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検索対象: 現代世界ノンフィクション全集6
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1. 現代世界ノンフィクション全集6

あったような悪質な泥棒行為をすることはできないよ 8 うに、政府がある程度取締っているのは事実である。 卿それにしても、まだ民間企業が新しい兵器の開発費を 労不当に安く入札しておいて、政府からの契約を手中に レ おさめ、そして最後に最初の入札価格の三倍という請 , 求書をつきつけるようなことが、多過ぎるではないか。 また労働組合の中にはーー少くとも右翼的な指導者を チ いただく組合ではーー完全雇傭対策の一環として、軍 備拡張を計画的に支持するものがある。科学者やテク ノクラートは、政府の仕事の一翼につらなり、従僕の うけている。しかし、それであるからとい 0 て、必ずように従順にはたらく。また宣伝工作では、子供だま しの議論をもっともらしくしてみせる。つまり、膨大 しも安全であるというわけではない。ある意味では、 以前とくらべて、正体がとらえにくくな 0 ていることな核兵器の貯蔵を唱えながら、そのような方策をと 0 を考慮しなければならないであろう。つまり、かってた結果がどうなるかは語らないという不正直な態度を、 の兵器商人の影響力と同じものが、政府、民間会社、と 0 ていることが多いのである。支配者にと 0 て不都 合な真実を明らかにする科学者、沈黙の壁を乗りこえ 労働組合などの複雑なからみあいの中に折りこまれ、 ようとする科学者、また彼らと同じ立場をとる科学者 またそれは科学者やテクノクラートにも与えられてい ファシストなどと呼ばれる。 は、共産主義者、シンパ、 るが、科学者やテクノクラートは力を持っていても、 責任をとろうとしない。兵器生産業者の側で、過去にそれが現実なのである。

2. 現代世界ノンフィクション全集6

一方、もののわかった平和主義者であるならば、核ラ出身の客引きが強大な権力をもっ科学者に代り、国 兵器が戦争の抑止手段として働いているのを否定する防省内に巣喰う無名のテクノクラートに入れ代っただ ことは、それは知的な不誠実ということになろう。つけである。死の商人はあいも変らず利益をむさ・ほって いるが、今は人間の狂気に資金を投じているのは、納 まり、対立する両陣営が核兵器を保有しているため、 不安定ながら平和が維持されーー楽観主義者が言うよ税者である。実験室で研究をつづけ、製図板に向う無 うに、もしかすると、永久の平和がもたらされたにも数のザ ( ロフに力をかしているのも、また税金を納め ほ・ほ等しい状態になるかもしれないことを否定するなている一般国民なのである。 らば、それは不正直と言うべきであろう。また、科学 者は適格な判断を下すけれども、時としてそれに反す るような行為をとる。真実は一般市民に伝えてはよく ないなどという馬鹿げた考えにしばしば科学者はとら われ、核兵器の貯蔵や実験が危険でないなどというマ ス・コミュニケーションの催眠術的なナンセンスに強 い支持を与えたり、黙認したりするのは、同じく非常 フに危険きわまりない。マス・コミュニケーションは、 何の確証もなく、核実験がもたらす遺伝的危害を過少 人評価したりするのである。 商 の 一九六〇年代の各国の政策は、いまだにバジル・ザ 死 タタヴ ハロフがめぐらした策謀の一変種でしかない。 159

