南部 - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集24
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1. 現代世界ノンフィクション全集24

かれのもっとも巧妙な攻撃方法は、「本当の南部人」 わたしは原稿をわきにどけて眠ろうとした。しかし の見解をとりあげ 1 表面はその弁明にこれ努めながら、日の光が窓からさしこんでいた。わたしは夜を徹して それに一矢報いることだった。悲劇がかれを、アメリ 読んでいたのだった。 カ文学のなかでもっとも鋭敏で辛辣な風刺家の一人に してしまったのだ。『マグノリアのジャングル』のな 十一月十九日 かに、背後に凍りつくような恐怖をひかえて、このよ うな、漫画欄のなかでも最高の傑作を並載することは、 バスでビロキシーに着いたのは、夜もふけてからだ いちじるしく効果的である。最低生活をしているもの ったので、付近には黒人の姿は見られなかった。そこ が、最高の傑作を書くという現象を物語っている。悲で、海岸と反対の方へなかって歩き、南側の正面の戸 しみに打ちひしがれた男が、なんとも滑稽な作品をつが開け放しのトタン葺きの小屋で、半分凍えながら眠 くりだす現象である。モノキュラスのように、かれは った。朝になって、小さな黒人喫茶店で朝食ーーーコー ヒーとトースト をとり、それからヒッチ・ハイク 悪魔をからかったのだ。 ほかの「南部の反逆者たち」、たとえば、ホディンするつもりで、 ( イウェイを下っていった。ハイウェ グ・カータ 1 ィーストン・キング、ラルフ・マック イは、これまで見たなかでもっともすばらしいいくっ ギル、マーク・イーストリッジといった人たちとならかの海岸にそって、何マイルにもわたってのびていた 白い砂、美しい海、そして海岸にむかって建って んで、かれの場合も、「本当の南部人が」驚くほど人 いる壮麗な家々。太陽が体じゅうを暖めてくれた。わ 種的偏見をもっていないことを例証している。南部人 は、黒人たちを減・ほすくらいなら、かれの「分別」をたしはゆっくり構えて、この路線沿いの史上に名高い とやかく言う白人たちを積極的に滅ぼしたいのである。里程標を、立ちどまっては注意して見た。

2. 現代世界ノンフィクション全集24

三六年、メキシコに対する反乱は戦争に変った。有名プ油田が発見され、突如として空高く林立した油井の なアラモの悲劇ののち、メキシコのアントニオ・ロペ数々をもってしても、無尽蔵の石油資源を汲みつくす ス・デ・サンタ・アナ将軍は、サン・ハシントでヒュ ことができなかった。すでに最大の州だったテキサス 1 ストンに敗られ、テキサスはその主権を宣言した。 は、こんどは最も富める州になった。個人の銀行預金 そして、ロンドン、パリ、 ベルリンに大使を送り、自だけでも、今日では五十億ドルを越えている。 国の郵便事務と、六隻の小型駆逐艦からなる海軍をも テキサスを全部一様なものということはできない。 った。ヒューストンが初代大統領になり、また再選さ南東部には、幾十万ヘクタ 1 ルにわたり「パイニ 1 れた。 ウッド」とよぶ大森林がひろがっている。ここは比較 一八四六年、テキサスは合衆国の一州となり、ヒ、的貧しい地域で、人口の大多数は黒人だ。樹木、巨大な 杉の ) はほとんど全部、ポーモンやダラスの ーストンは知事になった。彼は非常に大きな声望をもセコイア ( 巨木 っており、尊敬と感嘆の念をもって″偉大な酒のみ″大金持の所有である。南部のメキシコ国境沿いには、 とよばれていた。南北戦争ののち、テキサスは他の南ラテン系住民にとって快適に暮す魅力と温和さが保存 部諸州 とともに北部とたたかったが、その広さのおかされている。この地域は極度に繁栄しており、パイプ げで、敗北で苦しむことは比較的少なかった。家畜のライン、油井、ガス井がたくさんある。安価で従順な労 飼養が、二十世紀はじめまでは、この地域の主要な活働力は、大部分メキシコ人からなっており、彼らは越 動であった。それは広大な″牧場″、カウポーイの時境して工場や牧場にはたらきにくる。西部、″フライ 代、ハリウッド映画や文学のテーマとなったおもむき パンの柄 ~ とよばれる伝説的な西部は、二十世紀はじ のある民話の時代であった。やがて都市が勃興し、こめにはまだ開発されていなかった。そこの人口は稀薄 とに一九〇一年には、 : ホーモン近くにスビンドルトツで、せいぜい十五万、気候はうつり気で、風景は荒涼

