アフリカ - みる会図書館


検索対象: 現代世界ノンフィクション全集9
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1. 現代世界ノンフィクション全集9

専門家でもない。したが 0 てこういう論争に深人りす 0 た。遠い昔、すでにギリシャの大歴史家〈ロドトス が、次のような意味深長な言葉を書き残しているでは る資格も興味もないけれども、しかし次のことだけは 「リビアの奥地に、小柄で敏捷な、弓矢 言えると思う。すなわち、たといブッシ、マン以前アないカ フリカに未知の民族が存在したことを事実として承認を持っ狩猟民族が住んでいる」と。私のうちにいた老 こんせき するにしても、その民族なるものの痕跡は、現在何ひ人たちは、ブッシ = 「ンの思い出を物語る時、「ク ファイ・クフウェ」や、「エジ。フトのエプロン」や、 とっ残されていないではないか。私にとって重要なこ とは、アフリカ最古の原始民族中、ブッシマンだけ岩石絵画の話につけ加えて、このヘロドトスの言葉を が、かってたしかに存在し、しかも今なおーーーほそ・ほきっと引用したものだ。。フッシ = マンが少なくともア かろうじてその人種的命脈を保ちフリカ最古の原始民族であることを否定する証拠は、 そとではあるが つづけている、唯一の種族だ、ということだ。太古の何ひとっ現存していない。 アフリカと、現代とを結ぶクサリは、ブッシマンに私の家から遠くない所に、南西アフリカで「なべ」 と呼ばれる地があった。ダイヤモンド坑の鉱夫が、 しか見出すことができないのである。いわば彼らは、 原始アフリカ大陸の、最後の生き証人なのだ。この古その底を掘った時、表面から二メートル半の所で、プ 界 世い古い民族が、今もなお残存している、という事実、 , シ = マンの遺跡を発見した。そこから、ダチ , ウの 卵のからで作った、ブッシ = マン特有の首飾りがたく それが私にとって意味を持つのである。 失前にも言ったとおり、私の幼い時分には、若いころさん出てきた。地表と、その遣跡との間の土から、小 の つ。よ、出てきたが、その骨というのが、 ・フッシュマンと直接接触した体験をもっ老人が大勢いさな獣骨がい。し ラたのだが、その人たちは、・フッシ = マンがアフリカ最なんと、はるか昔に絶減した動物のものだったのであお 。くール河の流域で、何千年も昔の地層から、まぎ 古の原住民族だということを、誰一人疑ってはいなかる ,

2. 現代世界ノンフィクション全集9

二つの態度がある。一つは科学的な態度とでもいうべきもの で、あくまで個人感情を排除した客観的公平さで集団として 解題 の機構を探ろうとする。もう一つは人間中心で、個人として の人間に照明をあてる。彼らの実態に深い洞察をあたえるに をいずれも一方だけでは充分でない。ターン・フルは、この 両立しがたい二つの態度をたくみに併用し、ビグミーと生活 森の猟人ビグミー を共にすることによって彼らの喜怒哀楽のこよなき理解者と なったばかりか、科学者としての自覚を堅持して、彼らの社 コリン・・ターンプル ColinM. Turnbull ( 一九二四ー ↓はイギリスの ( ローに生まれ、現在ニ、ーヨークに住ん会・文化にたいする公平な客観性をこの本に一貫させた。 。ヒグミーが人々の関心を呼びはじめたのは、最近のことで でいる。一九五九年以来、アメリカ自然博物館副館長の地位 にあり、イギリス人類学会の特別会員。はじめ、オックスはない。アフリカに住みついた時期も = グロよりはるかに先 フォード大学のモードリン・カレッジで哲学と政治学を学んだった。そのように古い歴史をもちながら、彼らはごく最近 だ。第二次大戦中、海軍篤志部隊に加わり、除隊後、奨学金まで類人猿の一種ぐらいにしか考えられていなか「た。また を得て、インドのパナラス・ヒンズー大学インド宗教・哲学仮に人間だとしても、智力がいちじるしく劣り、ニグロの援 科で二年間研究、ついでオックスフォードにもどり人類学を助がなければ生きてゆけぬあわれな存在と考えるなきが、学 修め、アフリカ分野を専攻した。実地研究のためアフリカに者の間ですら圧倒的だった。こうした偏見は、どちらも、外 三度行き、五七ー八年のその最後の研究旅行は旧ベルギー領 から眺めた皮相な印象にすぎない。排他的な彼らに歓迎され コンゴを中心としたもので、この三回に及ぶ研究の成果がこ寝食を共にしえた者は、いまだ一人もなかったので無理もな いが。ターイフルの場合は、計三年以上に及ぶ旅行中、ほと 題の『森の猟人ピグミー』 "The FO 「。 4 People" である。著 書には他に、『孤独なアフリカ人』、『アフリカ人種』 ( 児童書 ) んど彼らと共に過し、それ以上の滞在が研究の客観性をそこ などがある。 なわないかと危ぶみはしめたくらい親交をかさねた。これほ 解 人類学者がいわゆる原始民族を実地研究する場合、昔からど深い洞察と愛情にみち、かっ詳細な。ヒグミーの記録は他に 451