3. 現代世界ノンフィクション全集6

アリー ( 間に生まれた。アガの長男 ) は祝典の準備をするた めに早くから、アスター子爵を連れてパキスタンへ来 ていたが、儀式が始まるとたちまち、舞台裏へ押しの けられた。衰えかけた全精力を残らずこの祝典に注ぎ 込んだアガは杖と王妃 ( アガの第四夫人イヴ = , トのこと。アリ んで 一九五四年二月、七十七歳にな 0 たアガの』派イ こ ) を頼りに、若い者ですら音を上げそうなこの重 これを機会に、労働を見事にやり遂けた。ある日のこと、教団の幹部 翫 ) がカラチでプラチナ祝典を行ない、 いよいよ後継者が発表されそうなけはいだった。特殊連がアリーは後継者になれそうもないと見ていると聞 な電気仕掛けの天秤計を使って一方には九十七・五キき込んだアスター子爵は血相を変えてアリーの許へ飛 ログラムのアガをのせ、体重六キログラムに対して三んで行った。アリーは笑って相手にもしなかった。 十グラムずつプラチナが積まれてゆくという、豪華版しかし、アガがアリーに大任を負わせる気のないこ の祝典行事を一目見んものと、六万の教徒が押しかけとは明らかだった。ある人は王妃に探りを入れて「二 →た。観客の目がよくゆき届くように、ゆ 0 くり回転す十年も先のことはわかりませんよ。アガは百歳まで生 る廻り舞台の上でアガはこの祝典のために教徒から集きるんですから」とどやされたという。この話は老人 められた七十六万四千七百ドルの醵金が残らず、パキ層を大いにカづけたが、中には一体、元首は何を考え 豪スタンにできるプラチナ祝典金融財団の設立に使われているのかと首をかしげる者もあった。独裁者の治め のると発表した。しかし、このけんらん豪華な″ショウ″ る社会はその治世が終りに近づくにつれて動揺しだす 界にもついに後継者発表という最大のアトラクションは ものである。 出ずじまいだった。 もう何年も前から人々は当然、アリーがアガの跡を 5 6 3

4. 現代世界ノンフィクション全集6

同様であったと思われる。チェイ ( リンは煽動演説家も遠ざけられてしまった。この自山党政権は、ヨーロ 6 ッパの平和を維持するため三国協商の方針を守る立場 6 から身を起し、やがて急進的な反王室主義者となり、 キャンべ 最後には帝国主義者となった人物であるが、その履歴にあったが、首相が平和主義者のヘンリー・ にザハロフは魅了された。チェン ' ハリンとケイラード ハナマン卿であったため、軍備を削減する政策を とザ ( ロフの三人はしばしば落ちあって、取引きの話とろうとした。またフランスにおいても、ある程度ド をした。また、こうした会合を通じて、ザハロフは、 ィッにおいても、軍国主義と軍備拡張に反対の叫びが イギリスの政治について多くのことを学んた。ヴィカ当時あがりはじめていた。こうした動きを阻止するた 1 ズ兄弟の方は公然とは政治に関係していなかったが、め、ザ ( ロフは、自分の思い通りになる一部の新聞や 1 ー 1 「・ しかし熱烈なチェンバリン派であった。アルバ その他の宣伝手段を巧みに使った。ザハロフはパリで ヴィカーズは、一九〇五年の選挙に立候補したある人はエクセルシオ 1 ル紙と間接的に関係をもつようにな り、その後社主になった。またフィガロ紙とも密接な 物に、次のような手紙を書き送っている。「選挙では、 関係をもっていた。ドイツでは、彼の手先が、いくっ 投票であろうが、何であろうが、正真正銘のチェイハ かの新聞の軍事記者になっていた。 リン派でない者には、絶対に応援しないことにしてい このような策動に関する証拠は、一九〇八年ドイツ ます。あなたがこの部類に入るのかどうか、教えてほ しいものです。もしあなたがたしかにチェイハリン派帝国議会の討論の中に見出される。当時議員であった であるならば、あなたに自動車を提供することもでき社会主義者のカ 1 ル・リー ヴァッヘン社からパリへ送られた一通の手紙を発表し ると思います。」 ところが、イギリスでは自由主義者が政権を獲得し、た。 「パリへ送った手紙を待たれしと、昨日電報を貴殿宛 チェイハリンは世にいれられず、所属していた党内で プクネヒトが ドイッチェ

