118 純な形式で普及させようとした自分の政治的思想や社會的思想を、明らさまに持出すことが出來 る。そこで著者は言明する、といふより寧ろ公然と告白する、「死刑囚最後の日」は、直接にか 或は間接にかは間はすして、叱刑の廢止についての辯論に外ならないと。著者が意圖したところ のものは、そして後世の人がかゝる些事にも氣を配ってくれることがあるとすれば、後世の人か ら作品の中に見て取って貰ひたいと著者が思ったところのものは、選まれたる某罪人についての 1 特定の某被告についての、いつでも容易なそして一時的な特殊の辯護ではなくて、現在及び未來 のあらゆる被告についての、一般的なそして恆久的な辯論である。大なる最高法院たる社會の前 に於てあらゆる人が陳述し辯護する、人間の權利に關する重大な一事である。凡ての刑事訴訟よ り以前に永遠に打立てられてる、最上の妨訴抗辯であり、血に對する惡である。凡ての重罪審 の底で、法官等の血腥い修辭學の熱辯の三重の厚みに蔽はれながら、ひそかに蠢いてゐる仄暗い 避け難い問題である、生と死との問題であり、なほ敢て云へば、衣を剥がれ、裸體にされ、檢事 局の堂々たる世迷言を剥ぎ取られ、酷たらしく白日の明るみにされ、正當の視點に据ゑられ、 本來在るべき場所に、實際在る場所に、本當の環境に、恐るべき環境に置かれ、法廷にではなく て死刑臺に、・判事の手中にではなくて死刑執行人の手中に置かれた、生と死との問題である。 著者が取扱はうと欲したものは右の通りである。敢て望みかねることではあるが「それをなし た光榮を若しも將來いっか著者が得ることがあるとすれば、著者にとって本懷の至りである。 そこでなほ言明し繰返すが、著者は無罪の或は有罪のあらゆる被告の名に於て、几ての法廷や
をつけるのは、見るも憐れな有樣だった。裸體の方がまだましだらう。 ゝ一人、老人たったが、なほ多少の快活さを見せてゐた。濡れた襯衣で體を拭きながら、こ れは番組にはひってなかった、と叫んだ。それから天に拳をさしつけて笑ひ出した。 彼等は旅の服をつけてしまふと、二三十人づゝ一團をなして中庭の他の隅に連れて行かれた。 そこには地面に伸ばされてる綱がそれみ、待受けてゐた。それは長い丈大な鎖で、二尺置きに他 の短い鎖がついてゐて、その先端に四角な百枷が取付けてある。首枷は一方の角にはめてある蝶 番で開き、反對の角で鐵の螺桿で閉まるやうになってゐて、徒刑囚の百に移送の間中鋲締めされ る。さういふ綱が地面に擴げられてるところは、大きな魚の骨の形に似てゐる。 徒刑囚等は濡れた鋪石の上に泥の中に坐らせられた。頸輸がためしてみられた。それから監獄 の二人の鍜冶屋が、携帶用の鐵床を持ってきて、冷酷にもその頸愉を金槌で彼等に鋲締めした。 最も豪な者でさへ蒼くなる恐ろしい瞬間た。背にあてられてる鐵床に打下される金槌の一撃一 撃は、受刑人の頤をはね返させる。前から後ろへ一寸でも動かうものなら、腦骨は胡桃の穀のや うに打碎かれるだらう。 その處置がすむと、彼等は陰鬱になってしまった。聞えるのはもう鑞の震へる昔だけで、また 間を置いて、強情な者の手足に監視が加へるの鈍い音と、或る叫びとだけだった。泣き出す 者もあった。老人等は唇をかみしめて震へてゐた。鐵の枠の中のそれらの凄慘な横顏を、私は恐 怖の念で眺めた。
法官等が、社會を保護するといふ名目の下に、重罪公訴を保證するといふ名目の下に、實例を 示すといふ名目の下に、猫撫で懇願しながら、陪審者たり人間たる吾々に向って暃人の百を求 めに來ることが、もはやないやうにしたいものである。凡てそれらの名目は、美辭麗句であり 太鼓であり本言である。その脹らみは針で一突すれば縮んでしまふ。その猫被りの饒舌の下にあ るものは、冷酷、殘忍、野、職務熱心を示さうとの欲望、俸給を得るの必要、などばかりであ る。不德官吏共、ロを噤むがいゝ 。裁判官の物靜かな足の下に死刑執行人の爪が覗いてゐる。 非道な檢事 ~ よ一體とういふものであるかと考へる時、人はなか / 冷骭ではゐられない。それ は他人を死刑臺に送ることによって生活してる人間である。本官の刑場用逹人である。その上、 文章や文學に自惚を持ってる一個の紳士で、辯舌が巧みであり、或は辯舌が巧みだと自ら思って をり、死を結論する前にラテン語の詩を一二行必要に應じて暗誦し、效果を與へることにつとめ、・ 他人の生命が賭けられてる事柄に、慘めなる哉、自分の自負心たけを問題とし、特別な模範を、 及びもっかない典型を、その古典とも云ふべき人物を持ってゐて、某詩人がラシーヌを目指し或 はボアローを目指すや、つに、 べラールとかマルシャンニとかいふロ標を持ってゐる。辯論では斷 頭臺の方を狙ひ、それが彼の役目であり本職である。彼の論告は彼の文學的作品であって、彼は それに比喩の花を疾かせ、引照の香りをつけ、聽衆を感心させ婦人を喜ばせるものとなさなけれ ばならない。彼は優雅な口調とか凝った趣味とか精練された文體などといふ、田舍にとってはま たごく新らしい下らないものを澤山持ってゐる。彼はドリー ュ一派の悲壯詩人等と殆んど同じほ
