思う - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集22
436件見つかりました。

1. 現代世界ノンフィクション全集22

かく・ヘランカを売ってくれるのですか、売らないのでに製作された唯一の飛行機ですよ。」 「すみませんが、すぐ売ってくださらないのでしたら、 すか。もしお売りになるんでしたら、さっそく決めま すが、もしお売りにならないのなら、別の飛行機をさ私としては一刻も早く別の飛行機をさがしたほうがい がします。」 私はドアのほうに歩き出した。 「ええ、ええ、そりゃあお売りしますよ」と彼はいう。 「待ってください。明日お電話ください。」 「しかしですね、べランカ機をどう飛ばすかというこ ・、、ほかのだれよりも「あなたがたの条件を再考していただけないのならば、 とについては、われわれのほうカ よく知っていますからね。あなたがたは、われわれにお待ちしてもむだです。」 レヴァイン氏はややためらっていたが、「とにかく リへの飛行をお任せになったほうが賢明だと思いま 十一時に。」 明日お電話ください す。よくお考えになってください。」 「私どもは、できることならどんな協力も惜しみませ 翌日の午前十一時、私は彼のオフィスに電話をかけ んがーーしかし、飛行機をすぐ売ってくださらないの でしたら、買わないだけのことです。この金額でご承た。レヴァイン氏はすぐ電話に出た。 「おはよう。 いかがです。お気持ちが変りましたか」 諾くださるか、もしご無理なら私は別の飛行機をさが 灯 の さなければならないでしよう」といって、私は小切手と彼はいった。 をデスクから取り上げた。レヴァイン氏の目がそれを 返事をするのも癪で、私はガチャリと受話器をかけ て、そのままマデイソン通りに出た。大股に歩いてゆ あ追う。 くうち、冷たい二月の風で、私の心はしだいに冷静に 9 よ「あなたはまちがっていますよ」と彼はいう。「べラ 3 ライト、トラベル航空、コ なってきた。フォッカ】 ハリ間の飛行ができるよう ンカ機は、ニューヨーク 0 、 しやく

2. 現代世界ノンフィクション全集22

まてんろう レーンは燃料積込みと最終点検の責任を受け持とう 今までの天気予報もあったし、また摩天楼の頂上も もや 靄にかくれて見えないありさまなので、最終的な決断という。ポエデッカー、マリガン、そのほかの友人も を求めるのは、むだかもしれないとは思ったが、とも手伝ってくれるという。カール・スコーリイに自記高 かく車を街路のふち石のところに止めて、・フライスに度計を装着してもらわねばならぬ。彼は全国飛行協会 電話をさがしに行かせたが、彼が帰ってきたとき、わを代表する人だ。朝までに彼をさがし出さねばならぬ。 れわれはその顔を見ただけで、何かニュ 1 スのあった自記高度計というのは、回転円筒に時間と高度を自動 的に記録する装置であって、それがなければ私の飛行 ことがすぐわかった。 「大西洋の上空は晴れてきている。急に天気が変った記録は公式に認められないのである。 飛行場に着いてみると、驚いたことには、く んだ。」 ーリンのキャンプには、準備らしい気配が少 雨にもおかまいなしで、彼は身をかがめて自動車のチャイハ 窓から話しこむ。ニューファウンドランド一帯の低気しも見えていない。みんな天候好転の確報を待ってい 圧は退きはじめ、大きな高気圧がその背後に突き進んるらしい。しかし飛行士は、天気予報の悪いときでも できているというのだ。「もちろん、君の全航程にわしばしば目的地に到達しているーーー・私はセント・ルイ いたって状況がよいというのではない。まあ、それにはスⅡシカゴ郵便飛行で、これを経験している。 ヨーロツ。ハ全航程にわたる完全無欠な好天候の確報 リもう一、二日かかるということだ。」 なんか待っていられるもんか。今こそチャンスだ。よ しかし、私は明け方には離陸できるかもしれない。 あ芝居のことなど、ふっ飛んでしまった。直ちに飛行場し、明け方に飛び出そう ! ょに向かう。クイ 1 ンズボロ広場で停車して、急いでタ方針をきめると、私はカーティス飛行場に友人たち 食をとる。 を残したまま、睡眠をとるために近くのホテルにいっ 9 0

