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検索対象: 現代世界ノンフィクション全集20
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1. 現代世界ノンフィクション全集20

航海士がはじめにそれを見つけた。それはわたしたい綱を投げてしつかりくくりつけてもらった。 わたしたちはその救命ポートをもとへもどすため、 2 ちの前方四、五百メートルほどのところにある転覆し た救命ポートで、幸いなことに、わたしたちの風下に知っているかぎりのことをやってみた。みんなして片 あった。航海士は苦心のすえにスカルをはずした。言側にしがみつく。効果はない。中でももっとも屈強な 葉の必要もなく、彼が何を考えているのか、すぐにわ連中が、龍骨のてつべんへよじの・ほり、左右にゆさぶ たしにはわかった。重い、水がいつばいにはいったポりを起こそうとした。ポートは振り子のようにある間 冫。し力なかった。 までは揺れ動いたが、それ以上こよ、 ートは、どちらのいかだ舟よりもすっと、ずっとゆっ 「中に詰まってる空気のせいで動かんのだ」とだれか くりと流されていくにちがいない。ずっと下り坂をい くようなもので、そこへ達するには、手引きに二、三がいって、わたしたちが止めるまえに、その男は底穴 のせんをたたき落としてしまった。空気は水で無理に 度漕ぎさえすればよい。あとは時間と流れの問題だっ 押し出され、穴からしゅうっと出てきて、ポートが急 も 0 と近づくと、数人がポートにしがみついてるの速に落ちついたのが感じられた。その男の考えは的を が見え、わたしたちは大喜びした。これでわたしたち射ていたわけだが、気のた 0 た阿呆は、ポートが鋼鉄 のほかにも生存者がいたわけだ。親しい交わりを思い、製で、木造でないことを忘れていた。 ポートをひっくり返そうと努力をつづけているうち ただ仲間たちを見ただけで元気が出てきて、少しはカ がもどってきた。わたしたちは力を合わせて楽々と漕に、わたしは突然、このポートはラルワース・ヒル号 が魚雷で撃沈されるまえに、あらゆる海の規律に反し ぎ、三十分もすると、いかだはポートのまわりに張っ てある救命綱に結びつけられた。わたしたちは歓呼のて、わたしたちがさび止め作業をしていたものだとい 声で迎えられ、まもなくコリンも近づいてきて、もやうことを思い出した。。ホートの二つの浮カタンクはな こ 0

2. 現代世界ノンフィクション全集20

も、そしてわけも知らずに、わたしはそのほうへ向かのほうへ進んでいった。わたしはかなり近くにいたの 6 って泳ぎはじめた。 で、連中が灰色のペンキを塗った救命ポ 1 トの龍骨に 光りが転覆した一そうの救命ポートに当てられたとしがみついているのが見えた。彼らは拳を振って近づ 近くは泳いで いてくるドイツ兵たちにさけんでいた。わたしははじ ・き、わたしはたぶん、すでに百メ 1 トル いたろう。少くとも助かる見込みのありそうな連中とめ、艦長は気が変って彼らを助けてふたたび艦を水平 いっしょになるという希望に新しいエネルギーを見出に立て直そうとするのかと思ったが、そうではなく : して、わたしは努力を倍加した。 ・ : 速力を増しながら、醜悪な鋼鉄の葉巻形の物体は、 ポ 1 トの指揮官は、わたしたちの船の船長をさがポートにまともにぶつかり、救命ポートも生存者もも していたのだろう。英国船の船長をドイツへ連れて帰ろともに、公平に敵意をこめて粉砕破壊した。 ることができたら、潜水艦の艦長の帽子には何かの羽灯りが消えたので、わたしには何も見えなかった。 根飾りがつくのだと思う。ともかく、転覆した救命ポ重傷者たちのおびえた悲鳴と金切り声だけが、その残 ートの位置を正確にとらえてから、光りはそこをはな忍きわまる攻撃がいかに恐ろしく効果的なものであっ れてまわりの海を順序正しく照らしはじめた。 たかを物語っていた。 救命ポートがいると考えた場所のほうへ、わたしは わたしは意気地のない激怒と盲目的な憤怒に燃えて、 苦しげにもがいていった。そこまでにあと百三十メー まわりの水を打った。船乗り稼業はしていても、わた トル足らずのところへ着いたとき、わたしの目は、見しはふつう罵詈雑言をしないたちだったが、仲間を助 たものの恐ろしさのため、顔から飛び出さんばかりだけることにもその復讐をすることにもあまりに無力た った。ディーゼル・エンジンをもう一度始動させ、探ったので、血のように真赤な怒りが、すっかりわたし 照灯を転覆したポ 1 トに向けたまま、潜水艦はポート を支配してしまった。

