性は、女性同士ではそうでもありませんが、 のなかで、右側に見えるものはわりあい安定 男性に挨拶するときには、黙って頭をはずか して感じ、左にあるものには印象は強いが不 て しそうに下げるだけといった人が多いもので安定に思えるものです。テレビの画面でも、 っ す。 いくらはすかしくても、自分の名字くら右半分にいる人は安定していて、その人の話使 いはいえるはずです。 はよく理解できますが、左側の人を見ている手 て と何となく画面の中で落ち着きません。 「根岸でございます」 し あるいは、時と場合によっては、 ですから、書類や品物を相手に差し出し 前 「根岸でございます。よろしくお願 いいたて、自分が少し左へ寄ると、相手から見れし 少 します」 ば、自分の視界の左にある品物や書類の印象を くらいはいってほしいものです。そして心は強く、右側にある人間つまりあなたは相手左 持ちゅっくりていねいに頭を下げるくらいのからは安定して見えるのです。 心のゆとりがあってよいのです。 たとえば、「こんなこととこんなことと」 第一印象だけで人の値うちはきまるものでと指を折りながら相手に説明するとき、これ ズ はありませんが、印象が重要な役割を果たすまでのことを総合して考えると、 ポ ことも確かです。 写真のようにからだ、どちょうどモナ・ の ~ 逆 サの絵のように、左肩を心持ち前に出して、 た 品物を説明するとき やや斜 ( しゃ ) に構えた姿勢で、左手を使っ使 を て、その左手を胸とあごのちょうど中間にも 品物のセールスをしたり、書類の内容を説ってくるようにしたほうが、 @のこれとまっ 明したりするとき、品物や書類を相手の正面たく逆のポーズ、あるいはのの正面を向いて に差し出したら、自分はもし立っている場合無器用に下のほうで指を折っているよりも、 ならば半歩くらい左に寄りますし、また、椅はるかに効果があがることがおわかりになるで 子にすわっていても、椅子を動かすなり、かでしよう。 らだを寄せたり、斜めにすわり直したりし要するに話はそれに伴うジ = スチ = アとと器ヤ、 て て、とにかく自分のからだを左の方へ少しずもに、はじめて一つの意志表示や感情となっ らすことです。 て相手に伝わってゆくものです。そして、そ向 を 面 これは人間の視覚のクセをうまく利用するれは相手をいかに聞きやすくしてあげるか、 正 ためです。人間の目は見える範囲にあるもの見やすく理解しやすくしてあげるかというあ

です。湿気の多い気候のために、多かれ少なう場合には、手が口から胸の間にあるのがよ いのです。 かれ、鼻の悪い人が多いからです。 こうしますと相手は、話している顔と手を 目とロの合成の表情としては、恋人同士が 一つの大きな効果があ一度に見ることができるので、疲れないです を恋を衄りあうときに、 若ります。顔と顔を三〇以内に近づけて、話みます。 いをしながら、相手の目とロとを交互に見つめ やさしさの表現を たるのです。つまり、自分の目を、相手の目か 雫【 ) 一 0 ( 向らロへ、ロから目へとゆ 0 くり上下させなが女性の場合、手の表現のなかで最も要求さ 上ら、少し低い声で話をするのです。人間の会れるのは、やさしさでしよう。何も白魚の指 話で、このくらい興奮を高める表情はありまだけがやさしさを表現するのではありませ せん。そのあとはあなたのご期待どおりになん。生活によって荒らされた手でも、手の使 しょ , つによってよ、、 しくらでもやさしさ、繊 ります。 細さをあらわすことはできます。 たとえば、指さす場合にも、手をにぎりし 、 ~ 手の表情 めないで、少し手のひらを返すようにしたら や どうでしよう。そのうえ、手の高さは、腰の 手は心の動きに敏感 あたりよりも胸のほうが、胸の高さよりもあ っ 手は人間のからだの外にある頭脳です。生ごのあたりが、さらに目の少し下あたりがと っ は いうように、高くなればなるほど品よく見え 活に必要なあらゆる仕事をしてくれるほか 面 正 に、無限の表現力をもっています。小指一本るものです。歌舞伎俳優が、芸者の役をやる の動きのなかに人間のあらゆる表現を見ることきには、おちょうしを胸の高さにしてお酌 をし、御殿女中のときにはロと目の中間に持 とができるとまでいわれています。また、い ってゆくという演技が、このことをよく物語 カ くら冷静をよそおっても、手のひらに緊張の 雅汗がにじみ出てくるほど、手は心の動きに敏っています。 女性が美しさを年とともに失ってゆくとと の感です。 独話のうまい人は、よく手も動きます。問題き、たいていの女性は目じりのしわなどを気情 にしますが、それより以前に、手の表現の美 女は、その手の位置にあります。結論からいえ しさを失ってゆくことに気づくものです。よ 、当」日ば、話をしているときに、手がその表現を補

