と銚子を持って酒をつぎ、お流れを貰いに行く。 すると大臓はしんとなった一座を見渡し、 見ていて藪内は、なんだと思った。これは大臓が 「今夜は、私の歓送会をしていただいて、嬉しく 去る喜びのためだけではない。大臓が年若くして思っています、ことに課員の方が、一人残らず私 支店長に栄転するから、おもねっているのである。 に盃を下さったことは、私としては心から満足で それなら何故、大臓が現場にいる間におもねなかす。私の課がこのような立派な成績をあげ、私が 栄転出来たのも、課員のみなさんが、私のもとで 大臓は課員達の盃を一つも残さず受けた。量に いっち協力して、つまり今のように私を愛して働 して、三合はあるだろう。課員達も初めて大臓のいてくれたおかげです。改めてお礼申し上げま 酒豪ぶりに気付いたようである。 が大臓は顔色を変えない、態度も変らない、 大臓は静まりかえった一座に向かって頭を下げ 誰かが大臓の酒豪ぶりを囁き、それが一座に伝わた。藪内だけは、銚子を持ったまま、滑稽な姿で ると、同時に、雰囲気が、がらりと変った。騒い坐っている。だが藪内は、大臓の眼に満足そうな でいた連中も、こそこそと席に戻り、大臓を盗み笑みが浮かんでいるのを見た。 見している。課員から盃を受けると、大臓は藪内 この時藪内は、今まで感じたことのない、大臓 を見た。 の力を感じたようである。嫌われ敬遠されながら 「藪内君は、まだ私に盃をくれませんね」 も、大臓は課員を総て押えていたのである。 「あっ、気が付きませんでした。申し訳ありませ この男は、将来もの凄く出世するかも分らない、 ん」 と藪内は思った。 藪内は大臓の真意を計り兼ねたが、頭をかくと大臓は頭を上げると、自分の盃を取った。 銚子を持って大臓のところに行った。 「藪内君も、くれますか」
るために働くのではなく、厭な思いをしないためる、気に掛けるだけ損だ、と言う位で、決して悪 に勧くのである。その点藪内は、一見豪放磊落でロ仲間にはくわわらなかった。 あるが、その内部に或る弱さと要領の良さを身に藪内が入社して大臓と、仕事以外の会話を交し つけていたのかもしれない。 たのは、三年めの秋であった。 それは、藪内が、軍隊生活で会得したものであ藪内の成績は同期生の間ではトップクラスであ る。 る。兎に角、身体をいとわず働くのだから、成績 があがるのも当然であろう。 大臓の藪内への態度は、他の部下に対するもの と別に違わなかった。 そんな或る日、藪内は大臓に呼ばれた。 ごが入社して二年め位、藪内は、ひょっとする「今夜は、暇ですか ? 」 と大臟は、俺を気に入っているのではないか、と と大臓は言った。 人知れす感するようになった。 藪内は大臓の真意を計りかねたが、特別の用事 一生懸命働くが、藪内もミスをしたりすることもない。すると大臓は、 がある。 「どうです、夕食でも食べませんか ? 」 大臓に呼ばれる。大臓は相変らず額の皮をつま大臟は部下にも、けっして手荒な言葉は使わな むが、藪内を眺める目付きになにか笑いを含んだ い。それに声が低い、相変らず額をつまんでいる ところがある。人間というものは妙なもので、そので、他の同僚達は、藪内が例の調子で絞られて れを意識し始めた頃から、藪内の大臓に対する嫌いるのだろう位に思っている。 悪感は次第に取れていった。 「七時に南郷会館の前で待っています」 だから、他の同僚達と酒など飲みに行き、大臓と大臓は例の呟くような調子で言った。 の噂話が出ても、ああいうタイプは何処にでもい 藪内は一礼して席に戻った。大臓にタ飯を誘わ
