ニューヨーク - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集22
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1. 現代世界ノンフィクション全集22

ニューヨークからパリへ、しかし、ニューヨークで 待機中の竸争機が、それまでとどまっているだろう カ ? ・ 四準備完了 五月十日、今日はサン・ディエゴを離陸する日た。 一九二七年の春のはじめ、チャールズ・リンド・ハ 私は別れのあいさつをしに、ライアン工場に立ち寄っ ーグは、ニューヨーク ハリ間無着陸飛行のトップ た。そこからダッチ飛行場まで車を走らせ、それから を飾る希望を失いかけていた。竸争相手の飛行士た私の出発地点ノース・アイランドのロックウエル飛行 ちは、すでに自分たちの飛行機ができあがって、試場まで飛んだ。太平洋時間で午後三時五十五分、「セ 験飛行の準備をしていた。 ント・ルイス号」は、セント・ルイスに向かって飛び しかしその後、二、三週間のうちに、墜落や事故立った。 が重なった。一機は破壊し、二機は損害をこうむり、 アリゾナの上空で日没がきた。まもなく、高度計の 乗員二名は惨死し、三名は傷ついた。最後の惨事、 針は二千四百メートルをさしたが、私はなおも山脈の すなわち、二人の優秀なフランス人の飛行士、ナン上へと上昇をつづける。寒さが加わり、少々暗くなっ 灯 の ジェッセとコリよ、。、 / リニューヨーク飛行中、海てきた。 上で行方不明となった。ちょうどその日、五月九日、 月が出たので、その淡い光で、・ほんやりと下の地形 れ あ リンド・ハーグは、まだサン・ディエゴこ 冫いた。彼のが見えてきた。私は、懐中電燈を計器盤の上へ走らせ 気新しい飛行機は、セント・ルイスへ無着陸、ついで、る。どの針も正常、私は航空日誌に書き入れをして、 ニューヨークへ無着陸の準備が整っていた。そして操縦席に身を落ちつかせた。 7 5

2. 現代世界ノンフィクション全集22

翼よ、あれがバリの灯だ リンにー ーグとスピ リット・オプ・セントルイス号 リンドバーグを迎え凄 ニューヨークの市民

3. 現代世界ノンフィクション全集22

しかし、われわれのプランは、。 キウセッ。フ・べラン カからの電報によって、たちまち、くつがえされた。 「キャ。フテン・リンド・ハーグ、コロンビア航空会社の 取締役会長レヴァイン氏に会っていただきましようー リ飛行に関し、べランカ機について喜んで懇談 ーこちらはわが社のパイロットのチャン・ハ 1 リン氏で したし。早急に相談したきゅえ、すぐニ = ーヨークす。」 においで願う 0 ニューヨーク・ウールワース・ビル べランカ氏はニコニコ上きげんで私に紹介した。わ ディング五一〇四、コロンビア航空会社気付で、 れわれはニュ 1 ョ 1 クのコロンビア社のオフィスにい 生あて打電乞う。 る。 べランカ レヴァイン氏は私を値踏みするかのようにじろじろ 見ながらいうのだ。「わが社のべランカ機がご希望だ べランカが新しい会社を組織したにちがいない。そそうですね。」 して、現在ある飛行機をライト社から買い取ったにち「は、もちろん値段との相談ですが。」 、カ : し学 / . し / 、よ、。彼の電報がーー・あと二日おくれたら、私は 「べランカをお譲りしましよう」レヴァイン氏はいう。 カリフォルニアに向かって出発していたろう。いまこ 「ニューヨークパリ飛行にはこれが最上です。お金 そ私は、ほかのだれにも先んじてやれるのだ。 の都合は全部つきましたか。」 ライト・べランカ機はこの飛行には最優秀機だし、 「まだほんの一部だけです」と私は答えた。「どんな いま私にはそれを買うだけの財政的援助があるのだ。 飛行機を買うかはっきりするまでは、あまりたくさん 私はすぐニ = ーヨ 1 クに向かって出発する旨、べラン金を集めたくないんです。われわれとしては、製作会 力に打電した。 社にも何らかのご協力を願ってもよいと考えているん 6 3

