司会者 - みる会図書館


検索対象: 転校生と土地っ子ら
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1. 転校生と土地っ子ら

ると思います。」 と、もちろん、さよちゃんの顔を見た。さよちゃんは、目をまんまるに開いてにこっと わらった。 「鳥肉のきらいな人の気持ちもわかります。」 「もういいわ。ほんとうにそうね。 みなさん、こんな時はどうしたらいいのかし と、先生がまた司会者にパトンを渡した。 「はいつ」「はいつ」と、何人も手をあげている。司会者は、きいちくんを選んだ。 「何がきらいか、自分のきらいな物をみんなにいっておく。」 「それで、どうするんですか ? 」 と、司会者。 「きらいだって発表してある物については、残したって悪口をいわないことにする。」 「でも、先生はイワシのだんごがきらいだっておっしやったけど、残したことなかった よ。この間なんか、ぼくが残そうとしたらもったいないからって、それまで食べちゃい 152

2. 転校生と土地っ子ら

今日の司会は魚鮮のおっさんだ。自分の店のことを心配しているから真剣だ。 「ところでよ。」 と、魚鮮のおっさんが話を続けた。 「五月五日の『子どもの日』が終わると、そのあとどうするかという問題があるので、 次の話題に進めようと思うんだ。 おやじさん、あんたから説明してくんなね。」 「ー・ーあと、お中元の売り出しまでなんにもなくなるんだよなあ。そこで、『エース・ ワン』の店長さんから、『エース・ワン』ではこの先どんなことをするか、今朝、聞い ておきたいんだ。ねえ、店長さんどうですかい ? 」 けっこう 「結構ですよ。」 せいり と、店長はここしばらくの間、どんな予定があるか話してくれた。それを整理すると、 次のようになる。 一、五月は、「子どもの日」中心の催し。 「ちびっ子力ラオケ大会ーを行なう。 一「六月は、春物売りつくし。

3. 転校生と土地っ子ら

みんなにせめられたけんじくんは、顔を赤くして、うつむいている。 「どうですか、けんじくん。」 司会者にさいそくをされて、けんじくんはしぶしぶと席を立った。 「どうなんですか。」 こんどは、発一 = ロ者のきいちくんが、司会者ぬきでけんじくんにつめよった。 それでも、けんじくんは返事をしない。 「早くしろよ ! 」 「帰りがおそくなっちゃうよ ! 」 と、男の子たちのやじ : ・ けんじくんは、「三学期からなおします。」と、 いってしまえばそれですむのだが、 それをいってしまえば、これから先逃げようがなくなってしまうのだ。かといって、こ の場を口先でうまくごまかせるほど気のきくけんじくんでもない。こういう場合、けん じくんはいつも、 「もうしいからすわれよ。」 148

4. 転校生と土地っ子ら

の。そうしたらもう、すっかりすきになってしまって ! 」 先生の話が終わると、大はくしゅ , 「おめでとう、先生 ! 」 「やったね、先生 ! 」 先生は、いすにかけたまま上を向いて涙をこらえた。 「はいつ。」 元気よく手を上げたのはさよちゃん。 「わたしは、ネギがきらいです。でも、少しずつなら食べられます。ネギの入ったおか すが出る時は、量をへらしてもらっていいですか ? ー 「賛成。きらいな物を発表してある人は、みんなそうすればいいんだよ。」 と、きいちくんがかってに発言して、司会者に注意された。 . を . し さとるも手を上げた。 「きいちくんの発一 = ロはル 、 0 ール違反で司会者に注意を受けたけど、とてもいい意見だと思 154

5. 転校生と土地っ子ら

ました。」 と、司会者がたしかめた。 きいちくんは、もう、なんにもこたえられなくなって、すとんといすに腰かけてしま った。だれも手を上げない。時間が止まってしまったようだ。 「しつもん ! 」 さよちゃんが手を上げた。司会者は、ほっとして、さよちゃんを指名した。 「先生にしつもんします。ー・先生は、イワシのだんごがきらいだっておっしゃいまし たけど、小林くんからもらって食べたっていうのはどういうわけですか。」 「先生 ! 」 「イワンのだんごって、ばくっとかんだ時、なまぐさいにおいがするのね。いっぺん、 そのにおいがいやだと思ったらもうだめ。それからイワシのだんごの出るこんだてを見 るともうゆううつでゆううつで : 。でも、先生なんだから、残しちゃだめ、食べなく っちゃって食べているうちに、し 、つの間にか平気になっちゃった。わたしのおなかの中 には、今、かわいい赤ちゃんがいるの。赤ちゃんのえいようにはお魚が一番て聞いた 153

