高さ - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集3
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1. 現代世界ノンフィクション全集3

くなってくるのを、よろこばぬものがいた。それは気六、十七日とつづいた。いよいよ今が最寒期にあるも のと思われ、寒さの記録がやぶられそうな気がした。 の毒ながらアルロ・ランドルトであった。光がもどっ 九月十八日、われわれはいよいよ世界の新記録が生 てくれば極光の観測はおしまいになる。 九月六日にはどんよりとした天色の空に、ほかの色まれるにちがいないと待ちかまえた。もうずっとマイ がまじってきた。その色彩は南東から北西にかけてのナス六四度前後の寒さがつづいてきているうえ、 メーターの条件もよい。風は格子方位の東から南の方 方向に多かったが、これはその方面に大陸の大部がよ こたわり、その雪の反射によっておこるのだと推察さへ、時速二十二ー三十キロでふいていた。気温が下る れた。市民薄明になると太陽は地平線から五度下にまためには天気は静穏な方がよい。 できて、クイーン・モ 1 ド山脈の山々の頂に光が当る「今日こそその日だよ。」朝めしのとき、気象係はこ ようになり、青とビンクの・ほんやりした扇状の反射がういってうけあい、食堂はなんとなく興奮していた。 「そうなれ・よ、 。ししが、春はもう五日さきまで来ている 空にひろがり、日本の軍艦旗を思わせた。 さて隊員たちは、ほんとに太陽が出てあたりを温めんだから。」ウィリーがしう るまえに、気温がもっと下ることを望んでいた。九月「あんなに虫がたくさんいなければ、正直なとこ・ほく 十一日にはマイナス七三・二度に下ったので、気象係は熱帯にすんだ方がいい」と白状するものもあった。 ド・フラワーズは明るい無髯の丸顔を ナ ) をこえるのではな午前九時、エ ではマイナス七三・三度冠 & 5 度 いかと、はらはらして待ったが、気温はかえって上り食堂にあらわして、一同を見まわしながら、さりげな いおももちで、静かに口をびらいた。「いまちょうど 度出した。 細十四日の午後十一時に気温はまたマイナス六七・八華氏マイナス一〇〇度」と。 度に下り、十五日いつばい上らなかったばかりか、十タックとわたしはエドといっしょに気象室に出かけ ノ 89

2. 現代世界ノンフィクション全集3

を送ることができるのである。この放送電波の反射作あろう。ヒューの発見は、イオン化と、地球の大気中 用によって、電離層は無線電話、航法、および長距離の結合の過程についての新しい基本的な考え方に達す る上に何らかの役割りをするであろう。 通信を可能にする。 学者はまえまえから電離層のエネルギーは太陽の輻電離層の一番ひくい反射層である層は、夏に顕著 ヒュで、冬には散発的あるいは幽霊的で、時にはまったく 射によるものであると気づいていた。ウィリー・ 1 が解明を期待されている問題は、一年のうち六カ月消えてしまう。夏にはこの層の上に、との層があ 太陽の直接の幅射のない南極点では、電離層は弱るが、冬にはそれが合して一つの層になり、極地をこ えての電波通信に主な反射の役をはたす。 くなってほとんど消えてしまうのではあるまいかとい うことであった。なぜなら、極点では冬には太陽の光 ここは地理的極点であるけれども、頭上の電離層の 線は、電離層の下の高さまでは決して届かず、常暗と性状は片よっているのである。毎日、太陽が地磁気極 常明の境界は五百三十キロも上空にあるからである。 や磁極と同じ側、すなわちオーストラリアの方向に上 電離層のエネルギーが太陽だけにもとづくものかどうるときには、電離層の反射層は、ほかの時よりも著し かは、ここで簡単に決めることができるはずである。 く高くなり、そのかわりに磁極や地磁気極の反対側に 整いたことに、ウィリー・ ヒューは冬のあいだじゅあると反射層はいちじるしく低くなる。そのうえ、電 う、暗黒のなかでもイオン化が活発であることを発見離層の不可解な変動が、毎日ほぼおなじ時刻にあらわ した。そのうえ小さな日変化が電離層におこることもれて、その原囚が現場にいるわれわれには説明がっか わかった。このような変化は、太陽からの直接の輻射ないのである。 ウィリ のほかに、イオン化をおこす第二のものがある証拠で ・ヒュ 1 の電離層の仕事は、彼の地磁気の ある。おそらくそれは地球の磁場に関係しているので研究もあって非常にいそがしい。助手のべンソンとと ノ 60