3. 現代世界ノンフィクション全集9

著者ロレンス・ヴァンⅡデルⅱポスト Lau 「 ens van der カットしたダイジェスト版である。 P04 ( 一九〇六ーー・ -) は、南アフリカ、オレンジ自由州にオ ランダ系開拓者の子として生れた、生粋のアフリカっ子であ 本書は一九五七年、新潮社より「人と自然叢書」の一冊と して刊行された。原書は四部より成るが、ここには第四部る。大農場を経営するかたわら、早くから文筆に親しんだ。 ( 近藤等 ) 幼少時代を通じて、故郷とイギリスとを往復する生活が続い 帰路」を除き、三部までを収めた。 たが、やがて第一一次世界大戦が勃発すると、英国陸軍に入り、 こんどうひとし エチオビア戦線に闘い、次いで極東に転戦して、ついに日本 近藤等 一九二一年、京都市に生まれる。一九四三年、早稲田大軍の捕虜となり、二年間を捕虜収容所にすごした。その後、 学文学部フランス文学科卒業。現在、早稲田大学商学部ウントッテン将軍のスタッフとなり、大佐に昇進して帰 教授。著書『アル。フスーー山と人と文学』、『シャモ = の国、一九四七年にはナイトに叙せられ、サーの称号を受けた。 一九四九年以来英国政府より派遣されて数々のアフリカ探険 休日』、訳ライアン『史上最大の作戦』、ゴス『アル。フス に従い、その記録を公けにした。しかし何といっても彼の名 に逝ける人々』ほか多数。 を一躍高からしめたのは、この『カラ ( リの失われた世界』 の刊行 ( 一九五八年 ) である。一九五四年から五五年にかけて の失われた世界 カラハリ 行なわれた彼のカラ ( リ探険は、未知のブッシ = マン族の映 「カラハリ 」の名は、最近封切られた映画や、テレビの番組、画撮影に成功し、全世界に紹介されたのであ 0 た。その他の また木村重信氏の近著『カラ ( リ砂漠』等により、わが国で著作には、『奥地〈の旅』 ( 一九五一 ) 、『火の背後の顔』 ( 一九 もかなりポピ = ラーになったようである。本書『カラ ( リの五 = l) 、『フラミンゴの羽根』 ( 一九五五 ) 、『アフリカの暗黒の 眼』 ( 一九五五 ) 等がある。 題失われた世界』 "The Lost WO 「 ld 0 一 the Kalaha 「は、 本書『カラ ( リの失われた世界』を一貫して流れている基 この南アフリカの大砂漠に住む、原始種族・フッシュマンを求 めてさまよった著者の、スリルとサスペンスにみちた冒険の調は、著者の、・フッシマン族に対する深い愛情である。こ 解 れが他の単なるアフリカ探険記とは類を異にする本書の大き 記録である。 イ 53

