レンス - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集4
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1. 現代世界ノンフィクション全集4

は、メソボタミア人が警察権を代行する八万の軍隊に下火になりつつあるところだった。処置は急を要した。 支配されているのに同情し、統治方式の徹底的な改組 チャーチルはカイロで専門家の会議を招集、ロレン を要求した。彼には権威があったので、勧告はすぐに スも代表団の一員に選ばれた。会議には、堂々たる顔 聴きいれられた。しかし、ファイサルを助けることのぶれがそろったーーサー サミュエル、 レ、 ーシ・コックス、 ミス・カートル 1 ド・ ほうは、いまのところ、ほとんどなに一つできなかっ ー・トレンチャ た。フランス当局は、ファイサルを操り人形として利ジャアファル・パシャ、サー 用するつもりだったのだ。彼は絶望してシリアを離れ、 ・ジェフリ・サモンド将軍、チャーチル、ロ イタリーのマジョ 1 レ湖畔の小さな家に身を隠して、 レンスらがテしフルを囲んで、問題を論した。が、。、 じっと潜んでいた。 : 、 カ十二月になって、ようやく英レスチナ、エジ。フトに関してはほとんどなんの決定も 国政府は彼の存在を思い出し、意見交換のためロンド みず、主たる決定はメソボタミアとトランスヨルダン ンに招くことになった。 関係だった。しかもその大部分はロレンスの勧告によ 一九二一年早春、ウインストン・チャーチルが、植るもので、メソボタミアの王座はファイサルに渡し、 民地省の職を引き継ぎ、中東方面の緊急事態解決に乗トランスヨルダンについては制限っきの主権をアブド りだす決意をした。エジ。フトは動乱のさなかだった。 ウラに認めることを決定した。びまな時間ができると、 アラブ人とユダヤ人とは、。、 , レスチナでせめぎあってロレンスはケ = ングトンをつれてカイロを歩きまわり、 、た。シリアはフランス軍に対して叛乱を起こして いまたアンマンまで行ってアラブ叛乱の生存者たちに再 ル・アブドウラもふくめて、砂漠地の種々雑会した。ケ = ングトンの回想によると、荒くれた匪賊 多な族長らが、トランスヨルダンに侵攻していた。メ どもがどっとロレンスの許に殺到し、「オレンス ! ソボタミアの暴動は年三千万ポンドの出費でようやくオレンス ! オレンス ! 」のどよめきが大気を満たし、

2. 現代世界ノンフィクション全集4

アラビアの 0 レンス 系白のロープをまと「 = 砂漠の作戦会義 / ロレンス

3. 現代世界ノンフィクション全集4

フセイン ( メッカの大守 ) ビア総督を降伏させた男なのだ。ストーズは今度の旅 についてロレンスに相談をもちかけてみた。すると、 ロレンスはぜひ自分も連れていってほしいという。ス トーズにとって、それは願ってもないことだった。ロ レンスの上官たちも、折あらば彼を追っぱらいたいと 思ってうずうずしているところだった。二人はいっ ロレンスのアラビアへの出現ぶりは、後年の彼の行 しょに出かけることにした。ロレンスは十日間の休瑕動とすべて軌を一にしていた。唐突で、偶然で、隠密 を願い出て、その理由を申しでたーー「休養および紅で、それでいて重大な結果をはらんでいた。公的には、 海遊覧のため」。 彼は、アラビアにはなんの用件もなく、そもそもそこ に行く理由さえなかった。彼はスト ーズの友人という ことで押し通した。英国高等弁務官の東洋問題担当秘 書官であるロナルド・ストー ズは、これでヘジャスは 三度目だったが、今度はエミー ル・アブドウラの至急 報の招きに応したものだった。工 ルの希望は、軍 資金一万ポンドと、それに、英国の中近東政策につい てストーズと話しあうことだった。彼は、上品で、話 がうまく、十カ国語に通じ、エ ルがコーランを引 用すると、みごとにそれに応酬することができた。ロ レンスとストーズのほかには、アジス・アリ・アル ファイサル ( のちのイラク王 ) アブドウラ ( のちのヨルダン王 ) ゼイ下 ハシミラ王家 五ファイサルとの会見 2 2 3

