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検索対象: 現代世界ノンフィクション全集6
456件見つかりました。

1. 現代世界ノンフィクション全集6

治権力によってパックされないときには、あぶなっか るほど強くもなければ、親密でもないが。 6 だから、現在ではギリシャ人船主の多数の有力でおしいものである。それは羨望を招き、新聞記者のあく いかさま師の名人や そろしく金持の国際的な閥が存在している、といってことを知らぬ好奇心の的になり、 よいであろう。個々人の性格・経歴・考え方がどんな職業的なゆすりのいやらしい注目をひき、最後にこれ また重大なことだが、税務署からたえず目をつけられ にちがっていても、これらへラスのコスモポリタンに は、多くの共通の特徴がある。彼らはほとんど例外なる。これらの敵やその他敵になりそうなものに対して、 しに、そのギリシャの出生と伝統を大いに誇りとしてギリシャ人船主は、黙契による一種の相互防衛条約に いる。しかし、これは国家主義的な情緒ではないし、結東する。事業内容をさぐろうとする税務署の人間に ギリシャの故国、その政府や国旗への強い愛着を反映対しては、迷路のようにわかりにくい法人の仕組みが、 するものでもない。むしろ、人種的な親近感と文化的防衛の第一線である一方、うるさく質問する新聞記者 ・コメント」というのがお得意の返 に対しては「ノ 1 な一体感が、共通の利益の実現や、敵対的な世界に対 してこの利益を守る必要と、重なり合ったものであ答である。 る。それはいわば、人間が火星に着陸して、帰途の旅主としてこういう点があるからこそ、人目につく陽 が不安に思われるとき、人間探険者の集団を結東させ気なオナシスは、おそかれ早かれ、ギリシャ人船主の るであろうような感情である。 閥と衝突する運命にあったのだ。人目につかぬことを これらギリシャ人船主の精神的な装備にあっては、 好む百万長者たちの無ロな社会にあっては、一挙手一 自動的な防御のメカニズムが目立っている。これまた、投足が人目をひく人間は歓迎されない。長年の間、ギ 世界各地の異郷に散在する他の民族にも共通する特徴リシャ人船主の団体は静かに繁栄し、新聞や公衆には である。大きな財力は、それが祖国に根をもたす、政ほとんど気づかれなかったのに、オナシスが突如とし

2. 現代世界ノンフィクション全集6

う既成事実がなかったとしても、二人が大体同じ線で取引きを自分で考えていたことは、少しの疑いもない ところだし、その後の出来事はこの見方を徹底的に証引 考えていたことは明白であった。 ンヤ、ト , がサウディ・アラビアのこの件にどの範囲明した。 一部の著作家たちがいっていることだが、事件に関 まで参加したか、真実はわからずじまいになるだろう。 ドラマの主役たちはすべて、この点については慎重な係した各種各様のアラブの役人が、サウド王の目をく 沈黙を守る道をえらんだからである。カタボディスをらましたというのは、正しくない。それどころか逆に、 と 0 てみると、彼はこの件についてのシャ ( トの実際国王はいくつかの機会に、自分がオナシスとの取引き の役割を軽視する傾きがあ 0 た。このプローカーはあを望んでいたこと、結局は結ばれた協定が自分の明白 とあとまで、自分とコミンジョグル ] だけが計画の発な承認を得たものであることを明らかにした。この件 案者であると信じていた。これは決して絶対確実なこで同意された高官への " 個人的。礼金については、知 とではない。それよりはむしろ、この計画が生じたのらなかったこともあろうが、この礼金が決定的役割を 演じたのでは絶対になかった。どのような贈収賄が含 は、いろいろな人々が全面的に腹を割って話し合い 普通の目標について多少とも潜在意識的な認識が生じまれていたにせよ、それは免税とい 0 た魅力的な条件 をかち得る目的に役立っただけであった。サウディ・ た結果のように思われる。 カタボディスが細目の多く、ことに財政面での多くアラビア政府から原則的な同意を得るためというより は、この件を促進するだけのことであった。 を考え出し、とりきめるのに重要な役割を果したこと 彼したがって、ドルやセントの見地でこの取引きから は、みとめてよい。だが、同様に確実なことだが、 , がいなくとも、基本的な目的や諒解はでき上ったはず最も利益を得たのが、オナシスであるかサウド王であ である。ともあれ、サウディ・アラビア側がああいうるか、あるいは他の誰かであるかという問題に、アメ

