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検索対象: 現代世界ノンフィクション全集5
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1. 現代世界ノンフィクション全集5

つづれ織りが、それを盗んだ連中の手から奪いとられあい、議論しながら、そろぞろとドアから出てきた。 た。二人の男が・フロンズの時計を運び去った。品物は出てきた者は一人ずつ、自発的に委員になった者に擱 手荒く大急ぎで元の箱に詰めこまれ、自発的に歩哨とまえられて、ポケットを探られ、上衣の下を調べられ なった者が見張りに立った。何もかも自発的に行なわた。明らかに当人の所有物でない物はすべて取りあげ れたのである。廊下のむこうや、階段の上から、だんられ、テープルの男がそれを記録し、それから物品は だん遠ざかっていく叫び声が伝わってきた。「革命的 小さな部屋に運びこまれた。こうして驚くほど種々雑 規律だ ! 人民の財産 : : : 」 多な品物が没収された。小さな置物、インク壺、皇帝 西翼にある左手の入口へ、わたしたちは引き返した。の組合せ文字の入ったべッド・カ 、蝋燭、小さな そこでも秩序が確立されていた。「みんな宮殿から出油絵、卓上吸取紙、金の柄の剣、たくさんの石鹸、さ ろ ! 」と、一人の赤衛兵が奥のドアに首を突 0 こんでまざまな衣類、毛布。一人の赤衛兵はライフル銃を三 吠えた。「さあ、同志たち、われわれが泥棒や山賊挺も 0 ていたが、二挺は = ンケルから取り上げたもの じゃないってことを天下に示そうじゃないか。見張り だった。もう一人の赤衛兵は書類でふくれた折鞄を四 が配置につくまで、委員以外はみんな宮殿の外〈出てつも持 0 ていた。犯人たちは仏頂面で品物を引き渡す 間くれ。」 か、でなければ子供のように弁解するのだった。委員 二人の赤衛兵、一人の兵士、それに一人の士官が、 たちはロをすつばくして、盗みは人民の闘士にはふさ 拳銃を手にして立った。そのうしろのテ 1 ブルにむかわしくないと繰返した。まった連中はしばしば回れ ゅ 0 て、もう一人の兵士がペンと紙をもって坐 0 た。右をして、残りの同志たちの取り調べを手伝い始める 界「みんな出ろ ! みんな出ろ ! 」という叫び声が、建のだった。 物内のあちこちからきこえ、男たちは押しあい、諫め 三、四人ずつかたまってユンケルたちが出てきた。

2. 現代世界ノンフィクション全集5

ワンーリー って来たし、大臣たちも雁首を揃えていましたからね。 島から来た一人の赤衛兵は、偉大な蜂起 イワン・パヴロヴィチから盗み聞きの内容を聞いたとの日にワシーリー島で起こった出来事を詳しく話して くれた。「機関銃が一挺もなかったんです」と、その きは、午前二時半でした。連隊委員会の書記がそこに 居あわせたので、わたしたちは事情を話し、指示を仰男は笑いながら言った。「スモ 1 リヌイにいくら頼ん ぎました。 でも貰えない。そのとき地区ドウーマのウ。フラーヴァ 「『出入りする連中をみんな逮捕しろ ! 』と書記は言 ( 中央局 ) の一員だった同志ザルキンドが、ウ。フラー うんです。そこでわたしたちはその命令を実行に移しヴァの会議室にドイツ軍から分捕った機関銃が一挺置 ました。一時間のうちに士官数名と大臣二人をつかま いてあることを、ふと思い出したんですね。で、かれ えて、ただちにスモーリヌイへ送りました。ところが とわたしと、もう一人の同志とで、そこへ出かけて行 軍事革命委員会のほうは方針がきまっていなかったんった。折からメンシエヴィキと社会革命党が会議をや っていました。そこでです、われわれはドアをいきな ですね。どうしたらいいか分らなかったとみえて、ま もなく全員を釈放し誰も逮捕するなという命令が来まりあけて、ずかずか入って行きました。会議のテ 1 ・フ した。そこでわたしたちはスモーリヌイへ駆けつけ、 ルを囲んでいた連中は十二人か十五人もいたでしよう か。こっちはたった三人です。われわれの姿を見ると、 まる一時間もしゃべりまくったでしようか、ようやく スモ 1 リヌイの連中もこれが戦争だってことに気がっ連中は話をやめて、ただじっとわれわれを見つめるん いてくれた。参謀本部へ戻ってきたときは朝の五時でですね。こっちはさっさと部屋を突っ切って行って、 す。それまでに奴らはあらかたいなくなってしまった。機関銃を手早く分解しました。同志ザルキンドが一部 でも、残っていた何人かを逮捕して、駐屯軍はようや分を、わたしが残りの部分をとると、やっこらさと肩 に担いで出て来ちまったーー・その間、だれもなんにも く出発したというわけです : : : 」