5. 現代世界ノンフィクション全集6

を扱える一団のポストンの哲学者のような器械製作者価していた。マクシム銃が将来大量生産のモデルにな を集められるとでも思っておられるのですか。』」 るばかりか、マクシムは商人としては力が知れていた 4 「『哲学者のような器械製作者』というのは、ザハロ としても、やがて彼の天才的な発明の才が勝利を占め フの巧みないくらか侮蔑の情をこめたマクシムに対するであろうと、ザハロフは感じていた。この場合、マ る呼び名でした。ポストンは、マクシムが銃を製作しクシムの成功を、どうにかザハロフは最小限に喰い止 たところです。マクシムは、話の途中で哲学者ぶり、 めたが、しかし時間が経てばマクシムが勝つにきまっ 考え事の好きな人間が陥り易い人生問題などへ、本題ていた。誰かがマクシム銃の開発費を援助すれば、そ をそれて脱線する傾向がありました。マクシムは、オれは大量生産可能であった。そこで当然出てくる答は、 1 ストリア人やドイツ人は哲学が好きだと聞いていた ノルデンフェルトとマクシムの協力であった。これこ のでしよう。しかし、こういう性格は、行動一点張りそ、先見の明のあるザハロフが、一八八六年ノルデン フェルト社へ提案した計画である。しかし、当初ノル の軍人には非常に非実際的な男と見られ易いことを、 デンフェルトは、この計画を考慮しようともしなかっ マクシムは気がっかなかったのです。ザハロフはこの 弱点に目をつけ、そこにつけ込んだというわけです。」た。つまり、彼自身技術者であったから、他人が自分 皇帝やウィリアム大公がマクシム銃に対して深い関よりも秀れた銃を生み出したという進言は、あまり気 心を示していたにもかかわらず、マクシムがウィ 1 ン持よくなかったのである。 の陸軍省を再び訪れた時には、参謀たちは銃の取引き その時はザハロフはこの計画を押しつけようとはし は慎重にというザハロフの警告を充分考慮に入れてい なかった。しかし、ザハロフは、マクシムがノルデン ることが、マクシムにはわかった。しかし、ザハロフ フェルトとの協力をどう考えているか、自費で慎重に も、彼が公けに認めた以上にマクシムの銃の効率を評調査させた。最初漠然としていた思いっきが、今や

6. 現代世界ノンフィクション全集6

ンで教徒の会合が開かれた時もこの御前会議に参加す ″生き神様 ~ 扱いにはさすがの彼もいささかならず面る者は五ポンドの対面料をとられた。インドの一教徒 くらった。特に、西洋では、何とかして普通の人間扱が牛を神聖視するヒンズー教の慣習に目をつけて死ん いを受けようと懸命だった。パキスタンでカリムと同だ牛を集めてはアメリカやドイツへニカワの原料とし 乗の栄に浴したフランス人記者は「白装東の人々が地て売り込み、大いにもうけていることを知ったカリム は早速、「彼の奉納金が利益にふさわしい額であるか に伏し、熱つぼい目で車の窓を見つめていた」こと、 「突然、け寄った老婆はカリムの姿を一目見て、釘どうか」を調べさせたという。数年、鳴りをひそめて 「カ いた賤民改革派の旗頭カリム・グーリマリはすでに六 づけになったような顔をした」ことを忘れない。 リムはその時も〈僕は神様じゃない〉といって首を振十の坂を越していたが、例によってイスマイリの制度 ったし、神学的にも全くその通りだが、実際この目でや「莫大な奉納金をとられる」ことに非を唱えたが、 教徒たちの目や手、不思議な身震いなどを見ていると祖父同様、カリムも相手にはしなかった。彼は福祉事 業に対して祖父以上に熱心だった。しかし、彼が最も 彼の神性は疑えなくなるのだ」という。 カリムは祈疇を短縮し、ヒンズー教的なものを除く意欲的だったのは政治問題、特に、アフリカの問題で など、信仰を近代的に能率化したが、一部の青年層がある。アフリカでは続々、独立国が生まれ、黒人の熱 烈な国家主義と外人排斥の傾向はかっての白人統治者 考えたように将来も回教の主流派と合併する気はなか った。彼は進歩派の青年層を従えてイスマイリ教へのばかりでなく、アジア人居住者をもおびやかしていた。 元首になって間もなく、アフリカにおけるアジア人 信仰を維持させ、地区評議会の許可なく教団外の者と の危機を察知したカリムは、その危機を解決するため 結婚することを禁じた。 に足しげくアフリカを訪れ、新しい指導者を探し出し 十分の一税や奉納は従来通りだった。最近、ロンド ・こっこ 0 432