3. 現代世界ノンフィクション全集22

注意を怠っている状態で、こんなに長い時間飛行する ずいぶんエンジンに無理をさせている。ホアー 午前の数時間は、むなしく、暖かく、安全に過ぎて エンジンのロッカー・アームはまだ油が ゆく , ー・・、さながら行く手の無限の大空のように。陽光ルウインド・ は操縦室の中で揺れている。機首は北に向きを変えてきれていないだろうか ? もし油がきれて一つが「凍 いる。私は右の方向舵を押す。私は空想にふけってい結」したとしても、どのくらいもつものだろうか ? た。もっと気をつけなければならない。いいか、二度再び太陽の光が動く。羅針儀が一方に傾く。なんと しても機が左に振れるのを止めることができない。私 と操縦を誤ってはならない。 にはどうしてもアイルランドの北方だと思われてなら 日光は大いに助けになる。その動きは、羅針儀の針 。このため、理詰めで立てた私の飛行計画がくっ や方向指示器よりもすみやかに私の注意を引く。私は 心をゆすぶって用心怠りない気持ちになり、それからがえりそうだ。雑念を払い精神を統一して、羅針儀の 針を中央にとどめることに決心する。いまこそ、それ ハンカチーフを取り出そうとして飛行服のポケットに をしつかりとやれるように、目をさますべきだ。 手を入れた。すると指のさきに何か小さな固いものが 触れる。ナイフや鉛筆とまじって今まで気がっかなか しばらくはうまくいく、それから、操縦室の中のこ ったが、それは小さな鎖のついたものだ。引 つばり出まかいものを見つめている自分に気がつくーーー・カ。ハ カカと して掌の上にのせて見る。セント・クリストファー 織布の縫目や、床板のニスの上を踵でこすった跡など。 メダルだ。だれがくれたのだろう ? お礼を求めない まもなく、機首はまた北のほうへにじり寄る。私が 人がソッとポケットの中にすべらせてくれたのだ。 自分自身の飛行機のパイロットとして、はじめて単独 飛行をしたあのときと同じようだ。機首を針路からそ 午前九時五十二分、離陸してから二十六時間たつ。 らして方向を変える。 ノ 42

4. 現代世界ノンフィクション全集22

ると思うとそれを注視することはできなかった。 私の頭は知りぬいている機の枢要部を検討してみた。 みんながまだ気取った恰好で体をねじっているとこ もしかすると機全体に少々がたがきているのではない ろへグライムズが入ってきて私の袖をひつばった。 だろうか。ありうることだ。前にもあったのだ。しか 「また揺れました。ちょうど飲物を運・ほうとしてましし震動に周期がある以上こういう欠陥は考えられなか っこ 0 「わかってる。わかってる。第三エンジンが少し不調 スノウが私の命令にしたがって動力を前どおりにも なんだ。」 どすとまたすっかり静かになった。これならばどうや 計器盤には第三エンジンが他のエンジンとちがってら純粋に機械的な問題らしい。。フロペラの一つが十分 不調であるしるしはまだ何も出ていないのだから、こ の一グラム 、バランスが狂っているのではないか、そ れはまだまだ確実な事実ではなかった。 の結果あるすれすれの動力にセットすると震動をおこ 「やむでしようか。」 す組合わせになるのではないかと私は考えてみた。私 「だめだ。」 はこのまま放っておくようスノウに命じた。これから はっきり返事をしたかった私は断言した。 は動力削減は忘れることにしよう。途中の風向はいし かすかな震動が周期的に機体をつたわった。今までし沿岸の天候もいいから、燃料を節約する必要はなか にこれと完全に同じ経験をしたことはなかった。つま った。だからたっぷりあるんだ、と私は思った。この らないことだった。しかしわれわれがいかに想像力を動力にセットしているかぎり第三エンジンが好調だと 働かせてもこれと同じいたずらをする魔神をつくりだするなら、どうしてわざわざ面倒を起すのだ ? 早く 命すことができない以上やはり重大なことだった。 着いても誰も困りはしない。 まただ : : : また周期がめぐってきた : ・ 私は椅子の背にもたれて帆走のことを考えようとし 249