3. 現代世界ノンフィクション全集3

がそれでも満足することはできなかった。やはり脂肪間もかかるところであり、とても気をよくした。気温 6 がほしかった。そこでビルと私とは同一食をとることは終日マイナス二九度からマイナス三四・五度を上下 ター四を私にくし、これもありがたかった。われわれは山のむこうか にした。すなわち彼のたべきれないハ れ、私は自分のほしくないビスケット四を彼にまわすら吹きおろしてきた風がこの波状地形の頂きにあたっ ことにした。それで二人はペミカン十二、ビスケット て両方にわかれ、一方では北東風と、一方では北西風 十六、。ハター四の割合の食糧となった。この組合せは となっていることを知った。高いところにはなお風が 非常によかった。われわれはこのソリ旅行の大部分をあり吹雪はまだわれわれが望むほどにすっかり晴れあ これをもって満足した。これでなければ恐らくこのよ がったわけではなかった。 うな悪条件には打ちかっことはできなかっただろう。 われわれは、もうこの時までに料理用に、許された このひどいソリ行進の最中でも、まだ私は毎晩一一、 より以上の油を使ってしまった。いつも料理がすんで 三行すっ記録を書きつけていたが、それには次のよう からも、しばらく。フライマスをつけておいて、テント に書いてある。 を暖めた。そのおかげで、凍った足を手当して感覚を とりもどしたり、そのほかいろいろな処置をすること 「この日 ( 七月十三日 ) 行進十四キローーすばらしい 滑走のように思われたーー・テラ 1 山のどこかの山稜をができた。またしばしば、そのかたわらにすわって、 上下するーー・午後、突然そのうちの大きな割れ目に遭おたがいにあまり熟睡しないように気をつけあって、 遇ーーーすでにテラーのかなり高いところに来ているー居眠りをしたものであった。だがそのために油を使い 冫弓すぎたのである。われわれは三・七八リットル鑵を六 ー月が歩行を助けてくれたーーー二台のソリを一度こー カカれこ くことができた。」 個もって出発した。 ( それについてスコット ; 、 一日に十四キロというのはこれまでの調子なら一週れいったのであったが ) 今そのうちの四個を使ってし

4. 現代世界ノンフィクション全集3

思われる。」がスコットは「私はいかにしてもビルと の書いているところによると、五人分の寝袋をソリに つむとかなり高くなって、積荷の頭が重く、足場のわ手を携えて極地点に到達せんことを願う」といった。 ウイルソンははたしてその地にいたった。そして彼 るいところではひっくり返りやすくなる。 しかしまたボワーズ以外の隊員の力を落とさせたこの日記には雲や山に対しては芸術家として、氷や雪に たいしては科学者として、そのほかまた医者として、 とは、一行五人の間に四台しかスキーがなかったとい う事実である。軟らかい雪の中を、四人がスキーをはさらに何にもまして思慮ぶかい人としての彼がよくし いて調子をとって引いている中間を、歩いてついていめされている。それによれば、このソリ旅行で彼の心 をもっともひきつけたものは、知識の獲得であったこ くということは非常に疲れる。むしろ苦痛なもので、 とがよくわかるであろう。彼の日記は非常につづめた ことこ・ハ ー行の足は短かか 0 た。そこには しつかりした足どりというものはなく、ちょっとよそもので、また多くは単調で、ほんの事実を記録するに 見をする機会さえもないのである。編成がえをする四止まっていて、注釈のあることは非常にまれである。 日まえに、支援隊のものにスキ 1 をとめおくことを命したがって、もしそれがついている場合は、とりわけ じた時には、スコットは、まだ五人で南進することは重要なことが感じられる。 それはたとえば「十二月四日非常に有望、午後の 考えていなかったのである。 極地への氷原行進の一員にえらばれた時、ウイルソ行進まったく快適」「クリスマス、善き日、幸福な長 旅ンはこう書いている。「自分はそこまで行けるだろう途の行進」「一月一日一九一二年手ちがいのため 悪か。来年の今ごろは、はたして極地またはその近くに昨夜は睡眠六時間にすぎず。ただし自分はぐっすりと 界自分は行っているだろうか。若盛りの血気な人々とと一睡した。六時間まえ眠りにはいったとまったくおな もに目的を果たすことは自分には非常に困難なようにじ位置に、少しも動かずに目をさました」「一月二日

