自慢 - みる会図書館


検索対象: 犬が西向いてもおかしくない本
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1. 犬が西向いてもおかしくない本

は日曜日になると子供の乳母車を押して公園へ散歩に出るが、うちの主人ときたら、日曜日は昼 まで寝て、やっと起きたと思ったら鼻毛ぬきながらテレビ見て、私がどんなに忙しくしていても 子供のおしめひとっ替えてくれない ートの地下食堂でンユーマイだの肉ダンゴだの またお隣の旦那さんは、会社の帰りに駅のデパ を買ってくるが、うちの主人ときたらお菓子ひとっ買ってきたためしがない ・ : と際限なく隣の旦那さん讃歌がつづいたのであるが、果して肉ダン またお隣の旦那さんは : ゴ買ってきたから、子供のおしめ替えるから、その人がやさしい男性であると決めてしまってよ いであろうか。もしかしたらお隣の旦那さんは、女のするようなことをするのが好きだからやっ ているだけかもしれないのである。 本当にやさしい男とは、まず許す心を持っている人だと私は思う。いつも柔和な微笑をたた 章え、日曜日はドライプ、庭の草むしり、子供のお守り、と妻に尽していた男性が、妻が相談もな しに着物を買ったというので、血相変えて怒っていた。俺は自分の楽しみをあとにして一生懸命 話に家庭に献身しているのに、お前は自分勝手すぎるといって怒ったのだ。 女なるほどそう聞けば一応筋の通っている怒りである。しかし筋は通っているが、彼は男として 男のやさしさが足りぬ人であることがはっきり見えるのである。 こんな場合、男らしい男ならば決して「自分の楽しみをあとまわしにして、家庭に献身してい

2. 犬が西向いてもおかしくない本

近の婦人の会話の特徴である。 「わたくし、浮気なら認めるけど、それが本気になったらゼッタイ許さない」 しかし「ゼッタイ許しませんよ」といわれて「はつ、そうですか」とやめる男はいないのであ る。「ゼッタイーと「べきーと「許さぬーをさけんでいる間も、亭主はせっせと浮気をしている のである。 殿様と家来 夫の浮気にさんざん悩んだある奥さん、もうヤキモチはやめて自分も浮気をして夫を苦しめて やろうと決心した。そこで敢然と浮気をした。浮気を夫が勘づくようにわざと夜更けに帰ってき 章 たが、夫はやれありがたいとばかりに気持よげに眠っている。 一彼女は夫の求めを拒んでみせもした。すると夫はまたもや、やれありがたいとばかりに自分の 寝床にもどり、夫にも義理心があったことがわかったのである。 と仕方なく彼女はハッキリいうことにした。 男 「わたし、浮気をしたのよ、あなた」 「ほう、そうかい、そうかい」

3. 犬が西向いてもおかしくない本

159 聞いた話 , 見た話 - ーー 4 章 学は低能ですー : 。だって佐藤さんは倒産したご主人の借金を肩代わ 「アラま、そんなこと : りして、着実に返済なさった。数学の才があるからこそできたことではありま せんか」 借金を背負ったのは、数学が低能なればこそ背負ったのだ。数学の才あらば 誰がそんなムチャをしたであろう。それ以来私は、世に胆勇とうたわれし人 は、想像力が欠如しているだけの人であったり、忍の人に見えしはただの鈍感 だったりすることがよく見えるようになりました。 女のスローガン 「いつまでも美しく、若々しく / 」 中年女性を励ます会のこのスローガンに感激した女性がいる。 「いつまでも美しく、若々しくあるためには老いの意識を持つのが一番いけま せん。自分は老いたと思うときから老いは始まるのですー そういえばそうかもしれないが、人目には老いが見えているのに、自分では