4. 現代世界ノンフィクション全集9

ルの野獣同様の野蛮な存在だというのである。ホッテのようなブッシュマンの遺跡を見に連れて行ってもら やバンツーのような土族でさえも、耕作にか った。私の家から遠くない、「大河」に沿った峡谷の 3 ドライン・レイノジ けてはきわめて熱心な農夫たちなのだ。ブッシュマン中に、「夜の山」と呼ばれる丘陵や、「竜の峠」と呼 族が、一時的な住居しか持たないということは事実でばれる一連の山脈があり、そこには、地すべりによっ ある。彼らは狩猟民族であるから、一年中、獲物を追て生じた無数の洞穴があるのだが、それらの洞穴も、 って転々と移動をつづけ、一カ所に定住するというこ・フッシ = マンにとっては、お気に入りの住居だったと とがない。水辺の丘の上に築いた円形の石垣、それがみえ、多くの遺跡が残っている。このような岩山や、 彼らの住居である。石垣の高さは一メートル五十セン洞穴の中に、彼らははじめて安住の地を見出したのだ。 チほどで、アフリカの伝統に従い、窓もなければ、戸そして、そこにおいて、彼らのけんらんたる文明が花 も屋根もない。夜がくると、彼らは石垣を乗り越えてを開いたのだった。アフリカ諸民族の遣物の中でも、 中に入り、たき火をたいて食事をし、獣皮をかぶって最も驚嘆すべきもの、すなわち、岩石絵画と音楽とい ゴロリと寝てしまう。彼らがこの土地から姿を消してう、ブッシマン独特の原始芸術が、太古の昔より、 久しい後にも、なお方々にこの石垣は残っていた。中何千年の長きにわたり、そこに創造されてきたのであ へ入ってみると、黒く焼けた小石が散らばっていて、 たき火のあとを示していた。そのそばには、穴が掘っ ブッシ = マンの音楽が、他のいかなるアフリカ土人 てあったが、これは・フッシ、マンが寝る時に、その出の音楽よりも、はるかにすぐれたものだということは、 つばったお尻を入れて、体を楽にするためのべッドだすでに定説になっている。彼らは、ドラムやカスタネ ったのである。 ットの類は申すに及ばず、一弦琴や四弦の ( ープまで 私は、やっと丘をよじのぼれる年ごろになると、そも発明したのである。一弦琴には、共鳴箱として、カ

5. 現代世界ノンフィクション全集9

カ極森 森の猟人ピグミ ラ北の ハの猟 極北の放浪者 ポンサン リ放人 の浪ピ カラハリの失われた世界一 , , 、 失者グ れを一 解説・川喜田ニ郎 第 5 回配本定価 650 円 筑摩書房 真実のみが伝える迫力と感動 アフリカの砂漠の果て , コンゴの大森林 , 氷 に閉ざされた未開人の世界。わすかに現代に 残る原始生活はわれわれ文明人を魅了する。 * 世界で最も小さい , アフリカ最古の民族ピ コンゴの奥地に神秘の扉をひらく。 * 強い衝動がモンテーニュの末裔を極北の氷 原に駆りたてる。ェスキモーの漫刺たる世界。 * 見事な壁画を残し絶滅したと信じられたプ ッシュマンを求めて砂漠を行く。〔本邦初訳〕 ターンプル ヴァン = デル ボア 現代世界ノンフィクション全集 9 書 一口 主月 ( 分類 ) 0320 ( 製品 ) 23009 ( 出版社 ) 4604 現代世界ノン々クション全集

6. 現代世界ノンフィクション全集9

に必要な物資の種類、数量等についての計画は、すぐ・フッシュマソの生態を撮影して、記録映画を作ること 8 に立てることができた。輸送手段としては大型の有蓋だった。彼らの生活を後世に伝えるためには、映画の引 製作こそ最善の手段だと思われたからである。それに、 トラックが最良であることも、経験によって知ってい たし、また、砂漠の中での水、燃料補給の地点につい作った映画のテレビ放映権譲渡を条件にして、費用を ても、充分の知識があった。同行すべき人の問題に関前借りすれば、一石二鳥に違いない。ただ、映画製作 しても心当りがあった。探険に要する時間と費用の点については、私は全く門外漢だったので、誰か適当な も、大体の見当はついていた。費用の全額を私個人で人物の協力を得る必要があった。私はそこで・・ 負担することはもちろん不可能だが、不足分を他から 0 ( 英国放送協会 ) に行き、幹部に面会して、自分の 援助してもらうことについては、成算があった。 計画を話した。彼らは多大の興味を示し、協力を約束 私は決心すると同時に、直ちに活動を開始した。私した。私は、有能な映画プロデューサーとして名声の はまず、アフリカ在住の友人、ウインダム・バイヤンあるユージーン・スポードに紹介され、ロンドンで彼 と、べン・ハザロールの二人に宛てて、手紙を書いた。に会った。彼は英語を解さず、会話はフランス語で行 二人とも、アフリカの土地と、土人の習性に精通し、 なわれた。何度かの会談で、われわれは了解に達する この探険に欠くことのできない人々である。二人は即 ことができた。もしもこの探険によって利益があがれ 座に同行を約してくれた。次に私は、ロバー自動車会ば、折半すること、損失を招いた場合は私が負担する 社に手紙を書き、特別装備を施した大型有蓋トラック こと、などを条件に、われわれは契約を交した。カメ を三台注文し、アフリカに向けて発送するよう依頼しラやフィルム等を三か月以内に現地に送り、スポード とは、八月二十一日に南ローデシアの・フラワョのホテ 探険の目的の一つとして私が考えたのは、原始民族ルで再会することを約して、二人は別れた。 こ 0

