とてもひたり長編を完結しなければなりません。全力をあげて、仕事 帰ると早々、第一夜に発作が起こりました、 どいものでした。五日ばかりたって、やっと体が回復したかをしていますが、しかもそれは医者に差し止められているの と思うと、また二度目の発作、前よりもっとひどいのです。 です。なにぶんにも発作があるので。 くらか軽いものでしたが、三 今は貴兄に少しもお送りすることができません。善き友 最後に一昨日また来ました。い 度ぶつ続けなので、すっかり弱ってしまいました。がそれでよ、も少し待ってください。長編の稿料として、少なくとも も、テープルに向かって、背中を伸ばす暇もなく仕事をして二千五百ループリは入りますから、必ずお返しします。これ います。 はきっと間違いありません。もう手付も受け取りました。た カトコフはヴィス・ハーデンへ、三百ループリ送ってくれだ完結さえすればー ました。こちらへ帰ってから、それを受け取りました。ャヌ外套と膝かけをお送りします。たぶん明日にもリュべッグ イシェアが転送してくれたのです。ところが、何もかも小生へ向けて発送するでしよう。ャスイシェフのことはどうした の肩に落ちかかって来ました。兄 ( 亡くなった ) の遺族は完ものでしよう ! ああ、十二月の十二日までには、必す借金 全な破産状態で、ひたすら小生の帰りを待っていたわけでを返さなければならないのです。その時はおそらく貴兄にも す。何もかもそちらへやってしまい、おまけに二、三日前 お送りできるでしよう。しかし、どこから金を手に入れたも また百ループリ借金しました。もうどうしていいかわかりまのでしよう ? 大臣のところへ行って来ます。カトコフにま - せん。ただポロンスキイにだけ相談してみました。彼は小生た前借を頼むのは、もうあまりにまずすぎます。不可能で に、雑誌 ( 塚の日 ) のことはどうしても待たなくてはならす。ばかげています。まるでそんなふうの関係じゃないので ぬといい、長編を書き上げたうえ、名声を新たにするためますから。 だ何か書いて、それから始めるように勧めました。つまり、 ご令閨に心からなる信服と、限りなき尊敬の念を捧げま 一年さきというわけです。扶助金のことについては、首をひす。何よりもご健康を、これが何より大事です。お嬢さんに ねっていました。小生はまだやって見てはいませんが、やつお祝いをいい、子供たちみんなに接吻します、お利口さんに ばり試みだけはしようと思っています。兄の遺族のために、 は特別に。さようなら、なっかしき旧友、固く握手します。 大臣に請願するつもりです。 完全に貴兄の・ドストエーフスキイ ばくの頭の中には、一つの定期刊行物の案があるのです。 お手紙を差し上げようと、しじゅう思っていたのですが、 しかし、雑誌じゃありません。有益かっ有利なものです。あ何かしつかりしたことを当てにして、ずっと待っていたので るいは来年あたり実現するかもしれません。しかし、さしあす。うちのパーシャは元気で、ト ′生を慰めてくれます。とこ 534
すったでしよう ? ばくたちが別々に働いていたら、蹉跌し ・ > ・スタルテ = ーフスキイへ ます、臆病になります、精神的に貧困になります。ところ が、二人が一つの目的のためにいっしょになったら、話はま〈ペテルプルグ、一八四七年〉 ったく違って来ます。そうなると、元気が出ます、勇気と愛尊敬するアルベルト・ヴィケンチエヴィチ。小生は貴兄の が湧きます、二倍も力が増して来ます。何もかもできるだけご送付のものについて、ひとことも聞いていませんでした。 詳しく書いてください。数宇 ( 金、時日、等 ) のことは、なそれどころか、小生自身、首を長くして待っていた次第で す。貴兄から落掌した書類をご返送します。小生はまだ目を るべく注意して正確にお願いします。 通していません。頭に血がのばるので、健康がすぐれず、医 刀・・スタルチ = ーフスキイ〈宿名ジ , 師の命令もあって、どうしても仕事をするわけにいきませ 〈ペテルプルグ、一八四七年〉 ん。