3. 現代世界ノンフィクション全集20

しまさらきみたちにいうまでも 前檣に注意を向けた。このほうは短かく、がんじようそれが重要なことは、、 で、安定もよかった。その根もとに、防水帆布のガスなかろう。ウィークスを連れていけ。三人いれば互い ケットにきちんとしまってある、赤い三角の帆を発見に交替できるし、あの農夫はきみをまっすぐ進ませて した。無断で揚げたくなかったので、先を一本の揚げくれるだろう。何か質問は ? 」 綱に結びつけるだけで満足し、そのままにしておいた。 「どうしてわたしらを拾い上げるんです ? 」 残りの付属品調べはたやすかった。役に立ちそうな帆「それは造作ないだろう。こっちはきみたちの軽いや 布のシートが二枚。帆布幕の上部を結びつける穴がっ つみたいに早く押し流されはしない。オールを使って いている。結びつけるとそれはひくい水夫用便所とな いかだ舟を進ませるようにする。われわれはまた、き る。それに余分の綱と綱通し針が一、二本ーーわたしみたちのほうへかじを取るため、できるだけのことを はほかには何も覚えていない。ただ水や食糧がはいつやる。やる元気があるかね ? 」 ていればいいと思ったブリキ罐が二つ三つあるだけだ わたしたち三人は、疑わしげに顔を見合わせた。ほ っこ 0 かの連中から別かれてしまう危険をおかすことが気に いかだ舟はいたんでいないし、きちんとしていてす入った者は一人もなかったし、わたし個人としては、 ばらしいと報告すると、わたしたちはすぐさま、もうすでにたっぷりすぎるくらい、ポート漕ぎはやった感 一つのいかだ舟に乗ってほかの連中と部署を交換しろじだった。とはいえ、一方では、余分な食物があれば、 日といわれた。司厨長が風下のやや左舷寄りにもう一隻それが生死の別かれ目になるかもしれない。 十 のいかだ舟を見つけたのだ。一等航海士がいった。 五 ウィークスは、たくましくて人に好かれるやつで、 流「あのいかだ舟までいけると思うか ? だれも乗ってひじように陽気な性質と悪ふざけが好きだ 0 たが、ロ はいないと思うが、食糧がいくらかあるかもしれん。 をこすっていった。「あのいかだ舟には人が乗ってな

4. 現代世界ノンフィクション全集20

るものをさがし求めて泳ぎまわりはじめた。わたしたおれもやっとうまくやったのさ。船尾を越えていって、 ちは体がむき出しにな 0 ている感じがした。足がことぜったい上へはいけないと思 0 た」わたしは急に言葉 さらに露出しているように思われたー・ーあまりにひどを切ってもどかしげに咬みつくようこ 冫いった。「救命 く露出しているように思われたので、まるで皮膚が二ポートにいる連中は、どうして灯りを見せないんだ 皮もむけてしま 0 たかのように、水にたいして敏感にろ ? 水中には生き残りがいることを知 0 てるにちが なった。およそサメが好きだという船乗りはひとりも いないのに」 ない。わたしたちはちょうどそのとき、普通の人間の「気にするなよ、仲間。救命ポートなんかありやしね 感情を超えた呪わしさでサメをきらった。 えよ。一分半くらいで船は沈んじまったのよ。ポート 「おれは ( ル 0 ていうんだ」とわたしたちが水の中でなんか出すひまはなか 0 た。下にいたものはだれだ 0 もがいていたときに、彼はわたしにいった。「おまえて甲板へ出るひまもなかったんだ。なか 0 たとも、な は何ていうんだ ? 」 あ。生き残りはたんとはないと思うね。おまえとおれ わたしは自分の名前をいって、大工だとつけ加えた。 とは、運のいい何人かのうちの二人だ。こいつをよく 「おれは船の砲手だ」とさらに二、三度水を掻いたの理解しとけよ」 ちに、彼はつけ加えた。「少くとも、砲手だった。お わたしは黙ってこの情報に耐えた。しばらくしてか まけに、もう少しで船といっしょに沈むところだったら、わたしは自分の右肩の上を指さした。「おい、と ぜ。おれは後部の砲座にいたんだ。船が沈むときにやもかく、もう三人いるそ。連中のあとを追おうじゃな っとうまくやってな。水へ跳びこむのに半分も距離が いか」 なかったような感じだった」 わたしたちは、ほど遠くないところにちらちらする わたしは腹の底から彼に同意した。「わかってるよ。 三つの赤い光りのほうへ泳ぎはじめた。突然、わたし

