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検索対象: 長編推理小説 恐喝
256件見つかりました。

1. 長編推理小説 恐喝

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2. 長編推理小説 恐喝

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3. 長編推理小説 恐喝

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4. 長編推理小説 恐喝

感情を強いておさえてきた。茂呂が、千夏をある意識をした。 もって眺めるようになったのは、三木忠男が、アサヒ石このとき、茂呂の頭の中に、二つの考え方がひらめい 油に対し、政撃をかけてきたときからである。 た。一つは、三木が千夏の美貌に目をつけ、野心を持ち 「先生、私、三木忠男さんと、お会いしましたのよ」 たしたのじゃないかということだった。他の一つは、三 と、千夏が茂呂に、さりげなく話したことがあった。関木が千夏に近づくのは、会社の秘事を探るための、スパ 急電鉄の総会で、茂呂が三木を叩きつぶしてから、まもイ工作ではないかということである。 なくのことである。 「三木さんは、これからもときどき、お会いしたいと言 茂呂の心の中に、三木忠男の映像が、色濃く染まってうんですの」 いたときなので、茂呂は、目をみはって、屈託なくほほ「何を、聞こうとしていたんだね」 えみかける白い顔を見守った。 「貸付金、未収金、仮払金が増えた理由を、知りたがっ 「なんだってまた、三木が、あんたに」 「あの人、私のうちへ、突然、訪ねてきましたの。亡く「やつばりそうだったか」 なった父が仕えたことのある農林省の局長さんの紹介状茂呂は、つぶやくように言うと、考えこんだ。千夏 を持って。おどろきましたわ」 が、三木の手に落ち、彼のスパイとなることはないだろ 「三木忠男とアサヒ石油の秘書課の女子社員。おもしろうが、千夏がもし、三木の女となったとしたら、重大な い取合わせだな」 事態となると判断した。 千夏は、三木に誘われ、高輸のかつらぎで会う前のタ 茂呂は、さりげなく言ったものの、胸の中が波立って くるのを覚えた。今まで、千夏を好意ある目で眺めるだ刻、茂呂に、「三木さんと、銀座で会いますのよ」と報 けで、女としての意識を持つまいと心がけてきた茂呂だ告した。 が、イミテーションだと思っていた宝石が、何かの拍子茂呂は、一瞬、不快な気持ちになった。千夏が、三木 7 で本物とわかったときのように、まじまじと千夏を見直の中し出を拒否せず、よろこんで誘いに応じていく態度

5. 長編推理小説 恐喝

しかし、これらの支出は、まったく一時的に、別途積 川の黒い流れを眺めた。異臭が風に送られてにおってく ぎっすいせん 立金の中から、払い出されたものである。会社は中すに る。吃水線ぎりぎりに荷を積んだ、だるま船が、ゆっく り流れ、対岸の灯を映した川面は、金色の小波を立てて及ばず、官庁においてすら、他の費目から一時的に流用 することは、ままあるのである。それを決算期を越えて 茂呂の心の中に、徐々にではあるが、闘志がみなぎりまで、流用することは許されないことも当然である。 が、当社の場合は、決算期以前に、正当な費用に振り替 始めた。 ごびゅう 〈みくびっていたのが敗囚だった。 : 、 カ三木をのさばらえられ、誤譌は訂正すみとなっている。いささかの経理 すことは、自分の減亡を意味する。なんとしても勝たね不正も 茂呂の語調は、次第に熱気をおび、鋭い目は、ぎらぎ ばならぬ。勝っための演説のすすめ方はどうするか〉 茂呂は、川面に向かい、低いがカのこもった声で、演らと光りだした。半白髪が、夜風に乱れとんでいた。 説をはじめた。 きのうの九百六十一番の発言に対し、反対意見を 開陳する。別途積立金は、、 しわれるとおり、平衡資金と 翌二十三日 称する積立金である。この金が、運送貨物の不測の損害茂呂は十時前から、総会場へはいりこみ、三木の姿を を保証するためのものであることは、きのう、中し上げ捜し求めたが、あの特徴のある童顏は見えなかった。経 たとおりである。 理部長が、きのうの三木発言をやわらかく反駁し、茂呂 この中から、本年五月末日までに、四十六億円余の支と打ち合わせたような趣旨で、説明を終えても、三木の 出がなされ、葉山ゴルフ、オリエンタル、その他へ出資姿は現われなかった。 金あるいは貸付金、仮払金、あるいは政治献金名義で、 茂呂は、徳山の説明に、賛成するむねの演説をした。 払い出されたことは、その後の調査で、事実であること当面の敵、三木がいないので、調子を落とした演説たっ 3 が判明した。 たが、それでも、騒いだ株主たちをおさえる効果はあっ