3. 現代世界ノンフィクション全集6

これは納得できる証言でないかもしれないが、しか察が、反ロイド・ジョ 1 ジ活動に対して真剣に対策を し、 考えたことはまちがいない。それだからこそ、警察署 6 ハーミンガムのリべラル・ユニオニスト紙が 常に罵倒的な挑発的なそして脅迫的な投書に、その通長は騒動を予想して、騒ぎが起れば公会堂からケ 1 ナ 1 ヴァン選挙区選出議員のロイド・ジョージをこっそ 信欄を開放したことは事実である。これは、すべて口 イド・ジョージに対する憎悪を煽るためであった。投り連れ出す計画を、事前に練ったのであった。 書はほとんど匿名であったが、「パックス ( 平和の女 ロイド・ジョージの演説にイギリスの兵器会社がお 神 ) 」と署名した手紙には、「暴動は避けられぬ」と書どろき、その暗躍ぶりを隠すのに都合のよい煙幕を探 いてあった。 しはじめた、ということも充分にありうる。ブーア戦 ストー = ィア警官の体験は、もっと直接的であった。争は、狂信的な愛国心と野蛮な主戦論によってひき起 されたが、今や逆にその主導者にとっても苦々しいも ーミンガムの警察署長は、暴徒がロイド・ジョ ジを捕えたら、殺すだろうと確信していました。誰かのになりつつあった。ロイド・ジョージは、かってプ 不明の人物に雇われたならず者どもが、ロイド・ジョ ーア戦争に関連して自党の議員を攻撃したため、影響 ンガム公会堂の事件があっ ージの演説会を混乱させ、どんなことをしてでも彼が力を失っていたが、。ハ 演説するのを阻止せよと、計画的に煽動されていましてからは、影響力をある程度回復した。兵器産業界の た。外国人が一人、この目的のためバ 1 ミンガムへき大立者が演するのに、平和交渉ほど効果的な煙幕が、 ているという情報を、われわれは擱んでいました。そほかにあろうか。しかし、この場合、調停者となった して、その男がバジル・ザ ( ロフであることが判明しのはザ ( ロフではなかった。しかし、彼が南アメリカ ました。」 でとったやり口を、主人どもに教えたということは充 この証言は信頼できるであろう。く / ーミンガムの警分考えられるであろう。プーアの代表がすでにハ 1 グ

4. 現代世界ノンフィクション全集6

『ニューヨーク・タイムズ』のカイロ電は次のように そのような取りきめは、明らかに表面だけの体裁で 報じた。 あったろう。というのは、一九三三年には、サウディ 「大手筋の石油会社は、ギリシャ生まれでアルゼン の商船隊は約一千トンの船一隻だけだったから、この チン国籍の大海運業者アリストテレス・オナシスの 優先条項は全く架空のものであった。しかし、国有の タンカー船隊に対して、ポイコットを開始した。彼 船舶が百万トン ( それをオナシスは容易に提供し、サ らの希望するところは、オナシスとサウディ・アラ ウデイ政府のために運行できた ) あれば、独立系やア ビア政府との独占的といわれる石油輸送契約の修正 メリカの石油会社のタンカ 1 船隊は、ほとんど出る幕 を余儀なくさせることである。 がなくなってしまったであろう。さらにまた、それは 本日当地の石油筋でのべられたところでは、この まず確実に擬制的な取引きであっただろう。というの ポイコットは、契約が大手筋石油会社の満足のいく は、「アラムコ」の利権料から毎年うけとる二億ドル ように修正されぬかぎり、オナシス氏のタンカー帝 以上の収入があったとしても、サウド王は百万トンの 国を破壊する世界的規模の戦略の第一段階である。 買いとる財力がなかったからである。 タンカーをズ。ハリ オナシス氏に対するこのキャンペ】ンは、アメリカ だからこそ、この船隊を運行するのに、オナシス氏 政府の暗黙の支持を得ているといわれる。」 のサ 1 ビスに待っと提案したのだ。しかし、この言い ポイコットの期間中、一時はオナシス船隊の半分ほ 抜けがどんなに見えすいたものであれ、それは即座に ス ども遊休しているといわれた。なるほど、それは少な 「アラムコ」とアメリカ政府によって拒絶された。 シ くとも部分的には、タンカー業界の世界的不況の結果 オその一方、石油会社側は、その手中にある最も鋭利 だったかもしれぬが、いずれにせよオナシスは、有力 運な武器を動かしはじめた。二年前イランをひざまずか せた武器、つまり世界的規模の経済ポイ = ットである。な敵を相手にしていることを知 0 ていた。