5. 現代世界ノンフィクション全集20

くなっていた。それを知っているのは、わたし自身命若者が合唱した。やがてひとりの船舶防備員 ( 商船づ 令されてそれを取り出し、ラルワース号の甲板へ置いきの陸軍砲兵隊員 ) が突然、すでに青い顔色をいっそ う青くさせた。 たからである。なるほど、そうでなかったら、ラルワ 1 ス号が沈没するときにポ 1 トはこわれていたかもし「たしかに、あの坊やはポートを沈めても、そんなに れない、とわたしは考えたが、そのときまた、糧食もまずいことをしたわけじゃないさ。どんな連中がうろ いくらか出してそれを甲板の浮カタンクのそばへ置いついてるか見てみろ」 どうもう 水中のあまり遠くないところを、五尾の獰猛そうな たことも思い出した。ほかの連中にはこのことについ ては何もいわなかったが、きっと何人かはやはり思い腹の白いサメが泳いでいた。あまり大きくはなかった 出していたことだろう。 長さは一メートル二十ぐらいとでもいっておこう。 貴重な水と糧食とを取り出しながら、うら悲しい思しかしその一メートル二十はひどく大きな、歯をいっ はらわた ばいつけたロに加えて、腸と筋肉ばかりだった。 いで、わたしたちは浸水したポートの中でよろめき、 その日は夜まで、だれひとり手で水にさわる者はな 沈んでいくのを見守った。興奮のあまり、あやまって ポートを海の底へ沈めたあの若者にたいして、だれひかった。 航海士はポケットから鉛筆を見つけ出し、木部が二 とり非難の言葉を浴びせる者はなかった。その代りに、 つにはがれないようにと、麻糸をぐるぐる巻きつけ、 われわれは黙って互いに手を貸し合ってコリンの重い だれか紙をもっていないかとたずねた。 日ほうのいかだ舟に移った。 十 びしょぬれになり波にたたかれて、わたしたちは休手紙の残りなどもっている者はたくさんいたが、そ 流息していたが、一等航海士は状況を思案していた。 のときは紙は水に漬かってどろどろになっていた。あ 2 ひょうきん者がみだらな歌をうたいだすと、一、 二のれこれさがしたのち、若い見習い、みんながチビの

6. 現代世界ノンフィクション全集20

「われわれは彼を捕虜にする。あれが彼の見納めだ」結びついて、まもなくわたしたちがいる甲板の部分を 「どういうつもりなんです ? おれとあのほかの連中海水でおおった。 はどうなるんです ? 」わたしは、ポートの甲板とい わたしは堅い鋼鉄に爪を立てようとむなしく試みて う避難所へ首尾よくたどり着いていた、ほかの数名の爪を傷つけながら、必死にしがみついていようとっと 生存者を指さした。 めた。仲間たちはひとりひとり、押し流され、つかん 彼は悪党らしく笑って空のほうをさし示した。「おでいた手をはなした。ひとりは波をわきかえらすプロ まえらは非戦闘員だ」と彼はいった。「おまえらの飛。ヘラでずたずたに引き裂かれて金切り声をあげた。そ 行機は、われわれの都市を粉砕しているし、われわれのとき、大波がわたしをポートの外へ運び、幸運に の非戦闘員はーーその中には女子供もいるんだーー・何もわたしを右舷へ、。フロペラの刃のないところへほう 千人と死んでいる。おまえらも死んでいけない理由はり投げた。 ない」 しばらくのあいだ、わたしは船の航跡に投げられた そういい放っと、彼はわたしのそばをはなれ、母国空きびんのようにころがりまわった。やがて渦巻も次 語で何か命令をさけぶと安全な上部の塔へと急いだ。第におさまり、わたしはふたたび息をつき、自分の置 むなしい怒りでほとんど泣きながら、わたしはディ かれた立場を考えてみることができた。 れん 、ロ 1 ゼル・エンジンが動きはじめる音を耳にし、ポ 1 わたしは潜水艦が約二鏈 ( 一鏈は十分の一海浬 ) トが動き出すのを感じた。ポートが速力を増したと乗り用語で四分の一マイル以下くらい へ移動した 十 き、わたしはほかの生存者とともに船の後部にいた。 ことを知った。潜水艦の探照灯がふたたびつけられ、 五 流船首が少し持ちあがって、わたしたちがしがみついて水の中をおもむろにこちらへやってきて、きらきら光 2 いた甲板は下がった。それはポ 1 トが立てた寄せ波とる白い占いの鉛筆のように前後に動いていた。愚かに