4. 現代世界ノンフィクション全集22

「もうデザインの話はやめましよう」ホールはいった。のために、別に大洋横断機を製作中だった。 6 「重量と重心位置と、それから強度の計算をしましょ 私は新聞をたたむと立ち上がって、決然としていっ 4 う。それから、さっそく製図を急いで、工場に仕事をた。「食事にしたほうがいいよ。」 はじめてもらいましよう。」 ドナルド・ホールも椅子から立ち上がった。彼は早 製図室のドアのハンドルがガチャガチャ鳴った。鍵朝からここにすわりどおしで仕事をつづけ、椅子を立 を回さなければならなかった。ドンドンたたく音がすったのは、食事をさっさとすませるためと、工場のマ る。ーーマホニイだ。ドアをあけ、彼を入れた。 ハウリー・ボウラスと打ち合わせに二、 「いつまで仕事をしているんだね。新聞を持ってきた。度階下に降りただけだった。 ここに君の見たがる記事が出ているよ。」 地上と大洋合わせて五千八百キロに及ぶ大圏コース に沿っての大飛行を、どうしてやったらいいだろう ? ワナメーカー後援 これまでの 私は今まで海上飛行をやったことがない。 ニューヨーク パリ間飛行 私には、常に私を導いてくれる地上の目標があった。 ードの壮挙に十万ドル 夜間の郵便飛行でも、下方には見慣れた光があった。 私はサン・ディエゴで海軍士官たちに教えを乞うこと それはニューヨーク電だった。ロドマン・ワナメー はできたのだが、しかし、やはり彼らに、私の無経験 ード中佐を暴露することはいささかちゅうちよされた。大多数 カー氏 ( 有名なアメリ ) よ、リチャード・ 力の百貨店主 のために、三発のフォッカー機の製作を後援していた。の人々は、私がまだこんな大それた企てを実現するに 、当局のだれかが私の飛行を中止さ シコルスキー社は、昨年九月離陸のさい、機をめちやは若すぎるといし めちゃにしたフランスの空の勇士ルネ・フォンク大尉すべきだ、といっていたともうわさしていた。このこ

5. 現代世界ノンフィクション全集22

ロンビアーー・・・つぎつぎと航空会社の名が心に浮かんでのために、シコルスキイでは別に多数エンジンの複葉 0 きた。サン・ディエゴに出かけても、 ししが、ライアン機を製作中だといわれている。一方、ヨーロッパでは、 4 テスト 社にもまたがっかりさせられるだけの話じゃなかろう いくつかの大西洋横断機がそれそれ最後の試験段階に はいっているかもしれない。 ライアン社が私の使用機 もう二月も三週目だ。たとえライアン社が二カ月間を作り上げるまでには、きっとだれかが飛び出すにち で飛行機を作ってくれても、。 ( リに向けて飛び出すのがいない。もちろん、太平洋という手もある。太平洋 しまここにあ横断飛行ならまだだれも準備していないだろう。しか は、四月下旬になる。べランカ機なら、、 ニュし、太平洋には二万五千ドルのオーティグ賞はない。 ーリンに、 るのだ。レヴァイン氏はもうチャンバ ヨーク " ( リ間の飛行をさせることを決心している「何がなんでもパリへの飛行を決行しよう。そのつも りでわれわれはスタートしたんだからな」とハリイ・ かもしれない。私はもう競争者全部から、はるかに立 ナイトはいう -0 ちおくれている。だから彼らは私なんか問題にしてい ないのだ。私の存在なんか、知らないのだ。 報道によれば、デーヴィス海軍少佐のニューヨーク ニューヨークから暗い気持ちの汽車の旅をつづけて、 冫。しまとなって パリ間飛行計画は順調に進んでいて、しかも彼は一一一私はセント・ルイスに帰った。私こよ、、 発爆撃機の払い下げの、軍の認可を得ているというこ は、太平洋をねらったほうが賢明かもしれないという とだ。またバード中佐は、新しい三発のフォッカー機気がしてきた。飛行機ができあがるまでには、まだた で飛ぶ予定だと発表された。彼などはすでに十万ド つぶりと時間がかかる。われわれは、オーティグ賞の に近い後援基金を集めているはずだ。また、昨年九月、ような、別の賞をゆっくりねらったほうがいいかもし 離陸まぎわに機を壊してしまったルネ・フォンク大尉れない。太平洋となると、 いっそうの長距離飛行にな