である。白い餅肌で一重の瞼がふくらんで、猫の 「申し訳ありません」 藪内は慌てて銚子をかたむけた。大臓は一息にような眼にかぶさっている。眉はなだらかで、上 唇の先がとがり、男心をそそるようである。一児 飲むと盃を返した。 「君は、今夜だけではなく、仕事の最中に、私にの母とは到底思えない。藪内は余りにも予想外の 女なので、うろたえた。彼は大臓の女房だから、 酒をついでくれました。礼を言います」 ヒステリックな痩せた、胸の薄い女を想像してい 低い声である。他の者には、ぶつぶっと言う、 たのである。妻の名は、華代と言った。子供は四 例の呟きとしか聞えなかっただろう。 大臓はそうして今夜初めて、額の皮をつまんだ歳の女児である。華代は藪内の来訪を非常に喜ん だ。どうやら訪問客が余りないらしい。 のである。大臓の眼は冷たく笑っている。 藪内は、あっと思っこ。 オこの額の皮をつねるの「藪内さんのことは、良く主人からうかがってい ましたわ、今夜はゆっくりなさって下さい、めつ は、大臓のくせではなく演技ではなかったか。 たにお客さん、ありませんの、私も嬉しいですわ」 「いただきます」 藪内を眺める華代の眼は何処かなまめかしい。 藪内が酒をあけると、 大臓は藪内に、風呂に入って汗を流さないか、と 「今夜、私の家に来ませんか : : : 」 言った。遠慮するよりその方が大臓の気に入ると 「はい、参ります」 と藪内は答えた。 思い、藪内は大臓のあとから風呂に入った。酒肴 が用意されている。 刈田町の公団住宅の三階が大臟の家である。四大臓は初めから藪内を連れて来る積りだったら 間あり、公団住宅としては大きい方である。大臓しい。大臓は自宅でも良く飲む。華代は酒のかん の組君は、三十がらみの、なかなか色気のある女をしたり、料理を運ぶのにいそがしい。大臓は酒
ある。 「姉さんのことは、どうぞ御心配下さいませんよ 大臓が欧州に出張したのは、その頃である。藪うに、時々おうかがいします」 内は伊丹の飛行場まで送りに行った。 折を見て藪内は囁いた。 大臟はこの頃少し太って来ている。部長の貫禄「頼みます」 というほどでもないが、昔の大臓よりも風采的に と大臓は言った。 は威厳が出ている。大勢見送りに来た。勿論華代華代は珍しく晴れやかな顔をしている。大臓と も来ている。 違って、華やかな笑顔で夫の部下の挨拶を受けて 大臓は藪内に、出張中は、時々華代をなぐさめいる。 てやって下さい、と珍しいことを言った。大臓の帰りは自然、華代と、もう小学校六年になった 出張は三カ月の予定てある。 娘と、三人でタクシーに乗った。 普通なら晴れやかな顔で出発するものだが、大日曜日である。華代は浮き浮きしている。みや 臓の顔は社で仕事をしている時と変らない。部下げに、 こういうものを頼んだとか、今までになく 達の挨拶を受けながら、真面目くさった顔で頭を楽しそうである。息苦しさから解放された感じで 下げている。 ある。華代は藪内に、自宅に寄らないか、と誘っ 時々大臓の視線が華代の方に行く、どうやら大 た。娘が映画に連れて行ってくれる約東じゃない 臓は、三カ月も華代と離れているのが辛いらしい の、とすね出した。 おそらく大臓は、結婚して以来、一度も浮気をし「透さん、あなたも行かない : ていないのではないか。 断る理由もないので、藪内は応じた。ただ、 亜 愛情を華代にだけ集中している。愛情というよ代子が送ったら直ぐ帰って来てくれ、と念を押し り執念であろう。こんな男は珍しい たのが一寸引っ掛かったが、それは無視すること