仕事ができるようになったら、やります。もし小生のた 今お送りする原稿のこの形式のために、小生は五時間ぶつめの仕事がないようでしたら、前金でちょうだいしたもの 通しに仕事をしました。ジェスイットの項はぜんぶ書き直さを、「辞典』の出版と同時にお返しします。では なければならないでしよう。仕事がむずかしくて手間どるの 心から貴兄に信服せる・ドストエーフスキイ は、ぜんぶ書き直すのでなく、推敲しなければならないから です。しかもそのうえに、印刷所のためを思うと、原稿をす 一八四八年 つかり消してしまうわけにいきません。訂正はするのです が、それでも自慢できるほどには直りません。しかも、たっ ドストエーフスキイの親友アポ た二行のために、十五分も考えるのです。カードはお好きな ロン・マイコフ ( 詩人 ) 、ヴァレ 7 ・ p•-/ ・マイコヴァへ リアン・マイコフ ( 批評家 ) の母 よ , つに鳰信してもかまいません。 あとの二つの形式は、小生が自分で持参します。一刻の休衾テルプルグ、一八四八年五月十八日〉 みもなしに仕事をしています。いま小生の手もとに残ってい 敬愛するエヴゲーニヤ・ベトローヴナ、取り急ぎお詫び申 るのは、ぜんぶで十形式です。三つの形式のために、一日に します。昨晩はひどく激昻してお宅を辞してしまって、結局 十二時間は仕事しなくてはなりません。 ぶしつけな振舞いになったことを、つくづく感ぜざるを得ま * スタルチェーフスキイは「百科辞典』の編集をしていた。ドストエーフスせん。あなたに会釈もしなかったくらいで、あなたに声をか キイは金のために、この仕事をも引き受けたのである。 けられた後に、ようやくそのことを思いだした始末です。 ー 22
にはもっと精神の落ちつきが必要なのです。小生は冗談半分フスキイはぜんぜん知りません、まとまったものはなんにも に喜劇を書きはじめ、冗談半分に数々の喜劇的状況と喜劇的読んでいないのです。しかし、彼を批評した文章の中で引用 人物をつくりだしましたが、主人公がすっかり気に入ってしの断片はたくさん読みました。おそらく彼は古いロシャの一 まったので、小生は喜劇の形式を棄ててしまいました。もっ定の階級をよく知っているのでしようが、小生の目には彼は とも、この形式はうまくいきそうだったのですが、自分の新芸術家でないように思われます。のみならず、彼は理想を持 たぬ詩人のような気がします。どうか小生の迷いを解いてく しい主人公の身に起こる事件を少しでも長く跡づけていっ て、それを腹いつばい笑いたかったのです。この主人公は幾ださい。ただ批評文のみによらず、直接彼を知ることができ らか小生と肉親関係があります。手つとり早くいえば、小生るように、彼の作品の中でもなるべく優れたものを送 0 てく 「スチェパン ださい、お願いです。ビーセムスキイでは、『法螺ふき』と はユーモアト説 ( ) を書いているのです。しかし、 / 号チコヴォ村』 それつきりです。小生 今まではず「と個々の事件をばらばらに書いて来て、しかも『金持ちの花婿』を読みました、 はたいへん気に入りました。彼は聡明で、人がよくて、ナイ 相当の量になりましたから、今度は全部を一つに縫い合わし ーヴなほどです。話は巧みです。しかし、ただ一つだけ残念 ているところです。さて、以上が小生の仕事に関する報告で なのは、彼が書くのを急いでいることです。あまりにも早く す。つい話さずにいられなかったのです。それは要するに、 話相手が忘れがたき友である貴兄だからで、二人の古い交わたくさん書きすぎます。もっと自尊心を持っ必要がありま りを思い起こしたからです。まったくです ! 小生は貴兄とす、も 0 と自分の才能と芸術に対する尊敬を持っ必要があり ともにあって、幾たびか幸福な時を過ごしました。どうしてます、もっと芸術に対して愛を持っ必要があります。若い時 こんこん には思想が滾々と浴れ出るものですが、それをいちいち生の 貴兄を忘れることができましよう ! ままっかまえて、いきなり表白すべきではありません、性急 貴兄は文学のことをあれこれと書いてよこされましたが、 に吐き出すものではありません。