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検索対象: 現代世界ノンフィクション全集5
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1. 現代世界ノンフィクション全集5

レ れは、会場のすみのほうでくしやみをしたものを追い た時、レーニンはここのところで、その欄外に、「今 出そうとするほどであった。ラデックが演説を終ったや、このことは真実だ」と、書き込んだ。 時には、歓呼の声がほとんど天井を突き破らんばかり「雇われ人が所有者階級になった」と、ラーリンは続 けていた。 であった。」 多くの工場が閉鎖されていた。国の機関車の半分以「ばかげている」と、レーニンはこれを批評した。 レーニンは、ラ 1 リンの考えに、微妙なしかし決定 上がひどい故障をしているか、またはまったく使いも のにならなくなっていた。活気のある国民経済と生気的な矛盾があることに気づいた。レーニンは、工業の のない国民経済との差は、無教育なものでさえ非常に支配者が、国家というものに具体化された、団結した はっきりと見分けることができた。ほとんどの労働者。フロレタリアートである、という点には同意した。し が、重労働と規律は自分たち自身の利益のために必要かし、労働者は、その所有権を国家に与えている、し たがって、労働者はもはや所有者ではないし、彼らが なのだということを理解していた。その上、数世紀も の間ツアーリズムに服従してきたために、国家への服所有者だと言うのは「ばかげて」いる、こう彼は考え 従は習性になっていた。しかも、その国家は彼らの国たのである。これはあなたの工場、あなたの鉱山、あ 家である、とラ ] リンは彼らに言っていた。そして彼なたの鉄道です、だからあなたのすべてを捧げなさい、 は、一九二〇年三月二十日の月刊『エコノミーチェスとソヴェトの宣伝は絶えまなく繰り返していた。しか ンカヤ・ジーズニ』でこう言ってたのである。「一九一し、レーニンは、彼らが所有者であるとは信じていな 七年十一月革命は、団結した。フロレタリアートを、資かったのである。幾人かの者たちは、この宣伝を真面 本主義の雇われ奴隷から、。フロレタリアの国家を通じ目に受け取り、自分たちの所有物を管理したがった。 て、産業の支配者に変えた。」そしてこの論文を読んだがほとんどの者たちは、これまで常にそうしてきた

2. 現代世界ノンフィクション全集5

自分の家族全体のことは考えないで、自分の腹ぐあい デッキにぶら下ったり、車輛の鉄の屋根にしがみつい 4 ばかり考えるのでしようか ? 」 ていなければならなかったかもしれない。 こちらの乾 大穀倉には、麦粉と穀物のストックがつくられ、民 パンはほかのにくらべてわずかだが白い。こんな白め 衆は黒いライ麦のパンを集め、それを乾燥させて乾。 ( のパンは、子供用配給券でないと手に入らない。とす ンを作るのだった。 れば、これを持ってきたのは、母親だろうか、息子た 黒い乾パン、黒い乾パン ! ろうか ? 燕麦製のビスケットもある、燕麦は二日お 二つずつ、三つずつ、 黒い乾パンは党やコムソモ 1 ルの各地区委員会へ、労きの三日に一度、。ハンの代りに配給券でもらえる。 働組合や工場委員会へ持ちこまれてきた、白いぼろ布集まった乾パンは紙袋に入れて細紐でしばり、戸棚 にしまっておかれた。そこで、外国の兄弟たちを助け にくるまれて運びこまれると、貴重な。ハンのかけらの ひとつもなくすことがないように、注意深く机の上にるために送りだされる折がくるのを待っことになるの ミ」っこ 0 ュ / ノ 取りだされるのだった。 飢餓に悩むロシアがドイツ勤労者に送ったその神聖 これらの乾パンのひとつひとつには、どれだけたく なパン、それはこのようなパンだった ! さんのエ。ヒソ 1 ドが秘められていることか。幾何学的 に正しい長方形の、薄くて黒い乾パンもある。これは ソヴェト政府が仕立てた最初の二本の貨物輸送列車 半分に切った四キログラムの配給パンだ。こちらにあが、十一月十一日、パンを積み込んでドイツにむかっ た。モスクワのアレクサンドロフスキー駅 ( 現在の白 る半円形のふくらみをもった乾パンも、かっては丸い 小型パンの端っこだった。モスクワではこんなパンをロシア駅 ) の貨物駅では、新しい軍用輸送列車の積込 焼いていないから、農村から運びこまれたものである。みが行なわれた。黒い乾パンの袋も、麦粉とともに積 これをモスクワに運んできたものは、いく晩も汽車のみ込まれた。