代子の恋人を捨ててから一年ほどして、大臓と見とも、他に原囚があるのか。 合結婚したのである。その時華代は二十四歳であ しかし、過去や内心は兎も角、現在の華代は支 った。大臓は二十九歳だがすでに係長になってい店長夫人としておさまっている。 た。藪内の会社で二十九歳の係長は、出世コース「過ぎたことだ、それに二人だけの姉妺だし余り の先頭を行く連中である。普通、出来る者で三十過去にこだわるなよ」 歳で係長だ。多分華代は、男遊びにも飽きて、出藪内はあくびをしながら言「た。 世の見込みのある堅物の大臓を夫に選んだのだろ こうして五年たった。藪内は本社の係長になっ う。女遊びをしつくした男が、平凡な妻を求めるており、大臓は本社の企画部長として大阪に戻「 ト一ゝっこ 0 て来た。札幌の支店長から本社部長というのは、 「支店長は、お姉さんの過去を知「ているのか凄い栄転である、大臓は四十歳だが額が禿げ上が り、四十五、六歳に見える。 「少し位は知「ているんじゃないかしら、でも姉営業部が手足だとすると、企画部はプレーンで さんの魘力に溺れたのよ」 ある。そして大臓が最もその能力を発揮出来る地 亜代子が魅力と言わずに魔力と言「た所に、亜位でもあ「た。大臓が課長時代の部下達の中には 代子の華代〈の憎しみがまだ取れていないのが感課長代理にな「ている者もいた。だが、大臓の悪 じられる。亜代子の父は、温厚な男である。亜代ロを言う者はすでにいない。大臓はすでに悪口な 子の話では、亡くな「た母も曲「たところの嫌いど届かない地位にいるのである。大臓が戻「て来 なてきばきした世話女房だ「たらしい。そんな両て間もなく藪内は営業第二課長にば「てきされ 親を持ちながら、どうして華代のような娘が生れた。おそらく、大臓の推薦もあるのではないか。 たのだろう。隔世遺伝というやつだろうか。それ藪内はすでに二人の子供をもうけ、充実した毎 192
認したのはこの夜である。 額の皮をつまむからである。 藪内は変な気持で . った。入社して三年、藪内 こうして一年たった。 も学生時代とは較べものにならない、社会人の垢大臓が札幌の支店長に栄転になったのは、その を身につけている。だから大臓に眼を掛けられた年の春である。全国各地に支店があるが、課長か のは、なんと言っても嬉しい。しかし、人間としら支店長として栄転する場合は、東京、名古屋、 て藪内は大臓を好いていない。問題はここにあ広島、札幌、福岡である。ここで業績をあげると、 る。 札幌支店長の場合は、名古屋か東京の支店長に栄 ただ、藪内としては、そんなに好いていない上転するか、本社の次長として戻って来る。東京、 司に眼を掛けられる喜びの方が、こそばゆい何処名古屋の場合は、本社の部長になる。東京、名古 か不安をともなったちぐはぐな気持よりも、はる屋の支店長で、本社次長は、栄転ではあるが、飛 かに強かったのは事実である。 び抜けた栄転とは言えない。 それは藪内がサラリ ーマン意識を身につけたサ その夜、大臓課長の栄転歓送会が行なわれた。 ラリーマンになっていたからであろう。 課員達は大喜びである。頭にぶら下がっていた鬱 大臓と個人的に話しあったのは、その夜だけで陶しいものが取れるのだから無理はないだろう。 あった。藪内は自信を持って仕事に当った。同僚課員達は今までになく飲み、騒いだ。ただ藪内が おかしく思ったのは、大臓を敬遠していた課員達 達が大臓の惡口を言うのを聞くと、可哀そうに、 と思うようになった。こいつらは所詮敗北者なんが、この夜だけは、大臓に盃をさしに行ったこと だ、と胸の中で呟いた。 である。一人が行くと、吾も吾もと行く。悪口を 言いまくっていた先輩の社員達も、 幸い同僚達は、藪内が大臓に眼を掛けられてい ることを知らない。大臓は藪内と話をする時でも、「いや、課長お目出度う御座います : : : 」 1 7 9