4. 現代世界ノンフィクション全集4

ま、病院をぬけだし、リールを飛びたった第二編隊をつてエジ。フトへの旅をつづけた。惨めな飛行隊は、ク うまくつかまえて飛行をつづけることになった。第二 レタ島の山岳地帯をかすめて、かろうじて飛び越える 編隊は、悪天候のため、飛来が遅れていたのだ。しか ことができた始末だったが、それでもこの最終段階は しこの第二編隊も、第一編隊と同様に災難つづきだっ全行程のなかでは最も気楽なほうだった。そしてこれ た。オトラント海峡は無事に横断したが、ア化 ( = ア以上遅れることもなく、カイロに着陸した。 のヴァロナ湾ではいつはてるともなく出発が延期され当時、アレンビは = ジ。フトの高等弁務官だ「たが、 て、そのあいだ飛行機の全部がオ し ( ーホールや修理ある日、外務省から一通の電報が彼の机上にとどいた。 をうけるありさまだった。ロレンスはこうした延期に電文によれば、ロレンスが平和会議から「失踪」して、 すぐ慣れていった。夜は飛行機の翼のしたで眠った。 フランス当局が恐慌をきたしている、という。ひょっ 一行の金がなくな「て、卵などこまごましたものを買とすると、すでにアラビアでフランスに対する叛乱を っ うために、四ガロン入りのガソリン罐を売らなければ 指導しているかもしれない、ということだった。い ならなくなるような羽目になっても、彼は上機嫌だっ たいどこにいるのか。アレンビは、ロレンスがすでに た。それから、アテネに飛び、そこでまた何度か遅延エジ。フトに来ているとも知らず、もし彼がエジプトの したすえ、クレタ島のス 1 ダ湾に達した。そこでは、 地に足を踏みいれるようなことがあれば、ただちに弁 アラビア間題の権威セント・ジョン・フィルビに出合務官官邸に出頭させよ、という命令を発した。問題は った。彼は、フセイン王の運命よりもなしろイブン・ 重大だった。アレンビ幕下のウェイヴェル少将は数多 ヒアの創建者 ) の運命に関心があ 0 たが、ロレンくの港湾の当局者に電話をかけ、もし知らないまにロ スを見てすっかり魅せられてしまった。フィルビとロ レンスを上陸させるようなことがあったら、おまえた レンスとは、アラビアの話題に熱中しながら、連れだちの軍人としての経歴は いままでどんなものであ

5. 現代世界ノンフィクション全集4

を貼りつけてきた。全シリア人に列車旅行を禁止するべエルイ ( を攻撃することを計画しており、彼として 通告だった。通告は聞きいれられ、トルコ側は機関車は、その五日のちに鉄橋を爆破してもらいたかった。 ばかりでなく、収人さえ失うようになった。すでにメ橋梁爆破の名人口レンスにとっては、こんなたやすい ディナからの大規模な撤収さえ、不可能になっていた。仕事はないように思えた。 「全土が遊撃隊の思うがままに行動できる土地だっ しかしながら、ヤルムク遠征は不運なめぐりあわせ た。」ロレンスはそう書いているが、まさにその通り だった。出そうだと思われたすべての悪い目が出てし だった。しかし、これらの遊撃行は残虐で、無茶なもまった。裏切り、あやうく本ものになりかかった暴動、 のが多く、道徳的には弁護の余地がなかったので、ロ暗闇のなかでの大失策ーー・そうしたことが全部起こっ レンスも、マアンから帰るとエジ。フトに召喚され、ア た。まだ遠征の準備中だったところ、陣営に、エ レンビと会見したときには、弁明にひどく苦しんだ。 ル・ア・フド・エル・カデルが馳せ参じてきた。彼はア そしてそのエジ。フトで、アラブ民族の戦争加担につい ルジェでフランス軍に抗戦した武将の孫で、その話に ての広般な会談が行われ、席上、アレンビは、ロレンよると、トルコ軍のもとから脱走してきた、という。 スの努力とアレンビ側の努力とを戦略的に統合させる兄とともにダマスカスの政界では重きをなしていたの ことを要求し、ガリラヤ湖とデラア間に介在するヤル で、この耳の遠い老 = ミールも、なにがしかの役には ムク峡谷の高架橋の一つに襲撃をくわえる案を提出し たっかもしれないと思われた。「気違いであることは 判っている。」ファイサルはそう言ってよこした。「正 た。選定された目標は、峻険な山峡にかかっており、 それを破壊すると、すくなくとも一週間は、シリア駐直だとは思う。自分の首によく注意して、彼を使えば よい。」そこで、彼を使うことにした。そしてのちに、 在のトルコ軍を有効にパレスチナから遮断することが できるはずだった。アレンビは十月三十一日を期して、それを後悔することになった。 3 9 3

