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検索対象: 老化とは何か (岩波新書)
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1. 老化とは何か (岩波新書)

ンパク質に対する抗体を作り、これでアルッハイマー患者の脳を染めてみますと、当然のこと ながら、老人斑が染まりました。それだけでなく、脳の血管をも染めたのです。ということは、 脳血管の中に貯っているアミロイドも日夕ン。ハク質を含んでいることを示します。前にも述べ たように、老人斑は血管中のアミロイドが浸み出してできたのだろうという説はこれでまた一 段と強くなりました。 新しいタン。ハク質について、そのアミノ酸の配列順序がわかれば、これをもとにして、この タン。ハク質の遺伝子を同定することは、今日のいわゆるバイオテクノロジーの技術を用いれば 容易にできます。この操作をクローニングと呼んでいます。 日夕ン。ハク質のクローニングの結果、画期的な新事実が続々と発見されたのでした。まず第 一は、この遺伝子は第二十一の染色体上に存在することが明らかにされたことです。 すでにダウン症候群、家族性アルッハイマーの一部について、それらが第二十一染色体に由 来するらしいことが明らかになったと述べましたが、ここにアミロイドの中核をなす日夕ン。ハ ク質も第二十一染色体にあることが判明したのでした。これは極めてショッキングな報告でし た。「アルッハイマーの病因解明近し」と信じた人も多かったと思います。しかし問題はそう 簡単ではありませんでした。「染色体と一口にいっても広うござんす」というわけで、同じ染 146

2. 老化とは何か (岩波新書)

て明らかであります。 状 特に問題なのは、細胞の突起が減少するだけではなく、 の 死によって細胞数そのものが減少することです。これを 体実際に細かく測定した人の例によると、上前頭部では九 錐 十歳の老人では成年の五〇パーセントから六〇。ハーセン 胞 トにまで減少しているということです。 経 神 脳の各部分の機能は神経細胞のネットワークで果され る ています。細胞死はこのネットワークの断線を意味する お のですから、大変なことです。年をとると物忘れが激し くなるということも、これで理解できると思います。特 上に述べたように、五〇。ハーセントも減少してしま のったのでは完全な痴呆になってしまうのではないかと心 加ま配される方もおありでしよう。 でも、それほど心配することもないのです。ます第一 図変 に、脳は決してその細胞を全部使うのではなく、むしろ 彡 /

3. 老化とは何か (岩波新書)

化が起こり、見かけの分子量が五万から六万八千に変りました。すなわち異常なリン酸化をし たわけです。タウをリン酸化できる酵素は他にもたくさんありますが、私たちの試したかぎり、 他のどの酵素もこんなに大きく、見かけの分子量を変えることはできませんでした。 私たちのタウブロティンキナーゼが、の形成の基になっていることを示す証拠がもう 一つあります。を前にもいったようにウサギに注射して免疫しますと、の中のユ ビキチンに対する抗体もできますが、タウに対する抗体もできます。ただしこの抗体は正常人 の脳にあるタウとは反応しません。中にある、異常にリン酸化されたタウとだけ反応す るのです。 それでは私たちのタウブロティンキナーゼでリン酸化したタウはどうでしようか。みごとに この抗体と反応するのです。 以上のことから、このタウブロティンキナーゼ、が形成の糸口を作っているだ ろうことが明らかになりました。ですから、このを特異的に阻害する薬物を作れば、ア ルッハイマー症の進行を食い止めるのに役立っことは充分考えられます。でもこれは今後の問 題であり、この話はこれで終りにしましよう。 162

4. 老化とは何か (岩波新書)