136 偉大なこともそれほど微小なことも社會には相應しくない。社會は「復讐するために罰する」こ とをしてはいけない。改善するために矯正することをなすべきである。刑法學者等の慣用の文句 をさう變へれば、吾人も了解し同意する。 第三の最後の理山、實例論が殘ってゐる。印ち、實例を見せてやらなければならないと。罪人 が日何なる目に逢ふかを示して、同檪な心を起す人々を恐れさせなければならないと。 これ が多少調子の差はあるけれど、フランスの五百の檢事局の論告が千篇一律に用ゆる殆んどそのま まの文句である。所で、吾人は實例を先づ否定する。刑罰を示して所期の效果を生するといふの を否定する。刑罰を示すことは、民衆を訓育するどころか、民衆の道德を頽させ、その感受性 を減ばし、從ってその德操を減ばす。例證は澤山あって、一々擧げてゐたならば推理の邪とな るほどである。でも茲にその無數のうちの一つを、最近の事實であるから持出してみよう。今こ れを書いてる日から僅か十日前の事である。カルナヴァル祭最終日の三月五日のことである。サ ン・ポルで、ルイ・カム、スといふ放火犯人の死刑執行のすぐ後に、假面行列の一群がやって來 て、また血煙を立ててる斷頭臺のまはりで踊ったのである。實例を示すがいゝ。カルナヴァル祭 最終Ⅱは諸君の鼻先で笑ってゐる。 もし諸君が、經驗にも鑑みず、實例といふ古めかしい理論ー こ固執するならば、十六世紀を取戻 すがいゝ。本當に畏怖すべきものとなって、多樣の刑罰を取戻し、ファリナッキを取戻し、審載 刑吏等を取戻し、首吊臺、裂刑車、火刑臺、吊刑臺、耳切りの刑、四裂きの刑、生埋の穴、生煮
んだ。斯くて彼等は各自に自分自身だけになされる。各自に自分の鎖を擔ひ、未知の者と相並ふ。 偶然一人の友があっても、鎖のために距てられる。最後の悲慘事だ。 約三十人ばかり出て來た時、鐵柵はまた閉された。一人の監視が棒で彼等に列を正させ、荒麻 の一枚の衣と上衣とズボンとを一人々々の前に投げ出し、それから合圖をした。一同は服を脱 ぎ始めた。所が、思ひがけないことが時機をねらったやうに起って、その屈辱を苛責に變へた。 その時まで天氣は可なりよくて、十月の北風のために本氣は冷々してたとはいへ、またそのた めに時々本の灰色の靄があちこち吹拂はれて、そこから日の光が落ちてきた。けれども、徒刑囚 等が監嶽の服を漸く脱ぎ終へて、裸のまゝそこにつっ立って、獄吏等の疑ひ深い檢査に身を任せ、 まはりをうろついて肩の烙印を見ようとする無關係な人々の好奇な眼付に身を曝した時、本は暗 くなり、その冷い驟雨が俄に起って、その四角な中庭の中に、彼等の裸の頭の上に、裸の體の上 に、地面に並べられてる慘めな衣類の上に、瀧のやうに降り注い 丿ーから來た見物人等は門の 瞬くまに、監視と徒刑囚以外のものはみな中庭から逃出した。パ の下に身を避けた。 雨はやはり盛んに降り績いた。もう中庭に見えるのは、水に浸った鋪石の上にびしょ濡れにな ってる裸の徒刑囚等ばかりだった。その騒々しい饒舌は陰鬱な沈默に變った。彼等は打震へて齒 の根も合はなかった。彼等の痩せ細った脛は、節くれだったは、兩方ふつかり合った。そして 彼等が血を失った手足に、その濕った襯衣をひっかけ、その上衣をまとひ、その水の滴るズボン