6. 現代世界ノンフィクション全集4

おかげでウリーは、そのつんざくような物音に一晩中な首領のもとに送りこんだ。アガは祝砲と騎馬隊の突 眠りもならず、天空の四隅から鳴りひびいてくるかに撃で彼らを歓待し、手ずから食物を供し、そして ハレムのとばりに頭をつけて眠る 思われる怖しい音響の原因をつきとめようと必死にな特別待遇として った。そして翌朝、ロレンスが愉快そうにニャニヤ笑ことまで許した。 ウイルはそのあとすぐデリーにむかったが、ヤング いながら、犯行を認めるのだった。 はカルケミッシュに一週間滞在した。それは、忘れら 一九一三年夏、ホガースとウリ 1 は気候が涼しくな るまで発掘を中止し、あとをいっさいロレンスに任せれない一週間だった。ャングは、短ズボン姿のほっそ ることにした。こうして、ロレンスは、部下のアラ。フりした金髪の学者にすっかり魅せられてしまった。年 人を監督する幸福な支配者になり、また引きもきらずは十六歳ぐらいにしか見えないのに、話ぶりはまるで 訪ねてくる出土品視察の客に対しては、勝手気ままな何世紀にもわたる智慧を身につけているかのようだっ 主人ともなった。九月にはいると、たまたま高熱に悩た。そしてアラブ人の尊敬をあつめていることは、は まされていたときだったが、二人のめったにない賓客た目にも明らかだった。ある日のこと、ヤングはロレ ンスと連れだってユーフラテス河に出かけ、エヴィン の来訪が通告されてきた。一人は弟のウイル ( 。レンス 八八九年生まれ、一九。、 ) てインドのデリ 1 に教職につきルード製の小型モータ 1 をつけたカヌーを水に浮かべ 五年西部戦線で戦死 にいく途中であり、一人はヒュー ート・ヤング ( 英陸 軍将た。が、あいにくモーターが故障して、じゃり石の河 校、当時大尉。中東通として叛乱中は軍 ) で、インドの自分の岸でカヌーを降りようとしていた時である。近くのド ィッ隊の宿舎の方角からにぶい爆破音が聞こえた。卩 連隊に帰っていくところだった。しかしロレンスは、 レンスは静かな怒りに燃えたった。ドイツ人がダイナ 病気が重くて充分のもてなしもできないことを知ると、 客人をブスラウイ・アガというクルド族の凶暴で残忍マイトで魚をとっているのかと思ったのだ。彼ら二人 298