3. 現代世界ノンフィクション全集5

「でも、同志たち ! ほら ! ここに軍事革命委員会「ただこれを読んでくれりやいいんだよ、同志。」女は こわごわ通行証を受けとり、早口に大きな声で読んだ。 の判コが押してある ! 」 二人はぼかんとしてわたしの通行証を眺め、それか この通行証の所持者ジョン・リードはアメリカ社 ら顔を見合わせた。 会民主主義の代表者であり、国際主義者であって : ・ 「ほかのとちがうーと、一人が不機嫌に言った。「お れたちは字が読めねえんだよ、兄弟。」 わたしはその兵士の腕を擱んだ。「来てくれ ! 」と、 ふたたび道路へ出ると、二人の兵士はもういちど相 わたしは言った。「あの家へ行こう。あそこにはきっ と字の読める人がいるだろう。」二人の兵士はためら談し合った。「きみを連隊委員会へ連れて行かなきや ならない」と、二人は言った。急速に深まっていくタ った。「だめだ」と、一人が言った。もう一人はわた しをしろじろ眺めた。「いいじゃないか」と、その兵闇のなか、わたしたちはぬかるみの道をと・ほとぼ歩き 士は呟いた。「なんてったって、無実の人間を殺した出した。ときどき出逢う兵士たちは、いずれも立ちど まり、威嚇的な顔つきでわたしをとり囲み、わたしの ら大変な罪だからな。」 わたしたちは別荘の玄関まで歩いて行って、ドアを通行証を次から次へと手渡して読みながら、わたしを 叩いた。出て来たのはずんぐりした女だったが、ぎよ殺すべきか否かについて激しく議論するのだった・ : ツア 1 ルスコエ・セロー第二歩兵連隊の兵営に着い っとしたように尻ごみし、「あの人たちのことは何も 知りませんよ ! あの人たちのことは何も知りませんたときは、もうまっくらだった。それは駅道に沿って よ ! 」と早口にしゃべり始めた。わたしを連行した兵群がる背の低いいくつかの建物だった。入口のあたり にだらしない恰好で立っていた大勢の兵士たちは、さ 士の一人が通行証を差し出した。女は金切声をあげた。