6. 長編推理小説 恐喝

り、三木のべンツを尾行した。第一日目は、赤坂の料亭 長谷川だった。二日目は、ホテル・オークラへ出かけ、 茂呂が、赤岩を帰したのは、佐々木と二人きりで重大一時間ほどすると出てきて、まっすぐ市川の自宅へ戻っ な話をしたいと思ったからである。三木事務所の女と夫た。三日目は、高輪のかつらぎへ出かけ、八時半ごろ出 てきた。 婦約東までした赤岩を、警戒する気持ちが動いたのだ。 茂呂は、自分の陣営が、急速度で崩れていくのを知る佐々木は、かつらぎを出てきた三木の車に、速度を合 と、頽み摠回のため、のるかそるかの作戦を立てていたわせながら追尾した。高輪警察の前を通りすぎ、伊皿子 の都電通りを横切ると、三木の車は、石塀で囲まれた、 のだ。 「佐々木君、骨の折れる仕事なんだが、きみ以外にできコーボラスの門内に消えた。佐々木は車を門の反対側の 空地に止めると、門内をうかがった。 ない仕事でね」 三木は、ビルの左手の駐車場に車を人れると、建物の 茂呂が、静かに話しかけると、佐々木は目を光らせ、 中へはいっていった。佐々木は、門柱に、横に書かれた いずまいを正した。 ビア・ビアンカという文字を睨むと、駐車場へはいりこ 「何を探るんです ? 」 「今の赤岩の話でわかるとおり、三木はごく最近、大金んだ。乗用車が数台駐車されているたけで、人影はない。 〈三木のやっ、妙なところへ来たもんだな〉 をんだ形跡がある。それがどうやら、関急電鉄の匂い と、つぶやきながら、佐々木は、三木の車の後ろにうず もするんだ」 茂呂は、上体をのり出し、低い声で三木攻略の作戦をくまった。 〈だれに会いに来たんだろう。それとも、自分のアパ 語りだした。 トかな。もし、ここへ三木が泊まるとすれば、計画を変 更しなければならん〉 茂呂の作戦に従い、佐々木の行動が始まった。 はんすう 佐々木は、自分で自動車を運転しながら、夜間に限佐々木は、茂呂の意図を反芻した。 181

7. 長編推理小説 恐喝

ぐらせていた。 こで忍び会いをしたのか、知れたもんじゃない。雑誌の 赤岩参六から、電話があった。 見本刷りを持ってきたのは、すでに、関急と取引きがす 「いま、佐々木さんと、大森の探偵事務所で打合わせをんでいながら、おれを嘲笑する意図のようだ。三木と千 してるんですが、何かご用は : : : 」 夏の間に、必ず、見本刷りの裏話が出ているはずだ。千 「三木の動きはどうなんだ」 夏は、そ知らぬ顔で、使者の役目を果たしているのだろ 「いろいろ報告もたまってるそうですが」 いちもんじ 「よし、大森海岸の一文字という料理屋へ、二人で出か茂呂は、考えるたびに、腹を立て、やがてやりきれな かつぼう けてくれ、海の見える離れ座敷がとれたら、都合がいい い失望感を抱いた。それでも、「割烹一文字」と書かれ かぶきもん な。芸者は、いらんよ。こっちもすぐ出るから」 た木彫の看板のある、冠木門をくぐるとき、負けてたま 茂呂は、それだけの指示を与えると、部屋を出た。工るかという闘志が、火のように燃えていた。 レベーターのボタンを押していると、千夏が後ろから、 赤岩と佐々木が、一風呂あびて浴衣がけで、離れ座敷 「お気をつけて」と、挨拶の声をかけた。 に待っていた。枝豆と冷えたビ 1 ルが出て、三人はまず 振り向くと、千夏が、強ばった表情で、茂呂をみつめ喉をうるおした。 ていた。茂呂は、会釈もせず、とがった視線を投げただ「佐々木君、いろいろありがとう。まずその後の報告を けで、エレベーターに乗っていった。 聞こうじゃないか」 自動車をとばしている間、茂呂は、千夏のことを考え茂呂は、上着を脱ぎ捨て、ワイシャッ一枚の姿になる ていた。 と、佐々木に間いかけた。 〈不可解な女た。おれと三木を手玉にとっているらし「三木の行動を見ていますと、アサヒ石油と関急を除い い。二十五や六の若さで、なんたる図太さだろう。滝のた、先生の顧問会社全部を回り歩いています。最近で 前の抱擁は、演技だとすれば、まれに見る悪女かもしれは、財界新論社長という名刺を使わず、日本政治連盟常 ない。三木と、銀座のレストランで会ったというが、ど任理事という名刺を、振り回しています。一日のうち一