7. 現代世界ノンフィクション全集6

を知るに至ったか ? てきて、ギリシャ勢全体にそこのけと命じた。 金持というものは、近よりがたい点で悪名が高い。 いったい、百万長者ーー億万長者はいうまでもなく 彼らはまた通常、評判になることを避けたがる。新聞 の財力を誰が測定できるだろうか ? 彼らはすべて、少なくとも四つの帳簿をもっており、紙上で話題になればなるほど、物乞い、いかさま師、 それは大幅に増減するスケールで操作され、測定の仕ならずもの、財産目あての人々、寄生的人間、さらに 方によ「て変動するが、大ざっぱにいって次の通りでは税務署にねらわれがちである。賢明な金持なら、電 話もなく郵便も月に二回ぐらいしかとどかぬような、 ある。 世界の遠い隅に引きこもる。だが、そのような暮しの 新聞や p--æむけのもの ( 最大 ) 。 できる金満家がどれくらいいるだろうか ? 債権者むけのもの。 億万長者の背景と生活を親しく観察しようとする新 当人あるいは家族用のもの。 徴税者むけのもの ( 全然課税をまぬがれること聞記者は、大ていは長い間苦労しなければならない。 だが、近よりがたい事業界の大物の " 奥の院の門 ができぬ場合 ) 。 さらにもうひとっ加えれば、ガール・フレンドむけを打ち破る道も、ないわけではない。そのひとつは のものがある。これはその時の必要に応じて、いかよ「どのみち、あなたについては全部知っていますよ」 というやり方で、筆者は数回この手を使って成功した。 うにも増減できる。 ス シ 一九五三年かそのころ、オナシスの名が世界の大半根本的には、それが単純そのものであることは、筆 オにと 0 て初耳だ 0 たとき、彼は " 選手権保持者 ~ のよ者がオナシスと会見するに至 0 た以下の記述から、判 断できるだろう。 運うに見え、世界はそのゆえに彼に敬意を表した。 どうして人々は、この男がそんなに大金持であるか数年前『ニュ 1 ヨーク・ヘラルド・トリビューン」 ノ 69

8. 現代世界ノンフィクション全集6

ここに二人の兄弟 それは絶対に確実な原則ではない。 支配下にある会社にしか売ることができなかった。 このあとの条項は、それが必要であったからではあるがあって、一方がその国の市民、他方が外国人である とする。後者にはごまんと金があり、前者は無一文に が、ぬけ道へのカギを示すものであった。 というのは、外国人がアメリカ市民であると言い立びとしく、兄なり弟なりの好意にすがっているという ハ 1 セント、 てるのは、文句なしに非合法で大きなリスクをともな場合、前者つまり国籍所有者の方が五十一。 うものではあるが、都合のよい妙案もあった。つまり、外国人である金持の兄なり弟なりが四十九パーセント 名目だけの会社で、これはどの国でも、国内の事業活の株をもっ会社をつくったとする。どちらが会社を支 動への外国人の参加に対する法律上の制限をかわすた配しているのだろうか ? め、使われている手であった。 あるいは、一方は金持、他方は貧乏な二人の友人が、 それがよく使われるトリックである理由は明白だ。 合同して新しい企業にのりだした場合をとってみよう。 個人の国籍ははっきりつきとめることができるが、さ金持はたまたま外国人であるので、国籍保有者だが貧 まざまな国籍のものを役員や株主にしている会社が、乏な友人に金を用立て、これにより後者が新会社の五 1 セント、 前者が四十九パ 1 セントの株をもっ 正確にどこの利益に奉仕しているかを確かめるのは、 ーセントの株をもっ それほど容易なことではない。支配の度合が各種各様たとしよう。この会社は五十一。 であり、正確な法的制限をはっきりさせることは、弁国籍保有者によって支配されているだろうか ? さらにまた、ほぼ同じくらいの金をもっ二人の友人 護士や判事にとって困難であるーー時としては不可能 が、国籍による制限で事業が規制される会社をつくっ な場合もありうる。 パーセントの株をも ーセントまたはそれ以上の株の所有たとしよう。国籍保有者が五十一 通常、五十一。、 コ / トローレ ち、外国人が四十九パーセントをもつ。しばらくして、 が、会社の支配になるものと考えられている。だが、 コソトロール コソトロール 0 、 204