た窓の見物人等は、喜びの叫びや、唄の節や、脅かしの言葉や、呪ひのを、聞くも痛ましい笑 ひと共に、一度にどっと擧げた。丁度惡の面を見るがやうだった。どの顏にもみな澁面が浮び、 凡ての拳が鐵格子から突出され、凡てのが嶼き、凡ての眼が燃え立った。云はばその灰の中か らそれほどの火花が閃めき出すを見て、私は恐ろしくなった。 そのうちに監視等は平然と仕事を始めた。その中には、綺麗な服裝や恐怖の樣子などで、 ーからやって來た好奇な迚中の交ってることが見て取られた。監視の一人は荷車に乘って、鎖と 旅行頸棆と麻ズボンの東とを仲間に投げ下した。そこで彼等はそれみ、仕事を分擔した。或る者 等は中庭の隅に行って、彼等の言葉で綱と云はるゝ長い鎖を伸ばした。或る者等は鋪石の上に、 琥珀と云はるゝ襯衣とズボンとを擴げた。一方では最も目の利く連中が、背の低いでつぶりした 老人である監視長の見る前で、鐵の首枷を一つ一つ檢査し、次にそれを火花の出るほど鋪石の上 に叩きつけてためした。凡てそれらの仕事につれて、囚人等の嘲笑的な歡呼のが起り、次いで なほ高く、それらの準備の常人たる徒刑囚等の騷々しい笑が起った。徒刑囚等は小さい方の中 庭に面した古い監獄の窓に拘禁されてるのが見えてゐた。 それらの川意が整ってしまふと、監察官殿と呼ばれてる銀の繍取をつけた男が、監獄の主事に 命令を下した。とすぐに、二三の低い門が開いて、襤褸をつけた見苦しい喚き立てる男の群を、 みな殆んど同時に、一息毎に吐き出すやうに、中庭の中に送り出した。徒刑囚たった。 彼等がやって來ると、窓の者等は益、、喜びのを張上げた。徒刑囚のうちの或る者等は、徒刑
場に名の響き渡ってる者等は、歡呼と喝采とを浴せられて、それを一種の矜らかな謙遯さで迎へ た。多くの者は監房の藁で手づから編んだ帽子めいたものを被ってゐたが、通ってゆく町々でそ れによって自分を目立たせようと、どれもみな變挺な形をしてゐた。さういふのはなほ一層喝采 された。殊に或る一人は熱烈な賞讃を博した。それは娘のやうな顏をした十七歳の青年たった。 八日前から接見禁止で禁錮されてる監房から出て來たのたった。彼は監房の藁東で一の服を作っ て、それを頭から足先まですつばりとまとひ、蛇のやうな輕快さでとんば返りをしながら中庭に はひってきた。盜竊のために處刑された道化役者だった。激しい拍手と歡喜のとが起った。徒 刑囚等もそれに答へた。本物の徒刑囚と見習の徒刑囚との間のその喜悅の贍答は、恐るべき事柄 たった。獄吏等と慴えてる見物人等とで代表されてる社會がいくらそこに控へてゐても、罪惡は 面と向って社會を嘲笑し、その恐ろしい懲罰を内輪同士の視ひ事としてゐた。 彼等はやって來るに從って、監視等の立並んでる間を、鐵柵のついた小さな方の中庭に押しゃ られた。そこには醫者逹が彼等を診察するために待受けてゐた。囚人等は皆そこで、眼が惡いと か足が跛だとか手が不共たとか、何等かの健康上のロ實を述べ立てて、移送を避けるために最後 の努力を試みた。然し皆大抵は徒刑場に適するものと認められた。すると彼等は各自事もなげに 諦めをつけて、所謂生涯の不具なるものをすぐに忘れてしまった。 小さな中庭の鐵柵はまた開かれた、一人の獄吏がアルファベット順に點呼した。すると彼等は 一人々々出て來て、大きな方の中庭の隅に行き、名前の頭字のまゝに與へられた仲間の側に立並
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いマン・ローラン作】みエリ・去ョ、 ューゴー作け島与志雄訳 一〇〇冊の本 ジ ~ 、ン・クリストフ全八冊三・ん☆☆☆☆ レ ゼラブル全ヒ冊圏・☆☆☆☆ 他☆☆☆ 他☆☆☆ トオマス・マン作実占捷郎訳 岩波文庫より スタンダール作桑原・生島訳 トニオ・クレエゲル☆ 赤 田へ」二川下☆☆☆ エンゲルス大内兵に訳 〔選〕臼井書見大内兵衛大塚 ・高村光太郎自選 空想より科学へ☆☆ 久雄貝塚茂樹茅誠司久野収 第、村光太郎詩集☆☆ 河 , に肇著大内衛解題 桑原武夫武行三男鶴見 ジャック・ロンドン作岩田欣三訳 貧乏物語☆☆ 野治中野好夫松方三郎丸山 イ十日ル乂レ一下 1 い、 荒野の呼び声☆ 真男山ド肇渡辺一夫 ( 五十音噸 ) 古代への情熱☆☆ くわしくはこのために新しく作った小冊 ド著原光雄訳 ンエ : ・エヴィチ作河野与一訳 子「一 00 冊の本」をご覧ください。