8. 長編推理小説 恐喝

図はどうであろうとも、強奪した結果になると思い、考赤岩は、妻がまだ元気なころ、辻堂の茂呂の家へ出か え直した。また、赤岩が、総会屋である意識が、警察をけるのを、楽しみの一つとしていた。茂呂の妻に、お茶 を出してもらい、一言二言、話をするだけで、赤岩は、 敏遠させたのかもしれない。 しい気分に浸れた。智恵子夫人の、古風な美しさに、ひ 赤岩は、その夜、辻堂の自宅へハンドバッグを持った かれていたからである。が、ここ一、二年来、智恵子夫 まま戻った。茂呂の家は、赤岩の自宅から、徒歩五百メ ートルばかりの地点にある。赤岩は、なんどか、茂呂に人は、赤岩に対してすら、とがった感情をむき出しにし 電話をかけて相談しようと考えたが、金森みどりというてきた。 赤岩は、〈うちの大将、奥方のサービスができなくな 女は、三木のスパイではなく、茂呂と千夏の仲を疑い 茂呂の細君が、調査のため頼んだ女ではないかという考ったんだな〉と、セックスに結びつけて考えたこともあ った。そのうちに、〈茂呂先生、ほかに女ができたのか えが頭を掠めたので思いとどまった。 赤岩は、毎朝、かならず茂呂を迎えにいくが、たしかもしれない〉と考えるようになった。 に妃イが、円満を欠き、針のようなとげとげしさが流その女は石渡千夏ーーと思うようになったのは、こと しの五月ごろからのことである。茂呂と千夏の会話は、 れているのを感じていた。 顧問と秘書の間柄を越えた感じがしていたし、茂呂の千 「どうも、女房のやっ、機嫌がわるくて困るんだ」 夏を見るまなざしにも、ねばっこいものが見てとれた。 と、。ほっつり吐き出すように、茂呂が言ったときから、 ・こー、ーという考えがひろが あの女は茂呂夫人のスパイオ 赤岩は、茂呂夫婦のビンチを感じ取っていたのである。 ってきた。とすれば、ハンドッグは、夫人に渡せばい 赤岩の妻は、二年前の六月、肺結核で病死し、自宅に いと考えたが、それをもぎ取った自分を、夫人はどう思 は、小学校一年生になる女児と、六十の坂を越した母が いるだけだった。三十六歳になったばかりの赤岩なのうだろう。三木忠男とのいきさつを、どう説明しようと も、理解してもらえる見込みは少なかった。むしろ、ひ で、茂呂をはじめ、後妻を世話しようとする者もいたが、 そかに茂呂の情事を探ろうとしていた夫人の計画が、赤 女児と後妻との折合いを考え、再婚をしぶってきた。 161

