問題 - みる会図書館


検索対象: スタイルズ荘の怪事件
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1. スタイルズ荘の怪事件

、こ。しかし、フ わたしは、あのボアロの謎のような伝言のことは、ほとんど忘れてしまってしオ また、わたしの好奇心が新たに燃え上がった。 ローレンスは、もうそれ以上は、いわないだろうと思ったので、わたしはお高くとまっている ストウェイズ・コティジへ出かけて行った。 のをやめにして、もう一度ボアロを訪ねに、リー 今度は、わたしは微笑で迎えられた。ムッシュウ・ボアロは在宅だった。上がったかって ? もちろん、上がって行った。 わたしがはいって行くと、 ボアロは、テープルのそばにすわって、両手に顔をうずめていた。 尊かれは、飛び上がった。 の 「どうしたんです ? 」わたしは、気にしてたずねた。「病気じゃないんでしよう ? 」 「いいえ、いいえ、病気じゃありません。しかし、重大な時期の問題て決心をつけているところ 〕なんです。」 ス 「犯人を捕えたものか、どうかとですか ? 」わたしは、ひょうきんにたずねた。 ところが、驚いたことには、ボアロは、重々しくうなずいたのだ。 「『いうべきか、いうべからざるか』と、お国の大シェイクスピアのいったように、『それが問題』 なんです。」 わたしは、ボアロの引用の間違いを訂正してやる気にもならなかった。 「真面目の話じゃないんでしよう、。ホアロ ? 一 「大真面目ですよ。というのは、すべての中で、最も重大なことがはかりにかかっているんて 242

2. スタイルズ荘の怪事件

アリバイのかけらも用意しない。しかも、薬局の助手が、その事実を必ず証言をするに違、 ないということを知っているんです。ふふん ! そんな大馬鹿者がいるってことを、わたしに」 じろというんですか ! 絞首刑にされて自殺したいと思っている気ちがいだけですよ、そんな一 とをするのは ! 」 ( しいかけた。 「でも・ー・ーわたしには、どうも。ーーー」と、わたしよ、 「わたしたってわかりませんよ。ねえ、あなた、わたしも途方に暮れているんです。このわた , 牛がーーーエルキ = ール・ボアロがですよ ! 」 事「でも、かれの無罪を信じておいてになるのでしたら、ストリキニーネを買ったことは、どう 荘明をなさるんです ? 」 「非常に簡単です。かれは、買わなか 0 たんですよ。」 〕「ても、メイスは、かれを見ているんですよ ! 」 ス 「失礼ですがね、かれは、イングルソープ氏のような黒いひげを生やして、イングルソープ氏 ( ような眼鏡をかけて、イングルソープ氏のようなちょっと目につく服を着た男を見たんですよ。 恐らく遠くから見たことがあるだけの人など、わかるはずがないでしよう。しかも、そうでし、 う、かれ自身は、村へ来てから、わずか二週間にしかならない、イングルソープ夫人は、もっゞ ら、タドミンスターのクートから買いつけていたというんですからね。」 「じゃ、あなたの考えではーーー」 「あなた、わたしが強調した二つの問題をおぼえておいてでしよう ? 161 第一の問題はしばらく一