うことがわかります。そういったタイプの父 いうのは、つまらないことのように田 5 われて 教育という家庭の役割が、おおはばに学校に 。しくらきます。またそれが、人間と人間との交際に 吸収されていきました。しかしそれでも、家親は、明治時代から大正時代までま、、 だけ関係したことだと定めてしまうのも、ど 庭における親の役割が、消えてしまったわけでも見られたと思いますが、今ではもはや品 うかと思います。エチケットやマナーという ではありません。時代は変わっても、明治以切れとなってしまいました。 前の観念がつづいていたことは、事実なので太平洋戦争が大敗戦に終わって、アメリカものは、人間と物との交際にもあるのだとい す。 うことを知らなければ、話ははじまらないの 軍の占領下で、日本の「民主化」ということ たとえば、文豪の幸田露伴は、ひとり娘のがはじまりますと、多くの親たちは子どものです。 文さんの教育について、けっして自由放任で教育について、まったく自信喪失に陥ってし人間と物とのつきあいとは、要するに人間 はありませんでした。ある日、幸田家の奥座まいました。家庭においては、どんな時代がらしい物の扱い方ということに帰着します。 敷といったところに娘を呼びまして、お掃除きても両親が、最初にして最大の教育者でなナイフやフォーグだけではない、はしの持ち の仕方一式を教えています。箒、ハタキ、雑ければならないという一事が、すっかり忘れ方一つにだって、マナーというものがありま 巾、・ハケツなど、道具調べからはじまって、 られてしまったわけです。 す。そこに他人がいるかどうかは問題ではあ まるで武芸のけいこをするようです。それに しかしそろそろ、過去の記憶をよみがえらりません。子どもを育てる親たちは、はしを は、露伴が身をもって模範を示したというこせなければいけなくなっているのが、現代で右手に持っことを教え、茶碗を左手に持っこ とが、幸田文さんの随筆集に見えておりま 。力しかと思うのです。 とを教えないでしようか。 家庭こそが、 す。まき割りなども別な日に教えますが、女 最初にして最大の教育の場であることは、昔 も今も未来も、おそらく変わることはあるま は姿が美しくなければならないという。それ人間のロ明位のために こは力いつばいに割るのがよい力いつば、 いと思います。新しい希望に満ちて、家庭を 割ろうとするときに、姿勢が美しくなるのだ もたれるかたがたに望みたいことの一つは、 新しい親の楽しい自覚 というのです。 親になるとは教育者になることだ、という自 わたくしが格別興味をもちますのは、お 自分のカで新しい人間をつくる エチケットとかマナーとかいうものは、も覚です。 掃除などのそういうやりかたについては、露ともと武士階級の品位を定めるものだったのということ、それはなんといっても、おそろ 伴先生も女中には教えなかったという一事でではないでしようか。その根底をなすものは しいまでに楽しい自覚でなければなりませ す。女中というものは当時のことですから、 なにかといえば、それは深いところで人間のん。 入れ替わり立ち替わり幸田家に来たろうと思自尊心につながるものだったと思うのです。 いますが、その女中たちには教えなかったと戦後の教育で失われたものの一つは、この いうことがおもしろい。露伴は単なる実用を人間の品位という観念です。としますと、そ こえて、自分の娘を仕込もうとしたのだとい の一点を忘れて枝葉末節のことをやかましく きん そうじ ぞう 179 家庭と交際

