馬場の昇格の辞令は、すでに社内に掲示されていた。部長代行と余分な二文字がついているにして ごこち も、つい十日たらず前まで由利がすわっていた機械第二部長の椅子のすわり心地は悪いものではなか っこ 0 もっとも、湧きたつような愉悦はつぎの週にはもう消えてしまい この椅子にすわっているのが当 り前というふうな感じに馬場はなってしまった。 それでも、時どきはふっと鎌倉警察署の刑事・安立省吾の名を脈絡もなく思いだしては、一応はそ れの前後の事情というか、経緯を営業本部長で兼任常務の大石悠紀夫に話しておいたほうがいいのか もしれないと考えるのだが、本部長室で多忙すぎる大石に、そんな不急不要とも思われることを話し かける機会はなかなかなかった。 第一、このところ、どういうわけか、連日、大石には来客が多すぎるのだ。 それに馬場自身も多忙なのである。部長業務にまだ馴れていないための不手ぎわもあるが、昇進を 祝う取引先の招宴をこなすのも容易ではない。 ( 課長から部長と一格あがっただけだというのに、なんとも忙しくなったものだ ) 考えてみると、部長に昇格してからそろそろ三十日になるというのに、気のやすまる日は一日とし 立日闘 , 商社
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「そんなつもりでいったのではないよ。誤解されては困る」 フランクはちょっと肩をすくめてみせながら、むしろ淡々とした声音で言葉をつづけた。 「イーグルⅡ改の機体そのものは多少の新開発部分があるだけで、格別に目あたらしいというわけ ではない」 その程度のことなら、馬場も社内の専門家から聞かされて承知している。だが、そうだとすれば、 どうしてココムやアメリカ政府がイーグルⅡ改の輸出に神経質になるのか ? 馬場が首をかしげた くなるのも当然だった。現にいまもそう思いながら、黙ってフランクに頷きかえした。 そういう馬場の表情をながめながら、フランクは低い声でいった。 「機体の本体部分だけでいうなら、あの戦闘機は決して魅力的な新機種とはいえないのだ。ただ : : : 」 「ただ、なんなのだい ? 」 妙に秘密めかしているフランクの調子につりこまれて、馬場まで低い声になって訊ねた。 「 : : : 内装備部分だけは、魅力的だといっていい」 ( 当り前ではないか。この件にソ連政府がからんでいるかどうかはべつにして、力的な部分がなけ れば、国にしても一兆四千四百億という途方もない代金を支払うわけがあるまい ) 馬場はそう思ったが、そんなことをフランクにいって詰めよったところで何にもならない。 かくにも、フランクが好意で馬場にいってくれているのは間違いないらしいのだから : 「力的といえないというのは、電子機器などの部分をさしているわけだね ? 君がいっているのは そういうことなのかい ? 」 「そうともいえるよ」 「だからといって、フランク。それがどこで三国物産のリスクとむすびつくのかね。相変らず僕には
ントにまかせて書かせたそうです。それがフロントにはっきりとした時間の記憶を与えたわけですが、 由利部長がホテルについたのは、ほぼ午後二時四十分ごろだ 0 たそうです。かわ 0 て記入したフロン トの者がそう証言しているのですー ・ : と馬場が感じたのは、由利が不注意に右手首を捻挫したらしいということではない。じ っさい、馬場にしても階段の昇降の途中で、前をよこぎろうとした者を避けようとしてよろけ、側の 壁に手をつこうとしたはずみに軽い捻挫をした経験がある。 新幹線でも震動の横ぶれが強い場所があるから、通路を歩いていたりしてよろけ、シートの肩にで もっかまったはずみに捻挫くらいしても不思議はない。お互い四十歳前のように反射神経が敏感とい 。しいとして、午後二時四十分 だが、それよ、 冫。しかなくなっているし、あり得ることだ。 うわけこま、 前後に由利がホテルのフロントに立っていたということが、馬場には奇妙に思われるのだ。 その時間にホテルへ着いたのなら、京都駅からまっすぐタクシーに乗ったとして、ホテルまでほぼ 八分くらいのものだから、新幹線ホ 1 ムには二時三十分前後におりたことになる。 そうだとすると、由利は午前十一時三十分をすぎたころに東京駅で新幹線に乗車した計算にならな ければ話があわない。馬場の疑問を正確に表現すれば、その乗車時刻がおかしいということだった。 三国物産では、余程のことがないかぎり部長職以上が出張するときは、当日の正午すぎに東京をは ン なれるという習慣がある。 自宅から出張先に直接むかう場合でもかわりはない。無論、意味もなくそれをしているわけではなウ く、当日の午前中までに突発するかもしれない " 急用 , の処理、指示、決裁を部長の責任で処置しな〃 フ ければならぬ場合にそなえてこうしているのだ。 突発的な急用である以上、予測することはできないにきまっているから、一応は待機せざるを得な い。にもかかわらず、どういう理由があってか、由利は機械第二部の筆頭課長である馬場にも連絡せ