5. 現代世界ノンフィクション全集22

しかし不時着などを考えるよりは、もっと重要なこ ほうに二度傾いてしまった。もし磁気羅針儀に、五度 とがある。今日の飛行計画をたてることのほうが本質食いこませて、そしてもし陸が見つからないとしたら 的な問題だ。上空の風は、下よりも強く吹いているだ ろう。私の判断はあくまでも推測だが、それが正しい 前方の波が見えなくなった。霧が海上をおおってき にしろ、まちがっているにしろ、とにかく判断をたて た。私はとっさに高度計を直して上昇にかかる。海面 なければならない。 上三十メートル、しかも烈風の中では盲目飛行どころ 風や、昨夜の羅針儀の動揺や、雷積雲を避けて迂回ではない。航空術のことなど考えておられず、直ちに したことなどをどう考えるべきか ? 眠くてぼんやり「セント・ルイス号ーを三百メートル上昇させる。度 していた数えきれない瞬間に、右や左と針路をはずし数を加えたり引いたりして、一つの答を頭の中で出し たことを、どう計算したらいいだろうか ? ながら、一方でなんらかの関連性を考えるなんて、ぜ ニュ 1 ファウンドランドをあとにしたとき、コンパ いたくすぎる。それに計器盤の針のうごきを見つめな スコ 1 ス北一五度に機首を向けた 。これは私の航がら同時に紙と鉛筆の仕事をするなんて、むちゃな話 空図から百五十キロ南になっているのを償うための五だ。万事は、霧が去ってから計算するとしよう。 なかなか霧がはれない。私は文字どおり空白の中を 罅度と、横滑り風を計算に入れての一〇度だ。 の しかしいまの風をもう五度ばかり計算に入れたほう飛行する。一分一分が重なって十五分になり、それか ががよいだろうか。私はもう一度、波を見た。風の流れら四十五分になる。まだ波が見えない。私は再び計器 あは横風というよりは追い風のほうだ。五度は多すぎる盤の数字を見ながら、自動的に飛んでいるが、何も見 よかもしれない。そのうえ一時間以上、大圏コースを少えない。 いけない ! し南に寄せて羅針儀を直さなかったので、針路が北の いけない、横になって眠るなんて、 Z23

6. 現代世界ノンフィクション全集22

発したという話は聞いたことがない。 っても墜落などしないこともわかってくる。 いつも危険は予告されるはずだから、パイロットが ジェット機は共通してある一点で許しがたい。燃料 飛行機の警告に注意しないときにかぎって、そのままを大量にくうことで、燃料がきれれば、エンジンは活 飛びつづけて、。ハイロットを死にいたらしめるのだ。動を停止する。四発。フロペラ輸送機は満タンならば、 離陸後に赤い火災警報灯がつく。これにはいろいろ一八時間ノンストツ。フで飛行できる。双発の貨物輸送 な意味があるといえよう。火災警報装置の漏電、低す機は飛行時間二時間の予定で出発するばあい、八時間 ぎる気速による急上昇、燃焼室にできた孔、エンジン分の燃料をたつぶり積んでいくことがよくある。しか 発火。飛行機によっては、火災警報にまちがいが多くし、わたしが一時間四〇分の任務で離陸するときは、 て、あまりに支障をきたすために、パイロットがまた のタンクには二時間分の燃料しか積まない。他機 警報回路の故障だと思って、実際には無視してしまうが離着陸している間に、任務を果たした後いつまでも 機種もある。しかし、ーはそんなものではない。 空を旋回している余裕などないわけだ。 ライトがつけば、ーはたいてい火災を起こして タンクに一三六キロのー 4 を残して、というこ いる。しかし、点検する余裕はまだある。スロットル とはつまり高速で六分間の飛行時間を残して、着陸パ をひらいて減速する。脱出最低高度まで上昇する。外ターンにはいることがある。残り一三六キロの燃料で 部タンクを投下する、尾筒温度、回転計、燃料流量滑走路までに七分間の距離があるとすれば、エンジン て をそれそれ点検する。機体から煙が出ているかどうかを活動させながら、帰還するというわけにいかない を見てくれるように編隊僚機にたのむ。火災を起こし滑走路から一〇分もはなれていれば、車輪はあの「ン クリート とていても、飛行機を人家から遠ざけて、脱出するのに、 を二度ところがることないだろう。六分間の似 3 まだ二、三秒の時間がある。警報もなくて飛行機が爆燃料を残して着陸パタ 1 ンにはいった後、飛行機が ティルスイプ