大臓の女房はどんな女だろう、と藪内は興味を大臓は陰気な声で言った。藪内はなんとなく酒 持った。部下達は大臓を敬遠しているので、年始の酔いが醒めるような気がした。 大臓は銚子五本で止めた。代金は藪内の分も合 廻りにも、大臓の家は訪れない。 宴会を見ても、大臓が年始廻りなど嫌いなのがわせ、千五百円足らずである。 実に良く分る。藪内はだから、年末におせいばだ大臓は、地下鉄我孫子駅の近くにある刈田町の 公団住宅に住んでいる。細君と一人の子供がいる け送るようにしていた。これは、他の部下もやっ ているだろう。 ようである。藪内も地下鉄の昭和町なのミ二人 は途中まで一緒に地下鉄に乗った。五本も飲んて 「確か藪内君は、戦時中はマレーでしたね」 いるのに、大臓の顔色は変っていない。ただ蒼自 「はあ、クアラルンプールから、シンガポールに いました、課長はどうして、それを御存知なのでい顔がぬるっとしているのは、脂が浮いて来たた めだろうか。 すか ? 」 「今夜、私と飲んだことは、他の人達には黙って 「履歴書に書いてあります、私もクアラルンプー いて下さい」 ルにおりました」 「はい、勿論申しません」 「へえ、そうでしたか、何部隊です」 「エ兵隊でした、クアラルンプールの発電所の建「上司に眼を掛けられる部下と掛けられない人と 設などにも従事しました。藪内君は見習士官ですは、運命が違いますよ、常識的に想像する以上に 違います。藪内君も、これからです、おおいに頑 張って下さい」 「そうです、課長は ? 」 それはなんとも言えない、奇妙な会合であった。 「私は一等兵です、幹部候補生の試験を受けなか ただ、藪内が課長に眼を掛けられていることを確 ったものですから、苛められました」 178
れるなんて、なんとも言えない変な気持だが、まている。スプリングコ 1 トを無造作にはおってい た待ち合わせる場所が、変っている。 るが、黄色いセータ 1 の胸のふくらみが、コートロ 南郷会館は、難波のターミナルにある映画館で、の襟を拡げるぐらい盛り上がっている。色自で可 ここで待ち合わせるのは、大抵若いアベックであ愛い女である。女は大臓の視線を意識すると、眉 る。そんな場所で会おうという大臓の心境が分らをひそめて横を向いた。 ない。しかし、兎に角、これで大臓が藪内に特別藪内は大臓に憐れみを覚えた。部下から怖れら の好意を抱いているのは明らかだろう。藪内はそれているこの一流会社の課長は、多分、 れを感じた。 程度の男と待ち合わせている小娘に嫌悪されてい と 藪内が行くと、大臓はすでに、若い男女の間にる。この男は、女には運がない男に違いない、 ばそっと立っていた。そんなに寒くないのに、寒藪内は思った。 そうに肩をすくませている。貧相な男である。こ 「行きましようか ? 」 れが一流商事会社の課長だとはどうしても思われ「はあ : 大臓が連れて行った店は、なんと難波新地の、 「どうも遅くなりまして申し訳ありません」 屋台に毛の生えた程度の店である。串カツや、焼 藪内が恐縮して頭を下げると、大臓は腕時計を鳥を食べる店だが、集ま「ている客は藪内と同じ 見て、遅れてませんよ、私が早く来過ぎたのです、サラリーマンである。彼等は酒を飲みながら、盛 と言った。そして辺りを見廻し、 んに喋っている。上司の悪口や、社内の女のこと、 「若い人達は羨ましいですね、藪内君もこんなとそして仕事の辛さを、酒の気炎でごまかしている。 ころで待ち合わせたりするのですか」 大臟はなじみのようである。けちな課長だ、と藪 大臓の眼は、壁際に立っている若い女に注がれ内は思った。