5. 現代世界ノンフィクション全集3

一九五七年の第一日のわたしの日記は次の言葉ではている。だがホワイト・アウトの状態がうち続き、地 ホワーズは じまっている。「風はおさまった。そして人々の心も。」平線は見えす、飛行機は来そうにもない。 : ボワーズの部下たちは撤収の近いことを聞かされてお部下たちに仕事をつづけるように命じる。ガレージの り、見たところ彼ら高さ四メートルの戸は、はじめ上に開くような設計に のおもてには帰心がなっていたが、こんな戸をそんなふうにひき上げるの ありありとうかがわには大変な努力が必要なので、これを折たたみ式に一 れる。ボワーズは仕方に開くように模様がえをした。非常に重い戸であっ たが、つり下げに成功し、しかも簡単にとばされない 事に馬力をかけるよ ム ようにした。夕方までには、ガレ 1 ジの前のトンネル う一所懸命である。 一まだだいじな仕事が部分の枠ぐみをおわった。 いくらか残ってはい 三日、ホワイト・アウトのため「今日も飛行機は米 レるけれども、彼はよない。仕事、仕事」とボワーズは部下をせきたてた。 第くやってくれた。 まだ残っているいやな、えらい仕事の一つは、レー 1 観正月一一日、残留海ウイン・ドームを所定のところに据えることであ 0 た。この日の午後に彼らはその作業にかかった 」》兵たちの帰らはいよ いよっのっている。 レ 1 ウイン・ドームは実に大きなもので、食堂の屋 その顔つきに、その根から二メートルの高さの細ながい脚の台にのせられ ている。この高さと大きさからも、極点基地のもっと 声に、その動作に、 それがよくあらわれも目立っ存在である。ほとんどまっくろで奇妙な恰好 8

6. 現代世界ノンフィクション全集3

0 まで旋回していられるだろうか、また氷島の近くに 0 の計画を立てていた頃から、オールド大将が、自分は ーの着陸に適した海氷が見つかるだろうか、さては全面的に賛成ではなくても、計画の指揮官たるフレ〉 % チャー中佐に思惑どおりにやらせていたことが何度も e ー 3 にむかったという海軍機はどうしただろうか 、よ、よそうきま とい「たことへつぎつぎと移ってい 0 た。しかしみんあ「たのを、私はよく知「ていた。しし なの目と心は、すこし離れたところで、風を背に手でると大将は自ら、先に立「て飛行機から荷物を降ろす 手助けをはじめた。それから彼は、後に私たちのキャ 顔をかばって立っている二人に注意をむけていた。 実際、氷島はそれほど友好的ではなか「たが、安全ン。フ場とな 0 た雪の高台に空軍旗を掲げた。フレ ' 性からいえば十分に丈夫だ 0 たし、きびしい天候にもチャ】がちょ 0 と顔をゆがめて笑「たので、鼻につい 耐えていけるかくれ家を造るにはも「てこいの雪がふていたつららがゆるんだ。 o ー町は四時間二十分のあいだ着陸していた。そし んだんにあった。そのうえつごうのいいことは、ここ は第五十八気象偵察隊が「ミルク飛行」と呼んで北極て、その間、 0 ー引三機は頭上で旋回をくり返してい 点までの偵察飛行をや 0 ている雷鳥作戦の航空路の丁た。計画では、もし 0 ーが着陸することになれば、 度中間に位置していた。だから、私たちとしては彼ら。フラ , ドーン少佐が真先に降りることにな 0 ていた。 を通じて連絡を確保し、どうしても必要な品の補給をそのあいだ、事故に備えて、第二番機のー引に医自 が乗り組んでいた。ところが、この時の状況からみて、 たのむこともできるわけである。 が e ー 3 に車輪で着陸することが不可能なこと フレッチャー中佐はオールド大将との話合いでこう O ー はあきらかであった。 したことも主張しただろうが、何といってもオールド そこで、計画は私たちの考えていた方法でやってい 大将には最終的な責任があった。ついに大将が折れて、 くことにきまり、ひきつづいて計画は手つとり早く運 計画どおり、第一段階をおし進めることに決った。こ