7. 現代世界ノンフィクション全集9

助者である女性たち、その家庭生活や、狩猟の場面が、深い愛情の産物なのだ。あらゆるアフリカ諸部族中、 くりかえし描かれた。ハチミツをとるところ、ダンスブッシュマン族ほど、この土地を愛した人々はいなか の光景、その他ありとあらゆる彼らの日常生活の有様った。彼らこそ、この大陸の草分けであり、その深奥 が、岩の面に手にとるように再現された。 の神秘を理解することのでぎた、唯一の人種であった。 だからこそ彼らは、その秘密を後世に伝えんものと、 ここで私は、「・フッシュマンはどんな性質の持主だ ったのだろう ? 」という、当初からの疑問に、再び立無限の熱意と愛情とをこめて、山々の岩石の表面に華 ち帰らざるを得ない。そしてこの疑問を解くカギは、麗な装飾を施しつづけたのである。他の諸民族や白人 これらの岩石絵画の中に見出されると思う。つまり、 種が、この大陸を荒し廻る有様は、バッタの大群の飛 これらの絵画作品は、彼らの、自然や人間に対する、来にも似ていた。彼らは、みにくい貪欲さをもって、 珍宝の充満するこの豊麗な大陸の、血をすすり、肉を ' 婦むさぼり、最後の一滴までも余さず吸いつくそうとし て、掠奪を働き、暴行を事とした。それにくらべ、プ ッシュマンの愛情の、何と清らかに美しいことだろ う ! 彼らこそ、アフリカそのものだったのである。 っ 白人たちは、武力を用いて彼らを根絶やしにしてし っ まった。この暴行を正当化するための口実は、「ブッ を シュマンなんて、野獣同然の奴等じゃないか ! 」とい シ うことだった。こういう白人たちにとって、。フッシュノ 3 マンが、その芸術からもうかがわれるような、心のや

8. 現代世界ノンフィクション全集9

らなくなる理由は、このへんにもある。それに身は五の墓には、探検隊長へルコウフの報告書が埋蔵されて 尺にみたぬ小人とはいえ、ピグミ 1 はカ持ちで、おまし 、る。彼は、「月の山」の西方の大森林に分け入り、 けにタフである。 その地で、神にむかって歌ったり踊ったりする小人族 を発見した。その踊りは、それまで外界の人間が一度 も目撃したことのないものであった。ネフリカレは、 。ヒグミーの記録 ヘルコウフに返事をしたため、これらの小人の一人を 彼らが森に住みついてから、どれくらいの年数がた連れて帰るようにと、取扱いに関するこまごまとした せいそく つものかはわかっていない。しかし、アフリカに棲息注意をそえて書き送った。 する幾多の種族のうちで、もっとも歴史の古いものの 残念なことに、記録はここで終っている。が、後年 一つであるとする意見は、充分な考究の結果出てきたの記録によって、エジプト人がビグミー族とかなり親 ものである。彼らが、アフリカ大陸のほとんど両岸にしくなったことや、。ヒグミーが、その後も数千年のあ またがる広大な降雨林の原住民であったとしても、不 いだずっと、今日彼らの棲息している場所と同じ場所 思議ではない。有史時代の初期には、すでにこの地にで生活をいとなんできたこと、またむかし変らぬ歌と 定着していたのである。 踊りの生活を送ってきたことがわかる。 ホーマーは、「イリャッド」の中で、ギリシア・ト 今日残っている最古の記録は、一般に伝えられてい るように、ビグミーと鶴の戦いを歌った、かの有名な ロイ両軍の戦闘を描くにあたって、ピグミーに触れて ホ 1 マーの詩ではなく、紀元前約二千五百年、第四王 いるが、知識の出所は、たぶんエジプト関係からであ 朝時代に、ナイル川の源泉調査の命をおびて、エジプったろう。しかし、そこにはすでに、伝説的な要素が トから派遣された探検隊の記録である。ネフリカレ王入り込んでいる。