や託児所でも育つなどといわれるかもしれま 6 やはりこの一つの問いから出発し、これに正 人生の幸福 せん。それも確かにそのとおりです。しか しく答えることからはじめるのがよいと思い ます。 し、それにもかかわらず、家庭が人間の生命際 の生まれてくる本源的な場所である、という 現代の家庭というのは、夫婦とよばれる一 交 家庭になにを期待するか ことは少しも変わっていないのです。 組の男女を中心とした人間の結合体であり、 また、子どもを育てるという役割の大きな この夫婦のあいだには、子どもが生まれるの もちろん、それ以外の答もすべてまちがっ が原則です。とうとう子どもの生まれない夫ているというのではありません。現代の男女部分が、幼稚園や学校に移っていることは事 婦もありますし、生まれてもその子を亡くしが、家庭というものになにを期待するかは、実ですけれども、教育という教育のなかで、 いちおう自由ですから、家庭なんてつまらなおよそその基本をなすものこそが家庭におけ てしまった不幸な夫婦もありましようし、 と考えるのもいいでしようし、家庭は人る教育であるということは、これも否定しょ 「子もたず」という夫婦だってあります。も うのないことだと思います。 ちろん、新婚早々は夫婦だけの家庭です。し間の自由を拘束するもの、うるさいものだと かし、やがて子どもが生まれるというのがふきめてしまうのもいいでしよう。またそれと つうのことですから、それを原則だと申し上は反対に、人生の幸福はほとんどすべて家庭 家庭は人間形成の場 の中に求めることができる、などと信じてい げるわけなのです。 さて、生まれた子どもは育てなければなりる人もないとはかぎりません。家庭生活とい 「育ちのよさ」と「よい家庭」 ません。そして、それを育てるのが夫婦であうものは、当事者にとっていろいろの目的を もったものであって、またその役割がいろい 人間が人間らしく育っためには、その環境 ります。 などと申しますと、あまりにも として、家庭も学校も、そして社会も、それ わかりきったことでして、わざわざそれを筆ろであることも事実です。 しかし、人間のあらゆる種類の営みの中ぞれ必要です。ことに人間を形成するうえに にする必要はないようですけれども、実はこ れがたいせつな点なのです。家庭とはなにかで、もし家庭の営みだけがもっている、たぐ最も大きな作用をもっているものは、その職 いない仕事があるとすれば、それは子どもを業であり、職場であるといわれております。 いにたいしては、ずいぶんい という一つの しかし、人間がそこに生まれ、そこで育っ場 ろいろの答があるわけです。しかし、当事者育てるという仕事ではないでしようか。 もし、そういっただけではたりないとすれ所である家庭というものほど、よいにつけ悪 である男女がめいめいどう考えていようと、 いにつけ、人間の形成に決定的な作用をもっ いわばこれを高いところにいて、全体を大きば、家庭の営みというのは、子どもを産み、 く見渡す立場 ( それが科学の立場 ) から申しまそして育てるのを原則としているというべきているものはほかにないのではあるまいか。 と申しますと、いや、赤ん坊「育ちのよさ」というのは、必ずしもゆたか すと、家庭というのは、子どもを育てるとこでしよう。 ろであるということに帰着するというわけでは産院や病院で生まれるじゃないか、といわな家庭に育ったということではありません。 れるかもしれませんし、子どもたちは乳児園それは、「よい家庭」に育ったということで す。

るのであって、一つ一つのテグニッグが完璧マ少々礼儀作法を知っているからといって、 であればよいということではないのです。 知識を過信してはいけません。 食べるためのテグニッグとあいまって、あ人間として、できるかぎり自然な姿になる ように努力することがたいせつです。 なたのその場にふさわしいやさしい心づかい こそ、最上のマナーであるといえましよう。 マ客はあなた一人ではないのですから、自分 れ取 そしてそれが最もたいせつなものであると断の礼儀作法の完全さを見せびらかすために、 《盛類 主人側に、また他の客に思わぬ迷惑をかけな 一「ロしてもよいと思います。 ( ( 第 ( 5 しよ、つに、いがけること。 ーティーでの心得 たとえば、中座する場合に、れいれいしく あいさっ ーティーに招かれて楽しくすごすためお別れの挨拶をすることで、そのパーティー のす に、ぜひこれだけは、い得ておいてほしいと思の座がしらけたり、興にのり、楽しくしてい - ′ーををクま 第第黐オ離うことをここに箇条書きにしてみましたのる人に不快な気分を与えたりするなどは慎ま なくてはなりません。 で、よく読んで心に刻み込んでください。 え柱 押貝まず宴会の目的をよく理解したうえで、そマどんなときも、人間同士のあたたかい愛情 をを を基本にしましよう。