( 1,0()0 対 ) 50 ( 人 ) 。ガ、ン ・虚血性心疾患 x 脳卒中 24 ( ) ~ 269 くのです。先に日本の農村で、農民のコレ の ステロール値が上昇するにつれ、脳卒中患 率者が減少したというのとも、よく合ってい 死 ます。 この図から明らかなよ、つに、コレステロ ールの値は低けれは低いほどよいというの ロ テ 9 ロ では決してないのです。低すぎる人はガン ~ スレ や脳卒中で死亡する確率が高くなり、むし 川レコ 2 コる 清けろ危険因子であるわけです。さまざまなこ とを考え併せると、二百二十から二百五十 c 系 くらいがます最適であることがわかります。 日 イ欧米人の場合、全員の平均値が一一百五十く ワ ハらいですから、これより高く二百八十とか 三百とかいう人には、なんとかして二百五 図係 十まで下けさせようという努力がなされて < 180 189

5. 老化とは何か (岩波新書)

一方縦断的調査というのは次のようなものです。グルジアの人の例をとるなら、その一人一 人についてヨーグルトを食べているか、とか、その他に何を食べ、どんな生活をしているかを 調査し、これを年を追って追跡調査するのです。これら各人についての追跡調査をさらに統計 的に処理してみて、「長命の人は食べ物や生活態度は他の人とまったく変わらないのに、ヨー グルトを多く食べていた点だけが違っていた」ということが明らかになると、そこで初めてョ ーグルトが長寿の妙薬ということになるわけです。例のマイアミの笑い話でも、もしも縦断調 査をしていたら、決してあんな馬鹿な結論は得られないはずです。縦断研究の途中でスペイン 人がユダヤ人にすりかわることは起り得ないことなのですから。 老化のパラメーター さて疫学調査で何を求めるのが重要かというと、「老化防止はどのようにして可能なのか」 ということで、「寿命を伸ばすのはどうすればよいか」ということでないことは、これまでに もたびたび繰り返して述べてきたことです。 ここで問題になるのが老化の度合を測定するための尺度、。ハラメーターです。それも、数千 176

6. 老化とは何か (岩波新書)

変わったかを示したものです。一番左の形ですが、これは「長い白髪の人が杖にすがってやっ と立っている有様を示している」といわれています。中央の文字は恐らく左の文字が右の文字 に変るまでの中間の形だったのでしようが、これもよくみてみると、長い白髪の人が左よりも っと前かがみになって、それを子供が下から必死になって支えている形のような気がします。 これから明らかなことは「老」という文字はそもそもの成り立ちからいって、 身体の機能が衰えるという点に力点があり、年齢が高いということは髪が白い 遷ということだけで表わされているに過ぎないことです。 的 「老」が「高齢」より暗いイメージを与えるのはまさにこの点にあるのだと 史 歴 思います。高齢化社会を迎えるに当って、私たちは長寿といった言葉でごまか の 文されることなく、老という現実に立ち向い、それにどう対処すればよいかを考 えなければならないのです。 そのためには、まず「人は年をとるとなぜ身体の機能が衰えるのか」、すな 老 わち老化のメカニズムを知らなければなりません。ところがこれが大変な難問 図なのです。私は東京都老人総合研究所 ( これからは単に老人研究所と呼びます ) の五年間じっとこの難問とニラメッコしていたのですが、なかなか解けません

7. 老化とは何か (岩波新書)

果、その中の一つについてアミノ酸配列を調べたところ、ユビキチンの配列とまったく一致し、 これによりュビキチンがの一成分であることが明らかになったのです。 ュビキチンに含まれているというのも面白いことです。ュビキチンという名は「普 遍的に存在する」という一言葉から来たもので、ほとんどすべての器官の細胞に存在しています。 しかもこれらの細胞にあってユビキチンは、細胞にとって不要となったタン。ハク質を、分解の 方へまわす役割をしているのです。そうなるとは本来神経細胞にとっては邪魔物で、こ れを何とか始末しようとユビキチンに動員をかけるのですが、「ミイラ取りがミイラ」になっ 呆て、一緒にの中に取り込まれてしまったとも考えられます。 性 人 老 タウのリン酸化 型 マ アルッハイマー型痴呆症は今や世界中のトップクラスの研究者が、その解明にしのぎを削っ ています。それだけに研究の発展は目をみはるばかりの勢いです。その中でアメリカのペンシ ア ルバニア大学のリー博士は次のような面白い事実を発見したのです。アルッハイマー型老人性 Ⅳ 痴呆症の患者さんの脳にはが一杯になって、すでにパンクしかけているものから、 157