9. 現代世界ノンフィクション全集9

けれど子供のころから私のまわりには、この種族に ついての思い出がたちこめていたので、その存在が私 には非常に身近かに感じられるのだった。周囲の人々 一出発準備 のロを通して、私はいつも彼らに会っていた。減亡し た・フッシュマン族の思い出は、開拓者たちの心の中に 1 この物語は、アフリカの広大な砂漠の中を、すでにまだいきいきと残っていた。私の目には、陽気で、勇 減亡したと信じられていた最古の原始民族、・フッシュ敢で、茶目で、神出鬼没で、無鉄砲で、好戦的な・フッ マン土人の生き残りを求めてさまよった、探索の記録シュマンの姿が、ありありと浮んでくるのだった。絶 である。 減したとはいえ、彼らの血は、混血土人たちの体内を、・ えもの 探険の決行は、つい一年前のことだった。しかし、獲物にしのびよる猟師の足音のように、今なおひそか 私がこの冒険を思い立ったのは、最近のことではない。 に流れていた。私のお守りをしてくれた土人女の目は、 ものごころついて以来、私の空想は、手袋にすべりこ明らかに・フッシュマン族の名残りをとどめていた。キ む手のように、ブッシュマンとその悲惨な運命との中ラキラ輝く彼女のひとみは、気も遠くなるほどはるか たた へ、没入していたのである。 な古代アフリカのあけ・ほのの光を湛えていたのである。 世 私は、南アフリカを東西に流れるオレンジ大河の岸彼女はバンツ 1 族特有の端正な顔立ちをしていたが、 失辺に、白人開拓者の子として生まれた。この土地は、蒙古人のようにつり上ったその目は、まさしくプッ の 数千年にわたって古代・フッシュマン族の住んでいた、 シュマンの血を引いていることを示していた。そして ラカラ ( リ砂漠の近辺である。・フッシュマン土人は、遠その肌の色は、中央アフリカ土人の黒色ではなく、黄 い昔、すでに姿を消してしまっていた。 いろいアンズ色であった。彼女は英語を話したけれど

10. 現代世界ノンフィクション全集9

かな大気に包まれながら、他の隊員たちが何を考えてアがマ . ッチをすろうとした、まさにその瞬間、一羽の 2 いたか、私は知らない。知っているのはただ、そのタ小鳥が、羽根を・ハタ・ハタさせながら飛んできて、彼の ・・ヘの私が、この上ない感動にひたっていたことのみだ。背後の木の枝にとまった。かと思うと彼女は突然、銀 生涯をかけた希望の実現めざして、私はついに第一歩色の声を張り上げて、けたたましく歌い出した、 ミッよー をふみ出すことができたのだ ! ミッよ ! , 天 かくも長い間、愛情「早く ! 早く ! 早く こめて心にあたためてきた計画、その細部にわたって、急ぎ ! 」 私はもう一度念入りに検討してみた。私のまわりには、 その途端ジェレミアは、目をまんまるくしてパッと 九つのべッドができていた。その上にかけてあるのは、身を起こした。 マスタ 色とりどりの美しいアフリカ製毛布で、一枚一枚デザ 「ごらんなさい、だんな ! ハチミッ易者ですよ ! 」 そう叫んで、彼は一歩足をふみ出した。小鳥はすば インが違っていた。ひとつひとつに、別々の土人族の シンポルを、私は縫いつけさせておいたのである。あやく飛び立ち、森の奥へ姿を消した。 「おそかったな、ジェレミア ! 」私は彼に笑いかけた。 ぎやかなアフリカの色をまわりに眺めて、私はほの・ほ まもなく小鳥は再び元の枝へ戻ってくると、赤いタ日 のと心あたたまる気持ちがした。 が森の向うへすっかり沈んでしまうまで、ジェレミア ジョンとジェレミアとは、食事の支度をしていた。 に向ってひっきりなしに「早く ! 早く ! 」をくりか ・チェリオットは、草原土人特有の軽やかな足どりで、 トラックとジョンたちとの間を往復していた。互いにえしていた。 「あれがハチミッ易者なんでさ。」ジェレミアはせわ 言葉は通じないのだが、三人はもう大の仲良しになっ ていた。彼らは森に入って行くと、まもなく枯枝をたしく食器をならべながら、講釈をはじめた。「私の国 にはいつばいいる。私の国は、この河のすぐ向うなん くさん抱えてきて、それを高く積み上げた。ジェレミ クイック クイック