5. 現代世界ノンフィクション全集6

講座をパリ大学に寄贈した。一九三六年十一月二十七日没。」 ( 日本の「岩波・世界人名辞典」も大体そういう記述に依っ 解題 ている。 ) しかし、この人物の真相は掘れば掘るほど奇怪になり、謎 を生むばかりというありさまである。有能高名なジャーナリ ストのマコ ーミック ( ロイド・ジョージ、マン一アス・フラン 死の商人ザハロフ スの評伝その他多くの著書がある ) は、先行の多くのザハロ フ研究をふまえて、この評伝を書き、これは識者が着目し評 謎の多い伝説的人物ーー呪われたる、と形容詞をもう一つ パジル・ザハロフについて、まず価するところとなったのである。将来さらに新奇怪異な事実 つけてもよいだろうが が掘りだされるかも知れぬとして、今日のところ、これでわ 一応の標準的説明を見るために、・フリタニカ百科全書 ( 一九 れわれはザハロフ像を持っということになる。 六三年版 ) をひらくとすれば、左のようにしるされている。 ザハロフは第一次世界大戦をその活動の頂点とした人物で 「財政家、政治家。アナトリアのムグラーにギリシャ人を両 親として、一八四九年十月六日に生まれた。世界最大の富豪ある。国際経済、国際戦争に個人的プレイが占める比重は今 日ではこんなに大きなものではあり得なくなっているわけで のひとりと評判されたが、その富を兵器産業、造船、石油そ ある。マコ ーミックも示唆しているように、巨大な企業体が の他の企業で積んだ。直接的にではないとしても、第一次世 国際の政治と経済とを縦断し横断して結びつき、それが軍部、 界大戦および。ハリ講和会議に強大な影響をふるい、ロイド・ さらに大学その他の研究機関と結びついて、測りがたいほど ジョ 1 ジ、ヴェニゼロス、クレマンソー、・フリアン等の親友 であり政治顧問であった。その間、英仏政府にきわめて巨大複雑なコムプレックス ( 複合体 ) をつくっている。人類への 題な財的援助をし、その戦争協力に対して両国から栄誉をさす脅威は幾何学的級数をもって倍加激増してきており、今日も ベトログラド、ロンドンの その傾向は継続中である。しかし、このザハロフは、このよ けられた。 うな現実を世界にみちびきだすところの重大な先駆者、もし 4 大学に航空学講座を設置し、フォシュ元帥記念フランス文学 解 くは過渡的存在であるという悪名を歴史上にいつまでも持ち 講座をオクスフォ 1 ド大学に、ヘーグ元帥記念イギリス文学

6. 現代世界ノンフィクション全集6

しかも、ギリシャ人の息子たちが世界的に海運に卓越る船はすべて百パーセント、ギリシャ人乗組員をのせ なければならぬという政府の主張にも閉口させられた。 しているにもかかわらず、ギリシャそのものの船籍に 彼らはこの規則により、水増し雇用をせねばならぬこ ある船は比較的少数であった。 二とや、その他について苦情をもった。 外国の港で運営しているギリシャ人船主は、一、 の例外はあるだろうが、政治的亡命者ではない。彼ら税金も集団的な紛争で大きな役割を演じた。大体に は大部分、アテネ政府と話し合える立場にある , ーーたおいて貧しく戦災をうけたギリシャ政府は、わずかし かない有望な財源のひとっとして、船主に対してかな だし両者の関係は総じて友好的というにはほど遠いが。 りきつい課税をおしつけようとした。 第二次大戦以来、海外に定住するギリシャ人船主は、 ノの相っ いくつかの点でアテネと仲たがいした。ひとつは、ギ 戦後の共産主義者の暴動やドラクマ (\ っ第 リシャ政府が戦時中のギリシャ船籍の船の喪失に支払ぐ平価切下げにみられるような、本国の政治的財政的 不安定を計算に入れると、オナシスやギリシャ人大船 うべき保障金の三割を凍結したことであった。船主側 は、自分の希望するところに再投資するため、全額を主の大半が海外で商売をする方をえらんだのは、見や うけとる権利があると主張した。政府は「いや、諸君すい道理である。 ヘラスの放 ~ 湯息子どもを、その船とともに父祖の岸 の船をギリシャ船籍にしておかなければならぬ。さも 辺につれかえすために、決然たる措置がとられた。一 ないと、資金の一部は銀行に凍結されたままだ」とい ス った。この指図に従うよりも、海運業者は自分たちの九五四年七月アテネ政府の出した政令のねらいは、さ オ手に入るものをうけとり、海外で新しい船の建造をはまざまの外国船籍に分散しているギリシャ人所有の船 のギリシャ船籍への大量復帰聖 運じめ、それをパナマやリべリアに登録した。 ーー・・・推定九百万トン 2 キリシャ国旗の下にあを実現するにあった。 国外に出た船主たちはまた、。