そのうえに聡明な判断 殻身のふんい気に自分がとけ込むように、、いにい でて を加えることによって、その場そのときの目 手しい聞かせること。 片に マ接待されることばかりを考えないで、接待的に誠実であろうと心がけること。 はう キよ しつも落ち着いて、あたた ガす側の意、つまり役割を理解して、客側も主人以上のように、、 生押 かい態度で人々に接することが、あなたをよ で側を助けるように協力する気持ちをもっこ り美しくするのです。 マ鳴かず飛ばずでいれば無事だなどという消 じよ、つず・ . に 極的な気持ちではいけません。積極的に会話 の中にはいってゆくこと。 いただくために マ自分は自分なりに堂々としていること。 杓皿 宴会にはサービスの人もいるのです。落ち は半 スープのいただき方 プ杯 たナイフなどあわてて拾わぬこと。あなたが オドオドしたりすれば、ふんい気をこわして欧米の吸い物にも、日本に、おすましとみ しまいます。 そ「汁があると同じよ、つに、コンソメとボター 67 西洋料理のいただき方

明るい交際 わたくしたちは毎日毎日人と人とのつながりの中で生活しています。この人間関係を円滑に楽しいものに するためには、他の人に迷惑をかけまいとする心ーーっまり、エチケットを身につけていることが必要なの です。自然に出てくるやさしい思いやりや快いユーモアが、さわやかな人間関係をつくります。

に せ は 行をつづけるうちに誤解が生まれ、気がつい表 夫と妻と たらお互いの心にすきま風が吹いていた、と情 い、フ」とにもなりかねません。 の 目を見かわすだけで、もうお互いの意志が とくに男性は、持ちまえの無精さに一種の婦一 通じ合うーーー「夫婦」とは、なんとありがたみえが手伝って、妻へのことばや、やさしい い間柄でしよう。激動する現代社会、一歩外表現を惜しみがちです。いたわり合う心、感 おく へ出れば、次から次へ、気を張りつめてつき謝の気持ちは、てれず臆せず、堂々とことば第一のタブーは、相手の親、きようだい、 合わねばならぬ相手ばかりです。だからこや態度に示しましよう。 親戚の悪口。たとえ悪口でなく、公正な批判 そ、相対してすわれば、自然に心がなごむ なにもアチラ流に「—ー 。。」であっても、いわれた相手の心は傷つきま 「夫婦」という人間関係は、、 しっそう大きなをくり返せというわけではありません。帰宅す。血縁とは不思議なもので、親、きようだ 価値をもってきます。 したときのいたわり合い、るすの間の情報の いの欠点を重々承知しているくせに、他人か 交換、そしてお互いの美点や心づかいを認めらの批判には、まるで自分が非難されたよう 以心伝心に甘えないこと 合う、そのことを表現するーーこんな日常茶に、防衛的な姿勢になるものです。 でも、この物いわず心の通う「以心伝心」飯事のなかで、愛はより強く育っていきま 身内ばかりでなく、友人、職場の同僚な の境地に、安心するのは危険です。安心はとす。 ど、相手の交際範囲にも、立ち入った批評は もすればなまけ心に通じます。夫婦というき夫婦の成り立ちが、愛情を基礎にする以避けるべきでしよう。お互いの世界、これま ずなのうえにあぐらをかいて、「わたくしの上、常にその愛を育てる努力をすることが、 での生活の歴史を認め合うところから、夫婦 気持ちはわかってくれるはず」と、高をくく 夫婦間のエチケットの基本だと思います。 の新しい歴史がスタートするのです。批判す ってはいないでしようか。よりよい人間関係 る前にます受け入れて、自分も相手の交際の 夫婦の仲にもタブーあり を育てるために、当然必要な愛情の表現や情 仲間入りをするよ、つにしましよ、フ。 報交換を、サポタージュしてはいないでしょ 世界中で最も信頼できる相手とま、、 。ししなカ第二のタブーは、月給やポーナスの比較、 ら、夫と妻の間にも、 いってはならないタブそして職場の人事。これはサラリ ーマン亭主 以心伝心に甘えて、ひとりよがりの無言の ーがあります。 の泣きどころです。 夫婦と交際