7. 現代世界ノンフィクション全集22

もしれない。そんなことになったら、アイルランドの るなんて、聞いたことがない。 機は方向を転じているのに違いないーー眠いー・ーし海岸に着陸することなど、どうして期待できよう。実 かし羅針儀は中心をさしているし、星を見れば私がま際問題として、私はいったい海岸を発見できると期待 っすぐに飛んでいることだけは確信できる。液体羅針していいのだろうか ? 儀の盤面が六〇度以上の弧で揺れている。あ、九〇度昨夜、離陸する前に私は眠れなかった。今夜はとて も起きてはいられそうもないーー・起きているかーー・眠 どっちにしたいんだ ? 「磁気嵐」の中にはいっているなんてことはありうるるか だろうか ? たいていの操縦士は磁気嵐の存在を嘲笑前方に黒いかたまりが見えるーー・大きな口を開けて いるーー雲だろうかーーーそれとも虎かな ? し、そんなものは行方不明のいいわけのために考えた 操縦席の窓の外に動いているあの白いものはなん ものだなどという。磁気嵐などというものが本当に起 こることがあるのだろうか ? だ ? もっとはっきり見てやろうと飛行眼鏡をなおす 私はべッドのシーツの間からすき見している : 磁気羅針儀は頼りにならない。針が端から端へいっ たりきたりしている。しかし液体羅針儀の針の振動が私は闇を恐れながら子供部屋にいる : : : しかしミネソ ちょっとためらう。この間に機首を定めることにしょ タでは窓から虎は飛びこんでこない。テー。フルのうし う。こうなれば私はヨ 1 ロッパのどこの海岸に行き当ろで動いているのはなんだ ? あの白いのは ? るかは、神様ばかりがご存じというところだろう。 ああそうか。あれは晩い月の出に伴う薄明りに違い 液体羅針儀がもっと悪くなり、そして雲が高くて星ない。私は北大西洋上の機上にいるのだ。東北のほう を目当てに東のほうへ舵を取ることが妨げられるようは夜の壁に塗りこめられていて、かすかではあるが、 なら、私はぐるぐる円を描いてさまようことになるかそこを洗う光の影も見える。 おそ ノノ 2

8. 現代世界ノンフィクション全集22

るまでにはずいぶんおもしろい目にあうだろうと私はわけだ。 考えたーースピードのある飛行機ではその望みを達成私はわざと念入りにどうせだめさといった態度をと することなどどうやらできそうにはなかったからであって、もう一度コライハを呼んでみた。やはり沈黙だ。 ークと自分がまるで空のリップ・ヴァ る。私には。、 「どうもオランダ人の言ったとおりらしい。評判が悪 ン・ウインクレアメリカの いんだよ。」 ノ浦島太郎 ) のように荒野から脱出して くるところが目にうかんだ。その位置が地図上のもの 私は、ヒューンとあのテネシーで結氷にやられた時 に近いとして、コランく・、 , カ現われる可能性のあるわずの気持ちが、今とはまったく違っていたのを思い出し かにのこされた時間に、私はこの空想を彼に語って、 ていた。事態がいかにも似ていたからだ。そのときパ 1 クがいった。「河がある。」 どうせ誰かと二人きりで荒野に放り出されるならどう して君などとっきあう羽目になったのだろうといって まだゲームをすてていない彼は静かに言った。 やった。このくだらない冗談も時計に夢中の彼にはき河というほどのものではなかった。ちょろちょろ黄 こえなかった。 色い肉汁みたいなのが沼沢地を縫って消えているのだ。 もうとうに通り越してしまったと確信はしながらも、地図上の河は、方向こそかなり正確だが、少なくとも 私は河を探すふりをしていた。しかしそう信じてもコ百三十キロはずれていただろう。 もうすこしで私は見当ちがいの歓声をあげるところ ースは変えなかったろう。不安になって迷い出したら、 。こっこ 0 必ず自分の本当の場所がわからなくなって取りかえし がっかなくなるというのが飛行の鉄則なのである。少というのもわれわれのコ 1 ースを直角につつきってい なくとも、降りた時にどっちへむかって歩き始めればる河に近づいてみると、目立つような湾曲部もなけれ よいかがわかるーー・・・それまで飛んできた方へもどれるば、町の形跡もないことがはっきりわかったのである。