7. 現代世界ノンフィクション全集4

テラビアのロレンス ・・ヒは、中東における西部戦線の膠着状態を打破するよ追い出して闘う作戦を説明した。するとアレンビのほ うでは、エス・サルトを占領し、アンマンの南で鉄道線 、うにという命令をうけていたのだ。それで、春のあい ' だに総攻撃をかけて、トルコを戦争から離脱させてし路を破壊して、アラブ軍の側面を援護することを約東 まうことが望まれた。その際、アラブ軍はいかなる貢した。しかしながら、その北進大政勢は、春まで 献をすることができるだろうか。英軍と連合できるたそれも四月か五月までーー・待たなければならないよう だった。作戦の日取りを推定するのは、まだ時期が早 ・ろうか。アラブ軍でマアンが占領できるだろうか。ロ レスチナ・メソボタミア方面軍 レンスは、運搬用らくだ七百頭とそれ以上の火力の補すぎた。ところが、パ 給さえあれば、占領してみせると約東した。そして、視察の使命をおびて派遣されてきていたスマツツ将軍 マアン北方数マイルの地点で鉄道を切断し、守備隊をが、五月五日という日付けを宙からひねりだしてしま った。その根拠はだれにも判らなかった。ロレンスは、 ス ファイサルにその報告をしに、アカスにむけて発って ン 3 ~ 第レ いった。それから、道々、各部族を訪ねながら、長い 《戔をるあいだの念願をはたすためにショベクに立ち寄った。 そこは、死海の東の大きな十字軍の要塞たった。 春がきた。そして砂漠が緑にかわった。しかし、一 敵種異様な絶望感が大気に満ちていた。タフィレはふた て たびトルコ軍に奪われ、エス・サルトを占領した英軍 女は、数週間ならずして追いだされ、まえにもましてマ乃 4 アンは難攻不落になった感しだった。しかし、英軍が

8. 現代世界ノンフィクション全集4

似ていた。それは、奇怪な弁説だった。そして、アラ 誉ある勇士は、持てるかぎりのつまらぬ術策は堂々 4 ・フ民族についてというよりも、むしろ卩レンスについ とかなぐり捨て、素手で挑むべきである。よりすぐ て、多くのことを語っている。 れた知謀ばかりでなく、より優秀な武器をもって、 かえって敗れんがためである。透視力のある者にと っては、敗北こそが唯一のゴールなのだ。徹頭徹尾 人生とは、概していえば、その極限状況のもとで われわれは勝利のないことを信じなければならない。 生き、そして愛してこそ、官能的なのだ。叛乱には、 もとより、憩いの家はなく、歓喜の配当の支払われ突破口はただ一つ、死地に赴き、敗北を追って闘い、 ることもない。人生の精髄の発揮されるのは、感覚敗北を求めて叫び、絶望のはてに、むしろ全能者の 打撃のより強からんことを願うのだ。そうすれば、 の耐えうるかぎりまで耐え、耐えぬいた地点を、さ あるいは、全能者はその打撃によって、苦悶するわ らに一歩進んだ危険、より深刻な欠乏、より激しい れわれを鍛え、われわれをその破壊の武器となし給 苦痛への前進基地として利用するときである : うかもしれない。 勝っときまった戦闘には、なんの名誉もありえな ( 『智慧の七柱』四一二ー四一三ペ 1 ジ ) 。負けるときまった戦闘からこそ、多大の名誉が もぎとれるのだ。全能なる者、無限なる者、この両 者こそ、われらに最もふさわしい好敵手であり、実 ロレンスがこのころ、虚無的な絶望にくじけそうに 際、完全な勇士の相手とするに足るのは、この両者なっていたのは、きわめて明らかである。これまで、 しかない。彼らは勇士の精神がみずから産みだした彼としては、心のなかに燃える烙から石炭を引きだし、 怪物なのだ。また、最もしぶとい敵は、つねに、家もっと赤々と燃えるように石炭に息を吹きかけ、よう 族という敵である。全能者と闘うにあたっては、名やくその熱に慰めを見いだしていたのだったが、それ