6. 現代世界ノンフィクション全集22

翼よ、あれがパリの灯だ 落下傘を装備して、ケリイ飛行場で練習したのは、 われわれのクラスが初めてだった。もし、もう一年訓 練が早かったらーーそうだ、こうしていま翼もちぎれ るような嵐の中を、ノヴァ・スコーシアの上空を飛ん でいるなんてことはなかったかもしれない。 あとから出た知恵だが、チャールズ・リンド・ハ 、リ間の歴史的飛行は、航空の グのニューヨーク " 。′ 進歩をうながすはずみをつけたものであることを、 今にしてわれわれは知るのである。何百万という懐 疑者も、ついに飛行機というものを信用するように なった。一般大衆の支持がないため衰えつつあった 産業が、急に繁栄しだした。 しかし、リンド・ ( ーグが、ルーズヴェルト飛行場 から飛び立っ決心をした時、すなわち一九二七年五 月二十日の朝、このことはまだ予見できなかったの である。 しかし、勇気と、熟練とによる非常な努力によっ への飛行に飛び立 て、リンド・ハーグは離陸し、パリ 六かぎりなき行くて 9 8

7. 現代世界ノンフィクション全集22

夜明けに、風は新しい方向から吹いてくるかもしれ よい。もしそうなら、風は夜の半分は一方から、あと の半分は他方から吹くと仮定しよう。そのとき私の精 神が計算に耐えられるなら、新しい方向を算出して針 路にもどそう。計算はむずかしいことではないはすだ。 なぜこんなに取り越し苦労をするのだ。疲れている からだ。夜明けはまだまだ先だ : : : 現在の問題は、睡 はあく 魔とたたかい、羅針儀をしつかりと把握することだ。 チャールズ・リンド・ハーグはニューヨーク " パ 間無着陸飛行の計画については、どんなこまかいこ とも見落とさなかった。 しかし、全然予見できなかったことが一つあった。 飛び立つ前夜、全然睡眠をとらなかったことだ。 リンド・ハーグが一九二七年五月二十日午前七時五十 二分、ロングアイランドのルーズヴェルト飛行場を 出発した時、すでに二十三時間起き続けていた。そ して / リに着くまであと三十六時間眠らすにいる つもりだった。元気に満ちた忍耐で、第一日の日暮 れまでは眠らずに飛んだ。そのころはすでにニュ ファウンドランドをあとにしていた。行く手にいち ばん近い島は、三千二百キロかなたのアイルランド だ。リンド・ハーグは苦しみたした。どうがんばって 七おそう睡魔 Z04

