自慢のいろいろ 男というものはおかしなもので、役人はの中に役人ほど偉いものはないと思っているし、商 人は世の中に金持ちほど偉いものはないと思っている。だから役人になると歩き方、話し方すべ て偉そうにそっくり返ってくるし、商人はでかい家を建て女房を着飾らせて自慢する。 金も権力もない手合いは、米俵何俵かついだなどとカ自慢、それもない男はペッピンの女房持 ってる自慢、女房の親が金持ちだという自慢、それもない手合いは女にもてる自慢、酒に強い自 慢、さらに下ると性欲の強い自慢 ( なぜスケベイが自慢になるのか私にはわからぬが ) イチモッ のでかい自慢、もっと下るとでかくはないが長モチすると自慢する。 かわいらしいのはムシ歯がない自慢、ンラガがない自慢、悲しいのは息子の秀才自慢 ( ホント はその息子は女房に似た ) である。自慢もさまざまあれど、いっそ開き直って自分の弱虫、グウ 男らしさのウラオモテ
加どという言葉を平気でロにできぬのが普通だった。人より初潮を早く見た者はひた隠しに隠す。 それを探索しては、 「あの人、もうアレあるのよー などといいふらす。オッパイが大きいのもなぜか恥ずかしいことだった。大きい人は乳パンド ( プラジャーなんてハイカラな名前はなかった ) で押える。私の母はその話を聞いて、 「かわいいねえ」 と笑ったものだ。 このごろの少女はどうか。知り合いの子ちゃんは小学生だが、はや胸がふくらんできたこと を自慢していた。だがどういうわけか初潮の到来が遅い。ひたすら待っていたが、このごろでは 待ちかねて毎日、生理帯をして学校へ行っているという。この話を聞いた人、みな笑っていう。 「かわいいわねえ : このごろはこういうのを、かわいいという。 ある感懐 夕方、代々木公園の横の道で交通渋滞のためタクンーが立往生した。気がつくとあたりの車の
5 目次 アカの他人 ハナづら問答 力、、、ンモがかった歌・・ーー語 孝行息子 0 ドロポー仁義 男と女の話・三章 自慢のいろいろ 珍技をきそう ふんどしと腰マキ 処女を守る会ーー 夜が怖い うるわしき義理人情 紳士のユーモア 0 ーー・・男の夢 男のストリップはなぜいない ? 戦争の教訓 ーー恐妻養成所 男は辛いよ 5 ーーーレディ・ファースト ーー・ー男子滅亡 ーーー怪力と魅力 キモッタマ教室 男のするべきこと 0 テレフォン人生相談 牝除けテレビ ーー・・悪妻修業 男のやさしさ ーーー微妙な違い
ー 56 いう名がすばらしくよいので佐藤の悪さを消しているという。つまり私も名前 を変えればいいのだ。姓名判断の先生に改名をすすめられたが、いっこうにそ の気になれぬ。 せつかく親が頭を絞ってつけてくれた名であるから、なるべくいじりたくな 親ははじめ、小菊という名を考えたという。次に小百合という名も考え た。結局愛子と決ったのだが、ではせめて小百合に変えようかと友人たちに相 談すると異ロ同音に、 「小百合というッラかい / 」 ではヨメにいって姓の方を変えようかといったが、返事の代わりに笑うだけ である。かくなるうえは背に負いたる悪名と戦いつつ生きるほかなし。 悪運人生 姓名が悪いだけでなく、私は易の方からみてもよくない運勢だそうである。 うなす いのしし 五黄の猪というと、聞いた人は皆、「なるほど / 」と深く肯く。向こう意気 はらん ばかり強く、普通なら我慢するところをしないため、自ら波瀾を呼び平安を乱
タラ、貧乏を自慢するのがいる。これはどういうわけか、作家に多いね。 珍技をきそう すもう うんぬん このごろ父と息子の断絶がしきりに云々される。父親は息子と角力などとって、男と男の心の 通い合いを心がけるべきだという意見がある。たださえ忙しい世の中、そう勝手な注文を出され ても親の方は子を養うだけでヘトへトになっているのだ。それにつけても思い出されることがあ る。 昔は男便所のアサガオに臭気止めのナフタリンが入れてあったものだが、私の兄はおンツコの 勢いでそのナフタリンを転がしつつ用を足すのを楽しみにしていた。兄いわく、 章「オレがナフタリンを右のほうに寄せておくだろう。次に行くと左に寄っているんだ。ためしに 一右に二 0 左に三 0 と分けておくだろう。すると今度は五 0 とも真ん中に集めてある。どうやら親 話爺がやってるらしいんだな。親爺のやつも小便しながらナフタリンを転がして楽しんいると思う うれ 女と嬉しくなったネ」 男 これそ男同士の心が通い合うもっとも男性的な遊びではあるまいか。 おや