3. 現代世界ノンフィクション全集5

待遇を保証されて、地区ソヴェトの本部に昼夜ぶっと爆発におびえて、ベトログラードに帰り、秘密条約文 おしで勤務した。市内の各地区には、労働者と兵士た書をトロッキーに渡した。トロッキーはそれを『プラ ちによって小さな革命裁判所が選出され、犯罪を処ウダ』紙上に公表し、世界的なスキャンダルが巻き起 理した : ・ 山師たちが盛大に商売をつづけていた大ホテルは、 出版にかんする制限は、広告を政府機関紙の独占と 赤衛兵に包囲され、山師たちは投獄された・ : する布告によって一段と強化された。ほかの新聞は抗 敏捷になり、疑い深くなったこの町の労働者階級は、議の意味をこめて発行を一時停止し、あるいはこの法 ・ : この新聞騒動 それ自体が巨大なスパイ組織と化し、召使いたちを通律を破って発行停止の処分を受けた・ : じて・フルジョア家庭を探り、いろいろな情報を軍事革がおさまったのは三週間後のことである。 命委員会に伝えた。軍事革命委員会は絶えまなく鉄腕各官庁のストライキは依然としてつづけられ、年配 をふるった。こんなふうにして、元ドウーマ議員のプの役人たちのサポタージュも、正常な経済生活の中断 ーリヌイを支持す リシケーヴィチと一群の貴族や将校たちに率いられたも、依然としてつづいていた。スモ 帝制主義者たちの陰謀が発覚したのである。この連中るのは、広大な未組織大衆の意志だけだった。人民委 は将校たちの蜂起を計画し、カレ 1 ジンをベトログラ員会議はその大衆の意志のみをよりどころとして、敵 にたいする革命的大衆行動を指導していた。単純なこ トへ招く手紙を書いたのだった : : : またカレージン に資金や補充兵を送っていたベトログラードの立憲民とばで書かれ、ロシア全国にばらまかれた雄弁な声明 主党員の陰謀も、同じようにして発覚したのである : ・文のなかで、レーニンは革命の意義を説明し、民衆は 権力を自分の手に握って、有産階級の抵抗をカで打ち ネラトフは、自分の逃亡がもたらした民衆の怒りの破り、政府機関をカで乗っとるべぎであると説いた。

4. 現代世界ノンフィクション全集5

空気そのものが重苦しく思われたーーそれほどまで空動の隊列からいかにして裏切者どもを放逐すべきか ? 気は憎しみにみちみちていたのである ! 労働者階級の大多数をどうして自分の側に獲得すべき認 ・ : 新年が近づいた。不安にみちた時代ではあった肝心なのは政治的アジテーションだと考えている者 が、それでもクルトの同志のスパルタクス団員たちは : いた ( 「ドイツ労働者のひとりひとりがわれわれのい 新年をいっしょに迎えることに決めた。お金を出しあうことに耳を傾けるようにしなければならぬ」 ) 。また 、品物をめいめいが持ちょって夜食がととのえられ経済闘争の展開にすべての注意を向けるべきだと考え た。ある者はじゃがいもを少々、ある者はかぶを少々、る者もいた ( 「労働者が自己の階級敵と直接ぶつかると ある者はどんぐりのコーヒーを一包みといったふうに。 ころに重心がなくてはならぬ。労働者がブルジョアジ ほんもののモゼールのぶどう酒を一本、どこからか手ーと四つに組んで闘うようにしむけよ」 ) 。さらには、 に入れてきた同志もいた。 大衆が革命的イニシアチヴを発揮することに期待をか ぶどう酒はすでに飲みほされ、手数のかからない夜ける者もいた ( 「運動は上から下でなく、下から上へと 食もすっかり平らげられると、会話は、ここに集まっ 行なわれるべきだ。大衆は自分の言葉を語るであろ た人たちの生きがいであるもの、つまりドイツ革命のう」 ) 。 運命へと移った。 独立社会民主党員たちの立場はとくべつの不安を呼 なにをすべきなのか ? 革命が斜面を急転落するのびおこしていた。この党を牛耳っていたのは、本質に をいかにくい止めるか ? 動揺している連中をどうしおいてシャイデマン一派となに異なるところのない連 て自分たちの側に引き入れるか ? 思いちがいしてい 中だった。カウッキーも、修正主義の父ベルンシュタ る連中の頭をいかにしてはっきりさせるか ? 労働運インも党内にいた。また党内には、左翼的な言辞をあ