もっと綜合されるのを待っ 小生は今年のものをほとんど何ひとっ読んでいません。しか し、自分の感想をも述べて見ますと、ツルゲーネフがだれよべきです。もっとよく考えて、単一の思想を表現するさまざ ただ残念なことには、大きな才能を持つまな零細のものが一つの大きなものにまとまるのを、 りも好きです、 ていながら、手綱の控え方の足りないところがたくさんありつの堂々とした浮彫的な形象に統合されるのを待って、その ます。レフ・トルストイは大好きなのですが、小生の意見に時はじめて表現すべきです。偉大な作家によって創造された よると、あまりたくさん書かないだろうと思います ( しか偉大な性格は、長い執拗な努力によって形づくられ、仕上げ られるのがしばしばです。中間的な試みやスケッチを、残ら し、あるいは小生の考え違いかもしれません ) 。オストロ
わたしの件については、ペテルプルグからなんのたよりも 7 ・・ヴランゲリへ なし。いっ許可がもらえることやら。それまでは待っている 一八五九年十一月十九日 けれども、待っというやつは一番やりきれない状態だよ。ミ ーシャ兄さんから手紙をもらったが、わたしの長編の一部は尊き友アレクサンドル・エゴーロヴィチ、取り急ぎ一筆し たためます。いろいろな事情に妨げられて、すっかりご返事 もう印刷されて、もうじき出るはずだが、印刷台数がわたし の予算より少なくて、したがって金のほうもかれこれ二百五が遅れてしまいました。それに、いま筆を取ったのも、また もや用件を書くためなのです。これがいっ片づくことやら、 十か三百ループリ少なく入るわけだ。四方八方、不運つづき。 ばくにとってなっかしいきみがた一同を、いっ抱擁すること ミーシャの手紙によると、あちらではしばらくの間、毎日 ができるやら。ばくはまたきみにお願いがあるのです。これ のようにわたしを待っていたそうだ。もう入京の許可が下り しんですがー ばくはいろんな たといううわさが立ったのだが、そのうわさがほんとうでなが最後の願いごとになればい、 かったので、ミーシャはがっかりしている。わたしに会いたお願いごとで、すっかりきみをへとへとにしてしまいました が、きみはいつもばくにとって親身の兄弟でした。今度もい いといって呼んでくれるのだ。わたしのほうだってその気持 やだといわないでください。 トヴェーリはほとはといやになったよ。 ちは負けやしない。 用件というのはこういうわけです。お手紙には、ペテルプ 宙ぶらりんの状態はどたまらないものはないね。 ルグ在住について、ドルゴルーキイとチマーシェフから許可 なっかしいヴァーリンカ、心からお前に接吻する。お前と ミーシャは今のわたしにとって、だれよりもいちばん大切なをもらっていながら、なぜやって来ないかと書いてありまし た。友よ、それができないので、そこが困ったところなんで 人だ。ヴェーロチカによろしくいって接吻しておくれ。そし て、その主人にもわたしからよろしくいったと伝えてほしす。というのは、事件はいま皇帝のお手にあるからです。ば 、。白父さんにも、伯母さんにもつー = 、、 ) お祖母さん舫 ) く自分で陛下に上奏文を書いたので、今はもう陛下のご裁可 にも。お前の子供たちにもよろしくね。マーシ、ンカ ( カレービ ン家の娘 ) を待つより仕方がありません。ばくは一時、しばらくのあい 、ことをだ上京しようかと考えました。なぜなら、ドルゴルーキイが の手に接吻する。わたしが今度ゆくまでに、何かいし 覚えるだろうね。ヴ = ー 0 チカの子供たちも一人ずつ接吻しペテルプかグ永住にさえ同意した以上、ばくが最後の決定を ておくれ、カーチャも、それからとくに外交家の料理人を。待っ間に、数日の予定でペテルプルグへ行ったからとて、も う立腹はされないだろうと思うからです。ばくは出発ときめ さよなら、妹、また逢う日まで。 て、そのことを・ハラーノフ伯爵に話したところ、伯爵はそれ お前の兄・ドストエーフスキイ