ノーフンの記 「今日は有史以来未曽有の国辱条約調印の日なり。陛下はいかに在すならんと思えば涙胸臆に迫 る。ああ蒙昧自ら矜る軍部傲慢の結果斯の如し。単に軍部のみという莫れ。国民総ての罪なり。 九月二日永久に忘るべからざる屈辱の日なり」 右は昭和二十年九月二日の亡父の日記である。 「夜ラジオを聞くに米国の某司令官は、『日本の武装は解除するが精神の武装は解除せず。今後 教育を以て是に努めざるべからず』云々。噴飯の至りなり。我国は物質にて一歩を彼に輸せりと 章いえども精神に於ては数歩上にあり。我国寧ろ彼を教化せんのみ。彼の態度斯く倣慢なりとせば 今後の干渉想像するに難からず。国民緊褌せざるべからず」 話かくて二十九年は過ぎぬ。教化せんとて教化され、緊褌せんとてノーフンにて過ぎぬ。九月二 日、瞑目して泉下の父に詫びる。 し かかし ふんどしもなくてことすむ案山子かな 思
65 寄妙人間の明ーー 2 章 しかし自 も、自分で自分をべっぴんだと思っていないべっぴんならまだいい。 分で自分をべっぴんだと確信し、人もそう思っていることを確信しているべっ びんは一番困る。 なぜならそういうべっぴんは、醜聞が立っても、「べっぴん税よ」くらいで すませてしまうからである。 これは単なるゴンツブであろうと確信しているが、べっぴんさんが参議院議 うわさ 員になったために、実に卑しい噂が乱れ飛んでいる。あのべっぴんさんとあの 大臣とがねエ・ : といったような噂である。 べっぴん欠乏の世界にべっぴんが出しやばるからこういう噂が飛ぶ。 学生は学校に、おまわりは交番に、べっぴんは : : : 美容院でセットでもして いるのがいいんじゃないですか。 分身 古本屋でンヨー ペンハウエルの「女についてーという本を買った。・ハラ・ハラ と繰っていると前の持ち主が引いたポーダーラインが目についた。
130 影の声 テレビをひねったらハチマキ姿の中年女性の怒り顔が出てきた。見るとハチマキには「浮気反 対」と書いてある。彼女は夫の浮気を怒っているのである。と、夫なる人が出てきた。困った顔 で何やらいおうとして、 「あなたは黙っていてください・ かっ い。ハチマキ女性は他 と一喝されている。彼は自分の店で使っている女の子と浮気をしたらし にも何人かいて、みな憤怒に燃え、 「自分の店で使っている人、いわば商品でしよ、その商品に手をつけるなんて : : : 」 と自分が浮気されたわけでもないのに怒り狂っている人がいる。ところでその「手をつけられ た商品」さんはこのテレビをどんな気持で見ていたやら。ニャニヤしながらか、涙ぐみながら か、それとも「手工つけられたんやない。こっちがつけたんやーといっているか。私はその方に 興味がある。 しようゆ 「おすし食べたあと、お油ついた指、彼のズボンで拭いておくのー ああ愛欲戦線涙あり。それにしても女というやつは暇だねえ。
148 不思議ねえ」 としきりに不思議がっている奥さんたちがいる。何もそう不思議がることは ない。男とは奥さんのよし悪しにかかわらず浮気をするものなのだから。 女の人の話を聞いていると、ちっとも不思議でないことを一生懸命に不思議 がっているのが不思議である。 「お父さんが教育者なのに、どうしてあんな子供さんができたのか、不思議ね え」 おのず 教育者と父親というものは、自から別モノであると思えば少しも不思議では ないのだ。 「お父さんもお母さんも頭がいいのに、どうしてあんたみたいなできない子供 ができたのか、不思議だわ」 これもちっとも不思議ではない。ただ自分たちが頭がいいと自分で思いこん でいるだけのことなのである。 教育のお手本
ー 04 くずれゆく楽園伝説 花嫁の心得 女が結婚したいと思うときは大きく分けて三つに分かれると思う。 その一つは恋愛をして、何でもかでもその男と一緒にいたいという欲望に駆られたとき。二番 目は安定したいという望み。三番目は結婚生活を楽園のように考えていて、そこに入れば楽しい とら ことばかりあるというイリュージョンに捉われている場合である。 私などの年代の結婚はこの二番目の場合が多かった。精神的にも経済的にも自立することが不 「うーん、女はやつばりすごい。ぼくなら襯念して我慢しますよ」 「でも西日にあぶられるのよ」 「あぶられても我慢します。うーん、女はやつばり強い」 そんなに感心するようなことかしら。男ってお弱いのね工。