5. 現代世界ノンフィクション全集5

レーニンは聞き、質問を出し、クル。フスカヤと愉快だ。そのとき扉をノックする音がした。人民委員会議 そうに目を交わしていた。とくに彼が関心をもったの書記ゴルプノフがやってきたのだった。黒い絹布につ は、民衆が話していることたった。「ソヴェト権力はつんで縫い合わせた包みを手に持っていた。 からつ。ほの財布から始めたんだ。たとえ四半斤のパン 「同志レーニン、アメリカの同志がやってきて、これ にせよ、とにかく新しい収穫のときまでおれたちを食をあなたにとのことです」と彼がいった。 べさせてくれたんだから」と語ったプロホフカ出身の レーニンはナイフで絹布の縫目を切ると、封筒をあ 労働者のこと、「組織活動に専心するために、針仕事けて、薄っぺらい紙きれに書いてある手紙を取りだし をやめました」と自分の生活を話していた第一回婦人た。テー・フルでは、相変らず共通の話題に花が咲いて 労働者大会代議員のこと。 「『組織活動に専心する』と言ったのかね ? 」レーニ クルプスカヤが突然立ちあがった。 ンが問い返した。 「ヴォロージャ、どうかしました ? 」 「ええ、そうです 0 」 レーニンの顔は蒼白で、唇までが白くなっていた。 「どうかね、え、ナージャ ? で、どんな人、その婦思わずみなは、 = ス・エルの弾丸がまだ残 0 たままの 人は ? 若い人、年とった人 ? 」 彼の左肩に眼をやった。しかし彼は首をふった。 コ一十五歳です。三人の子持ちです。子供たちに会う「いや、なんでもない : : まあちょっと聞きたまえ ! 」 のは月のうち三時間そこそこだという話ですが、子供そういうと、声を抑えて読みはじめた。 たちはちいさい時から自分のことは自分でするように 「サンフランシスコ ( カリフォルニア ) 、一九一八年七 しつけられているそうですよ。」 月四日。獄中にて。 クルプスカヤが二杯目のお茶をみなにたっぷりつい 私のすべての同志、ロシアの兄弟の同志たちへ。

6. 現代世界ノンフィクション全集5

ラか窓のあかりに照らされていたのだろうか ? ・ーー私り返った。私は、彼を驚かさないように声をかけなけ ればならなかった。 は何か予感がした。 ル・イリィッチ : 。こんなに遅 『ゃあ、ウラジ 「レ 1 ニンだろうか ? のく、こんな天気にどうしたんですか ? 』 「一人で ? こんなに遅く ? しかも彼のアパート 『ゃあ、 : : : 頭痛がして眠れなくってね。新鮮な空気 方角ではなく、堤防のほうに向って歩いている ? ほ んとうに彼なのだろうか ? 上着のえりを立て、帽子に当ろうと出てきたんだよ。ところであなたは ? 』 をひたいにまでまぶかにかぶっている。まちがいなく「私は、自分が今戻ってきた集会のことを彼に話した。 ウラジー ・イリィッチは、私が最近どんな工場 彼だ。だがこの暗い夜の不穏な静けさの中に、彼を見 過していってよいのだろうか ? 昨晩聞こえた銃声はを訪ねているか、またそこではどんなことが起ってい 何だったのだろう ? 私はポケットのピストルに指をるか、また労働者はどんな様子であるか、私にたずね 触れた。レー = ンに追いっかなければならない、そした。周知のように、彼は必要な事実をあらゆる人から て彼を一人にしておいてはならない。しかし彼は一人手に入れることができる能力を持っていた。 「私は、。フロホロフカでの、またアレクサンドロフス でいることを望んでいるのかもしれない。彼に近づい て、彼と話をとりかわし、彼の孤独な散歩を邪覧してキ 1 駅売店でのまったく荒れ狂った集会のことを彼に 話し、そしてわれわれがかろうじて発言権を得ること よいものだろうか ? 「いや、このまま行ってしまえば恐ろしいことになるができたこと、そして演壇からは文字通り引きずりお かもしれない。もしそうなったら : : : 。私が彼を見過ろされたことを話し、さらに次のように言った。労働 して行くことはけっして許されることではない。彼の者の感情は悪化しています。そしてそれには十分な理 : レーニンは私の足音を聞いて、振由があります。つい最近もまた、配給通帳に対して何 あとを追おう。 4