、まになっては、皮肉をいう がついたはずだ。産業省に強い総理をこちらが抱きこんだとわかれば、し くらいしか相手にもすべがなかろうからね」 ひと息いれるように声をきりながら、野田は青木の顔をじっと見つめた。その野田の表情がおさえ きれぬ喜悦に満ちはじめてきているのは、青木にもわかった。 「三国物産がおびえきっているという情報を、わしはこういう方法で確認したのだ。どうだ、君も安 心したかね」 一言ひとことかみしめるようにいいかけている野田に、青木は黙ったまま頷きかえした。 ・デニソフが、三国物産の馬場部長に会おうとしても、先 「わしの情報提供者は、最近ではセルゲイ 方が口実をかまえて会うのを避けているといっていたよ。事実上、三国はこの商談からおりたと判断 していいだろうな。実に臆病な連中だ」 「しかし、申請は取りさげてはおりません」 ぎようこう 「名門商社の看板に一縷の望みをかけて、僥倖を期待しているだけだ」 野田は断言した。ここまでの野田の情報分析を聞けば、青木にしても、 ( そうに違いあるまいな : : : ) と、思うことができた。 「イーグルⅡ改の空中戦は、誰にも見えないところで終ったわけでございますね . 中 こう低い声でいっている青木に、野田はすでにかくしきれなくなった歓喜をあらわにした。 「そのとおりだな、青木君。しかも、われわれは世界に冠たる信用を誇示している三国物産に勝「たれ 見 のだ 野田の凄じい執念が、その言葉にこめられているのが青木にもわかった。いまは青木も間違いのな 9 い勝利を確信する表情になっていた。 いちる
三国物産本社ビル三階の総務部応接室のテー・フルをはさんで向いあったまま、多少の当惑を感じな がら馬場はそのことをいった。 「君はさっきがらリスク、リスクとばかりいっているが、その内容を説明してもらえないことには、 僕としても判断のしようがないよ。そこいらあたりをくわしく説明してもらえないものかね」 「馬場、戦闘機というやつは、つい十数年前までは巡航距離と速度、それに旋回半径の大小で性能を 判断することができた。君たちもそこに基準をおいて、戦闘機の性能をきめたはずだ」 「僕は航空工学の h ンジニアではなく、セールスマンだからね。そういうものかどうかは正確にはわ からないが、そうであったとは、なくなった由利部長から聞かされた記憶がある」 「そう、彼は航空機を扱うビジネスマンではべテランだったから、馬場の記憶に間違いないだろう」 ( 妙なことをいう男だ。二十年も会わなかったはすなのに、由利さんが航空機を専門のように扱って いたことを、なぜ知っているのか ? ) 馬場はふと不審にとらわれたが、すぐにフランクと由利が新幹線の車中に同乗して東京から京都ま での時間をすごしたことを思いだした。 ( 多分、あのときにそんな話を聞かされたに違いない ) と気がついた。それにしても、そんなことは馬場には何のかかわりもない。現在の馬場に必要なの 「だから、どうだというのだい。そんなふうにいわれても、僕には見当がっかないよ」 資 融 「要するに、危険だと私はいっているのだ。それが、君にはわからないのかね」 漠然とした表現をあらためようとしないフランクに、馬場はかすかにいらだちをおぼえながら、少過 し強い口調でいった。 「わかるわけがない。僕は、由利部長のように航空機のべテランではないのだ」 よ :