3. 現代世界ノンフィクション全集24

した。「ぼくは銃をもって " トレード・ マート〃に行き、 のことを新聞に説明してやった。われわれはカウポー イであり、ただ大声をあげるだけでは満足しない。必ケネディが演説をはじめたら、撃ってやる。」 要なときには行動にうつる。」それ以来、スティ 1 ヴ「ジョン・フィッツジェラルド・ケネディは何だって こんな危険なところに出かけて行ったのか ? 」 ンソンは何度かケネディに、ダラスには行かないよう の疑問をもっ点でば、さまざまの予想家のすべてが一 に勧告していた。 「ダラスよりもベルリンまたはモスクワでの方が、大致していた。彼の一九六四年の再選は、テキサスの票 統領の身辺は安全だ」と地元の労働組合組織の委員長がなくても、さらには南部の票がなくてさえ、確実な アラン・メイは予言していた。また、賢明にも警察署ものになっていた。テキサスの民主党は混乱のさなか いくつかの派閥があった。ジョンソン閥、コ 長ジェス・カリーは「部下たちは大統領の身辺に対すにあり、 るほんの少しの敵意ある行為をも許さないだろう」とナリ 1 閥、ヤーポロー ( 上院議員 ) 閥、ヘンリ・ゴン ザレス ( 下院議員 ) 閥など。ゴンザレスは少数派の代 発表したのであった。 ラッセル・・マックラリ 1 はこの夜、警察署長の弁者であった。これらの派閥には、たったひとっ共通 警告をまじめにはうけとらなかった。機械工が商売で点があった。お互いに絶対に口をきかぬということで ある彼は、この夕方、ダラス郊外のアーリントン大学ある。ケネディは、彼らがあえて話しかけることので で勉強していた。彼は友人とおそくまでいた。彼の車きる唯一の人物であった。 しかし、この途方もないテキサスに行くという賭け でオーク・クリフ区の自宅にまで送ってくれと頼まれ は、それをするだけの値打があった。テキサスは合衆 ていたのだ。このオーク・クリフ区は、オズワルド : 国の南部にありはするが、必ずしも″南部″の一部で 偽名で家具つきの小さな部屋を借りていたところだ。 はなく、自分を一独立国と考えており、時として大ま 「明日」と二十一歳には見えないマックラリーは断言 5

4. 現代世界ノンフィクション全集24

たの絨毯の感触に眼を見はったり、一つ一つの家具、 いう印象はぬきがたかった。わたしは数人の人たちと 電燈、電話の陳腐な奇蹟をあらためて見直したり、タ話をしたーーあちこちでとりとめのない話を。その人 イル張りのシャワーのところへいって体を洗ったりしたちは、黒人を知っている、自分たちはもう長いあいだ、 てみたかった・ーーでなければ、また通りへでていって、黒人たちと話をしてきたのだと言った。かれらは、黒 居酒屋だろうと、映画館だろうと、レストランだろう人がずっとまえに、白人たちには本当のことではなく と、どこへでも自由に入ったら、堂々と白人たちとロて、白人たちがききたがっていることを話さなければ さと ビーで話をしたら、女たちを見つめてもかの女たちが いけないのだと覚っていることに、気づかないのだ。 しとやかにほほえみを返してくれたら、どんな気持がわたしはあいかわらずのことを耳にした、黒人ってえ するだろうか、こんなことがただもうやたらにやってのはつかまえどころがない。あわてちゃだめだ。南部 みたかった。 はなにも懐手をして、共産主義の北部なんかに南部を 牛耳らせるようなまねはしないさ。事情が「のみこ めーないよそ者なら、なおさらのことだ。わたしは一 十一月二十九日 応耳を傾けたものの、答えることはさし控えた。いま 今朝のモンゴメリーはさすがにこれまでとは違っては聞くときであって、話しあう時機ではない。だが、 昭見えた。人々の顔はほほえんでいたーー、善良な、温情これはむずかしいことだ。かれらの眼を見ても、真剣 にあふれたほほえみだ 0 人を惹きつけるようなほほえさがわかった。だからこう言ってやりたかった、「わ からんのか、あんたがたは人種主義者の毒舌をたたい のみではあるが、この人たちは、通りでゆきかう黒人た ちの立場をまったく知らないだけなのかーーーお互いのているのだということが ? 」と。 モンゴメリー かってわたしが嫌っていたこの町は、 あいだには知的に認めあう伝達手段さえないのか、と 9 2 3