7. 現代世界ノンフィクション全集20

ぶん、恐怖と混乱と緊張の結果である命令ーーーを下しの中で自分の部署に突進したりはなれたりしていた。 た。というのは、あの潜水艦を海中からふっとばすだ晴れ着に着替えるものもあれば、もっとごわごわして げの爆雷が、こちらの船尾にはささえてあり、 いるがもっと暖かい衣類に着替えるものもある。全部 も発射できる態勢にあったからだ。もしもあの命令がとはいわないにしても、自分の部署の救命ポートへ急 変っていたら、船は潜水艦が潜航した場所へ着いてこ いで駆けつけ、万一すず製の魚を一発くらうとか船か ちらから爆雷を投下し、撃沈するか損傷をあたえるこ ら出るとかした場合に起こる混乱の中では、たやすく とができたであろう。 見つからぬ品々を置いているものもある。わたしは家 いま振り返ってみると、わたしはそれが唯一の機会へ持って帰るために買った贈物をスーツケースに詰め だったろうと認める。ところが逃けろという命令なのるため、ケビンへ急いだことを覚えている。見さかい で、船は逃げ出した。十三ノットを持続しそれを超過なしにわたしは、目についただけのマッチとタバコの し、とうとう嬢ちゃんは、一時間に十三海浬と十四海箱をつかんだ。わたし自身のものもあったし、甲板長 浬のあいだで骨をがたがたいわせはじめた。それも N のものもあったが、そんなことはおかまいなしだった。 字形でだった。わたしたちの船は線のなだらかな駆逐わたしたちは同じポートを割り当てられているのだか 艦ではなくて、運搬用に建造したどっしりした船だっ ら、あとで分けられる。いずれにせよ、彼が非番にな た。船首は > 字形をして二つの波を外側へひろがらせ、ったら、自分のものとわたしのものをまったく公平に 日うしろでは、船尾の波はヤナギ形にふくれた。 N 字形鞄に詰めこむことができる。そのときは彼は非番にな 五がおわって向きを変えるときには、甲板に足をつけてっていて、わたしは当直につくのを待っているのだか 流いるのもむずかしいほどに傾く。 ら、彼のほうがわたしよりはひまはあるだろう。 ジャンジャン。ジャンジャン。ジャンジャン。ジャ 乗組員たちはなおも、 いかにも水夫らしからぬ混乱

8. 現代世界ノンフィクション全集20

いうことはそれだ。早けりや早いほどいし 何だ動を開始した。わたしが自分の部署についたとき、一 と ! 」 隻のポ】トがこちらの右舷正横から百八十メートル 「右舷正横に魚雷」 とはなれていないところに浮上したことを知った。射 程距離があまりに近いため、砲手はうまく命中させる 当直の船舶砲手のひとりから、恐れていたさけび声ことができず、第一弾は展望塔の上をまるまる三メー が聞こえた。たちまち、ほとんど船全体をおそったのトルも素通りして、その先の海面に落ちると水しぶき はーーー魚雷ではなくて恐慌だった。わたしは前方九メを立てた。 ートルとはなれていないところを、魚雷が被害もあた第二弾はもっとましだったが、破裂しそこねた。し えずに進んでいくのを見た。それにまた、仲間たちが かしながら、それはことのほかきわどい射ちそこねで、 盲目のように、気が狂ったように甲板を走りまわるのもしもだれかがあの恐るべき深海へもぐってあの弾を も見た。大声を出し、ののしり、金切り声をあげ、さ取りもどすことができたとしたら、弾にはポートの けびながら、彼らは互いにぶつかり合ってはね飛ばさ。ヘンキのあとが見られるだろうとわたしは断言する。 れ、愚かにもよろめいてほかのだれかとぶつかった。 ドイツ人は、こちらの砲手たちが命中させようとそ 友人たちが恐怖のあまり互いにしかり合っているのさの腕前を試しているあいだその辺をうろうろしている え見た。船乗りにとって、魚雷は恐ろしいものではあようなやつではなかった。さらにもう一弾を発射する るが、船での恐慌はいっそうひどい。恐慌は、わたしまえに、ポートは急速潜航を行なって濃霧のような がいままでに見たもっとも醜悪な、もっとも残忍な光白い水泡の中に姿を消した。 景であった。 船長はそのとき、もっと速力を出せという命令 船の砲門のひとつの係りたちが、気を取り直して行今日にいたるまでわたしは過ちと考えている命令、た 2