3. スタイルズ荘の怪事件

量の薬をつくらせておいででした。解剖によるストリキニーネの量から考えますと、夫人は、ほ とんど一瓶全部を飲まれたに相違ありません。」 「では、強壮剤については、どの点から考えても、夫人の死の原因とはならないものとして、わ れわれの念頭からすてていいとお考えなんですね ? 」 「もちろんです。あのような推定は、ばかげています。」 前に口を挾んだのと同じ陪審員が、ここても、その薬を調剤した薬剤師が過ちをしたのではな かろうかといい出した。 事「それは、もちろん、常に可能なことです。」と、医師はこたえた。 のしかし、次に証人として立ったドーカスは、その可能性をさえ一蹴した。その薬は、作らせた ズ ばかりのものではなかった。それどころか、イングルソープ夫人は、死の当日、最後の一回分を 和飲んたのだった。 こ。ドーカスか スそれで、強壮剤の問題は、ついに打ち切りとなって、検屍官は、審問をつづけオ ら、夫人の部屋のベルが烈しくなったので目をさまされたことや、つづいて家中が起こされたこ とを聞き出してから、検屍官は、前日の午後の口論の問題に移った。 この点についてのドーカスの証言は、大体において、ボアロとわたしがすでに聞いたものと同 しだったから、ここでは、繰り返さないでおくことにしよう。 カヴェンディッシュだった。かの女は、ほんとうにまっすぐに立って、 次の証人は、メアリー・ 低い、はっきりとした、申し分のない作り声で話した。検屍官の質問にこたえて、いつもの通り 139

4. スタイルズ荘の怪事件

「さあ ! 」かれはいった。「すぐに行動に移らなくちゃならん。カヴェンディッシュ氏はどこで す ? 」 ホアロは、ずかすかと、かれのところへ行った。 ジョンは、喫煙室にいた。。、 「カヴェンディッシュさん。わたしは、ちょっとタドミンスターに重大な用事があるんです。新 しい手がかりです。自動車をお借りしてもよろしいでしようか ? 」 「ええ、もちろんてすとも。今すぐですか ? 」 件「よろしかったら。」 事 ジョンは、ベルをならして、自動車をまわすようにいいつけた。十分の後には、車は、大庭園 怪 荘を走りおりて、公道をタドミンスターに向かっていた。 ズ 「ねえ、ボアロ」と、わたしはあきらめていった。「こりや何のことだか、多分、いってくださる タでしようね ? 」 モナ、、、 ス 「さあ、あなた、うんと、ひとりで見当をつけてください。もちろん、はっきり気がおっきにな ってるでしよう、イングルソープ氏がもう問題外になったので、事件の全貌が大きく一変したと いうことを。ぜんぜん新しい問題に直面しているんです。今では、毒薬を買わなかった人物が、 一人いるということはわかっているんです。でっち上げの手がかりは、綺麗に追っぱらってしま いました。今度は、本物の手がかりです。あの家族の中の人なら、あなたとテニスをしていたカ ヴェンディッシュ夫人以外は誰でも、月曜日の夕方、イングルソープ氏にばけることが出米たは ずだということを確かめました。同じようにして、ホールにコーヒーをおいたという、かれの陳 178

5. スタイルズ荘の怪事件

で、殺人が犯されたのだ。わたしたちの前には、『事件担当の刑事たち』がいた。ボアロがこの 集まりの司会にとりかかる前の短い時間の間に、あの馴染みの筆達者な新聞のいいまわしが、さ っとわたしの心を通りすぎた。 最初に口を切ったのが官職にある刑事ではなくて、かれだということに、誰も彼も、ちょっと 驚いたようだった。 「紳士ならびに淑女の皆さま。」ボアロは、まるで講義をはじめる名士のようにお辞儀をしなが ここへお集まりいたた いい出した。「わたしは、ある問題のために、みなさんごいっしょに、 怪くようにお願いしました。その問題といいますのは、アルフレッド・イングルソープ氏に関係し 荘たことでございます。」 イングルソープは、一人だけ少しはなれてすわっていたーーー無意識の中に、誰も彼もが自分自 タ分の椅子を、ほんのわずかずつ、かれから引ぎはなしたようたーーーそして、ボアロがかれの名前 ス を口に出すと、かれは、かすかに身を動かした。 「イングルソープさん。」そういって、ボアロは、直接かれに呼びかけた。「ひどく暗い影が、この 家には宿っていますーーー殺人の影です。」 イングルソープは、悲しそうに首を振った。 「可哀想な妻」と、かれはロの中でいった。「可哀想なエミリー ! 「しかし、ムッシ = ウ」と、ボアロは、辛辣にいった。「あなたは、それがどんなおそろしいこと になるかーーあなたの身にとってですよーー・それを、あなたは本当に悟っておいでになるとは、 170 おそろしいことです。」