5. 現代世界ノンフィクション全集24

ケネディ殺害に使った型のカービン銃を売っていた しているのは禁止されている。 0 上院はこういう法律のもっかもしれぬ危険を制限しシカゴのクライン商会は、暗殺後は急速にそのストッ 5 クを売りつくすことになったろう。みんなこの型のカ ようと努力してきたし、現在でも努力している。しか ービン銃をほしがっただろうから。 し、おかしなことだが、それに反対しているのは、保 守分子、超ナショナリスト、南部の人々なのだ。「わ実験室での科学調査、犯罪の再構成は、運という一 れわれは共産主義者の侵入を防ぐため、武器を必要とつの決定的要因を計算に入れなかった。いつも武器を する」と彼らは主張する。「もしわれわれが武器をも使うことになれている老練な警官が、快晴の日に非行 っていなければ、北部の " ャンキー〃がわれわれを占者に発砲して、しかも、彼を少しも傷つけないことも 領してしまうだろう。さらに憲法は、われわれに武器あろう。非常に正確な銃をもった敏捷な猟師でも、近 距離から狙った大きな鹿を射そんじることもあろう。 を所持する権利を保証している。」 そして、禁止的措置を主張するものは、国家の敵で予測できないものが作用しているのだ。自動車がちょ っとまがる、太陽が目をくらませる、弾丸が悪質だ、 あると非難されている。テキサスやその近隣地方では、 ファーウエスト ビストルを携帯する権利は男の属性、 " 極西部。の歴ということもある。軍の払い下げのストックでは、弾 史的時代の名残りと考えられている、ということもあ薬が古くて、欠陥があり、不確実であることがよくあ ろう。だが、別な動機もある。陪審はつねに、不貞なる。三発の弾丸がつぎつぎに目標に命中するというの は、奇蹟に近い。さらに、オズワルドは十三の年から 妻を″除去″した亭主を無罪とし、南部の広大な地域 では、裁判所はこの " 名誉の掟″を尊重している。た神経障害に悩んでいた。一度も人を殺したことがなく、 しかに、 こういう情況にあっては、亭主はつねに武器一度もあの窓から射撃したことはなかった。だから、 どうしてあの忘れがたい数秒間に、完全に自分の行動 を携帯していなければならぬわけだ。

6. 現代世界ノンフィクション全集24

したことが有名である。 日に及んでいるが、その間約六週間を、作者は自ら完全に黒 ディープ・サウス 人になりきって、最南部に潜入し、現地における人種間題 うちゃまっとむ 内山敏 の緊迫した空気を肌身に感じ、それをそのままっとめて客観 一九〇九年、福島県に生まれる。一九三二年、東京大学的に叙述している。本書は一九六一年に出版されると大きな 文学部を卒業。読売新聞、都新聞 ( のちに東京新聞 ) の反響を呼び、六一一年にはサタデー ・レヴュー誌の賞を受けた。 作者ジョン・、 / ワード・グリフィン ( 一九二〇ー ) は、テ 外報部記者をつとめ、一九六七年六月、三十余年の新聞 記者生活に終止符を打つ。著書『フランス現代史』、『ア キサス州ダラスに生まれ、高校・大学時代をフランスで過し ナトオル・フランス』、訳書『宅沢東の中国』、『世紀の た。二冊の異端的な小説『悪魔、屋上席に乗車』 (Devil Ri 大行進』、『中国の発見』、『誰がケネディを殺したか』、 des Outside, 1952 ) 、『ヌーニ』 (Nuni, 一 956 ) を公刊してか 『海運王オナシス』ほか。 ら、一部の批評家から異色作家として注目されるに至った。 本書のなかでもふれられているが、第二次大戦中、太平洋で 負傷、視力を失い、それが五七年奇蹟のように恢復した。この わたしのように黒く 危険な南部探訪を試みたのも、あきらかにこの視力の恢復 混血の白人が、白人と区別できないくらい白い皮膚をして が、かれに大きな転機をもたらしたからである。八年間の盲 いるために、そのまま白人社会へ逃避・同化してしまう現象人生活が、かれに他人とは違った視点を、ものの本質を「見 うろこ を、。ハシングというが、こうした例は実際にいくらもあり、 る」眼をあたえたのである、色を超越して。まるで眼から鱗 その記録も残っている。しかしその反対の場合、つまり白人が落ちる思いで、かれは黒人と白人との相違がたんに皮膚の が黒人になるという例は、ニグロ・ミンストレルズの場合な色の相違でしかないことを悟るのである。この盲目からの驚 らともかく、絶対に考えられさえしないことだった。この日 くべき恢復の物語は、のちに『散りちりの影』 (Scattered 記がルポルタージ = として異彩を放っているのは、まさにそ Shadows,1963) となって、ホートン・ミフリン書店から刊 の虚を衝いた点だろう。 行されたはずだが、・ほくはまだ見ていない。また本書のほか 日記の日付は、一九五九年十月一一十八日から翌年八月十七 にも、かれの黒人問題への傾斜を示すものとして、共著では ( 内山敏 )