6. 転校生と土地っ子ら

「途中で済まねえ。ーーー実は、カラスはひながかえると気性が荒くなるもんで、無理な 話だと思ったからよ ! 」 それを聞いて、すし屋のだんなが手を上げた。 「そらあ、山ん中のカラスの話だっぺ。おやじさんとこのカラスは、店まで下りてお客 さんからえさをもらったりしてふだんから人間になれつこになってる都会ガラスだ。山 ん中のカラスといっしょにされたら、カラスが泣くべさ ! 」 「しよせんはちくしようだよ。えさがほしい時はおとなしくしてるだろうが、子どもが 生まれれば子どもを守ろうとして、気が荒くなるもんだ。」 ずばりすばりと切り返されて、すし屋のだんながいやな顔をした。 「ほかの人がいうならいざ知らず、小鳥とのふれ合い広場を考えてるあんちゃんから聞 こうとは、思わなかったね。なあ、みんな ! 」 司会役のそば龍は五十歳。三十歳のあんちゃんに研究会のムードをぶちこわしにされ てたまるもんかと、司会者としてのプライドを考えたらしい 「あんちゃん、若えもんだからしようがなかっぺけん ( ないだろうが ) 、だんなはあん きしよう 102

7. 転校生と土地っ子ら

いやだいやだと思っている時間は、かけ足でやって来たのかと思うほど早くやって来 さとるが、心を決めかねているうちに、学級会の時間が来てしまった。 ゃあめた。どうせ、だれも知らないことなんだから。 さとるは、ついに、いちばんらくな道を選ぶことにした。 「よし、これだ ! 」 さとるが、思わず両手でひざを打ったところ、司会者が勘ちがいして、 「では、さとるくん。 今学期の反省をいってください。」 「え。あ。は、よ、。 別にありません。」 さとるは、ほんとうにあわてた。何がなんだかわからないうちに「別にありません。」 といってしまった。 「では、きいちくんはどうですか。」 やれやれ、あらしは通り過ぎた。 る。 かん い 6

8. 転校生と土地っ子ら

三、七月。お中元セール。「公開贈答品相談会」、出場者はその場で募集する。司会はタ レント。 しちゃく 四、八月。秋物展示会。「試着体験コーナー」で試着、ファッションデザイナーからア ドバイスを受ける。モデルはその場で募集。アドバイスは公開。 「以上でして、『エース・ワン』も実は苦労しているんです。」 「質問 ! 」 「おやじさん、なんだかい ? 」 「六、七、八月は、お客さんが参加する宣伝方法になってるみたいだけど、そういうの はどうやったらアイデアが浮かぶんだかい ? 」 「店員からテーマを募集しています ! 」 「テーマですかい ? 」 こんか 「そうです。今夏のテーマは『わくわく・いきいき』です。」 「なあるほど。出番があるかも知れないんだから、そりゃあ、わくわくしますわな。」 「いきいきがむずかしかったですよ。」

9. 転校生と土地っ子ら

どされて、ようやく気分が落ち着いた。 しばらくすると、飼育委員会が始まった。 「これから臨時の飼育委員会を始めます。それでは、最初に委員長からブラウンの回復 の状況を報告します。」 この声は、久美だ。久美が司会役にちがいない。 「それでは、プラウンの回復状況を報告します。」 と、たのもしく話を始めたのは正太。 「傷は、これまでどおり朝とタ方の二回、オキシフルで消毒してからオロナイン軟膏を 塗っています。回復は順調です。保健室の杉野先生が、傷口がかわいたから、明日から は自然の状態にもどしなさい、といいました。明日の当番の人から、手当てを打ち切っ てください。ここまでのことで、質問はありませんか ? 」 「質問 ! 」 だれの声だろう。女の子の声だ。 「洋子さん ! 」 りんじ なんこう

10. 転校生と土地っ子ら

うから取り上けてもらいたい。そうすれば、反対にすきな人は多く食べることができる から。」 「さんせい。お願いします ! 」 「さんせい。」 いっせいに拍手が鳴って、クラスの考えがまとまった。司会をしていた小林くんは、 「では、三学期からきらいな物をはっきりと発表しておいてください。発表した物につ いては、残しても文句をいわないようにしてくたさい。」 といって、ふうっとため息をつき、それからさとるの方を見てにこっとわらった。 もぞうし 三学期の始め、さとるのクラスでは「すききらいの食べ物調べ」という一枚の模造紙 がはられた。それで、いつも全員そろって明るくて楽しい給食の時間を過ごしている。 きっと、きらいな食べ物もしだいにへっていくことだろう。また、別の問題だってう まく解決しているにちがいない。 しら 155