( 分裂期 ) G Ⅱ成長期 ) ( 成長期 ) G2 GO ( 休止期 ) ような新陳代謝は起こりません。臓器が形成されてゆく過 程にあっては細胞が分裂し増殖を続けます。この様子を一小 したのが図です。 すなわち期を経て分裂したおのおのの細胞は、期を 停通り期に入ります。期では次の分裂に備えてそれぞれ 分の QZ< 分子が複製され、したがって細胞内の染色体は一一 期倍になります。これが期を通った後、期でそれぞれが の二つに分裂するわけです。このようなサイクルをくり返し 分てゆくことで、増殖はどこまでも続いてゆくはすなのです。 z 胞 e 細ところが肺胞の場合でいえば、成長期の終りになると、 5 期から期に人らすに、という状態になってしまいます。 図 このように状態にいったん入ってしまうと、なかなか一兀 のサイクルには戻れず、結局細胞増殖は止ってしまうので す。 しかしながら、の状態に人ってしまうと決して二度と
最後に図 8 で後生殖期まで分裂を続ける細胞が示されていますが、これにはもう少し説明が 必要です。この中に血球細胞とありますが、正しくは血球幹細胞というべきでしよう。幹細胞 とは未分化の細胞で、これから赤血球や白血球が分化してくるのです。後生殖期まで分裂能を もちつづけるのはこの幹細胞の方で、幹細胞もまた不死細胞の一つと考えられます。 前に述べましたように、分裂停止にある細胞は決して分裂を終了しているのでなく、再開で きるのです。再生肝は一つの例ですが、そうでなくても、器官をとり出し、適当な酵素で処理 してやると、構成していた細胞がバラバラに分離します。これを培養液の中に入れてやると、 ノクテリアと違って放っておいて かちょうどバクテリアの分裂のように分裂し始めます。ただ、ヾ る こも分裂を続けるというものではなく、分裂したものを新しい培地に移してやるといった細、い 」手当てが必要です。 このように手厚くとり扱っても無限に分裂できるものではなく、一定回数分裂したらそれ以 上は絶対に分裂しなくなります。 の 胞 一つの細胞が受精卵の分割から始まって、このように天寿を全うするまでに行われる分裂の 回数を「分裂寿命」とよび、ある器官がバラバラにされた後培養液の中で分裂する回数を「分 Ⅲ 裂余命」ということは、第—章の「老化は細胞のレベルで理解できるか」の節で述べた通りで
私たちの身体は精子と卵子とが合体した受精卵が元であることはいうまでもありません。こ の受精卵はます二つに分裂し、それそれがまた二つに分裂して合計四つになるというように、 分裂増殖をくり返してゆきます。この途中で、一定回数分裂したところで生殖細胞になる系統 と、体細胞になる系統とが分かれます。この生殖細胞の系に人った細胞は条件さえ許せば無限 に増殖をつづけることができますから、「不死細胞」と呼ぶことは第—章で説明した通りです。 体細胞の方は分裂をさらに重ねてゆきますが、ある回数分裂したところで神経細胞の系統が 樹立する、ある回数分裂したところで心臓の筋肉細胞になる系統が確立するといった具合に、 発生のそれぞれの段階でそれぞれの器官への分化が決定されるのです。これは、細胞にはそれ る が受精卵から始まって、現在までに何回分裂したかを算える計数機みたいなものがあって分裂 起 」回数を測定し、ある予定された分裂回数に達したら、胚の特定部分に位置する細胞は例えば神 経細胞として連命づけるべく遺伝子のスイッチが入るものと思われます。 神経細胞の系統に運命づけられた細胞はさらに分裂をくり返し、脳とか脊髄とかになります 胞が、この分化は誕生の頃までに終了してしまいます。そして神経系の細胞は誕生以後は、後で のべるどんなトリックを使っても分裂できなくなっています。このような細胞は「分裂終了細 Ⅲ 胞」とよばれます。図幻でいうならに入り込んでしまって、絶対にへ戻って来ないと考え