8. 老化とは何か (岩波新書)

皮膚、 筋肉 ! 覚 動 心運動のパターン 頭頂葉 前頭葉 知覚 認識 理解 吶 ( 聴覚 思考 創造感情 意志 視覚 判断 己立思 一三ロ がどんどんできる人がいます。最近 ( 磁気共 鳴画像化 ) が発達してきて、この梗塞を見つけるこ とが容易になりました。すると一見まったく健康な 老人でも、一つや二つは小さい梗塞をもっているの がわかります。数が少なけれはよいのですが、これ 野が多数できてくると痴呆の原因となるのです。脳血 葉領 各管性痴呆のことを、多発梗塞性痴呆とも呼ぶといい る ましたが、その理由は血栓が多数できて起こるとい お う意味であることはすぐおわかりでしよう。 質 破しかし痴呆の原因は梗塞の数だけではありません。 大 むしろ場所なのです。脳には領野というものがある といわれます。すなわち、脳がもっ多種多様の機能 溝図 は、それぞれ別の部位 ( 領野 ) で支配されるというの です。その一例を図幻に示してあります。これを見 ると明らかなことですが、言語、思考、判断、創造、 127

9. 老化とは何か (岩波新書)

は図のように老若ラットを身体を平行にし、腹部で外科的に結合 行能 させ、それらの間で体液が交流できるようにする実験です。これ 平可 ををを。ハラビオシスと呼びます。愛知医科大学の田内教授、佐藤教授 体換 個交 はこの実験で、次のような極めて興味ある結果を得られました。 のの っ液すなわち、。ハラビオシスにより、まず外観的に二匹の間にあった て 年齢差がみられなくなる。また若齢側の肝細胞の増殖は。ハラビオ わ ーゼによって抑えられており、また肝臓細胞内のミトコンドリア 合 オ も、若い ぬ ートナーのものは老齢側へ、老パ ートナーのものは若 を ( 部ん齢側にシフトしているということです。これは臓器の老化はそれ 1 腹あ , て単独で決定されているものではなく、体液といった環境で支配さ 図しし れていることを明らかに示しています。 これらのことを総合してみますと、個体の老化の原因を、きまった単独の器官、あるいはそ れぞれの細胞に求めることは誤りであるといわざるを得ないのです。 そこで、今度は視点をかえて、老化の原因を個体そのものに求めてみることにしましよう。

10. 老化とは何か (岩波新書)

アルッハイマー病はどうして発症するのだろうか この章では、アルッハイマー型老人性痴呆のことにつき、長々と述べてきました。それは私 自身これに携っているということもありますが、むしろここ数年、これほど飛躍をとけた分野 は、老化研究の中にはないからでもあります。 それは結局、二十世紀の初頭、アルッハイマーが報告した三つの特徴の中、老人斑と神経原 呆線維変化の二つが、分子のレベルで明らかにされたことによるのであります。 性老人斑と神経原線維変化、これらのうちいずれがアルッハイマー型老人性痴呆の発症の原因 老になっているのでしようか。現在でも論が二つに分かれています。 この問題に対し一つのヒントを与えるのが図です。すなわち、老人斑は四十歳から ( 正常 マ 人の ) 脳に現れ始め、六十歳を超すと急激にその蓄積が顕著になってゆきます。これに反し、 」神経原線維変化の方は、六十歳すぎてから少しずつ現れ始め、七十歳から八十歳にかけ急上昇 ア します。これはまさに、図の曲線とよく一致しています。このことから見れは、前にもいっ Ⅳ たように、神経原線維変化の発現とアルッハイマー型痴呆症の発症とがよく一致していますの 163