4. 現代世界ノンフィクション全集5

を労働者たちに見つかった 公式報告書によれば、コーヒーはヴラジヴォストーク 有産階級の大部分は革命よりもーーー時には臨時政府で四百五十グラム二ルー・フリの卸し値だったが、ペ よりも ドイツ軍をえらび、そのことを公言してログラードの消費者は十三ルしフリも払 0 ていた。大 らないのだった。わたしが下宿していたロシア人の家都市のあらゆる店には何トンもの食料や衣服があった 庭では、夕食の席の話題といえばきまって「法と秩が、それを買うことができるのは金持だけだったので ある。 序」をもたらすドイツ軍の到来ということだった : ある晩、わたしはモスクワの一商人の家を訪問した。 ある田舎町で、わたしは山師に転じた商人一家と知 お茶のとき、テー。フルについていた十一人のひとびと り合った。ロシア人は山師のことをマロジョール ( 山 に「ウイルヘルムかポリシエヴィキか」どちらをえら賊、食屍鬼 ) と呼ぶ。この一家の三人の息子たちは賄 ぶかと、わたしたちはたずねてみた。結果は十対一で賂によって兵役を逃れたのだった。一人は食料の闇屋 ウイルヘルムの勝だったのである : をやっていた。もう一人は非合法の金塊をレナ鉱山か 山師たちはこの全般的混乱に乗じて大金を儲け、そらフィンランドの怪しげな徒党へ流していた。もう一 の金を飲めや歌えの大騒ぎに、あるいは政府の役人の人の息子はあるチョコレート工場の大株主で、このエ 買収につかった。食料や燃料は死蔵され、さもなけれ場は地元の消費組合に製品を提供していたが、そのお ばひそかにスエーデンへ送り出された。たとえば革命返しとして組合はこの男に必要な一切の物を提供して の初めの四カ月間にベトログラード市有の大倉庫にあ いた。だから大衆が配給券で百グラムの黒パンを手に った予備の食料はほとんど公然と略奪され、二年分の入れているとき、この男には白。 ( ン、砂糖、茶、キャ 穀物の貯蔵が終いには市の人口を一カ月養うにも足り なんでもたつぶりあったので ンデー、菓子、タ 1 ないまでに減ってしまった : : : 臨時政府の元軍需相のある : : : にもかかわらず戦線の兵士たちが寒さと飢え は 6

5. 現代世界ノンフィクション全集5

委員たちはやけに熱心に身体検査をしながら、「おい、 志諸君 ) ! 」一人の兵士と一人の赤衛兵が戸口に現わ 挑発者 ! コルニ ーロフ派 ! 反革命 ! 人殺し ! 」れ、人ごみを整理した。つづいて銃に着剣した警護兵 などと罵声を浴びせるのだった。だが、ユンケルたちたちが出てきた。そのうしろから一列になって六人の はおびえていたけれども暴行は少しも加えられなかっ平服の男たちがやって来たーー臨時政府の閣僚である。 た。この連中も小さな掠奪品でポケットをふくらませ先頭は、蒼白な顔をゆがめたキシキンで、次は仏頂面 ていた。それらの品物は書記が丹念に記録し、小さなで床を眺めているル 1 テンベルクだった。次はテレシ 部屋に積みあげられた : : : ンケルたちは武装を解除チ = ンコで、鋭くあたりを睨みつけ、わたしたちに冷 された。「おい、お前は今後も人民にたいして武器をたい視線をそそいだ : ・ : ・閣僚たちは無言で通りすぎた。 とるか」と、荒々しい声が詰問した。 勝ち誇った反乱者たちはむらがって見物したが、低い 、え」と、ユンケルたちは一人ずつ答えた。しか怒りの声が何度かきこえただけだった。あとで分った るのちに釈放された。 ことだが、街頭の民衆はこの閣僚たちにリンチを加え わたしたちは中へ入っても、 ようとし、だれかが銃を発射したという しいかと訊ねた。委員た だが水兵 ちはあやふやな態度だったが、大男の赤衛兵がきつば たちはかれらをぶじにベトロバヴロフスク要塞まで送 りと、それは禁止されていると答えた。「いったいあり届けたのだった : んた方は何者ですかーと、その赤衛兵は問い返した。 そうこうするうちに、わたしたちは咎められること 「あんた方がみんなケレンスキ 1 側じゃないという保なく宮殿に入りこんだ。宮殿のなかでは、まだ大勢の 証がありますか。」 ( わたしたちは五人で、うち二人は人間がしきりに行き来して、この広大な建物のなかで 女だった ) 。 新たに発見された部屋を調べたり、いる筈のないユン 「パジャールスタ、タワーリシチー ( どいてくれ、同ケルの守備隊を探したりしていた。わたしたちは階上 ノ 08