4. 犬が西向いてもおかしくない本

100 ゲリラ泣かせ 日本人ゲリラのために、丸四日人質として捕えられていたフランスのオランダ大使の談話を新 聞で読んだ。ゲリラが人質を解放するとき、他の人たちにはホールドアップさせたが大使にはさ せなかった。大使が、それは一国の大使に対して非礼ではないか、と注意したためだという。 この大使の言動こそまことの男というべきで、ひさかたぶりで誇りある男の言葉を聞き血湧き ところでこの時の女性人質二人は他の人質より先に釈放され 肉躍ったといっても過言ではない。 たが、それは「女性二人はひどくろうばいし、特にゲリラが発砲した際はひどかったのでグリラ はこれが我慢できずに釈放を早めたらしいーとある。 「ゲリラはこれが我慢できずに」というところがひどくおかしい。世界の亭主どものひそかな声、 「そのキモチわかるわかる 女は強し。何の武器もなくかくも強し。 淑女の資格

5. 犬が西向いてもおかしくない本

204 「いませんが : : : 」 今、席を外しています、でもなければ、今日は休みです、でもない。 「いません : と面倒くさげにいったきり沈黙している。 「いらっしやらないというのはどういうことですか、社をおやめになったということですか」 そういっている間に、カーツと怒りの湯気が体内に立ちこめてくるのが自分でもわかった。こ れが当代一流企業の社員の挨拶である。 私はそもそも一流企業というやつが嫌いである。自分はたいした能力もないくせに、パックの おかげで威彊っている奴というのは私は許しがたいのだ。 のおっさんが << 社社員でなければ私の怒りは燃え立たなかったであろう。 この「いません : しかし一流企業であるゆえに私はカッとなった。大仰にいうなら庶民の怒りとでもいうような気 持である。 しかし私はそのときはひとまず怒りを治めて用件を話した。さんがきたら伝えてくださいと いって電話を切ったが、そのまま何の挨拶もない 翌日になってたまりかねてまた電話した。すると今度はさんが出てきて昨日の「いません」 のおっさんとよく似た横柄な口調でこういった。 あいさっ

6. 犬が西向いてもおかしくない本

にかけられたキリストが、「神よ、何故にわたしを見捨て給うや」といった一 言にある。キリストほどの聖者がかかる情けない言葉を発するわけがない。ゅ えにこれは身代わりであるというのだ。 当時のキリストは白髪赤ら顔の鼻高で、人びとは天狗として畏敬していたと いう。キリストが日本で天狗となったなんて、私はこの話が気に入っている。 世のため人のため 二匹のカニを擱えて、プレーヤーの回転盤の中央に置く。そうして回転盤を 約十秒回してカニをテープルの上に置くとカニは目を回し、横に歩かず、縦に 這い出すという。私がこの話をおもしろく思うのは、縦に這うカニがおもしろ いのではなくて、どうすればカニが縦に歩くかを研究している人がいるという ことがおもしろいのである。私がそういうと、ある進歩的女性、そんなつまら ぬことを研究してなにが人の役に立つのです、と憤慨した。 しかしながら世の中を見渡すに、自分が人の役に立っていると自負している 人に限って、あまり役に立っておらず、自分の楽しみに打ち込んでいる人が案 つかま なぜ てんぐ

7. 犬が西向いてもおかしくない本

35 奇妙人間の話ーーー 2 章 9 風流滑格譚 せいそく 毛ジラ、、、というものは頭髪にはつかず、怪しからぬ場所に棲息するという。 同じ毛の中であるのに、なにゆえ頭の方へは行かず、頑強に下の方にしがみつ くのか。いうなれば彼はシラミ界の川上宗薫ともいうべきンラミである。 こういう話になると常に兄ハチローが登場するのは恐縮だが、ある時、兄は 毛ジラミに取りつかれた。その時、兄は一〇〇キロ近くもある肥満体で、お腹 が横綱のように出ているので自分でシラ、、、の棲息情況を調査することはできな 。そこでたまたま同居していた菊田一夫氏が知恵を絞った。そして兄を階段 の中段に座らせ、自分はその三段下に座ってピンセットを持って毛ジラミを退 治せしという。 何も階段でなくても、椅子でも いいわけだが、階段を考えついたところに趣 きがあると兄は感心していた。毛ジラミを取るにも趣きを求めるとはこれ、ま ことの詩人か。 しかしオモムキというものは難しいもんやねえ。 なか