ードキンは実に退屈で、だらけていて、とても読んじゃいらしてください。 れないほど冗漫だ、と決めてしまったのです。しかし、何よ人生のことや、ばくの教義などは抜きにして、われわれ仲 りも滑稽なのは、みんなが、冗漫だといってばくに腹を立て間 のニュースを二つ三つ話しましよう。第一、 ( たいへんな ているくせに、みんな一人のこらず夢中で読んでいることでニュースです ) 、・ヘリンスキイが『祖国雑誌』をやめます。ひ す。ひつばり合いで読んでいることです。仲間の一人などどく健康を害したので、温泉に、もしかしたら外国へ出かけ は、頭を疲らさないために毎日一章ずつ読んで、満足のあまるのです。二年くらいは批評の筆をとらないでしよう。しか アルマナフ り舌鼓を打つ、ただそれだけを仕事にしているのです。あるし、財政維持のためにものすごく厚い文集 ( 印刷六十台 ) を ものは、こんなものはてんでなっていない。 こんな作品を書だします。ばくもそのために小説を二つ書いています。 いたり載せたりするのはばかげている、とどなるかと思う 「剃り落とされた頬ひげ』、 O 『廃止された役所の物語』で、 ひょうせつ と、あるものは、これはおれのものを写したのだ、剽竊した両方とも人を震撼するような悲劇的興味を蔵しており、もう のだとわめく。ばくがある連中から聞いたことにいたってそれこそ保証しますが、極度にまで圧縮されたものです。読 たわごと は、ロにするのもきまり悪いような痴言なのです。 者は首を長くしてばくのものを待っています。二つのホ説は しょげ ばく自身はどうかというと、しばらくの間は悄気こんでしどちらも大きくないものです。そのほか、クラエーフスキイ まったくらいです。ばくには恐るべき欠点があります。それのためになにかと、ネクラーソフのために長編小説を書かな は方図のない自尊心と名誉心なのです。自分はみんなの期待くちゃなりません。そんなこと一切合切で、ばくは一年間か を裏切った、傑作となり得べきものを台なしにしてしまったらだに暇がないでしよう。『剃り落とされた頬ひげ』は終わ りかかっています。 という想念が、ばくを責めさいなむのでした。ばくはゴリヤ ードキンがいやになってしまいました。多くの点がせつかち ニュース第二、新しい作家が雲のごとく現われました。そ に、しかも疲れた頭で書かれています。前半のほうが後半よの中のあるものはばくの競争者です。就中、もっとも注目す べきは、ゲルツェン ( イスカンデル ) と、ゴンチャロフで りよくできています。燦然と輝くようなページと相並んで、 ひどいやくざな個所があるので、嘔きけを催して、読む気にす。前者はすでに著書を出版しましたが、後者ははじめたば ならぬはどです。つまり、そういったことが一時ばくの地獄 かりで、作品を公表していません。この二人はおそろしく評 となって、落胆のあまり病気になったくらいです。兄さん、 亊がいいです。が、第一位は今のところばくに属しており、 あなたのところへゴリャードキンを送りますから、二週間の今後も永久にそうであるものと自負しています。概して、今 あいだに読み終わって、ご自分の意見をすっかり書いてよこのように文壇が活況を呈したことは、かってありません。こ
にいるのでしようか ? きみはなんとお考えです ? しった 定しての話ですが、よしんば勅令にほかのことは何ひとつな いばくの出世の道は塞がれているのでしようか ? ばくみた いとしても、ばくははたして軍隊勤務から文官勤務に移っ っさいの恩典を いじゃない、もっともっと重い犯罪人が、い 冫し力ないのでしょ , つか ? て、パルナウールへ転任するわナこ、、 だってドウロフは文官勤務に変わったではありませんか。ば受けたこともあるじゃありませんか ? そんなことは信じま くはあえていいますが、もうこの転勤一つだけでも彼女を蘇せん ! たとえ今なにもできないとしても、二年たったらば くはロシャへ帰ります。今なによりも重大なのは、ーー金 生させます。そして、彼女は求婚者をみんな追いはらってし まうに相違ありません。