6. スタイルズ荘の怪事件

夜の間に部屋にはいったと証明しています。ここまでは、あなたも同意するでしよう ? 」 「まったくその通りです。あつばれな正確さです。それから。」 「そこで」と、わたしは元気づいていった。 「はいった人間は、窓からはいったのでもないし、 魔術を使「たわけでもないのですから、ドアは、イングルソープ夫人自身が、中から開けたに相 違ないということになります。すると、問題の人間は、かの女の夫だ 0 たという確信を強めます。 かの女は、当然、自分の夫にドアを開けたんでしようね。」 ボアロは、首を振った。 件 事「どうして、夫人がそんなことをするわけがあるんです ? 夫人は、かれの部屋〈行くドアに、 荘閂をかけたんですよーーーかの女にしては、はなはだ変ったことですがーーーその当日の午後、凄く すさましい口論を、かれとしていたんですからね。 いいや、かれだけは、とても夫人には中へ入 イ れてもらえない人物だったんですよ。」 ス 「しかし、ドアは、きっとイングルソープ夫人自身が開けたのにちがいないという、 わたしの説 に、あなたは同意なすったんでしよう ? 」 「ほかにも可能性はありますよ。べッドへ行く時に、廊下へのドアに閂をかけるのを忘れて、後 になってから起きて、明け方近くに、閂をかけたのかもしれませんよ。」 「ボアロ、それは真面目に、あなたの意見ですか ? 」 「いいや。そうだとい「てるのじゃないんです。しかし、そうかもしれないとい「てるんです。 ところで、別の問題に移るとして、あなたが耳に挾んだ、カヴ、ンディッシ = 夫人と老夫人との 126

7. スタイルズ荘の怪事件

「これこそ、おわかりのように、わたしが誤っておりました。それで、どうしてもその考えは捨て てしまわなければなりませんてした。わたしは、新しい見地からこの問題にぶつかりました。さ こうおっしやったのを聞いています。 て、午後の四時に、ドーカスは、大奥様が怒ったように、 『夫婦間の問題が世間の評判になったり醜聞になるのをこわがって、そんな恐怖がわたしを思い とまらせるなどと思わなくても大丈夫ですよ。』と。わたしが推測しましたのは、そして、正しい 推測だったのですが、この言葉は、ご主人に向かってではなくて、ジョン・カヴェンディッシュ 氏におっしやった言葉たったのです。一時間後、つまり五時に、夫人は、ほとんど同じ言葉をお 事使いになったのですが、立場は違っているのです。夫人は、ドーカスにこうおっしやったのです。 6 『わたしには、どうしていいかわからないよ。夫婦間の醜聞というのは、おそろしいものだね。』 第と。四時には、夫人は、腹を立てておいででしたが、完全に落ちついていらっしゃいました。五 イ時には、夫人は、ひどい心痛をしておいてになって、『ひどいショック』を受けたと口に出してお ス いてになります。 「これを心理的に考察して、わたしは一つの推論を引き出し、それが正しかったとうなすきまし た。二度目に夫人がロにお出しになった『醜聞』というのは、はしめとは同じではなかったので してーー・それは、夫人ご自身に関することだったのです ! 四時には、イングルソープ夫人は、ご子息と口論し 「今一度、事件の経過を考えて見ましよう。 いつけるそとおどかされました。そのメアリー夫人は、途中から、その話 て、メアリー夫人に、 の大部分を立ち聞きなすった。四時三十分には、イングルソープ夫人は、遺言状の効果について 285