中 世いをゆるがした十日間全二腓下☆☆ 込みしたい、 進呈します - ) クオヴァ、ディス全三冊憊☆☆☆ 武者小路実篤作 ( 宛化、小社「一 00 冊の本」係 ) ヘミングウ・エイ作谷口陸男訳 情☆ シェイクスビア作中野好夫訳 一止よさ、りば全二冊各☆☆ ( 野直彬注解 よ ニスの商人☆☆ 選全三冊上☆☆ 他☆☆☆☆ 庫夏ⅱ石作 帯全二冊各☆☆ ゲーテ作相良守峯訳 波下〔葷は猫である全二冊各☆☆☆ ファウスト全一一冊各☆☆☆☆ゲーテ作竹山道雄訳 若きエルテルの悩み☆☆ 岩石川喙木作 内村繿三鈴木俊郎訳 芥川之介作 歌 化☆☆☆ 余は如何にして ☆☆☆ デ亠マ作山内義雄訳 羅生鬥・鼻・芋粥・兪盗☆☆ 督信徒となりし乎 本 三好達治選 モンテ・クリスト伯全七冊各☆☆☆ シェイクスビア【作 ~ Ⅲ河・圷「浦訳 の ッ レ ム ノ ト☆☆萩原朔太郎詩集☆☆☆ 冊マーク・トウーン作中村為治訳 、ツクルべリイ 上☆☆ ドストエー「′スキイ作米川正夫訳 松本慎一・西川正身訳 Z 全二冊 下☆☆☆ 1 フィンの冒険 ン自伝☆☆☆ カラマーゾフの兄弟全四冊」←☆☆☆ 川幸次郎訳 ロマン・ロラン著片山敏彦訳 一ー六☆☆マルクス・エンゲルス著大内、向坂訳 水 ーヴェンの生涯☆☆ 伝全册七☆☆岐リ共産党宜 - 言☆ アンドレ・ジイド作川口篤訳 プラトン著久保勉訳 宮沢賢治作谷川三編 田園交響楽☆ ソクラテスの弁明・クリトン☆ 銀河鉄道の夜他 ~ ・四篇☆☆☆ ヒ京勹大をに ドストエーフスキイ作中村白葉訳 ウイン・ハー著浦松佐美太郎訳 し J 白 秋詩抄☆☆ アルプス登攀記全二冊各☆☆☆罪 剛全三冊他☆☆☆ ファラデー著矢島祐利訳 太幸治作 ヘルマン・ヘッセ作実吉捷郎訳 ロウソクの科学☆ ン☆☆ ア 富嶽百景・走れメロス他八篇☆☆ 小宮豊隆編 島崎藤村自選 ダーウイン著島地威雄訳 ビーグル号航海記全三冊各☆☆☆藤村詩抄☆☆寺田寅彦随筆集全五冊各☆☆☆ トク・ベルツ編菅沼竜太郎訳 大畑末吉訳 福沢論吉著 アンデルセン - 自〕☆☆☆ ベルツの日記全四冊各☆☆ 福翁自伝☆☆☆ 00 1
読書子に寄す 岩波文庫発刊に際して 真理は万人によって求められみことを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かっては民を愚味なら しめるために学芸が最も狭き暈宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階黻の独占より奪い返すことはつね に進取的なる民衆の切実なる要求である 〕岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。それは生命ある不朽の 書を少数者の書斎と研究室とより解放して街頭にくまなく立たしめ民衆に伍せしめるであろう。近時大量生産予約出版の 流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。 千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を縛して数十冊を強うるがごとき、はた してその揚言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。この ときにあたって、岩波書店は自己の責飭のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前 より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。吾人は範をかのレクラム文庫にとり、古今東西にわたっ て文亠・ヤ 会科学・自然ヴー第 のいかんを間わす、いやしくも万人の心読すべき真に古典的価値ある書をぎわ めて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原理を提供せんと欲する。 この文庫は予約出版の方法を排したるがゆえに、読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自山に選択すること ができる。携帯に便にして価格の低きを最主とするがゆえに、外観を顧みざるも内容に至っては厳選最も力を尽くし、従 来の岩波出版物の特色をますます発揮せしめようとする。この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の 事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もって文庫の使命を遺憾なく果たさ しめることを期する。芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の 熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その 達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。 昭和二年七月 岩波茂雄