8. 現代世界ノンフィクション全集22

意をしなければならない。 という者です。ニューヨーク パリ間飛行の飛行機を 「お出になりました。」 買おうとしている当地の人々の代理で、おかけしてい 2 一分間もたっていない。早いものだ。 るんです。べランカ機についてお話ししたいし、貴社 のエンジンについても承りたいんです。パターソンま 「ライト航空会社でございます」と女の声。 で出向いてお目にかかりたいと思いますが、ご都合は 「会社の幹部のかたを呼んでいただきたいんですが : しかがでしようか」 ・ : 」私は思わず興奮気味になる声の調子を、できるだ 「ミズ 1 リ 州のセント・ルイスから、おかけになって け隠そうとする。 いるんですって ? 」 「どなたをお呼びしましようか。」 「重役のかたです。」 彼は私が考えたとおり、やつばり深い印象を受けた 「どの重役でしようか。」彼女の声は、いささか強制のだ。電話料金も、有効に使ったというわけだ。 的でもあり、また困っているようでもあった。 「いつでも喜んでお目にかかります。いっニューヨー 「ぼくは、ミズー丿 料のセント・ルイスから長距離でクにおいでになりますか。それによってこちらの時間 かけているんです。ライト社の重役のかたのどなたかを都合っけましよう。」 とお話ししたいんですーーー商売のことで。」私はゆっ くりと、しかもはっきりといっこ 0 「少々お待ちくださいませ。」 こんどは男の声が出てきた。 「私はセント・ルイスからおかけしております。」私 はまた繰り返した。「私はチャールズ・リンド・ハ 4

9. 現代世界ノンフィクション全集22

翼よ、あれがパリの灯だ 「飛行性能は ? 」 「そして、。フロペラは金属にしたいんです。それから「大丈夫と思います。しかし、ドナルド・ホールと、 旋回計をつけなければならないし、磁気羅針儀もほしお話になったほうがいいでしよう。彼が計算を立てた いです。」 のですから。」 「よろしうございます。エンジンも、特別の装具も、 「ニューヨークからパリまで飛ぶだけの十分な航続距 コミッションなしの原価でさしあげましよう。われわ離をもっ飛行機を提供するのだということを、保証で れもこの飛行には、大いに興味をもっているんですかきますね。」 マホニイ氏はあまり愉快ではなさそうに、体の向き を変えた。「この値段では、実は全然保証金が出せる ほどのマージンは出ないんです。われわれは、たくさ ン ジ ん金のある大会社とはちがいますからね。」 ン 工 私はとにかくドナルド・ホールに会って、彼がどの ン程度の能力をもっ技術者なのか、確かめなければなら ウ ない。注文はそれからあとだ。われわれはホールの製 一図去亠こよ、つこ : 、 冫なしナカマホニイ氏はわれわれ二人だけを ホ残して出ていった。 「ライアン社の標準機体は使用できませんね。離陸の ウイング・ローディング を ) を減らし、 ときのために、翼面荷重 ( 翼面積で除した数 アスペクト・レーシオ ヒ翼の幅と弦 ) を増し、 航続距離を延ばすために縦横上 ( 長との比 っこ 0 3

10. 現代世界ノンフィクション全集22

いのじゃあありませんか。」 ここでもまた複数エンジンの話だ ! 私の後援者の 一人も、発動機三基の飛行機にすべきだと思っている し、フォッカ 1 社も、ニューヨーク = 。ハリ闃飛行のた めなら、シングル・エンジン機を売らないといった。 しかし、よもやライト社の人間からまで、これを聞こ うとは思わなかった。 「ええ、しかし、エンジン一つの飛行機のほうが、い ろいろの点で有利だと思っていますが : : : 」と私はい エンジ った。「ところで、貴社のホアールウインド・ う」と彼はいった。「ただし、、 ヘランカ機の値段につ ンは、飛行中ときどき故障を起こすようなことがある てよ、、 し冫しましばらく申し上げかねます。ライト社がでしようか。」 べランカ機を製作しましたのは、現代の飛行機におい 重役は笑っていう。 て、ホアールウインド・エンジンがいかなるはたらき「平均九千時間はもちますよ。」 をするか、ということを示すのが、唯一の目的なので 「べランカ機を譲っていただけるかどうか、いつごろ す。私どもはいま、飛行機とその製作権を、ハフ・ダわかりましようか。」 ランド社に譲渡することを交渉中です。もちろん取引「そのことなら、ギウセッ。フ・べランカとお話になっ きがうまくいかなければ何ですが : : : しかし、大洋横たほうがいいと思います。ところで、パターソンにお 断飛行ならば、エンジン三つの飛行艇のほうがよろしられるうちに、わが社の工場をごらんになりません 操縦席のリンドバーグ 0 2