9. 現代世界ノンフィクション全集6

は、世継ぎの男子を生めなかったために、すでに離婚れるアリーまでが槍玉にあげられ、神権を捨て、イス されていた。あとを継いだ新王妃ソラヤにも懐妊のきマイリの指導権を即刻、放棄すべきだとたたかれた。 ざしはなかった ( 結局は彼女もフウジア王妃の二の舞彼らは教徒を置き去りにして一年の大半は外国で暮ら いだった ) 。世継ぎのできないうちに国王に万一のこし、ぜいたくざんまいにふけっていること、ヨーロッ ハやハリウッドを舞台にアリ 1 が恋の火遊びにふけっ とがあれば、家柄がよくて、宗教的にも正当な資格の ていることを非難していた。 ある、身寄りのだれかを後継者に選ぶしかあるまい。 悪宣伝の親玉はだれなのか、さつばりわからなかっ アガの場合は孫のカリムとアミンですら、相続の可 能性があった。アガが腹立ちまぎれに、彼の血をわけた。アガの特務機関は印刷工場を調べ、郵便局を洗っ た男子ならだれでも跡目は継げるのだから候補者は四たが、手がかりはなかった。パンフレットはよそで刷 人いるのだといったことを真に受けた人たちもいたのられて、ひそかにアフリカへ送り込まれるという噂た った。賤民派の改革党も疑われた。それとも教徒の中 アガはいろいろな臆測にも超然としていたが耳だけに新しい反対派が生まれたのだろうか ? だとすれば、 ンはしかと傾けていた。ところが、彼の地獄耳に入って前よりも一層、危険な相手である。パンフレットを見 カきたのは、思いがけない危険をはらんだ地響きであつれば首謀者は教徒の問題に通暁しているふしもあった。 た。しかも、その地響きはだれあろう、アガ自身の身怒り狂った東アフリカのイスマイリ幹部は英領植民 ー・リトルトンにこの″反対運動″を 地長官オリヴァ に迫る危機であった。 のまたしても " アガ政権。に対する攻撃が今度は、東調査してくれと頼んだ。ポンべイの新聞 " イスマイ リ々は元首とその息子を弁護する論説をのせ、他社の 7 界アフリカを中心に火を吹きはじめていた。パンフレッ トや新聞の投書欄で、アガはもちろん、後継者と目さ新聞にのった非難に対しても弁明記事を掲載した。ナ

10. 現代世界ノンフィクション全集6

ム・ノルデンフェルト社が出現したのだ。マクシムとのマクシミリアン大佐が次のように伝えている。 ノルデンフェルトとの間が険悪になって別れた時、私「会談中、ザハロフはものやわらかで、マクシムに対 は強い方を選んた。私はマクシムと組み、ヴィカーズして好意的であった。しかし、あまりマクシム銃に対 社に乗り込んだ。」 し大きな信頼をおくべきでないと、非常に巧妙な議論 「私は働いて、働きぬいた。買いたいという者には、 を展開した。ザハロフの主張は次の通りであった。 誰でも私は兵器を売った。私はロシアではロシア人、『あの銃は大変優秀です。またマクシムは腕のよい技 ギリシアではギリシア人、またパリではフランス人と術者でもあります。彼がつくる装置はすべて非常に精 リの狂いがあ して振舞った。」 巧にできています。どこかに百分の一、 っても銃全体が正しく動かないのですから、まったく ザハロフの陰謀があったにもかかわらず、ウィーン から百六十挺の銃の註文をマクシムはとることに成功精巧であるというほかはありません。ばねはすべて一 した。しかし、それは彼が思っていたほど多くはなか定の張力を持っていなければならないでしよう。しか った。それというのも、彼の競争者であるザハロフが、し、貴国がいま多量にこの種の銃を必要とされるなら ば、どうなさいますか。緊急の場合、一体どこでそれ 達者なロとオ 1 ストリアの将軍を手玉にとる才能によ って、マクシムの秀れた技術でもかなわない大成功をを入手されますか。戦争は誰をも待ってはくれません。 収めたからであった。 マクシムは自分の工場で銃をつくるでしよう。実際に フ 発射実験の翌日、ザハロフはウィ 1 ンの陸軍省へ戻自分自身が手を下してつくるでしよう。彼は賞讃すべ 人り、まずマクシム銃を賞讃するような様子を見せ、 き信頼するに値する技術者ですーー、・しかし、もちろん、 のくらかわざとらしく、その素晴らしさをほめてみせた。そういう武器の供給量は必然的に限られています。し この間の言葉のやりとりは、オーストリア軍備調査部かも、仮に必要な数の銃が入手できたとしても、それ 9 3