6. 現代世界ノンフィクション全集5

キが攻めてきたら、戦争のやり方を教えてやりますよ。。フの最中に蒼くなったポ 1 イがやって来て、このレス やつらは卑怯者ですからね、戦う勇気なんかありやしトランのあかりを消したいから奥の大食堂へ移って下 ないんです。しかし万一われわれが負けたら、そのとさいと言った。「猛烈な撃ち合いが始まりそうなので」 きは、各自一発すつの弾丸を残しておいて : : : 」 と、ポーイは一一一一口った。 このとき、あまり遠くない所からライフル銃の射撃ふたたびモルスカヤ街に出たときはもうまっくらで、 音がひびいてきた。外の広場では、だれもが走り出し、ネフスキー通りの角に一つだけ街燈がまたたいていた。 地面に伏せをし、広場の禺こ ド冫いたイズヴォスチキ ( 御その街燈の下に、大きな装甲自動車がエンジンを空転 者 ) たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。宮殿させ、油煙を吐きながら止まっていた。一人の少年が のなかも大騒ぎになり、兵士たちは銃やライフル・ その横腹にのぼり、機関銃の銃身を見下ろしていた。 ベルトをんで走りまわりながら、「来たそ ! 来た兵士や水兵たちがまわりに群がり、明らかに何事かを そ ! 」と叫んだ : ・ ・ : だが二、三分たっと、また静かに待っていた。わたしたちは歩いて赤門まで戻った。赤 なった。イズヴォスチキたちは戻ってきたし、伏せて 門では一群の兵士たちがあかあかと輝く冬宮の窓を見 いた人々も起きあがった。赤門からユンケルたちが少つめながら、声高に話し合っていた。 蹴し乱れた歩調で行進してきた。なかの一人は両側から「いけない、同志たち」と、一人がしゃべっていた。 十 戦友に支えられていた。 「撃つなんてとんでもない。あそこには婦人部隊がい し わたしたちが冬宮を出たときは、もうタ方だった。 るんだ , ーーわれわれがロシアの婦人に発砲したと言わ ゅ広場の歩哨はみんな姿を消していた。大きな半円形をれてもいいのか。」 界描いた官庁の建物には人の気配がなかった。わたした ふたたびネフスキー通りに着いたとき、もう一台の ちは夕食をたべにホテル・フランスへ入ったが、ス 1 装甲自動車が角をまがってやって来た。一人の男が砲 9

7. 現代世界ノンフィクション全集5

レ 年一月初旬のことだった ) 。子供たちは、お菓子や贈続けた。一九一九年一月十九日の日曜日に、レーニン 物を買っていたのだが、その量はわずかしかなかった。は、ステファン・カシミロヴィッチ・ギルという三十 というのは、当時のモスクワの店頭ではそうしたもの歳になる運転手の運転する自動車に乗って、また出か がわずかしか買えなかったからである。だがそれは楽けた。彼はその時の話を次のようにしている。通りに しい集いであった。レーニンは、クリスマス・トリー を一がうず高く積っていた。誰も雪をかくものがいな のまわりで踊ったり、歌ったりしている子供たちの輪かった。自動車はゆっくりと進んでいった。そしてカ の中に入って遊んだ。彼らのうたう歌はクリスマス・ ランチェフスカヤ広場の近くまで来た時、「止れ ! 」と コーシュカ・ミーシュ トリ 1 の歌であった。それから彼らは、「ねことねずいう叫び声が聞こえた。ギルは、アクセルを踏んでス み」遊びをした。丸く輪が作られた。そして輪の中に ピ 1 ドを上げた。だが二、三百メートル先きに行くと、 いる一人の子供 ( ねこ ) が、輪の外にいるもう一人の今度は、ピストルを手にした数人の男たちが道の真中 子供 ( ねずみ ) を捕まえるために輪から脱け出そうと に立って、「止まれ ! 自動車を止めろ ! 」と叫んだ。 しなければならなかった。ねこが脱け出そうとすると、ギルは巡査がいないのを見て、彼らに向ってまっすぐ 輪のその部分がかたくしまり、ねこが今度は別の部分に突き進んた。「止まれ ! 止まらなければ撃っそ ! 」 から脱け出そうとすると、そこもまたすばやくかたくと、男たちの一人が叫んた。ギルはス。ヒードを上げて しまるのである。レーニンは、二人の生徒の手を握りそのまま通り過ぎてしまいたかったのだが、レーニン ンながら、ねずみに向うねこの攻撃をふせぐという輪のは彼に止まるようにと言った。 ニ戦略を引き受けていた。 「出てこい ! 急いで ! ーと、男たちが命令した。 新鮮な空気と休養は、クルプスカヤの病気の回復に レ 1 ニンは、ドアを開けて、言った。「いったいど % 4 役立った。そして彼女はソコリニキの森の中の生活をうしたんた ? 」 つど