7. 現代世界ノンフィクション全集24

う、どうにもならないことが原因で、差別を受けると は、どういうことなのだろうか ? この考えがふたたびひらめいたのは、わたしが仕事 部屋として使っている古い納屋にあるわたしの机のう えにおかれたレポ 1 トを読んだときだった。そのレポ ートは、南部の黒人のあいだに自殺の傾向がたかまっ ていることを報じていた。これは、黒人たちが自分た ちの命を絶っということではなくて、いわば黒人たち が、生きようが死のうがもはやそれさえ自分たちの意 に介さない段階に、すでに達しているということだっ こ 0 だとすれば、南部の白人の立法者たちが、いくら里 人たちと「驚くほど仲よくやっている」と主張したと 一九五九年十月二十八日 ころで、現実はかくも険悪だったわけである。わたし これまでなん年間も、その考えにとらわれていたのはテキサス州マンスフィールドの両親の農場にあるわ うだが、その夜はこの考えが、いつになく執拗に思い返たしの仕事部屋を立去りかねていた。妻と子供たちは のされた。 八キロ離れたわが家で眠っていた。あけ放った窓から た白人が南部の奥地で黒人になるには、どんなふうに流れこんでくる秋の香気に囲まれて、わたしは去りや らず、眠れぬままにそこに坐っていた。 姿を変えなければならないのだろう ? 皮膚の色とい 青白いタベに憩え : : : 高い、ほっそりした木 : 夜がやさしくやってくる わたしのように黒い夜が 「夢の変奏曲」より ラングストン・ヒュ 1 ズ

8. 現代世界ノンフィクション全集24

ベトナム戦争の内幕 ゲリラ大隊「抗仏戦に加わった一部の仲間がひそく捜しまわった。新興宗教であるホア ( オ、カオダイ 兵器庫襲う かに集まり、武装レジスタンスを始めの私兵団と、暴力団の流れを汲むビンスエン団が、ゴ ようということに話が決まりました。だが手始めに兵政権に弾圧され一九五五年にこの地区を引揚げたあと だったからだ。 器を手に入れなくてはなりません。政府軍は当時、二 個師団でタイニン県の掃討作戦をやっていました。そ クエト・タンは二百六十人の部下を集めたものの、 こでゲリラ大隊を組織し、大量の兵器が貯蔵されてい彼のようなかってのレジスタンスの闘士は少なく、大 るトア ( イ陣地を攻撃する計画を決めたのです。」 部分は政府の強制徴募隊の目を逃れて森に逃げ込んだ と彼は語った。それから数カ月間というもの、彼らは若者ばかりだった。 どんな古いものでも兵器と名のつくものは県内くまな 「兵器は全部で百七十梃ほどになりました。あれこれ とかき集めただけのもので、型も古く、おまけに弾薬 軍 はほんのわずかしかありませんでした。つぎに政府軍 解 の兵隊にとられトアハイ陣地に配属されていたかって し のゲリラ仲間を通じて、ひそかに部下を政府軍内部に に 潜行させ、敵情をくまなく調べました。」 の 背 トアハイは、、 しまも昔も四角い形をした強力な陣地 を で、タイニンの北方わずか三キロの地点にある。もと もとフランスが構築したもので、クエト・タンたちが 製攻撃した時は、政府軍第二十一師団に属する三十二連 3 》米隊の司令部がここにあった。