7. 現代世界ノンフィクション全集3

の献立は凍ったパンのべ ーコン油揚げにチーズとジャ ムをまぜあわせたものた。このごちそうはフレッチャ 1 が発明したもので、調理が簡単なうえに蛋白質や脂 肪、炭水化物が非常にいい割合でふくまれていた。家 る 事のうえでは何も間題はなかった。雪を融かし、食事 , 揚をこしらえ、皿を洗う仕事は交代でやることにした。 レを フン この義務はしばしば、自動的にその時、手の空いてい る ・くたる者が代ってやることもあった。夕食には時々、食べ たいと思うものを注文したが、注文がなければその日 食で 朝脂 の調理係がすきな料理をえらぶ特典があった。このや り方は非常にうまくいった。みんなの食欲はいつもさ しておこうと、起床まえにプライマス・スト 1 、フに火かんであったが、島にいるうちに、数キロやせてしま をつけた。それでも寝袋から抜け出すにはかなりの勇った。 気がいった。それに寝袋のジツ。、 , ーがところどころ凍日中になると、雪が降り出して視程が落ち、夕方に りついているのには悩まされた。 なるにつれて、気温がすこしずつ上って来た。ブリザ テントの狭い入口を通るときに、そこについている ートが来そうに思われたので、急いで倉庫にする雪洞 鉤が、かさ高い防寒服にひっかかるので、それをはすを掘って、その中に器材をしまいこんだ。フレッチャ すのに助けあわなければならなかった。それから調理 ーは、これまでにも氷の構造を調べるのに興味をもっ 用のテントにとびこみ、ストープに火をつける。朝食ていた。そのために今度もチェンソーを買いこんでい ャー 0 諸く一コンの

8. 現代世界ノンフィクション全集3

きに、 心よく協力できるような口調で号令した。気にかかわることである。わたしがくりかえして困っ タックの部下の電子工学の専門家のクリフ・ディッ た一つは歯のことである。テイラー医師は南極へくる キ 1 は、この種のかくれた統才をそなえた一人であっ まえに、歯科の方もすこしはやって来た。それはこれ た。越冬のはじめのうちから、彼は海軍側のなかでも までの探検で、ぜひとも歯科の治療が出来なければな 強い影響力をもちつづけていた。彼はいつも機嫌よくらぬと考えたからである。 頼もしく、親切な人であると思われていた。チェッ リトル・アメリカでわたしは、入れかわり立ちかわ ト・セ 1 ゲルスが炊事場で仕事に追われていると、い りの歯痛でキャン。フが弱められるうき目を見た。歯の つもいち早く手をかしてやり、またほかの隊員たちに痛みをこらえて仕事はできないし、時には長い一夜を 助け舟を出させるのであった。 痛みになきあかすこともある。 タックはよくディッキーのところへ、いろいろのこ ところがテイラー医師は歯に関するかぎり、南極点 とで、気分をひき立てるようにと連絡にきた。たとえ基地ではほとんどまったく反対の経験をもったのであ ばラジオの担当者が、個人の通信をタイ。フにうちわする。歯の治療をしたのはジョン・ゲレ口一人だけであ れたり、メッセージや電文を予定どおりにやれないよ った。なぜそんなにわれわれが歯のことでわずらわさ うなとき、爆発がおこりかかる。タックはすばやくれなかったのか、今なおわからない。高い場所だった ディッキーに責任をおわせると、まもなくみんなは、 からか。歯の衛生がよかったためか。わたしは思うに ハムのサービスでにこにこする。 ここで吸う空気はマクマードよりもつめたい。すなわ わたしはこれまでの探検で、家庭からのたよりが士ちわれわれの高さのところは、暖かい海岸よりにくら 緯気を高めるのにどんなに重要かをよく知っている。そべて熱変化がすくない。これは歯とつめものとの間の の反対の場合としては、病気や不健康がキャンプの士膨張の差がすくないことになる。わたしのこの説には

