私はこのヴェスヴィアス山がうらやましかった。私 は村の中にあると伝えた。その砲は巧みにあちこちの 農家の中に隠され、屋根にあけられた穴から砲撃しては自分の隠れ場所をさらけ出す危険のため、煙草の煙 すらあげることができなかったのだ。 いるのであった。 平原は水曜日の午後の墓地より静かだった。私は、 夜が明けるやいなや、わが連合軍は、共同砲撃の ぶどう畑のあいだに点在する数百の農家をはっきりと ちょっとした示威を始める計画を立てた。すなわち、 まずこの四つの、ー . 屮石 白包を使って発煙弾を発射する、そ見わけることができ、そして同時に向こうからも、私 れから、英国巡洋艦はその八つの砲門を開いて、英帝のことがはっきり見てとれるのを感じた。あらゆる家 国からの贈りものを射ち注ぐ、最後に、中型装甲車がの窓がまっすぐ私の目にはいった。私は小藪のなかに ふたたび出動して、村落から逃げだそうとするドイツできるだけ低く身をちちめ、背筋に寒気を覚えながら、 兵を銃撃する。一方、私は夜のうちにこっそり抜け出この美しいながめを憎んだ。私が今ながめたいのは して、村を見おろせる、よく掩護された場所を探して、シャスタ , ー堡の汚れた城壁だし、しかもそれの内側を 見たいのだ。ここでは、私は敵味方二つの線の中間の カメラをもってあらゆるものを撮影する。 私は、夜のなかばをついやして山腹をはいまわった。冷たい地上に、せんべいのように平たくはいつくばっ て、腹のほうを大切にするか、背中を大切にするかの 私はシャスター堡への激しいホーム・シックを覚え、 - 一 0 冖 /

3. 現代世界ノンフィクション全集13

まだどのくらいの間、私はこの二重の生活を送ってをおい払って進んでいた。戦線がオルホヴェクに近づ いかなければならないのだろうか。 神よ、私はこれらの辺境からいつになったら解放さ毎日毎日、砲声は強くなってきた。ときどき私は夏 れるのだろうか。 の空に小さな。ほんやりした点がゆききするのをみつけ 静まりかえった部屋の中で、ただ自分の心だけと向て、ロシアかドイツの飛行機と思った。希望が増して かいあっていた私は、クリシャとガガが静かに眠ってきた。まもなく、ほんとうにまもなくすべてが終りに しるⅢ、いつものように自分の想像力を自由に走らせなるだろう。 ろう ていた。戦争は終わり、 : ホーランドは解放され、フェ 一九四四年七月二十二日、大砲の音が耳を聾するば ラと私はヴィ F, リー チカにもどり、弟たちはシベリアかりになった。私は子供たちのために心配しはじめた。 から帰ってくる。そして私はユダヤ女であることにす一晩中閃光が空に輝いた。戦いが隣りの小山のかげで こしの罪悪感も恥らいも感しなくなっていた。 行なわれていると噂された。みんな地下室に下り、私 そして私はしばらくの間、幸福な眠りに落ち入った。は子供たちをできるだけ気持よく寝かせ、安心させよ うとっとめた。子供たちは、母親や私たちにすがりつ 六月、イレナが判事の子供テオド 1 ルとマリンカをき、大砲の音の聞こえるたびに、私たちをいっそう固 連れてオルホヴ = クにやってきた。ワルシャワはナチく抱きしめた。あれほど『モーゼ』の物語を話すのを に対して、立ち上がる一歩手前だと教えてくれた。暴好んだテオドールをながめやりながら、子供が恐怖に 動はいまにも起こるかもしれなかった。 真青になっているのをみて、ある満足を感しないわけ よ、つこ 0 七月、ソヴェト砲兵隊の砲声が聞こえはじめた。ロ シア軍は国境を目ざして、ポーランド国内のドイツ軍翌日、徒歩または騎馬でロシア軍が村を横ぎ「た。