9. 現代世界ノンフィクション全集20

くさんのアラビア人がしつかりした平氏の漕ぎ舟に乗網の壁はまるで蜘蘇の巣のようなものであるから、こ って集合し、コルボのまわりの空いている所に散開しんな所に人れられる前にこの網ぐらいちぎれただろう に、彼らはそれに挑戦しなかったのである。水面では た。するとライはその真中の所に漕いでいって、いよ いよ儀式をはじめることを命令した。漁夫たちは野蛮アラビア人たちがコルボの壁を縮めていたので、だん な怒号を発しながら、マタンザのときの慣習になってだん網底の揚ってくるのが見えてきた。 このようなコルボの中に閉じ込められた生き物の観 いる古いシシリーの歌をくりかえして歌った。このリ ズムに合わせてポートに乗った人たちは網の壁を強く点に立って考えてみると、生命というものについて、 いままでにないある新しい見とおしといったものが生 ひつばっこ。 れるのだった。すなわち、他の動物のために罠にかけ マルセル・イシャックはコルボの上の方でポートか ーマと私はネットの中に潜られて、その悲劇的な生涯を終らねばならないとき、 らこの光景を撮影し、デュ いったいどういう気がするものかと、私たちは考えた。 水して下の方からそれを記録した。 透明な水の中に沈んだのに私たちはコルボの壁を見この這いまわるような、しめつけられるような牢屋の ることができなかった。そこで魚もやはり見えなかつ中に入っている者の中で出口を知っているのはデ、ー マと私だけだったのだ。しかも、その私たちは確実に たのだろうと想像した。私たちは無意識のあいだにこ ここから逃げ出せる運命を持っていたのだ。私たちは の破減の運命に遇った魚の魂にとりつかれているよう 界だった。冷たい緑の海中にはただときどきしか魚の群たぶんセンチメンタルに過ぎたのかもしれないが、そ 世 をみなかった。一匹で一八〇キロ以上もありそうな高の知識を恥ずかしく思った。私はベルトにつけてある の 黙貴な魚がその習慣に従って、時計と反対まわりにぐるナイフを抜いて、この一群のために自由の方向に突破 ぐるまわって泳いでいた。彼らの力と比較すればこのする穴を明けてやろうという衝動を感じた。

10. 現代世界ノンフィクション全集20

最初の包みにはまったくがっかりさせられた。それら、どちらも救助されるまで生きてはいられなかった は水に落ちたときに砕けて、ひどく吐き気をもよおすことが、さつばりわたしたちにはわからなかった。 ような嗅気を発し、数時間のちまでもいかだ舟のまわ それにしても、わたしたちはその日配給は全然食べ りに垂れこめていた。あとでわか 0 たのだが、この包なか 0 たし、水も全然飲まなかった。二つ半の = ポシ みには、アンテナをつける気球をふくらますガスの円貝では、文字どおり餓死しかけている人には十分とは 筒がはいっていたのだ。 いえない。それでわたしたちのやるせなさは理解でき ぬものではなかった。 緊張して、しかし落ちついて、わたしたちはもう一 つの包装を調べて開けた。とうとう一つ一つの包みを しかしわたしたちはいまや、はたらきの緩慢な頭と 、こっこ 0 ほどいて、中味をいつもある舟底にたまる汚水の届か いっそう緩慢な手のための仕事を持っこ ぬところへおいたとき、わたしたちが手にしたものは、しゃべることは苦しく、ほとんどやるに価しない骨折 ふくらますガスのない気球、たこ、べリー式信号光一一一りだったが、救助される見込みについてときどき快活 十個つきのロケット発射器、ゴム製小ポートなどだっ な、希望にみちたおしゃべりをせずにはいられなかっ こ 0 ゴム製小ポート わたしたちにとって何の役に立 わたしたちが発作的にしゃべったように、同じくら つのだろう ? 無知のあまりわたしたちは、その見たい発作的に無電装置を動かしにかかった。指図書によ ところ役に立ちそうもない包装へわたしたちを導いたると、それは自動式遭難信号送信機であ 0 た。 ( ント 運命にぐちを、 しい、こんな役にも立たぬものを投下しルをまわすと電流が発生して、お馴染みの たことで当局者をのろった。わたしたちは何と早まっ 、ノドルをまわ ていたことだろう ! そのすばらしい小舟がなかったすのをあきらめるかするまで、際限もなくつづいて自 - 」 0 ・は技手が疲れるかノ、 424