7. 現代世界ノンフィクション全集5

「ここへ連行される途中で起こった小さな事件を別に んか。そうすれば世間に真相をーー」 6 「いや」と、若い下士官は苛立たしそうに言った。すれば、大臣たちは充分な配慮をもって待遇されておな 「また囚人たちを起こすわけにはいきません。さっきります。ュンケルたちにいたっては、かすり傷を受け 一度叩き起こしたばかりですからねーー殺されるのかた者もありません : : : 」 ネフスキー通りでは、 ; カらんとした夜半すぎの黒 とびくびくしていたようです : : : いずれにせよ、ユン ケルは大部分釈放されました。残っている者もあしたのなかを、果てしない兵士たちの列が黙々と足をひき ずっていた , ーーケレンスキーとの戦いにむかう兵士た は釈放されます。」指揮官は忙しそうにそっ。ほを向い た。「じやドウーマの調査団の話を聞いても構いませちである。暗い裏通りでは、あかりをつけない自動車 があちこちへ疾走し、農民ソヴェト本部のあるフォン んね ? 」 自分でお茶をいれていた指揮官はうなずいた。「連タンカ六番地や、ネフスキー通りの巨大な建物のなか の一室や、インジェネールヌイ・ザーモック ( 技術者 中はまだ廊下にいますよ」と、無頓着そうに言った。 ほんとうに調査団の人々はドアのすぐ前に立ち、石学校 ) などでは、何やら怪しげな活動が行なわれてい こ。市ドウーマのあかりは消えなかった : 油ラン。フのかすかなあかりのなか、市長をとりかこんナ一 スモ 1 リヌイ学院では、軍事革命委員会が過負荷状 で寄り集まり、興奮したように話し合っていた。 「市長さん」と、わたしは言「た。「わたしたちはア態のダイナモのように鼓動しながら、毒ある炎をひら メリカの新聞記者です。調査の結果を公式に発表してめかしていた・ : いただけませんか。」 市長は振返り、上品な顔をわたしたちにむけた。 「噂は事実無根でした」と、市長はゆっくり言った。

8. 現代世界ノンフィクション全集5

パーソナリティ レーニンの人格には多くの面があった。だがわれ これを批評して、言った。「私はそれを毎日聞いてい 6 たい。それは不思議な超人的な音楽だ。おそらく私がわれには、それらのすべての面を理解する鍵は与えら おろかなためなんでしようが、いつも私は、人間はなれていない。しかし、その夜の演奏会での彼の言葉は、 んと不思議なことをできるものだと、誇らかに思うのそれらの多くの面を理解する鍵をわれわれに与えてい る。彼の仕事の最も困難な点は、彼の心の中の人間ら 「それから、彼は、目をす・ほめて、ほほえみながら」、しさを抑え、頭蓋骨を割る力をつけることであった。 ゴリキ 1 の回想は続く 、「やや悲しそうにこ彼は、柔かい手をかばうために鉄の手袋をはめた。そ パーンナリティ う付け加えた。『しかし私は、この音楽をあまりひんしてたとえ自分の人格の中にどんな柔かさが残され パーンナリティ ばんに聞くことはできません。それを聞くと、私の神ていようとも、その人格が自らの義務の妨げになら 経は興奮し、私は、親切でつまらぬことを言いたくな ないようにと心がけた。彼は、他人を訓練する前に、 り、この堕落した地獄に生活していながら、こんな美自分を訓練していた。そして他人を抑制する前に、自 しいものを創ることのできる人びとの頭をなでたくな分を抑制していた。彼は、自分の魂を、「革命」とい う偶像に売り、その残忍な命令に従っていたのである。 るのです。だが今は、誰の頭もなでてはいけませんー ーもしそうしようものなら、彼らはあなたの手をかみ比類なく美しいソナタを聞いても、彼には、人生のよ 切ってしまうでしよう。だから、理想としてはわれわりすばらしいことを思いだすことはけっして許されて れは誰に対しても暴力をふるうことに反対しているに いなかった。音楽は彼の神経を興奮させた。なぜなら、 もかかわらず、あなたは、彼らの頭をなぐらなければ、その音楽が伝えるものを彼はなんとしてでも締めださ しかも容赦なくなぐらなければいけないのです。うん、なければならなかったからである。彼は、「勝利」と うん、これは、大きな難かしい仕事なんですよ。』」 いう主君に仕えて、戦っていた。彼は、たばこも酒も