9. 現代世界ノンフィクション全集22

がすぎる。山はブリタニ 1 やコンウォールにしては 陸地のように見える。が、しかし、もう蜃気楼には 高すぎる。 だまされないそ。十五キロから二十五キロ離れたとこ いま、私は、膝の上の航空図に合致するような目立 ろに、二つの灰色のカーテンに囲まれて、紫がかった った地勢を捜しながら、泡立っている海岸の上を飛ん 青い帯状のものがある : : : 低くて平らだが水の線のよ でいる。山々は古びて円味を帯びている。畑地は小さ うに、上のほうが湾曲している。小山かな ? ニュ くて、石が多い。真下には、しだいに先が細くなって ファウンドランドを離れてから、まだ十六時間にしか ならない。もしあれがアイルランドなら、予定より二ゆく大きな湾が横たわっている。長い岩の多い島、村 いや、落。そうだ、航空図の上にもびたりと当てはまる地点 時間半も早い。また別の幻影なのだろうか ? 私の心ははっきりしている。もう半分居眠りなんかしがあるーーー海岸線の上にインクの線ーーーアイルランド ていない。さめて、油断なく見張っている。霧の島も西南海岸のヴァレンシア島とディングル湾だ。 まとんどまちがいなく、自分の針路上にいたの 私を針路の外におびき寄せることはできなかった。し 私はを かしこの誘惑はあまりにも偉大だ。「セント・ルイス だ。夜、雷積雲のまわりを迂回したことなどは、し たいどうだったというのだ。羅針儀のふれによって生 号」を島に最も近いほうに旋回させる。 私は一心に見つめるーー・自分の目を信ずる気になれじた誤差の行くえは ? 乱雲の上の風は、機尾へ猛烈 2 ないながらも。一心に見張る、その影や輪郭をーーー断に吹きつけたに違いなかったのだが。北に向かってじ りじり進んだ私の直観のほうが、理論的な航空術より 崖のでこ。ほこした海岸や、起伏する山々を現わしてい ある影と輪郭。近づくにつれて、フィヨルドの入り組んももっと正確に機を導いてくれたのだ。アイルランド の南端だ ! 旋回降下して小さな部落を見おろす。人 気だ海岸が目立つ。不毛の島がそれを取り囲んでいる。 アイルランド。こ ナ ! スコットランドにしては、野の緑人が雨で光る道路に走り出て、上を見上げて手を振っ ノ 47

10. 現代世界ノンフィクション全集22

らない。私は手にした銀行小切手の数字を見つめたー洋を横断するのに、ほかのパイロットにはまかされま せんからね」と彼はつづけていう。 ー一万五千ド この紙片一つでライト・べランカ機を取引きできる「どうも誤解があるようです」私はいった。「これは 「チャールズ・・リンド・ハ 1 グ氏の注文にセント・ルイスの計画です。私どもとしては、テスト んだ より」と紙面に書いてある。ビクスビイ氏は、私が驚や飛行計画では、貴社と密接に手を握ってやってゆき たいと思いますが、しかし私どもが買い取ったあとは、 いているのを見て笑っている。 「今日の午後、・ほくはニ、 1 ヨークに出発しましょ乗組員は私どものほうで決めたいと思います。」 しかし、レヴァイン氏はいう。 う」私はいった。「そして一週間以内にべランカ機を、 「コロンビア航空としては、わが社の飛行機に関して、 ランパート飛行場に運んでくるようにしましよう。」 このようなチャンスはむだにはできません。われわれ こうして、再び私は長い汽車の旅をつづけたのち、 もう一度コロンビア航空のニューヨークのオフィスにのほうで優秀な乗組員を選びましよう。セント・ルイ 現われていた。そして一万五千ドルの小切手を、きれスのあなたがたの後援会は、この飛行によって、あら いに磨きのかかったレヴァイン氏のデスクの上におい ゆる名声と評判とが得られるではありませんか。」 こ 0 「いや、われわれの見解としてはですね」私はいった。 「わが社の飛行機をお売りいたしましよう」彼はいう。「機の胴体に『セント・ルイス』の名まえを書く特権 「しかしもちろんそれを飛ばす乗組員を選定する権利のために、一万五千ドルをお払いしようとしているん は、われわれのほうで保留します。」 です。こんなことでしたら、このまえ私がお訪ねした 私は面くらって棒立ちになってしまった。 とき、いまの条件をおっしやってくだされば、わざわ 「これだけはご了解ください。わが社の飛行機で大西ざ長い旅をしてこなくてもよかったと思います。とに 8 3