8. スタイルズ荘の怪事件

「まったく」と、いったジョンの態度には、あるぎごちなさがあった。それから、ややためらい こ。「ぼくたちは、証人として出延しなくちゃならないんでしようか ? 勝ちにつけ加えオ われ、みんなということですが。」 ええと イングルソープ氏も。」 「そう、もちろん・・ーーそれから、あの わずかな沈黙がつづいた後、弁護士は、なだめるような態度で話しつづけた。 「どんな証拠も、確かめるだけのことです。ただ、形式の問題です。」 「なるほど。」 事 かすかに、ほっとした表情が、ジョンの顔をかすめた。わたしはわからなくなった。そんなも のを見るわけがなかったからだ。 ・ k 「もしおさし支えがなければ」と、ウエルズ氏が追っかけていった。「検屍審問は、金曜日にと予 イ定しておりました。それなら、医師の報告にも、たつぶり時間がとれますでしよう。解剖は、今 ス夜、執行のはずでしたね ? 」 「そうです。」 ういうことで、よろしいですね ? 」 「では、そ 「結構です。」 「申し上げるまでもないことですが、カヴェンディッシュさん、わたしは、この大きな悲劇に、 どれくらい悲嘆にくれておりますかわかりません。」 「それを解決するのに、お力を貸してはいただけませんでしようか、ムッシュウ ? 」と、わたし

9. スタイルズ荘の怪事件

いったと思います。母が実際にロに出した言葉など、わたしは、ほとんど気にもとめていません でした。」 信じられないように鼻であしらったフィリップス検事の態度には、法廷のかけ引きに巧みな者 の勝ち誇った色があった。かれは、脅迫状の問題へ移った。 「あなたは、この手紙を、非常に好都合な時に持ち出しましたね。どうです、この筆跡に見おぼ えがありませんか ? 」 件「わたしの知らない筆跡です。」 「あなた自身の筆跡の特徴を。ーーわざとぞんざいに変えてあると思いませんか ? 」 の 荘 「いいえ、そうは思いません。」 「本官は、あなた自身の筆跡と判定を下しますがね ! 」 タ「そんなことはありません。」 「アリ・ハイを作ろうとして、そんなでっち上げの、むしろ信じられないような約東話を思いつい て、自分の陳述を裏づけるために自分でこの手紙を書いたものだと判定します ! 」 「ちがいます。」 「人里離れた、淋しい場所で待っていたというその時刻に、実際は、スタイルズ・セント・メリ イの薬剤師の店に現われて、アルフレッド・イングルソープの名てストリキニ 1 ネを買ったとい うのが、事実じゃないのですか ? 」 「いいえ、そんなことは嘘です。」 274

10. スタイルズ荘の怪事件

266 「その物件を隠していた下着類は、厚手の物でしたか、薄手の物でしたか ? 」 「厚手の物でした。」 「言葉を換えていうと、冬物ということですな。すると、明らかに、被告は、その簟笥に近づく ことはなかったということですね ? 」 「多分、近づかなかったでしよう。」 「どうか気持よく、わたしの質問にこたえていただきたい。暑い夏の、とりわけ最も暑い週に、 冬の下着を入れた簟笥に、被告が近づくなどということがあるでしようか ? 近づきますか、近 件 事づきませんか ? 」 の 「近づきません。」 ズ 「そうだとすれば、問題の物件が、第三者の手によって、そこに入れられたもので、被告は、そ イ の物件があることには、まったく気がっかなかった、ということも可能ではないのですか ? 」 ス 「本官には、そうらしいとは思えません。」 「しかし、そういうことも可能てすね ? 」 「はい」 「それだけです。」 そのほかの証言が次々と述べられた。被告の七月の終りごろの経済的な窮境についての証言。 レイクスの妻との情事についての証一「ロ・ーー気の毒なメアリー、 かの女のような自尊心の高い女に は、聞くのもつらかったにちがいない。イヴリン・ ノワトが、情事があるといった事実につい