4. 現代世界ノンフィクション全集13

ないことを注意してくれた。事実、われわれは一本八ら離れて私の替えズボンの上にこ・ほれていた。私は海 0 9 シリングで好きなだけのスカッチ・ウイスキ 1 が買え水で濡れたズボンを、。フランディで濡れたズボンに変 たのである。これはじつに損害に損害を重ねるものでえたわけだ。私は、このこよなき芳香を楽しんだもの あった。われわれはスカッチを一本注文して、おのおの、事実ひじように不愉快な夜を過ごしたのだった。 ののバッグに二本ずつのプランディをしまい込み、残朝になると、太陽がズボンを乾かしてくれ、私は元 りは船内の兵隊に配った。 気を取りもどした。ドイツ兵はみな、死んだか捕虜か 夜十二時、われわれは襲撃用舟艇に乗って海へ下ろのどちらかであった。われわれは敵の糧秣庫にイタリ アの廿ラミ、 スイスのチーズ、ノルウェーのサーディ された。英海車は何の面倒もなく、海岸から四十ャ 1 ド離れた、腰までの深さの海の中にわれわれを配置しン、デンマ 1 ク 2 ハター、そしてミュンヘン・ビール を発見した。アンチオにおける最初の二十四時間は期 水中われわれはなんの抵抗にも会わなかった。海岸待にあふれたものであった。ローマまではわずか二十 の銃声は二十分あまりで静かになった。この侵攻は敵五マイル、われわれは二週間以内にはローマに着ける にはまったく寝耳に水で、ズボンを脱いでいた多数のものと期待した。けれども、この二十四時間はそのあ ドイツ兵を捕虜にした。わが軍は司令部をぜいたくなとで起こった恐るべぎ海岸の日々を思えば、唯一の安 楽な日であったのだ。 カジノの地下室に設営した。 そして私はバッグを開いて、こんどは私も自分の濡報道部事務所には海岸の別荘が徴発された。私はそ れたズボンを脱ぐことができた。 こで、元気で愉快な特派員仲間といっしょになった。 部隊本部からのニ亠ースを待っているあいだ、われ 昼間、あんなに精神的苦悶を与えたスペインの・フラ ンディは、あまりないがしろにされた仕返しに、瓶かわれはポーカー勝負をはじめた。窓外には、堂々と煙 こ 0

5. 現代世界ノンフィクション全集13

払わず、すこし集りからはなれて突っ立っていた。そ こからあまり遠くないところに、革の長靴をはいた十 五歳ばかりの少年がいて、年上の人びとの集団ににぎ りしめた拳骨を脅やかすように突きつけていた。短く て、あまりにも狭すぎるスカートをはいたしかめつ面 の一人の女が、甲から乙へと、みんなに同じ質問をし ながら歩き回っていたようだが、なんの答えも得られ なかった。私がそれらの光景をながめていた時、扉が 一見放された子供たち 開いて、一人の男が群衆にむかって叫んだ。 「新しいリストを張り出しました。・フツへンワルトと クラクフのみす・ほらしい区域にある古い建物が電車マウハウゼンの生存者たちのリストです」 の停留場に面して建っていた。反対の歩道から、私は それは放電のような効果を示した。押し合いへし 委員会の建物の前に群がっていた四十人ばかりのユダ合い、どなりながら、四十人ばかりのユダヤ人たちが ヤ人の集りを数瞬間観察していた。その人びとの間にみんな一度に、入口となっていた唯一の小さな扉から はーー・・必然的にーーー収容所から出てきたことを示す青家の中にはいりこもうとしはじめた。道を横ぎって、 と鼠の縞のはいった木綿のぼろ服を着たやせた大男がユダヤ委員会の建物に近づきながら、私は生存者のリ 一人いた。その男の前腕には、ドイツ警察のためにつ ストというのは、母か、父か、子供か、妻か、誰かが いれすみ けられた数字の刺青が見られた。その大男は、壁に身生きているということを意味しているのだと考えてい をもたせかけたまま、周囲の世界にはすこしも注意をこ。 第二部百人の子供たち 232

6. 現代世界ノンフィクション全集13

中に立証するものがないのだ。 しかし土地が、た私のすべきことはもうたった一つしか残っていなか だ地面があるだけだった。完全に平らで、完全になんった。ヴィエリーチカに行って、私の家族の家に着き、 にもないのだ。そのとき思い出した。 待っことだ。もし家族の中の一人でも生きていたら、 ここはユダヤ人街のあったところだ。なんにも残っそこへ戻ってくるだろう。そこは遠かった。ーー数百 ていない。ユダヤ人たちがドイツ軍に反抗して戦ったキロあった。 しかしぜひとも行かなければならな 建物のわずかな名残りさえない。すべてのユダヤ人は 、。疑惑と無知の中に生きつづけることはもうできな 殺され、すべての石、すべての煉瓦が粉々にされたのかった。 である。 歩いたり、百姓の荷馬車にのったり、古いトラック ユダヤ人街は要塞に変えられた。そして要塞は死のの側面の横木につかまったりして、私はヴロヒーから 谷となった。 ヴィエリーチカへの旅をつづけた。その最後の行程は 体の震えの止まらぬ私は背を向けて、歩みを返した。汽車に乗った。 見渡すかぎり墓地にすぎなくなっている、のの中に、 よく知っている駅を出た私は、下町を横切り、自分 なにを見つけることができるだろうか。 の家の近くにある市場の広場へと、坂をの・ほった。そ 私は、ヴロヒ 1 にある。ヒルサの家にたどりついた。 の途中、私は、自分の少女時代をみたしていた人やも のをいろいろと思い出した。この左手には、ラウリフ しかしそこで、ビルサの一家が全部引っ越しているの を知った。どこへ行ったか知っているものは一人もい トのお主婦さんの小さなお店があった。何度そのお主 なかった。そしてカジャは、スタシェックはどこへ行婦さんは私がなにかの玩具を選び終わるまで辛抱づよ ったのだろうか、二人はいまなお生きていて、どこかく待っていてくれたことだろう。街の向う側には、そ にかくまわれているのだろうか の行くところ、いつも一隊の孫たちを従えていた年老 かみ