8. 現代世界ノンフィクション全集5

すね。そこにあります」と、大佐は言った。「三日前たが逮捕しないんなら、おれたちが逮捕する。ベトロ 6 にここを占領したとき発見したままにしてあります。グラードへ連れて行って、ベトロバヴロフスクへぶち幻 箱の鍵 ? 」大佐は肩をすくめた。「わたしは鍵なんか こんでやる。こいつはぶちこまれるのが当然なんだ ! 」 持っておりませんよ。」 このことばに、ほかの赤衛兵たちも同意の叫び声をあ 赤衛兵は心得顔であざけった。「えらく都合のいい げた。わたしたちに悲しげな一瞥を投げて、大佐は連 れ去られた・ : 話じゃないか。」 「箱をあけよう」と、・ハクラノフは言った。「斧を持 ってきてくれ。この方はアメリカの同志だ。この方に ソヴェトの宮殿の前では、一台のトラックが前線へ 箱をあけてもらって、中味を記録してもらおう。」 むけて出発しようとしていた。五、六人の赤衛兵、数 わたしは斧をふるった。木の箱のなかはからっぽだ人の水兵、それに一人二人の兵士が、大男の労働者の 指揮の下に、そのトラックに乗りこみ、わたしにも一 「こいつを逮捕しよう」と、赤衛兵は大声で言った。緒に行かないかと叫んだ。赤衛兵たちは本部から派遣 「こいつはケレンスキ 1 の手先だ。金を盗んでケレンされた連中で、めいめいがグルビットを充填したなま スキ 1 に渡したのだ。」 こ板の小型爆弾を、重そうに腕にかかえていた。これ ・ハクラノフは気がすすまないように言った。「いや、はかれらの話によれば、ダイナマイトの十倍も強力で、 いかん。たぶんこの人の前にいたコルニーロフ派の仕五倍も敏感なのだという。その爆弾をどしどしトラッ クに放りこむのだった。三インチ砲が積みこまれ、ロ 業だろう。この人の罪じゃないよ。」 ープや針金でトラックの後部に縛りつけられた。 「冗談じゃねえや ! 」と、赤衛兵は叫んだ。「こいっ はケレンスキーの手先にまちがいないんだ。もしあん喚声をあげて、もちろん全速力で、わたしたちは出