9. 現代世界ノンフィクション全集4

びでた目をしていて、王侯としての才幹は一見申し分が、国家の統一などということは、問題でない。叛乱 4 ないような風貌だったのだが、じつは為政者の才にも、は、燃えたっ砂漠に見える蜃気楼にすぎなかった。ロ 指揮官の才にもと・ほしい男だった。ロレンスの案には、 レンスは、アラブ人を呪いながら、べエルイハを越え 主地の遊牧民らを味方に引きいれる計画もはいってい てアレンビのいる司令部へらくだを駟っていった。ア て、その目的のために運んできた金貨は、すべてゼイ レンビに失敗を白状し、目だたない軽い地位につけて ドに渡してあった。 : 、 カゼイドが、すでにその金は全 くれるように頼みこむつもりだった。そのような地位 部費いはたしてしまったと白状するのを聞いて、ロレ にいれば、自分にも他人にも害をおよぼすことはない ンスは呆然としてしまった。あの危険な旅を重ねたのはずだった。 , も、ただいたすらにゼイドの仲間をもうけさせるため 「もはやわたしには、アラビアの市場の粗粉一つぶに だったのだろうか。ゼイドの周囲にたかっているのは、値いする手だてさえ、残されていなかった。」苦々し アラブ叛乱の成功などはまるで眼中にないやからだっ い調子で、ロレンスはそう書いている。「意志力は消 , た。ロレンスは、憤怒で青ざめ、身うちの傷、強行軍えうせ、わたしは一人でいることを怖れた。情況の、 の疲れ、睡眠不足でヘとへとになりながら、金の返還あるいは権力の、あるいは欲望の風が、わたしのうつ を要求し、返さないならば永久にアラブ民族と縁を切ろな魂を吹きとばしていってしまわないように」 ・る、と言っておどした。するとゼイドは、にやにや笑この幻減は、心底からのものだった。やむをえぬ、 って肩をすぼめ、費ってしまった金高の明細書を送るまた当然のものでもあった。しかも彼には、長い旅の 、という約束をした。戦利品、金貨、そして襲撃によるあいまに、じっくりそのことについて考えをめぐらす ・略奪でかき集められるいっさいのものーーそれらのも余裕もあった。しかし、司令部についてみると、アラ ・ののためには、アラブ人は一命を賭す覚悟があった。 プ叛乱に有利な情況の風が力強く吹いていた。アレン あらこ

10. 現代世界ノンフィクション全集4

抗議したが、べイはたつぶり押し黙ったあとで、謎め後も、生涯ついに味わったことのないような苦痛を味 いた言葉を口にした。「おれが知っているということわされ、そして道徳的堕落を忍ばなければならなかっ を、おまえも解らなくちゃいかんじゃないか。おれのた。 言う通りにすれば、ことはずっと簡単になるんだそ。」裸にされ、血を流しながら、彼は、衛兵のべンチに たしかにべイは、ほんのつかのま、目のまえにいる男投けだされて、容赦なくげんこを喰い、つづいて背中 力を一」にはエミ 1 ル・ダイナマイトとアラブ人に呼が血だらけになるほど鞭打たれ、つづいて床にころが ・ばれているルレンス・べイ ( ロレンス閣下 ) だというされて肋骨にひびがいるほど鋲のついた靴で蹴とばさ ことを推測したのかもしれなかった。しかしたとえそれ、それからまた鞭で打たれた。耳もとでは怒号が聞 こえていた。彼の眼は耐えがたい苦痛に圧迫されてく うだとしても、怖ろしい、身震いするような沈黙のな かでたがいに向きあっているあいだに、 この考えは彼らんでいった。衛兵らは、考えられるかぎりの虐待を の心からすり抜けていった。沈黙がとぎれたのは、ロ 加えて、気晴らしをするのだったが、それもいっ果る レンスが中東風の拒絶の身ぶりとしてあごをしやくり かしれなかった。そしてようやく、べイが彼を呼びに あげたときである。彼は、相当の懲罰を加えるように、きたとき、彼らはあわてて彼の身体に水をぶつかけて、 とささやいているべイの命分を耳にした。 見苦しくないようにしようとした。が、血にまみれ、 もともと彼は苦痛に貪欲だった。奇妙に子供つま いしかも傷だらけで精神の錯乱している状態では、べ レ マソヒズム的性向が、その身体をつらぬいて流れてい のべッドに送りこむ候補者としてもはやふさわしくな ・アた。彼は書いている。「わたしは死ぬまでにあらゆるくなっていた。べイは彼を退けて、衛兵のなかからい 苦痛を知りたいと思って、たえず緊張していた。」しちばん年が若くて顔立ちのいいのを代わりに選ぶこと 4 かしつぎの一時間のあいだに、それまでも、またそのにした。ほかの者たちは、ロレンスを気の毒に思った