7. 現代世界ノンフィクション全集13

ある。イタリアの数百年来の古い居酒屋がそれで、厚片隅ーーそこには酒樽といっしょに写真家がいた。 い自然石の壁でできあがっている。 その夜のうちに、三十六師団の歩兵大隊長ウォーカ ー中佐が、本部を率いてはいってきた。 このカープを越えれば、道はナポリ平原へゆるやか につづいているのだが、そこまで出て景色をながめる「軍医、済まないが入れてくれたまえ、ドイツ軍が迫 ことなどは、何日間も不可能だった。シャスター堡は撃砲二個中隊を増強して撃ちはじめ、そいつがわしの 最前線の拠点となっており、ここの軍医の名を取って本部をびったり標定しやがったんだ」 名づけられた。部屋の中央には応急手術用の大きな卓連中は負傷者のまっただなかに電話を設置し、部屋 があり、私がはいったとき、衛生兵が負傷兵をマイオはものすごく混んできたので、私は寝具をばかでかい リの教会へ後送する準備をしていた。 二つの樽のあいだへ引き込んだ。 スペイン以来、血と戦いの写真を撮りつづけて来た 少したっと、迫撃砲弾が堡塁の関門のあたりに命中 私たが、七年たった今でも、負傷や流血の現場を見るして、破片が窓をふさいでいたマットを貫いた。私に と、ひどく胸がむかついてくる。私はいちばん遠い隅 は百五十ガロンのぶどう酒という特別な掩護物があっ の、二つの大きなぶどう酒桶のそばへ荷物を下ろした。 たから、なんとか落ち着いていられた。 ドイツ軍は峠と尾根を間断なく砲撃していた。砲弾 砲撃は一晩じゅう続いた。独軍は山腹の友軍陣地を は周囲いたるところに落下したが、堡は低く切れこん的確に標定し、各中隊からは着弾のたびに死傷報告が だカープに囲われて、命中しにくい場所にあった。 はいってくる。ウォーカー中佐は、自分の観測班は新 タコッ玉 けれども山腹の " 狐穴 ~ 陣地にいる兵は、だんだんしい敵の迫撃砲陣地を発見できない、刻々に戦力を失 痛めつけられて、真夜中までに堡はいつばいになった。 いつつある大隊がいつまでもちこたえられるたろうか、 戸口の近くは戦死者、真中には負傷兵、そして離れた懸念される状態だ、と司令部へ報告した とりで えん当

8. 現代世界ノンフィクション全集13

い態度で、言葉をつづけた。 街のユダヤ委員会に行ったの : : : 」 4 「ああ」とフラニヤが言葉をはさんだ、「レンカ、あ「わたしにはわからないのよ、レナ。ポーランドのあ なたはまたたくさんのやっかいな問題をひつばりこむらゆる社会事業団は、政府から同じ支持を受けている はずなのよ : : : 」 のね」 「フラニヤ、たのなわ」と私は叫んだ。「わたしもう 「私、この眼でそこで行なわれていることを見たの、 フラニヤ。スープのための行列、飢餓、涙、怒声、あ一度ユダヤ人の子供が対象なのだとあなたに言いたい の。あなたは自分の国の新聞をよんでいないの。そこ らゆるユダヤ的な破局の姿よ」 「わかるわ。しかしわたしにどうしろというの。今日に最近書かれていたことを読まなかったの。ドイツ人 によって二百万のユダヤ人の子供が殺されているのよ。 ではすべてが難しいことがみんなにわかっているのよ。 政府もできるだけのことをしているわ。ユダヤ人も我まだ生きている数千の子供たちが、司祭や尼さんや百 姓の家の納屋や地下室にかくれているのを知らなかっ 慢しなければならないのよ」 「フラ = ヤ」と自分を抑えることができなくて思わずたの。ポーランド人の子供たちにおこったことと、ユ 私は大声をあげた。「フラニヤ、よく聞いてね、政府ダヤ人の子供たちになされたこととは到底比べものに のことなんて言わないで。私は、昨日一日中、委員会はならないのよ。肉体的にも精神的にも病気で駄目に ですごしたわ。そして今はただユダヤの子供たちが飢なった子供たちなのよ。くりかえして言っておくけど、 えのために死んで行くことをあなたに言いたいの。今その子供たちが飢えのために死んでいっているの。食 すぐになにかをしなければ、きっと悲劇が起こるわ」糧、衣服、医薬品、その他ありとあらゆる形式の援助 私の声の怒りのこもったはげしい口調がフラニヤのを、これから長く、ひじように長く必要とするのよ。 心を動かした。フラニヤが前よりはいくらか冷たくなもし助けが来なかったならば、フラニヤ、蝿のように