てよいでしよう。 脳細胞が分裂終了細胞であるということは私たちにとって重大なことです。皮膚などに傷を つけてもまわりの細胞が増殖してすぐその傷口をうめてくれますが、脳出血などで脳細胞の一 部が死んでも、これを増殖で埋めることができません。生命は助かっても後遺症が残るのはこ のためです。神経細胞以外では、心臓の筋肉細胞も分裂終了細胞です。ですから心筋梗塞で心 臓の筋肉細胞が死ぬととり返しのつかない事態になるのです。 その他の器官もそれぞれの位置で分化が決定され、その後も分裂をくり返しますが、図 8 に 一小したようにその多くは成長期のどこかで分裂を止めてしまいます。このような細胞は「分裂 停止細胞」といって、分裂終了細胞と区別します。 生体肝移植という一言葉がマスコミをにぎわしたことがありました。これは重症の肝臓障害を もっ乳児を助けるために、その親の肝臓の一部を切り取って乳児に移植するという手術です。 すると一部分を切り取られた親の肝臓はどうなるのでしようか。今までは分裂停止の状態であ ったのに、その一部を取られることで、からへと戻り、分裂を開始します。そして適当な 大きさまで戻したところで再び分裂を停止するのです。前節でのべた再生肝はこれと同じこと です。
も分裂をつづけているものと、肺の細胞のように成長期で増殖を止める器官とがありますが、 そのおのおので細胞の新陳代謝の考え方を異にします。 血球細胞は幹細胞と呼ばれる細胞が分化することによって形成されるのです。幹細胞は第— 章で述べた不死細胞に分類されるもので、いつまでも若々しく分裂能力を保持しつづけている のです。これがいったんリン。ハ球といったものに分化してしまうと、これは可死細胞に変化し てしまいます。可死細胞というのは第—章で出てきた言葉ですが、不死細胞に対して作った言 葉でした。あまりよい言葉ではなく、本来は「死ぬべく連命づけられた細胞」という意味なの ですが、これを短かく表現するよい言葉がないので、不適当と思いつつも可死細胞と呼んでい る こるわけです。可死細胞に分化したリン。ハ球の寿命は免疫のところでも触れたように短かく、や リン。ハ球で補われます。したがってこ しがて死にますが、これはすぐ幹細胞から分化した新しい れは正しく細胞の新陳代謝なのです。リン。ハ球はたしかに古くなると死ぬのですが、この「古 くなる」ということの実体がどうも不明です。ゴムバンドなどは古くなると酸化されて弾力を リンパ球でも何か都合の悪いことが起って死ぬのでしよう。い 胞失い、切れやすくなりますが、 ずれにせよ、細胞死については後でまた考えることにします。 Ⅲ 一方、臓器の細胞のように、ある時期で細胞増殖を止めてしまうような例では、リン。ハ球の
さて、細胞が老化のモデルとなり得ないのなら、組織や器官ではどうでしよう。 老化は器官できまるのか 古くから「人は血管とともに老いる」といわれていました。すなわち、年をとれば動脈硬化 などの障害がだんだんと進み、これが老化の原因となるという考え方です。 一方、前節で、「細胞を材料としての老化研究には限度がある。それは試験管内ではまだ分 裂できるはすの細胞が、器官となると分裂できないからである」ということを論じてきました。 そうなれは、今度は器官というものに着目して、老化を考えるというのが妥当でしよう。 私たちの身体の細胞は、受精卵が分裂を重ねる度ごとに、ある目的の役割を果す器官を構成 えするように分化してゆきます。ですから、それぞれの器官を構成する細胞は、先祖は同じであ うってもその性質は互いに異なります。中には細胞そのものが、器官の性質の一部を示す場合す 誌らあります。例えは心臓の細胞をとり出して来ると、細胞一個だけでも拍動を一小します。しか 老し、血球のように一細胞だけで一器官となっているものは例外として、多くの器官は多数の細 胞が集合することによってはじめてその機能が発現できるわけです。
されます。 ところが私たち人間を含め、高等動物の Z はこのように環状になっておらず、直線状の ままなのです。話をより合わせた二本の糸に戻しますと、ほぐれないようにするためには、そ れぞれの端で結びこぶを作っておけばよいわけです。実際、直線状のにあっては、末端 粒 ( テロメア ) とよはれるものが二重鎖の両端についていて、これが結びこぶと同じような役割 を果しているのです。このテロメアも材料としては Z なのですが、なかなかほどけないよ うにするため特別の構造になっています。ちょっと専門的な言葉でいえばという 塩基がくり返して並んだ構造で、これが四千塩基対もつづいた構造になっているのです。この る こテロメア構造はしたがって普通の QZ< 合成酵素ではなく、テロメラーゼと呼ばれる特別の酵 」素で作られるのです。 ところがこのテロメア構造も決して充分に安定ではないのです。図に示したようにどのよ うな分裂細胞にあっても、分裂をくり返すごとにテロメアが短かくなってゆくのです。テロメ 胞アが短かくなればテロメラーゼを作用させて補修するのですがなぜか補修の力が弱く、テメロ アは短かくなるのです。テロメアが短かくなるにつれ、分子は不安定になり、切断が起 Ⅲ ったりして細胞死という結果を招くでしよう。事実酵母を使った実験から、テロメアが短くな