9. 現代世界ノンフィクション全集24

えところだ こんどのパ 1 カー騒動があったいまは、 のといったら、これがせいぜいさ。白人の陪審がリン なおさらだよ。」 チの暴徒の不利になる証拠なんか見ようともしねえっ てえのこ、、 「やつらは黒人と見れば、まるで大みたいに扱おうつ どんな希望があるんだい ? 」 てんだ。」スターリングが言った、「悪いことは言わね 言うべき言葉がなかった。 え、ゆかない方がいい。」 「おれたちは南部の正義なんかになにも期待できない ということを知った方がいいんだ。やつらはいつだっ 「これも仕事の一部なんだ。」 ておれたちの不利になるようなことを、しようとして 「いいかい」ジョーがしつこく言った。「おれは知っ るんだ」とスタ 1 リングは言った。 てるんだ。まえに一度あそこにいったんだが、抜けだ 黒人社会の外部の人間には、この行為がどんなに痛すのに容易なこっちゃなかった。それでもあのころは、 いまほどひどい状態じゃなかった。」 烈に、黒人の希望を抹殺し、士気を沮喪させているか、 「なるほど、だけどミシシッ。ヒ よ、ま力の廾 . に。 想像することはできないだろう。 そこの黒人たちとはたいへんうまくやっていると言っ わたしは、いまこそ、黒人たちがこれほど恐れてい るその州へ入ってゆくべきときだ、と決意した。 ているーーーっまり、白人と黒人とは互いに理解しあい ジョーが売りものの。ヒ 1 ナツツをもって帰ってきた。好感をもちあっているってね。外部の人たちにはわか 、シシッ。ヒ 1 州へゆくことに決めたらないだけだと言うんだ。そこでだ、そこへでかけて わたしは二人に、 に と話した。 いって、果たしてわかるかわからないか確かめてみよ よ の うというわけなんだ。」 二人はこれをきくと、怒らんばかりに非難した。 し た「いったい、あそこへ いって、なにをしようってん「それがお人好してんだよ。」ジョーが言った。「しか 2 だ ? 」ジョ 1 が反対した。「あそこは黒人にはむかねし、あんたがそんなことをするのを、とても見てるわ

10. 現代世界ノンフィクション全集24

たちを養いたくなけりやね。」かれは薄笑いを浮かべぜ。わしらは白人の血をおまえたちの子供らに施して こ 0 やってることになるんだな。」 「あの女たちは体を張らにや、仕事につけんのだよ。」 この醜怪な偽善に、すべての黒人と同じように、わ わたしは窓から、ハイウェイの両側に高く聳えてい たしもうちのめされた。それにつけても、白人が黒人 る松の木を見た。松脂の匂いが、男の着ているカーキの性道徳の欠如を云々したり、恐怖をまじえて雑婚の 色の狩猟用の上着にしみこんだ石鹸の匂いと混りあっ ことを話したり、人種の純血について熱心に説いたり こ 0 するときのことを、思い浮かべてみるだけの値打ちは 「ずいぶんひどいことだと思ってるんだろ ? 」とかれあるというものだ。すでに雑婚は、南部一帯に拡がっ がきいた。 ている現実だーー・・それはもつばら、南部の生活様式へ にが笑いを浮かべて、こう言うべきなのだろう、「 いの白人の貢献というかたちをとってきた。白人の「人 え、どういたしましてー・ーごく当りまえのことです」種の純血」をめざすなみなみならぬ関心も、明らかに と。それとも、かれを刺戟しないようこ、よこ、ま 冫オ冫力をか全人種にまでは及んでいない。 の機嫌をとる言葉でも。 「そうだろう ? 」かれは楽しそうに重ねてこう尋ねた。 * あとになって、この相手が述べた同じ慣習を、 「そうらしいですね。」 公然と認めている多くの白人に出会った。しかし公 「おやおやーーーだれだってやってることだぜ。おまえ 平に言って、南部の白人のなかには、このようなこ 知らないのか ? 」 とにきびしく反対し、わたしがきいたほどにはこの 「ええ。」 慣習が支配的なものではないと主張した人もいた。 このようなことが、広い範囲でおこなわれていると 「そうかね、みんなが間違いなくやってることなんだ 304