一匹狼、伊達邦彦の新しい任務は、日銀ダイヤの 大薮春彦強奪を狙う米国マフィアの襲撃を阻止することだ。 優雅なる野獣 巨大組織への孤独な闘いを描く、連作五編。 東洋のロメオと呼ばれるハイ・テクニックをもっ 北野品夫。世界を舞台に優雅にして強 汚れた英雄全四冊大薮春彦レーサー 靭、華麗な生涯を描く壮烈なロマン。 汚く金儲けした奴らから、ハゲタカのように金を 大藪春彦奪う端正でクールな凶獣の軌跡ーー。現代犯罪の 餓狼の弾痕 盲点を突いた意欲作 ! 書きたいと強く願った少女が母となり、芥川賞作 洋子家になった日々。幸せと悲しみに揺れる人の心の 妖精が舞い下りる夜 奥をすくいとる静謐な情熱にみちたエッセイ集。 トウシューズを拾った僕は持ち主を待っーアンジ アンジェリーナ 洋子工リーナ。佐野元春の代表曲にのせて小川洋子が 佐野元春と十の短編 胸に奏でる無垢で美しい十の恋物語。 劇しい演技で、純粋すぎる愛で人々を魅了した女 欲望という名の女優 長田渚左優の生涯を克明に、敬愛をこめて綴った慟哭のノ ー太地喜和子ー ンフィクション。 韓国人の強固な処女信奉、日本人の「カカア天下ー お そんふあ 恋のすれちがい 呉 誰ロ花と「亭主関白」の不思議な両立など、両国の恋愛 韓国人と日本人、それぞれの愛のかたち 事情から見えてくる、異なる文化、伝統の素顔。
「この人って私と別の人種だわ」と内心思いなが アナタとわたしは違う人酒井順子らも、なぜか器用に共存する女たち。ならば二種 類に分類してみましよう ! 痛快・面白ェッセイ。 せつかく女の子に生まれたのだから、楽しまなく お年頃 酒井順子ては損。肩の力を抜いて、平凡さに胸をはりまし 乙女の開花前線 よ。女の子生活全開お愉しみェッセイ ! 飽くことのない食べ物への好奇心。食べている時 酒井順子にこそ、女の成熟度が現れる。食事にまつわる四 セ食欲の奴隷 十二の事柄が、貴女を大人の女に変えるー・ 外食、ストレス、おっき合い : ・おいしく幸せな食 ス丸の内の空腹 酒井順子事のための、と「食」とダイエットの関係。 お食事物語 べ 元丸の内の著者が彼女達の生態を鋭く描くー・ 庫 キャリアと美意識のせめぎ合い、会社員ファッシ 酒井順子ョン : ・。全ての女性部下を持つ上司と若きビジネ 文会社員で行こう ! スマンやに捧げる、会社生活必勝ェッセイ ! 角 意外な学歴・身長の芸能人。ドラマやで思わ 一アレビってやつは酒井順子ずチャンネルを変えたくなる瞬間。クイズ番組で の人間模様・ : 。テレビフリーク必見のエッセイー ″特別みに憧れながら〃普通″を抜け出せなかっ 一」投稿し、 酒井順子た少女。普通の女子高生がコラムを雑誌に 東京少女歳時記 社会人になるまでの自伝的ェッセイ集。
日常生活の中のちっちゃな物や出来事を、キリコ ファン必読、キ ィリコのコリクッ玖保キリコ流のレンズで眺めてみると : リコ入門の書。坂本龍一、矢野顕子との鼎談つき。 ″勇気、根性、努力みが私の源よ ! 本人はいたって キリコのドッキリコ 玖保キリコ真面目なのに、キリコの行く所、ハプニング続出ー みぢかなところにキケンがいつばい 読者を摩訶不思議な異空間へ誘う異色ェッセイ。 二十六歳の平凡なが、男に出会いそして堕ち たーー。性と欲望に溺れ、暴走を続ける男と女の 薫 栗本 野望の夏 〃狂った夏みを描く異色のミステリーロマンー 長唄の家元の邸内で殺人事件が起こる。華麗なる 栗本薫芸の世界を舞台に、名探偵・伊集院大介が初登場 絃の聖域国国 し謎を解く ! 本格推理の名作。 香水、髪型、メイク、ダイエット、料理、結婚、 斎藤澪奈子仕事等、日常的なテーマの成功法を具体的に描き 超一流主義 切ったエキサイティングな一冊ー 自転車を二人乗りしていた加那子の日々。飛行機 ラブピーシイズ 門ふみをめぐる結婚物語。不器用な多恵子の恋。十一人 柴 恋愛物語 の素敵な恋物語を描いた恋愛短編集。 ・、ダイエット、ファ 。、ンヤマ マーガレット酒井の リセエンヌ 酒井順子ッション・ : マーガレット酒井先生が女子高生の本 女子高生の面接時間 音に迫る、おしゃべりエッセイー セックス