ロ CE ロ 末端粒の ZZ< 量 ( % ) ロロ るほど死にやすくなるということがわかっています。 これを防ぐには、上に述べたテロメラーゼの活躍 に期待するしかありません。テロメラーゼの活性が 充分であれば分裂で短かくなったテロメアを補修し て元の長さにしてくれるからです。逆にいえば、テ ロメラーゼが充分に活躍しているかぎり、細胞は死 回胞 加細なない、すなわち不死であろうと予想できます。事 位の 団司人実ガン細胞ではテロメアの消失は起らないし、これ 集老 がテロメラーゼによるのだとい、つこともわかってい . 〇 ー丿レし ます。 ところが例の雑種細胞の場合、第一染色体が存在 加胞 の細 すると可死細胞になり、これは優性の表現型なので 右 第成す。これをどう説明すればよいのでしようか。一つ z の考え方は次の通りです。分化の過程で幹細胞 ( 不 と + 死細胞 ) から分化して可死細胞に決定された瞬間、 1()0
かが起ったとするものです。いま一つは原因は細胞質側で、加齢変化が起ったとするものです。 細胞では細胞膜がどろどろした細胞質をとり囲んでいますが、その中央にを含む細胞 核があります。分裂の少し前、期になるとが複製され、核が二つになります。これが 期でそれぞれの娘細胞にとり込まれ、分裂が終了するわけです。ですから核の方でなにか の複製に都合が悪いことが起れば分裂しないでしようし、一方核の分裂に必要なタンパク 質を細胞質側から供給できなくなると、やはり分裂しなくなるでしよう。 そこでまず次のような実験をしてみます。いま若い細胞と、分裂寿命がきて ( 余命がなくな かって ) 、もう分裂できなくなった細胞とを用意します。そこで、この老若両細胞を融合させて る こみるのです ( 細胞融合については次の節で説明します ) 。すると融合細胞は分裂できませんでし てこ。細胞融合という操作自体が分裂の妨けにならないことは、若い細胞同士を融合させればち ゃんと分裂することから明らかです。分裂能のある核と分裂能をなくした核とが共存する場合、 レ」 当然分裂能のある方が優性のはすですから、融合細胞が分裂できないということは、原因が核 、細胞質側に老細胞からきた分裂阻害物質が含まれていたと考えるのが当然 胞にあるのではなく です。そこで最後に、若細胞と、核を除いて細胞質だけにした老細胞とを融合してみましたが、 やはり分裂できなかったのです。
す。成長期で分裂を停止している細胞も、潜在的にはまだ分裂する能力を余しており、この潜 在的分裂能を測定したのが培養液の中での分裂実験だったわけです。 もしも分裂寿命が定まっているとするなら、図 8 からも明らかなように、胎児の肺胞細胞と 成人の肺胞細胞とでは、胎児の方が分裂余命が多いだろうことはすぐ想像できます。余命が多 いということは若いということでこれは話の筋がよく通っています。ところが肺胞の細胞は成 長期の終り頃でその分裂を停止しているはすですから、生殖期にある肺胞と、後生殖期にある 肺胞とでは分裂余命が同じであってよいはずです。 図 7 に示した分裂寿命の実験は別の結論を出していて、後生殖期の肺胞の分裂余命は、生殖 期の肺胞の分裂余命より短かいということなのです。分裂余命が短かいということは年をとっ ているということです。生殖期以後、肺胞の細胞は分裂を経験しないにもかかわらす、漸次分 裂余命が減少し、年をとっていきます。それは分裂能という生理的機能を尺度とした場合、生 殖期から後生殖期へと移る間にこれが低下したことで、これはまさに老化の定義とも合致しま す。 それでは分裂を経験しないのに、加齢によって分裂余命が短かくなるのはなぜでしようか。 少なくとも一一つの考え方があり得ます。一つは原因が細胞核にあり、加齢により細胞核になに