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イシャツはホテルのルーム・サービスにまかせればすむとしても、下着類をランドリーに出すほど馬 場は無神経になれないから、その始末だけでも憂鬱になってくる。 そこへもってきて、アシスタントがつくとなれば、いちいちと打合せをしなければならないだろう から、同室のほうが便利ということになる。アシスタントと大石がいっている以上、どうせ若い社員 にきまっている。先方も同室は気づまりだろうが、馬場にしてもそれは同じことだ。 「私のためなら、アシスタントは結構ですが : ・ : ・」 だが、もどってきた大石の声はにべもないものだっこ。 「この場合、君にアシスタントをつけないわけにはいかんのだ。由利君のポストを空甯にしておくこ とは、社の新型戦闘機ィーグルⅡ改の三国間貿易の産業省認可ともからんで、できることで ないのは君もわかっておるだろう 「無論、わかっております」 「わかっているなら、それでいいが、今日、君が会社を出たあと、社長、専務のほか営業担当役員を ふくめた会議で、君を機械第二部長の後任にするときめたのだ」 「私を : : : でございますか ? 「そうだよ。もっとも、なにぶんにも抜擢人事だから、当分は部長代理あるいは代行という辞令にな るはずだがね、 馬場は動転して声が出てこなかった。代理にしろ代行にしろ、実質的には機械第二部という三国物 リ / 1 ー , ハー 産のエ 部長であることには違いないのだから、大抜擢といっていい。 「常務、それは本当のことでございましようか ? 」 少しふるえ声で、馬場は念でもおすようにいった。受話器の奥から、大石の哄笑が聞こえてきた。 4
五条署でほんの三十分ほど話しただけなのに馬場は、由利が京都についてから高瀬川で死体になっ て発見されるまでの経韓を、さらにかなりくわしく知ることができた。 もっとも、詳細にといっても、その間、由利の姿を見た者はかぎられているから、空白の時間のほ 、つが多一いといってしし 、、。それにしても、捜査には門外漢の馬場にも妙にひっかかる点があった。 ( いったほうがいいのかどうか ? ) 一瞬、馬場はためらったが、さすがに刑事は、そのためらいの表情を見のがさなかったらしく、お だやかな声でいった。 「何か気がっかれたことがあったら、教えてくれませんか。ちょっとしたことでも捜査には役に立っ のです」 由利の行動に多すぎる〃空白の時間みが、捜査活動を困難にしているのであろう。 ねんざ 「由利部長は、新幹線の車内で右手首を何かのはずみに捻挫されたようですね。宿泊票の記入はフロ から、部長さんのご家族はさぞ仰天されたことでしような ? 」 由利明の家族のことを馬場はくわしく知っているわけではないが、いっか由利自身の口から、 これから大学にやらなきゃならん倅もいるし、嫁に出さなきゃいかん娘もいる。これでなかな か気がやすまらんものだよ。 と聞かされたことはある。確かに、 ( これから家族もたいへんだろうな : : : ) 同じサラリ ーマンとして、身につまされるような気分になり、馬場は黙ったままで頷きかえした。 せがれ
、、よ、つこ 0 し、刀 / 、刀ノ 最前、三国物産の大石から電話がかかってくるまでは、それでも熊谷はまだ一種のためらいと危惧 にとりつかれて、拘東性預金の率を引下げることで新規融資をうまく成立させる方法はないものかど うかと思案しつづけていた。が、大石の電話で、その思案をかえざるを得なくなったのだ。大石は、 自社系列の企業十数社が新規分の融資増加を東和銀行に申込んでいることにふれて、熊谷の意向を訊 ねるように何の屈託もない調子でこういってのけた。 「それそれ勝手なことばかりいって熊谷さんを困らせておるようですが、もともとは当社が支援、融 ところ 資していた会社なのですから、そちらの審査基準に合わん場合は、ご遠慮なくはねつけてください。 そういう会社については、私どものほうで配慮することにしますから 大石の言葉には含蓄があるように感じられた。声の響きは確かにさり気ないが、、ことによれば大石 は、東和銀行はそこまでの面倒はみきれまいと考えているのかもしれないのだ。 ( せつかくの三国物産との取引を、こんなことで無にするわけにはいかん ) 熊谷は咄嗟に判断した。申込まれている融資に応じきれないのだろうと大石に思われたら、大石の 口から系列企業の担当者の耳にもそれがとどき、結果として彼らは東和銀行との取引縮小を考えかね ないだろう。 そうなったら、取締役どころか熊谷の現在における行内での地盤さえ揺らぎだす怖れがある。 熊谷は慌てて大石にいっこ。 「いや、その件ならご安心ください。数日中にも、副頭取のほうから 0 がでることになっておりま融 剰 すから・ : : ・」 過 三国物産の営業本部長が、東和銀行が無理なら自社から融資をしてもよいといっているのだ。とい うことは、相当以上に先方の業績を信用していなければ、そんないい方をするはずがないし、一応、 がんちく