命をかけた五四五句 ! 癌宣告の日から、休むこ 江國 茲となく詠み継がれた句集。短い詩型のなかに凝縮 癌め して表現された闘病の現実と心情のすべて。 ミンの楽曲をモチーフに、「愛していると言 」 , 悦吏子ってくれ」「ロンバケ」の北川悦吏子が描く短編恋 冷たい雨 愛ドラマ。表題作を含む 8 編を完全ノベライズ " ふたりの少女、ふたつの時代に引き裂かれた魂の セ少女達かいた街柴田よしき謎とは = = = 。青春と人生の哀歓を描ききる、横溝 正史賞受賞女流の新感覚ミステリー登場。 取材で神戸ー上海を結ぶ鑑真号に乗ることになっ ス〔新盟当 島田荘司た女性記者弓芙子。だが彼女の命を狙う謎の上海 べ消える上海レディ レディが・ : 。密室と化した船内本格ミステリー 庫 ベストセラー「死国」の著者が、怖い話を書く度 坂東一県砂子に体験した不思議な出来事を綴ったエッセイ集。 蚊身辺怪記 ゅめゅめ、怖い話を侮るなかれ。 角 マーケットー スキー、顔マネ、山菜採り、フリー 本文群ようこ 作家と女優が師に導かれⅡ種目に取り組んだ汗と 写真文もたいまさこ 涙と笑いの全記録。入門書としても役立つ一冊。 ワン・サウザンド・ワンナイツ 美しいフィルムが織りなす〈愛〉と〈幻想〉の軌 天野喜孝跡。運命的な出逢いをしたカマール王子とブドウ 1001 Nights 姫の究極の愛のものがたり。オールカラー文庫。
角川文庫発刊に際して 角川源義 第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗退であった。私たちの文 化が戦争に対して如何に無力であり、単なるあだ花に過ぎなかったかを、私たちは身を以て体験し痛感した。 西洋近代文化の摂取にとって、明治以後八十年の歳月は決して短かすぎたとは言えない。にもかかわらず、近 代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することに私たちは失敗して 来た。そしてこれは、各層への文化の普及滲透を任務とする出版人の責任でもあった。 一九四五年以来、私たちは再び振出しに戻り、第一歩から踏み出すことを余儀なくされた。これは大きな不 幸ではあるが、反面、これまでの混沌・未熟・歪曲の中にあった我が国の文化に秩序と確たる基礎を齎らすた めには絶好の機会でもある。角川書店は、このような祖国の文化的危機にあたり、微力をも顧みず再建の礎石 たるべき抱負と決意とをもって出発したが、ここに創立以来の念願を果すべく角川文庫を発刊する。これまで 刊行されたあらゆる全集叢書文庫類の長所と短所とを検討し、古今東西の不朽の典籍を、良心的編集のもとに、 廉価に、そして書架にふさわしい美本として、多くのひとびとに提供しようとする。しかし私たちは徒らに百 科全書的な知識のジレッタントを作ることを目的とせず、あくまで祖国の文化に秩序と再建への道を示し、こ の文庫を角川書店の栄ある事業として、今後永久に継続発展せしめ、学芸と教養との殿堂として大成せんこと を期したい。多くの読書子の愛情ある忠言と支持とによって、この希望と抱負とを完遂せしめられんことを願 一九四九年五月三日
き じ 虹は消えた さとうあい 佐藤愛子 角川文庫 11042 平成十一年五月二十五日初版発行 発行者ーー角川歴彦 発行所ーー株式会社角川圭店 東京都千代田区富士見二ー十三ー三 八四五一 編集部 ( 〇三 ) 三二三八 電話 営業部 ( 〇三 ) 三二 八一七七 振替〇〇一三〇ー九ー一九五二〇八 印刷所ーーー暁印刷製本所、ーー本間製本 装幀者ーーー杉浦康平 本書の無断複写・複製・転載を禁します。 落丁・乱丁本はご面倒でも小社営業部サービスセンターに お送りくたさい。送料は小社負担でお取り替えいたします。 定価はカ・ハーに明記してあります。 CAiko SATO 1995 Printed ⅲ Japan C0193
本書は平成七年十一月、小社より刊行された 単行本を文庫化したものです。