9. 現代世界ノンフィクション全集5

言わないんですよ ! 」 は水曜日の午後、参謀本部の建物の引き渡しを拒んだ 「冬宮がどんなふうに占領されたか御存知ですか」と、委員のなかの一人だった。しかし、市民、われわれは もう一人の水兵が言った。「あれは十一時ごろだったあなたに用はない。・ とうも失礼しました・ーーー」そして かな、ネヴァ河の側にユンケルが一人もいなくなった ドアをあけ、トルストイ伯爵にむかって立ち去れとい ことが確認されたんです。で、われわれは方々のドアうように腕を振った。ほかの兵士たちは、とくに赤衛 から侵入して、別々の階段を一人ずつ、あるいは数人兵たちは抗議の呟きを発し、さっきの水兵はわが意を ずつ固まって、じわじわと登って行きました。ところ得たりとばかりに言った。「ヴォット ( ほら見ろ ) ! が階段を上りきったら、とっぜんュンケルが現われて、だから言わないこっちゃない。」 われわれは武器を取り上げられてしまった。それでも、次に二人の兵士が指揮官の注意をひいた。その二人 われわれの仲間は少しずつじわじわ上ってくるでしょ は要塞守備隊の抗議委員にえらばれたのだった。ただ う。じきにこっちのほうが優勢になってしまった。そでさえ食糧が不足しているというのに、囚人に衛兵と こで今度はひらきなおって、逆にユンケルの銃を取り同じ食事を与えるのはどうしてなのか、と二人は言っ 上げてやりましたよ : : : 」 た。「なぜ反革命の奴らをそんなに優遇しなきゃなら 間ちょうどこのとき指揮官が帰ってきたーー片腕を繃ないのですか。」 た帯で吊り、目の下に不眠の深い隈をこしらえた、屈託「それはわれわれが革命家であって、山賊じゃないか のなさそうな若い下士官である。入ってくるなり、こらだよーと、指揮官は答えた。それから指揮官はわた ゅの下士官はます捕虜を見つめた。捕虜はすぐにくどくしたちの方に向き直った。わたしたちは、ユンケルが 界どと弁明を始めた。 拷問され、大臣たちの生命が脅されているという噂が 「ああ、思い出した」と、指揮官は言った。「あなたあることを説明した。「囚人に逢わせていただけませ

10. 現代世界ノンフィクション全集5

たちはもう八カ月も委員会による自治を行なってきたの赤十字の車で外へ出てきたのである。車は市を一巡 のである。ケレンスキーのこの言葉はまるで旧制度そしてから、回り道をして反革命の本部であるミ ( イロ四 フスキー・ユンケル学校へ行った。その中庭では一人 のままではないか : : : 数分後、コサックの砲兵隊が兵 営に砲火をあびせ、八人の兵士を殺した。その瞬間かのフランス士官が指揮をとっているように見えたとい ・ : この方法で弾薬と食糧が電話交換局へ運びこま ら、ツアールスコエ・セローに「中立」の兵士は一人う : もいなくなった : れ、こういう偽救急車がほかに何台もユンケルへの伝 ベトログラードはライフル銃の発射音と、行進する令と弾薬輸送の役割を果たしたのだった。 兵士たちの足音に目ざめた。暗い、高い空の下、つめ解散したイギリス装甲自動車部隊のものだった五、 たい風は雪模様だった。夜明け頃、軍用ホテルと電信六台の装甲自動車が、ユンケルたちの手中にあった。 局がユンケル ( 士官候補生 ) の大部隊に占領されたが、 ルイズ・ブライアント ( 2 ド知リ ) が聖イサ 1 ク広場を 流血ののちに奪い返された。電話交換局は水兵たちに歩いていると、その一台が海軍省から電話交換局へむ 包囲された。水兵たちはモルスカヤ街のまんなかに築かって進んできたのである。ゴーゴリ街の角、ちょう いた樽や箱や・フリキ板のパリケ 1 ドの蔭に伏せ、あるどミス・プライアントの前で、エンジンがとまった。 いはゴロホヴァャ街と聖イサ 1 ク広場の角に身をかく積み上げた木材の蔭にかくれていた何人かの水兵たち して、動くものはなんでも撃っていた。ときどき赤十が射撃を始めた。装甲自動車の砲塔の機関銃がくるり 字の旗をひるがえした一台の自動車が出入りした。水とまわって、木材のバリケードと群衆のなかへ、無差 別に弾丸を吐き出した。ミス・ブライアントが立って 兵たちはその通過をゆるしていた : ・ アル・ハ いたアーチウェイ ( 拱道 ) では、七人が射殺され、そ ート・ライズ・ウィリアムズは電話交換局の とき なかにいた。そして表向きは負傷者を運ぶと称するそのうち二人は少年だった。とっぜん水兵たちが鬨の声