7. 現代世界ノンフィクション全集6

のカで専門家をさえ叩き伏せることができた。あらゆ 見てもトルコは註文の決定を急ぐ様子はなかった。 この急場にザハロフはイギリスの兵器会社であるマクる問題を世界という規模で考えたという意味で、彼は 3 シム社と関係を結び、トルコから註文をとる契約をし本質的に国際性を身につけていた。また彼はカメレオ た。幸いにして、ある所で知り合って以来さらに賭博ンのように態度を変えられる能力をもっていた。普通 屋でつき合いを深めていった所管大臣との間柄を、ザ彼は皮肉な物質主義者であったが、自分の考えに対し ハロフは利用して、註文取りに成功したのであった。 澄みきった信念をもち、それに従って相手の信頼をか この話は、会社名がマクシムではなくノルデンフェきたてられる男に短期間変ってしまうのであった。彼 ルトであったことを除いて、すべてこの通りであった。の判断は、商売においても、また政治工作においても、 その当時、ザハロフはまだマクシム社とは関係してい めったに狂わなかった。彼は渡り者の商人であったか なかったのである。 もしれないが、決して小さな地域にとじこもってはい ザハロフは人間の弱味につけこみ、愛国心や名誉をなかった。ザハロフはインターナショナリズムという 冷やかに無視し、兵器の取引きにバルカンの絨毯商人言葉がまだ辞書にのってもいない時代に生れ、政治家 のようなやり口を持ちこんだが、それを斟酌しても、 も自分の国の身近な問題以上の事を考えていなかった 彼が力強いまれに見る素質を持っていたことは否定で時代であったから、もしザ ( ロフが理想主義者であっ きない。それに比して、彼のあまり好ましくない性格たなら、彼の国際的な観点から下す冷い分析的な政策 などは、あまり問題ではなかった。ザ ( ロフは天才で評価は、世界にとって比類のない宝となっていたであ あり、先見の明と非常にすぐれた組織力を持っていた。ろう。しかし、この国際的視野と見通しを彼は権力と 彼ほど激しくまた長時間働ける者はまずなかった。驚富の獲得のために使い、兵器産業を国際的資本家の独 くべき速度で、彼は複雑な技術的内容を理解し、弁舌占とし、欺瞞と陰謀で肥え太らせ、破壊はしても、決

8. 現代世界ノンフィクション全集6

大型タンカ 1 は、それを収容できるだけの大きな港や賃が目玉のとび出るほど高くなったとき、彼は思いが 水路を通って、たえまない貨物の流れを保証されなけけぬポロ儲けをしたのであった。全体として、大拡張 ればならない。そういう施設を設計し計画することは、 計画でうまいスタートを切るために必要な資力が全然 数年を要することで、ありとあらゆる不時の場合を念ないわけではなかったが、彼の大胆な考えが予見した 頭におかねばならず、これはかなり頭痛のタネになり 巨大な規模でこれを実行するためには、銀行やその他 かねないのである。 の金融機関の心からの協力が必要であった。 そのとき、ニアルコスは新しい借金のテクニックを ニアルコスが先鞭をつける 発展させ、これがその後ずっと、この分野での標準的 な慣行になった。それは基本的には単純であるけれど、 超タンカーの建造、ことにその金融の分野で開拓者はじめてのときは革命的といってよい革新であった。 になったのは、オナシスよりはむしろニアルコスであそれは賦払い購入の採用にも比すべき天才的な一進歩 っこ 0 として、金融史上に残るかもしれない。 野心的な超タンカー建造計画にはじめてのり出した ニアルコスのやったことは、せんじつめれば、つぎ とき、ニアルコスはそれをまかなうに必要な巨額の投のようであった。まず石油会社に余計なことに口を出 資資金が不足していた。戦後初期の時代には、アメリすなと通告した。おどろくべきことには、石油会社は これに同意したばかりか、その考えを好くようになっ シカの余剰ストックから購入した ( アンクル・サムにい オわせると″不正にし 2 型船の船隊を動かして、う た。彼が石汕業者にいったのは、「諸君は石油を探索 進まくやってきた。一九四七ー四八年の異常に寒い冬のし掘りだす仕事だけをやっていなさい。石油をはこぶ 2 ため、アメリカの燃料危機が促進され、タンカ 1 の運仕事はこちらが引きうける。この仕事はこちらの方が