恋をする。カズオも成就できない恋と知りつつ麻見を激しく愛してしまう。別れはやっ きた。麻見は父の病院の跡を継ぐ医者と結婚し、カズオはイギリスに馬の育成の勉強の 4 めに留学した。そして十年が経った。『虹は消えた』はここから始まる。十年前の回想宀 を読んでいない読者でも十分に堪能できるところ うまく織り込みながら、「虹が : 佐藤さんならではの構成力の素晴しさである。 『虹は消えた』は三十歳になり、有名スタ 1 に成長した麻見が、カズオに再会してまた赤 に身を焦がす苦悩や焦立ち、一方、三人の子持になったカズオの麻見を愛すれば愛する ど苦しく切ない胸のうちが読むほどに私を息苦しくさせる。ふと考えた。「佐藤愛子さ , って、おいくつだっけ ? 」。なんとまあこの小説のみずみずしいこと、そして甘酸つば、 青春の光と不安に彩られていることか。 しかし、やはり麻見に会うのがーーー会った時の自分が怖かった。 ゅうもや こう思いしながら、カズオは歩いていた。タ靄のように、理由のはっきり 1 ああ思い おお 説 ない憂鬱が身体を蔽っている。なぜこんな気持になんかなる ? あの人が来たからって、 解オイラには何もカンケイないべよ : かす 丘の上をタ焼の紫と紅の尻尾が掠っていた。紫は暗く、紅は鮮やかに光っている。丘 ( 上に母馬と仔馬の一組を放牧している。母馬の手綱を取って歩き出すと、仔馬もついてノ
ておめにかかる佐藤さんの美しさにみとれた。。ハ ーマをゆるくあてた豊かな黒髪を耳のう しろにふわあとまとめ、化粧っ気のない白い肌に薄い紅色の唇、そして知的な光りをたた える大きな瞳は、私がテレビ局で見慣れているコテコテ化粧の女優やタレントとは全く違 うホンモノの美人という印象だった。「うつみクンだ」 遠藤さんが甲高い声で私を紹介した。私はペコンと頭を下げた。すると「佐藤です」と 目の前の佐藤愛子さんはにこやかに頭を下げて下さった。その包み込むようなやさしい笑 顔にポーツとなった。やがて水割りを飲んでいい気持になった遠藤さんが「僕とタンゴを 踊ろう」と佐藤さんを誘った。「えつ、踊れないわ」と断る佐藤さんに、遠藤さんが、 「僕のリードに任せれば、下手つびいでも踊れるんだよ」と佐藤さんの手をとり、二人は 踊り始めた。手と足がギクシャクしていてタンゴとはほど遠い壊れたロポットみたいな踊 りだった。佐藤さんが笑う。ケラケラと笑う。「君イ、真面目にやらんかい、と怒る遠藤 さんに、佐藤さんは笑い崩れている。体全身を震わせて子供のように笑う佐藤さんに ( そ の頃「怒りの愛子センセイ」といわれ、気にくわないことがあるとすぐに怒り出すという あっけ 説 ことで有名だった ) 私は呆気にとられ、何か無性に可愛い女性に思えたのだった。 解それからも私はたくさんの人に「作家の中で、誰が一番好きですか ? 」という質問を受 けた。 「佐藤愛子さんです。作品 ? たくさんありますよ。まず『幸福の絵』、そして『ソクラ
助監が叫んだ。 麻見は走り出した。向う片側のニセアカシアの前で見物の群集が見守っている。その中 からくる射るような視線を感じてその方を見た。見物の女子学生の群から頭ひとっぬうつ ひさし と出ている黒い野球帽。その庇の下の深いところで暗い目が光った。カズオの目だった。 思わず力が抜け、脚が止りそうになった。監督の声が飛んできた。 「何やってんの。そこで止りたいってわけ ? どういうことだ : : : もいっぺんやり直し。 止らないで真直よ : : : 」 監督はいった。 「いいね、ヨーイ、スタート : カチンコが鳴った。 麻見は走った。向うにカズオがいる。その方へ向って走った。カズオの目をしつかりを きようじんはがね 見て走った。カズオの目と麻見の目の間に、目には見えないが強靭な鋼の糸がくり出され て、それはどこまでも伸びて永久に切れることがないようだった。麻見の髪が解けて肩に はぎすそ え かかり、脛が裾を割った。カズオは我知らず引き寄せられて二歩三歩、女高生たちを押 1 虹のけて前へ出ていた。その前を麻見は走り過ぎた。海へ向ってまっしぐらに走る麻見の 姿は、このまま海の碧さの中に、鋼の糸でカズオを引っぱって走り込んで行ぐようだった