9. 現代世界ノンフィクション全集3

能がある。知らるるとおり彼はこれに成功し、さらにずれにも尻ごみするであろう。アムンゼンはまったく よりよき道の発見せられない限り、極への最上の道を日常茶飯事のようにこの二つから一つをえらび出して 樹立したのである。しかも彼はその企画において容易華やかにも極に達して引返してきて、人にも犬にも無 に失敗し減亡したかも理をせず、大きな困苦にも直面しなかったのである。 彼は出発から帰還まで一キロといえどもソリをひかな 知れないのであるが、 理詰めと大胆さとの組かった。 合せが、彼をしてかく その功績から軽々しくアムンゼン隊の方がわれわれ も成功せしめたことは よりも個人的資質が一段と高かったと結論することは だれも高く評価しすぎ早計である。われわれは智能と大胆さの乏しきに悩ん だことはない。むしろその多すぎるのにこまったくら ることはできまい。こ 山 いである。われわれの隊は本来は一つの大きな科学的 れらのすべてが彼を助 ス レけたのである。退嬰的探検隊であって、極は高原部の他のいかなる地点より 工 な捕鯨船長ならば発動もとりたてて重要なところではなかった。それはただ 機ソリ、馬、人力曳行、 一般公衆の支持をうけるための好餌であったにすぎな 手におえぬ犬、といっ いのである。われわれはこの極地探検で、これまでの たスコットの経験にも如何なる探検隊よりも、またスコットのディスカヴァ あるいはスキーをはい 1 号探検のそれよりも一そう大きな成果をもって帰 て犬ソリとともに疾走ってきた。われわれの隊は、これまでに英国を出発し 9 するというやり方のい たいかなる探検隊にもまして多数の、そしてもっとも

10. 現代世界ノンフィクション全集3

わずか四・八メートル、肩の高さで三メートル、 このろこんでみんなそれに応じた。 高さで東西にやっと九十センチ幅の通路がとれる。 まったく彼は第一級の調理師であり、またわたしが 食堂は六時半から七時まで開かれる。だから朝食を南極で知りあった探検隊員のなかでも第一級の万能隊 くおうとするものは本通りトンネルをとおって、時 間員の一人であった。彼が調理に用いていたのは古くさ におくれまいと飛び出してくる。外がどんな寒い日で い鉄のストープ一つだったことを考えると、彼の出す も、コックのセーゲルスはいつもシャッ一枚ですっと料理はいつも驚くべきものだった。ストー・フについて 調理場であたたまっている。食堂の片側には四つのテ いる商標を見ると、それは一八九〇年の製作にかかり 1 ・フルがおかれ、一卓は四人すつであるが、十八名の ついこのほど石炭から重油だきにかえられたものであ うちいつでも誰かはよそで任務についているから、蓄る。燃料注入口に欠陥があってぶるぶる振動し、時に 音機をかける場所に困ることはない。隊員は人ってくは高く、時には低く、食堂いつばいにさわがしさがひ ると食器をとりあげ、セ ] ゲルスか助手がカウンター ろがった。しまいにはあきらめて、そのなかで話をか から食物をつき出す。 わすようになった。機械係が音を立てぬように加工し たこともあったが、二、三時間するとまたやかましく 朝食は新鮮な卵と果物とミルクがないことのほかは なり、それからはわれわれが極点にいるあいだこの音 アメリカにいる時とおなじである。しばらくたってか ら隊員たちはもっと変化をのそみ、ある者は異国調をはやまなかった。 希望してコックをなやましたものである。セーゲルス これまでの経験から、基地の調理師はキャン。フ中で 皎も協力的で、みんなの意見をよくきいた。わたしも意もっとも重要な役割りをする一人であることを、わた 緯見を出し、一週間分の献立つくりを手がけたことがあしはよくわきまえていた。基地のあちこちに散らばっ % る。セーゲルスはいろいろ奇抜な注文をうけたが、よて仕事をしている隊員は主として食事時にいっしょに