9. 現代世界ノンフィクション全集13

身につけることを許されていたスリッパと外套にもす : : : 」 つばき 「黙れ、ユダヤ人奴ーと警部はまるで唾でもひっかけ かかわらず、私は寒かった。体がぶるぶるとふるえ、 るかのようにはげしい口調でいった。 突然おそってきた恐怖心を抑えつけるために努めた。 「お前はユダヤ人だ。お前の父はユダヤ人だった。そ 歯をかたくかみしめ、両膝をしつかりとこすり合わせ してお前の祖父もユダヤ人だった」 ていた。 「おまえの名前と年を」と警部が軽蔑するような視線私は突然大きな沈黙が室の上に襲いかかってきたと を投げかけながら訊ねた。その声は冷たく、ほとんど感じた。警部の両眼が私の体を貫いた。警部はロをす 嘲弄するような口調だった。私は心の中に怒りがまきぼめ、ペン軸を握っていた片手はけいれんした。一瞬、 おこるのを感じたが、落ち着きが戻ってきた。それと私は万事体すと思ったが、どうやら平然としているこ とができた。 共に正気と生きる意志が湧いてきた。 「あなたはとんでもない思い違いをしています」と私 「レオンテナ・レリッチ」と怒りをふくめたいと思っ てしつかりとした口調で答えた。「年は三十歳、私は は言った。それからまるで他人のことを話しているか のように、落ち着いた口調で、はっきりと断言した。 なぜこんなところに真夜中に連れて米られたのかその 「自分はカトリック教徒です。父はポ 1 ランド軍の士 理由が知りたいと思います : : : 」 官で、第一次大戦に戦死しました。私は免状を持って 「生れはどこだ」 いる小学校教師です。しかし現在は私の学校が閉鎖さ 「・フチャチです。しかし私はなぜこんなところに連れ れなければならなかったので、あるドイツ人の会社で てこられたのか : : : 」 働いています。私の労働許可証も他のあらゆる書類も 「宗教は」 「カトリックです。しかしやつばり私は知りたいので全部規定にかなっているものです」

10. 現代世界ノンフィクション全集13

私の意図は興奮することではなかったが、言葉が自に来て、助力したいと言ったポーランド人が何人いま 分の欲する以上に元気よく飛び出してきた。言わずにすか。この町で私たちはポーランド人の友をひとり はいられなかったのである。世間の人びとは、もう同だけでも持っていますか。ポーランド人は、ドイツ人 れんびん と同じゃり方で私たちを愛しているのです。それだか 情も、憐憫も、愛情も忘れているのではないだろうか。 善良なる神よ、どうしてその人びとはこの愛すべき子ら、周囲の空気がもっときれいになるまで、この町で 供たちをおしのけることができるだろうか。どうして待機していたほうがいいのです」 私はきつばりと首を振った。 人間がそんなにまで卑劣になれるだろうか。憎むべく、 さらに意地悪になれるだろうか。しかし、どんなこと「駄目ですよ」と私が答えた。「あなたにはわかって があっても、私たちはやりとげなければならないのだ。 いないことが一つあります。それは、この家では子供 私はそのことを知ってい、こ。 たちがひどい病気になってしまうということです。ザ コパーネへ行くことは子供たちの病気を直せる唯一の 委員会に最後の決定を委ねたシュムニーは、子供た ちのグルー。フは完全に外部から孤立し、山々を吹き荒方法です。もしこのまま時期を待ったりしたら、きっ れる「はげしい政治的な風」に従わなければならない と若干の子供たちを失うでしようーーそれはできない という事実を、私に向かって言いはった。 ことですー 「レナさん、もし困難なことが起こったら、あなたは シュムニーは両肩をそびやかした。委員会は、私の 無防備となるでしよう。あなたを助ける人は誰もいま意見を是として、ザコパ 1 ネ行に賛成をきめた。 せん。あなたは百人の子供についての全責任を持たな私たちは旅行のため大きなトラックを借りた。運転 ければなりません。よく聞いてください。ポーランド手はユダヤ人ではなかったが、車に覆いをかけるとい の戦争は約数カ月前に終わったのです。あなたに会い う条件をつけてはじめてハンドルを握ることを承知し