9. 現代世界ノンフィクション全集6

ナシスはアメリカの国旗の下で運航するタンカー ( 約 五千万ドルに相当 ) をアメリカで建造することを約東 すると同時に、自分の支配するアメリカの諸会社を徹 六超タンカー竸争 底的に改組することに同意し、これらの会社はアメリ カ政府の有効な支配下におかれることになった。政府 オナシスとニアルコスが主として普通の貨物船を動 の側としては、当時のオナシスに、問題の船を保持す かしている間は、二人が仲のよい競争相手としてやっ ることを許したばかりか、これを " 安上りにつく″国 旗の下で運航するため、外国に登録することをも許して行っても不思議のない機会があった。 たのであった。 二人が主要な商売として石汕の輸送に転じ、それそ れ自己流にタンカ 1 商売の世界支配にのり出すや、猛 烈な商売仇にならざるを得なかった。同時にまた、二 人は世界的規模で紛争を招くことになった。石油利権 は手ごわく、有力なものであった。 石油が初めて国際的舞台に登場してきたとき、争い のタネになったのは、当該国における石油資源の所有 少なくともその支配ーーをめぐってであった。や がて所有権または生産能力よりも、むしろ輸送の方が、 石油における支配的な要素となる形勢を示してきた。 その結果、タンカーが現代を特徴づける船になって 222

10. 現代世界ノンフィクション全集6

国はもっと多数保有できます。トルコのような小国にをはじめ世界の大兵器会社と競争するのは、ほとんど は二隻の潜水艦で充分でありますが、大国である貴国あきらめていた。しかし、バルカンで取引きが急速に 3 発展したため、再び彼は楽観的になっていた。ヨーロ には四隻必要でありましよう。」 パ全土において、兵器生産の拡大が始まった。賢明 その取入り方は実に見えすいていた。しかし、態度 はものやわらかく、文句のつけようがないほど論理的であり人間的であった自山主義はこれまでゆっくりと であった。こうして、ロシアもまたザハロフの顧客と根をおろしてきたが、今や貪欲に利益をむさぼろうと なったのである。 する動きによって、それは無残にも息の根をとめられ ロシアに対して大胆に売り込みを推進したことによっつあった。ナショナリズムが再び首をもたげ、全文 って、ザ ( ロフはロンドンにいる経営者に大きな印象明社会をまきそえにする恐るべき戦争が情け容赦なく を与えた。当時のノルデンフェルト社はそれほど規模近づいてきていた。開戦がおくれるほど、戦火の影響 が大きくなく、セールスマンの殆んどは単なる兵器のが大きくなることを考えると、人々はいよいよ恐怖心 行商人であり、ザハロフがみごとに発揮したような秘を強めるのであった。 密外交的取入り方には別に長じていなかったからであ ある年無敵と讃えられた兵器が、翌年にはもう陳腐 る。ザハロフのすぐれた資質であった名人芸的交渉術になっていた。このようにめまぐるしく変っていく兵 を、どのセールスマンも身につけていなかったのであ器業界の騒ぎの中に、アメリカ人のハイラム・スティ ープンス・マクシムが登場した。彼は機関銃を発明し る。社主のノルデンフェルトは技術面では秀れていた が、しかし自分の発明ロロをどう売りさばいてよいかわたが、これはヨーロッパ製のどの銃よりも非常にすぐ からなかった。ノルデンフェルトは当時まだ壮年期にれていることがわかった。その銃を持ってマクシムは 人ったばかりであったが、事業を拡張してクルップ社イギリスへ渡り、またフランスやスイスでそれを披露