8. 犬が西向いてもおかしくない本

会ったんだ。しかたがねえから、『おはようース』って挨拶したら : : : 退学さ。朝の挨拶をして 退学になるなんて、聞いたことがないよ」 こんな話もマジメくさって兄はするのであった。兄は人を笑わせるのが好きなのである。また 自分も笑うのが大好きな人だった。人を笑わせ、自分も楽しむために、その話はだいたいユーモ ラスに誇張されている。 「ハッチャンの話ときたら、どこまでホントだかわからない」 といいながら、皆、おもしろさに惹かれて話を聞きにくる。 私は兄のそんなデタラメ話によって、いろんな社会勉強をした。「お女郎屋ーなどという言葉 ばんなん も兄によって知ったし、男というものは万難を排して浮気をするものである、ということも兄に 章よって知った。「淋病」という特殊な病気があることを知ったのも兄によってである。 熬一 考えてみればどうもロクなことを教えられていないようであるが、ただそのおかげで、チョッ 話トやンツトのことでは驚かない女になれたような気がする。 し 私は夫が浮気をしたからといって、大さわぎもしなかったし、二日三日、居所がわからなくて もたいして心配しなかった。酒を飲みすぎるといって怒ったり、金を使いすぎるといって文句を いったりすることもなかった。そういう点でものわかりのいい女房であったとしたら、それは兄 のおかげである。 あいさっ

9. 犬が西向いてもおかしくない本

3 私が一番よく知っている女の『寝姿』である。 次に私が知っているのは、幼いころ、私に添寝してくれた女中の寝姿である。彼女は夏になる と、股ぐらに枕を挾んで寝るのが好きであった。 「冷たい枕を股に挾んで寝たら、キモチええでっせ」 と彼女はいった。私は真似をしてみたが、なるほど、具合のいいもので、なぜか安定感があって 私は長い間ーーー母に見つかって叱られるまで、このスタイルを愛好していた。 「そんな下品な格好して、寝るもんやない / ー と私は母に叱られた。 「何や / 自分は酔っ払った大蛇のくせに / 」 と、心の中ていったが、ロには出さなかった。 「・・ーー・人のことはいえても、自分のことはわからんものである」 とその日の日記に書いた。母はまた、昔話に出てくるウワパ、、、のイビキとはかかるものではな いだろうか、と思えるような大イビキをかくくせに、 「お父さんと一緒に寝たら、イビキがうるそうてかなわん / 」 と怒っては、枕を持って私の部屋へ寝にきたのである。 股ぐらに枕を挾んで寝る女中の次にきた女中は、寝ているうちにガバッと寝巻の裾をまくる癖

10. 犬が西向いてもおかしくない本

206 「いざ戦わん / 矢でもテッポでも持ってこい / 」 私には元気が出た。怒りは私のエネルギーのもとである。「金はいらん / 」と叫んだことが私 よみがえ しようらん を銷沈より蘇らせたのである。 たた けんか 私は以前に物産とも喧嘩して、対談謝礼を叩き返したことがある。楠本憲吉さんとの対談 で、忙しいのでいやだというのを無理に頼まれて出席した。 すると物産の重役という人が対談に割りこんできて、対談がティ談となり、愛国心というこ とから話ははじま「た。そして語り行くうちにその重役さんは、佐藤愛子とはアホであると思い 決めたらしい。 「さ「きからの意見はつまらんことば「かりだ「たが、いまの意見はいいですなー などとついにいい出すありさま。 佐藤愛子をそういうアホと知らずに対談に呼んだ自分の不明を恥しもせずに、だ。 ( エコノミ ック・アニマルの総大将のくせして、何が愛国心だ ) そのときも私は怒り狂「たが、それというのも物産が一流企業だったからだと思 0 ている。 おおかみ 私は喧嘩「早い人間だが、一匹狼の作家である以上喧嘩をした損は自分ひとりで引「かぶる。 損をするのも、野たれ死するのも我が身ひとつ、覚悟のうえである。 ところが一流企業の大組織の中に生きている彼らは、お家大事にさえしていれば喧嘩しても野