9. 現代世界ノンフィクション全集5

《こした。 どうにかこうにかであるが、私たちはつじつまをあ 6 私たちの打ち合わせで、クルトは、私を自分の妻とわせていた。隣人たちは私たちに根掘り葉掘りたずね るし、私たちも彼らにいろいろたずねた。私たちがど して隣人に紹介するよう、あらかじめ姉に注意した。 エルナは私のために、死んだ自分の娘の服と下着を取んな話をしようと、話題はいつも、彼らの胸のうちに り出し、湯をわかしてくれた。私とクルトが順に身体大きくわだかまっている問題ーー。飢餓にたちもどるの 。こっこ 0 を洗っている間に、彼女は買物にでかけていった。 ロシアにいて、私たちは飢餓がどんなものか知って テープルに、砂糖漬けの果物がのつかった、ふかふ かのケ 1 キが出され、ソ 1 セ 1 ジが置かれ、お茶がコ いた。五十グラムずつのパンで何カ月も暮し、その五 ップに注がれた。ケーキといっても、寒気でいたんだ十グラムのパンでさえも何日間か手に入らなかったの じゃがいも製たったし、砂糖漬けの果物は、実は砂糖である。 それでもやはり、私たちの飢餓は、ドイツの労働者 入りの糊、ソーセージはえんどう豆のそれだった。お 茶も、ブナの葉っぱで出した。この代用品を買うのに、の奥さん連がロにしているものと性質がちがっていた。 エルナは自分のたったひとつの金の指輪を売ったので私たちが飢えたのは戦争によるものだし、彼らが飢え ある。 ているのは戦争のためだったのだから、私たちの飢餓 疲労のあまり、私たちはほとんど二十四時間、死んは身にふりかかった災難であり、権力を握り、白衛軍 だように眠った。翌朝クルトは、同志たちを探しにでや干渉軍を粉砕し、生産を組織すればただちに振り落 かけ、私は家に残った。ドアのベルがたえず鳴った。 せるものと、つねに期待しているそれである。彼らの 「小さなロシア人の奥さん」を見に、隣人たちがやっ飢餓は運命づけられた飢餓だった。 てくるのである。 戦争という非悟の機械は、この飢餓を計算し、調整

10. 現代世界ノンフィクション全集5

市民諸君 ! 国立銀行の金は諸君のものであり、 なぜなら政府は自分たちの政府であり、自分たちのソ 諸君の労働、諸君の血と汗によって獲得された国民ヴェトであってーー官庁の役人たちはその敵だからで の財産である。市民諸君 ! 国民の財産を強奪からある・ : 救い、われわれを暴力から救え。そうすればわれわ こういうさまざまな敵対行為の中心には、市ドウー マと、その戦闘機関である救済委員会があった。救済 れはただちに仕事を再開する発ろう。 国立銀行従業員一同委員会は人民委員会議のすべての布告に抗議し、ソ ヴェト政府の不承認を再三再四決議し、モギレフに樹 軍需省や、大蔵省、それに特別配給委員会の役人た立された新しい反革命「政府」に公然と協力していた ちは、職員の仕事を不可能にしているのは軍事革命委のである : : : たとえば十一月十七日、救済委員会は「す 員会であるという宣言文や、住民はスモーリヌイに反べての市自治体、ゼムストヴォ ( 地方自治会 ) 、すべ 対し自分たちを支持してもらいたいという檄文を発しての農民・労働者・兵士その他の市民の民主的・革命 ・ : だが支配権を握った労働者や兵士はこういう文的組織にあてて」次のような文章を発表した。 章を信じなかった。官庁の職員たちはサポタージュを ポリシエヴィキの政府を認めるな、それに反抗し やり、軍隊を飢えさせ、国民を飢えさせているのだと て戦え。 たいう考えが、民衆のむにはつぎりと刻まれていたので し ある : : : 厳しい冬の街路に相変らずパンを求める人々 全ロシア救済委員会が自らに課した仕事を援助す る るために、各地方に祖国と革命の救済委員会を形成 ゅの長い行列ができていたが、そこで怨嗟の的となるの し、すべての民主勢力を結集せよ : ・ 界は、ケレンスキー時代のように政府ではなくて、チノ 1 ヴニキ ( 役人たち ) であり、怠業者たちであった。 287