この事実を肯定することが、親子のエチ 母のこづかいを送っている、という投書があがれ、妻のあり方が、夫への評判を、大なり 小なり支配していることは事実です。とくにケットの出発点です。 りました。長兄の負担を少しでも軽くしよう ですから、わが子に対するエチケットの表 という、弟嫁の発案で、息子も娘も、配偶者〃長。と名のつく夫をもった妻は注意が肝要 現は、年齢とともに変えていかなければなり です。 と相談して、毎月の会費の金額を決めたとい 夫の出世は妻のよろこび、つい頭をもち上ません。「子どもの人格を尊重する」とい うことです。 げ、誇りたくなる気持ちはわかります。でもても、生活習慣の自立さえできない幼児と、 新しい親戚づき合いの知恵が、そこここに 芽ばえている様子です。だれも仲間はずれに夫が、部下を指示して仕事の能率を上げるた高校生の息子とでは当然、方法が違います。 百・ハーセント親に頼って生きている赤ちゃ とんなに職場の人間関係に気をつかっ こんな親戚づき合めに、・ ならず、負担は公平に ているか、考えたことがあるでしようか。とんにとって、プライ・ハシーはゼロ同然です いは、どんなに気持ちがよいことでしよう。 が、高校生の子どもへ来た私信を、勝手に開 このような、家族ぐるみ集団でつき合えるきには若いオフィスガール、新入社員にも、 封することは、もうエチケット違反というべ 場を、夫側も妻側もそれそれつくりたいものさまざまに心をつかっているはずです。 です。そうすれば「夫側の ( あるいは妻側の ) 部下はみんな夫の家来などと思ったら大まきでしよう。 親戚ばかりたてる」などといういざこざもなちがい。上に立つ人間はど、下の人間から批 というところ くなって、明朗な新しい人間関係が生まれる判され、アラを捜され、その家庭にまで視線 が注がれているのです。そこへ、「上役の夫子どもが幼稚園、小学校へ進むと、親のほ と思います。 人でございます」という態度を妻がとった うも < 、母の会など、新しいっき合いの ら、夫の努力はぶちこわしです。格別へりく 職場と家庭 子どもでも人格は尊重して だったり、過剰サービスする必要はけっして ありませんが、控え目に地味に、職場の上下 夫の部下、後輩に対して 関係を離れて、一人の人間として謙虚に対し アメリカでは、重要なポストにつける人物ましよう。 を選考するとき、本人の能力ばかりでなく、 妻の人柄がきびしく評価されるといいます。 子どもの親として 幸か不幸か、夫婦単位の交際があまり発達し ていない日本では、妻の人物によって、夫の わが子へのエチケット 昇進が直接左右されるということは、少ない 「子どもは年とともに成長するものだ。そし かもしれません。 しかし、機会あるごとに職場の目は妻に注て成長とは、親との距離が遠くなることだ」

るなら、そのうえで成績をみて、という返事わけなのですが、文面の終わりに、カッコし 代わり て、〃はがきがさかさまになったが、 でした。 礼状こそ真心で 要するにあくまで本人の試験成績によるとがないのであしからず , と断わり書きがして いうあたりまえの回答なので、私もあてにしありました。 ある不誠意な学生の礼状 はがきで失礼を詫びつつ、封書にかえてすないように伝え、その上役にもしつ 0 こくは不注意で気がっかなか 0 たのなら大目にも 申しませんでした。ところが、発表の五日前見ますが、承知していて、書き改める労を惜 ます場合も、次のようなのは許せません。 それは私の経験したことですが、優秀大学に上役から電話があ「て、例の二人は採用としんで、こんないいわけをつける心根がま 0 たくケチな人間だと思わされました。一枚し を卒業する学生さんの就職を頼まれたことが決まったから、事前にお知らせするという話 ありました。私の友人が教授で、その教え子で、上役も成績がよか 0 たことを非常に喜んかはがきがなか 0 たら、買 0 てくるなり、封 でいる様子でした。私は、さっそく教授に知書にするなり、一文の礼金ももらわず他人の の三人がある会社を希望していました。たい へん景気のよい評判の会社で、採用試験も間らせたのはもちろんです。一日でも早く結果ために心を配「ている人に対して、こんな人 けいべっ 間は軽蔑すべきだと思いました。 が待ち遠しいであろうと、上役の心づかいも 近かでしたが、私のロ添えがほしいと教授が 私は教授に、後日、優秀校の選ばれた学生 わかるので、本人たちの安心する顔を目に浮 いうのです。 力いくら成績はよいかもしれないが、常識 さっそく、会社へ問い合わせたところ、試かべながら、やはり実力があったのだなあと ゼロだといいましたら、苦笑しておりました 験の成績は本人のカであるから、それをいか思いました。 