静かで眼鏡越しに眺める視線は神経質である。余たてつく勇者もいた。しかし、彼等は必す、半年 り喋らす、なにかあると額の皮をつまむ、そのたとたたない間に左遷される。 めか、くつきり八の字が寄っている。そんなに冷中には社を辞めた者も居る。あいつは、怖ろし 酷で、陰険な男でもないが、部下達は、大臓を嫌い男だ、そういう噂が部下達の間でささやかれる い、そして怖れていた。 と共に、たてつく男もいなくなった。 どんな感情を持っているのか。さつばり分らな 会社も大きくなると、運動会なども、各課毎に い。不機嫌な時は、額の皮をつまみ黙り込む。こ行なわれたりする。忘年会でも同じである。しか れが、怒隝りでもすればまだ、感情と感情の火花し、そんな席でも、大臓は余り喋らない。部下達 の中で、相手の人間を感じることが出来るが、大は、他の課の課長が鉢巻をしめて、どじようすく きなミスをしても、怒隝らないから始末に悪い いをやるような明るい雰囲気を羨ましがった。 だから部下達はどうしても、大臓を敬遠しがち藪内も最初は、なんて厭な男なんだろう、と思 になる。しかし、大臓が三十五歳で課長になってった。だが藪内は、余りものにこだわらない方だ いるのは、優秀な出身校のせいだけではない。仕ったし、何故か、これはこういう男なんだ、と気 事の面で秀れているからである。状勢判断も的確にしなくなった。そこが、藪内と他の同僚との違 だし、将来を見抜く眼が鋭い。部下達は大臟を敬いであったかもしれない。 遠しているが、軽蔑しているのではないから、仕それに大臓の命令や指示は、要領を得ていて実 事だけはせいを出す。一種の不安から、一生懸命に鋭い 働く。そういう点では、大臓は立派な幹部であっ額の皮をつままれながら、大臓に睨まれると、 怒鳴られるよりも厭なので、それを避ける意味か なかには、そんな大臓に明らかに反感を示し、 らも、藪内は一生懸命働いた。相手に気に入られ
て結構なのです、まとまるかまとまらないかは縁 もあったのか、藪内は内心苦笑した。 華代は来月にでも北海道に行くらしい。冬の札のものだし、少しでも気に入らないところがあれ 幌は冷たく、余り行きたくないらしいが、大臓がば、お互、一生の不幸ですからね、私だって妹に どうしても来い、というので仕方なく行くようでそんな運命をたどらしたくありませんわ : 華代はなにか言い掛けて言葉を切ったが、藪内 ある。大臓が転任してから、丁度一カ月めである。 その間華代は男の肌に触れていない。大臓は酒には、華代が私のように、と言いたかったのではな いか、と思った。 も強いが、夫婦生活も強いのではないか。大臓が 早く華代を札幌に呼びよせようとしている気持華代はお茶を入れてくれた。藪内と一緒にいる が、藪内には良く分る。大臓は浮気出来るようなのが実に楽しそうである。藪内は幾度も腰を浮か カ冫オカもう少し良いじゃありませんかと、 性格ではない。それに、これだけ色気のある妻をし、ナこ・、、 持っていたら、眼を離しておくのが心配でたまら言って引き留める。藪内も華代の傍にいたいもの だから、つい座が長くなる。 ないだろう。 何時か夕方になった。団地の窓々の灯がっき始 華代は交際するだけ、交際してみてくれないか、 めたが、華代は明りをつけるのを忘れている。仄 と言った。藪内は即答が出来ない。 白い華代の顔が甘い香と共に、暗い室内にゆれる 相手はなんと言っても、大臓の妻の妺であり、 ようである。藪内は息詰るような気がした。帰ら 交際して性格が合わないから、と言って断れば、 なければならない、と藪内は思った。その時電話 相手を傷つけ、大臓の感情を害する心配がある。 藪内が考え込んでいると、・華代はその心配を読みのベルが隝った。 「失礼します」と藪内は言った。 取ったよ、つに、 すると華代はあっさり、 「気に入らなかったら、幾らでも断っていただい ー 8 5