9. 長編推理小説 恐喝

もちろん、女を金で買ったこともなかったし、。フロダ 当は出す」 源田が誘いの手をさしのべてくれた。茂呂は、古い友クシ ' ン時代、女優たちに手を出すようなこともなか 0 2 人の好意をよろこんで受けたのである。 おぼ 男が女に溺れるのは、せいぜい二十代までであろう。 この日、茂呂は三枝智恵子といっしょに、銀座のレス トラン・エスコッフェで、おそい昼食をともにした。源が、四十五歳の茂呂は、智恵子にまったく溺れきってし 田が、「どうせ帰る方向が同じなんだから、送ってやつまった。週二回の辻堂通いでは、どうにも我慢がなら かけじく てくれ。箱入り娘に虫がつくと困るから」と、冗談めかず、掛軸を見てくれとか、志野茶碗が手にはいったから とか、そのつど口実をもうけ、智恵子の家を訪ねた。 して言ったので、茂呂は智恵子といっしょに外へ出た。 東京駅までタクシーをとばしているうちに、食事の約東そんな状態を半年ばかりつづけているうちに、茂呂は 思いきって、愛の告白をした。智恵子も、茂呂の一途な ができたのである。 この食事がきっかけとなって、茂呂は、週二回ずつ辻気持ちに、心を動かされたが、「奥さんが、おられるで うらせんけ 堂まで出かけ、智恵子の母親から裏千家流の茶道を習うしよう。だから : : : 」と、奥さんさえいなければ、夫婦 ようにな「た。茂呂は、年甲斐もなく、智恵子に愛情をにな 0 てもいい、陰の身では困るというような意思を、 言外にほのめかした。 抱いた。 茂呂は、その経歴でわかるように、さしたる教育もな茂呂は、源田清蔵にいっさいを打ち明けた。源田も、 、大工の徒弟から、新聞配達、左翼の闘士、猥本の出ことの意外さにおどろき、何度も、「二人の子供まであ りながら、今さら」と言って、茂呂をいさめた。 版屋、。フロダクション経営、軍需工場の社長というよう に、波乱の多い半生をおく 0 てきたし、四十二回の罰金「茂呂逸平、一生に一度の頼みだ。智恵子さんとい 0 し ょにしてくれ」 刑にもへこたれず、暗い銭儲けをつづけてきた男だが、 茂呂は、椅子からとび立ち、床にすわって両手をつい 女に関してだけは、潔癖すぎるほど純粋なものを持ちっ て頼んだ。結局、源田も茂呂の熱意に動かされ、二人が づけてきた。 挈んざ がまん

10. 長編推理小説 恐喝

体を、三木にくれたようなものだった。 茂呂は、手をのばすと、しつかりと千夏の手を握っ 十二月二日。総会場で、三木に敗れていく茂呂の姿をた。千夏は、ふたたび涙を滲ませた。 眺めたとき、うなだれ去る半白髪の長身が、痛いほど、 「千夏さん。考えるとおかしいもんたね。茂呂逸平と三 千夏の胸深く沁みこんだ。浜尾社長から、〈赤岩を擱木忠男という二人の総会屋が、総会という舞台で踊って め〉と命ぜられ、千夏は、今まで浜尾からもらった住宅 いたんだ。。ヒ h ロの踊りのようにね。ところが、舞台裏 代金や、五百万円を越す定期預金に対する代償として、 じゃ、浜尾五郎という怪物が、踊りの筋書きをこしらえ 最後の奉仕をする覚悟で、働いたのである。 ていたんだ。三木忠男も、やがてぼくと同じように、舞 「気が遠くなるような静かさだわ。きのう、きようの出台から消えていくんだろうよ。しよせんは知恵の勝負 来事、うそみたいな気がしますの。奥日光を、思い出しさ。財界の怪物には、総会屋の知恵なんて、かなわんの ますわ」 だよ」 茂呂は、千夏の言葉に、こみ上げてくるうれしさを噛茂呂は、千夏のやわらかな手の感触を味わいながら、 みしめた。千夏の心の奥に潜むものが、受けとれたから声を立てて笑いだした。千夏も、茂呂の笑いにつられ、 である。 涙を滲ませたまま、白い歯をみせた。 「ぼくも、あんたを誤解していたようだ」 萩むらに風が立ち、白い残花が、蝶のように舞い上が 「私、先生におわびがしたかったのです。さそかし、おった。 ろかな女と、お考えでしようが、どうそお許しください こよモデルはありません。 この小説冫。 ませ」 第九版までに出てくる「財界評論社」は、フィクショ 千夏は、両手を膝の上にそろえ、頭を下げた。 「許すも許さんもないじゃないか。あんたが、こうしンであって、神田小川町に実在する財界評論社とは、無 て、北鎌倉まで来てくれたということだけで、今のばく関係であることをお断わりします。第十版以後は、「財界 新論社」と攻めます。 は、涙の出るほどうれしいんたよ」 255