が、自分のカで入社したと思ったにしても、 なるほど自信があると本人たちがいってい んともなしがたいが、各学校から二人すっ入 礼をわきまえぬ人間です。二人ともがそろっ こだけに、優秀大学の選ばれた実力者だった 社試験を受けさせる制度になっているので、 に違いありません。しかし、上役、教授、私て他人を利用したあげく、挨拶も満足にでき まず三人のうち二人だけを学校が選抜してく と、三人のおとなが中間に立って、たとえおないのですから驚きました。きっと、人柄は 役にたたなかったにしても、気をもんだのは悪くないのでしようが、エチケットを知らぬ 結果ともいえましよう。 確かです。 AJ その後、会社でどういうことになるか注目 しかし、それから一か月、なんの音沙汰も め 亠工 なくて、やがて、前後して二人からお礼状がしていましたら、数年のうちに、一人は片すた とちらもはがきです。君は鉛筆みに追いやられ、一人は何度か療養所にはい書 きました。。 ったり出たり、健康を害して、そんなときだ紙 / い一で三、四行の入社挨拶状でした。君のは、 お同じく拙劣な文字で、はがきがさかさまに走けはがきで泣きごとを書いて来ましたが、こい り書きしてあります。入社したお礼のことばちらは手紙で励ましを書くくらいで、それ以 を述べ、希望の課を選ぶことができたという上親身に立ち入る気にはなりませんでした。 さた

結婚詐欺という悪い男がいて、結婚を口実 しよった男とかいわれてかげ口をたたかれる近ごろ新聞でよく見かける殺人の理由に、 のは、自分が魅力ある女で、あるいは男で、他家の人妻が自分に好意をよせていると信に次々と女をだましては、金品を巻き上げる 自分のそばにいる異性は、みんな自分に好意じ、裏切られたと思って殺したというのが多という。 そんな話を聞くたびに女ごころがいじらし をもっていると信じこんでいるようなひと。 これも男女交際の恐ろしさを教える話であくなる。 そして、だから気をつけようという態度を露 る。機械文明がいかに ) 発達しても、生活が近それほどまでに女の夢をそそる結婚。女は 骨に見せるひと。 これはっき合っていてやりきれないと思代化されても、そこに住む人間の本能は、何その花園の中で子を生み育てたいと願う。 千年、何万年の昔から変わっていない。男と夫のために料理をつくり部屋を飾りたいと 女は相求め合う。だが、求めていい相手と、願う。空の鳥が巣をつくる心である。ひなを 求めてならぬ相手をすばやく見分け、自分の育てる心である。その人間自然のまごころを 分る 自い本能を理性で処理できる知恵は文化とともに踏みにじって、女のからだを奪うだけでな なて 、金まてだましとるのだ。憎んでも憎みた んっ進んできたはすである。しかもなお、刃物 み思 はとで、自分が愛情ありと見誤った相手を突き殺りないが、いくら婦人雑誌や新聞が警告を発 性る しても、次々と被生暑は出る。 す野獣は、跡を絶たないのである。 しかしまた、次のような不幸な例に対し はっ第三例の無邪気な娘さんについて、父親が 女も たを心配するのもあながちむりでないかもしれなて、善処した娘さんもいる。 ステレオをかけ、い っしょに踊っている青 上役の娘との縁談を 父親が心配するように、すきあ 男女に限らす、同性同士のつき合いであっ年の中には、、 理由に婚約を破棄 おおかみ ても、相手が自分に対して、どういう感情をらばとうかがっている狼が、いるかもしれ 地方から、遠縁にあたる父を頼って上京し もっているかを見抜くことが、交際じようずないのだから。 というものである。 近くて遠きは男女の中というけれど、遠くて来た彼は、ウワサにたがわず見ただけでも 相手が自分に悪感情をいだいていると知って近いのも男女の仲である。ではどの程度の秀才で、目から鼻にぬける人柄で、官立大学際 に合格しました。当時、私は高校にはいっこの 交際が望ましいか日ごろから、たとえ婚約し たら、あまりその感情を刺激しないように。 た仲であっても、肉体交渉だけは慎んだほうばかりで、男の人への興味はなにももっていた 相手が好意をもっているとわかれば、それに 、というのがわたくしの考えである。 ませんでした。時々遊びにきては、勉強を教い 、刀しし こたえる。そのへんの呼吸がむずかしいとこ えてくれるお兄さん、としか思っていません ろで、裏目にでたら、どんな悲劇のもとにな婚約はあくまでも法的な制約を受けない。 でした。 るかわからない。 社会的な制約だけである。