というのは、最近の手紙とそのまえです。二つの作品、一つは論文で、一つは長編ですが、九月 の手紙で、わたしはあなたを愛している、求婚者は単なる打までにはちゃんとできあがります。で、正式に発表の許可を 算にすぎないのだから、どうかわたしの愛を疑わないで、こ乞うつもりです。もし許可されたら、ばくは一生パンが得ら れるわけです。今は前とちがって、十分に想を練り、十分に れがただの予想だということを信じてほしい、と哀願してい るからです。ばくはその最後の一句を信じます。おそらく申磨きをかけたものがうんとあって、しかも執筆に対する精力 込みがあって、勧められてもいることでしようが、彼女は承も淮れているのです ! 『貧しき人々』にも優る長編を書き 諾の返事をしなかったのでしよう。ばくは世間のうわさを調上げる所存です ( 九月頃までに ) 。実際、もし発表を許可され 査して、その出所をさがしましたが : : : 捏造の多いことがわたら ( 運動してその許可が得られないなんて、ばくは信じま せん、いいですか、信じないのですよ ) 、その時はセンセー かりました。のみならず、もし承諾の返事をしたとすれば、 彼女はばくにそのことをいってよこしたはずです。して見るションを巻き起こすでしよう。本はどんどん売れて、ばくに と、これはまだまだ決定的な話ではありません。四月の二日金と地位を与え、政府の注意も喚起するに違いないから、帰 に彼女から手紙が来るのを待っています。ばくは何もかもす国の時期も早くやって来ます。ところで、ばくに必要なのは つかりうち明けるように要求してやりましたから、その時こどれくらいかというと、年に紙幣で二、三千ループリです。 これなら、彼女にたいするばくの態度は潔白でしよう ? わ そ事情が底の底まで知れるわけです。おお、わが友よ ! くとして彼女を見棄てたり、他人に渡したりなどできることれわれの生活を支えるのに、いったいこれだけでは少ないの でしようか。だって、ばくは彼女に対して権利を持っているでしようか ? 二年もたったら、ロシャへ帰って、彼女も気 持ちのいい生活を送るようになり、あるいは幾らかの貯えさ 簡のですからね、 いいですか、権利ですよ , えできるかもしれません。六年の間、前後未曾有の苦痛と闘 そこで、ばくが文官勤務に移ることは大きな希望であり、 書激励となるのです。第三、ばくはまだ長いこと官等を持たずうだけの勇気と、精力を持っていたこのばくに、はたして自
のです。はじめしばらく、とても淋しい気がしました。家さずです。これは彼の魂の遺言ともいうべきもので、彼はその がしに歩きましたが、もう見つかりました。小さな部屋を一一論文の中で自分の著作をのこらず否定して、そんなものは無 つ、十四ループリで借家人から又借りしましたが、家具もよ益どころか、有害であると認めているのです。そして、これ く、女中もついています。が、まだ引っ越してはいません。 からさき一生、筆をとらない、 というのは、自分の仕事は祈 アドレスは、カザン聖堂前コーヘンドルフの持ち家二十五号りであるからだ、といって、自分の敵の評言に残らず同意し です。このアドレスで少しも早く手紙をください。あなたのています。彼は自分の肖像をうんと印刷させて、その売り上 手紙がほしくてたまらないのですから。ばくは恐ろしい憂愁げ金を、エルサレムへ旅する巡礼たちに施す、云々です。結 に責められています。 論は兄さん自身でつけてください。 べリンスキイ一家は無事に到着しました。ばくは波止場で ばくはグラエーフスキイのところへも行きました。も、フ 別れてから、まだ会っていません。翌日ネグラーソフのとこ 『プロハルチン』を組みはじめたそうです。十月号に載るは ろへ行きました。彼はパナーエフと同じ家に住んでいるのずです。彼は今のところ、金のことは一口もいわない。調子 で、みんなに会うことができました。文集はうまく行ってい のよいことをいって、機嫌とりばかりしています。そのほか ますから、急がなくちゃなりません。店のことはべつにきか はまだだれのとこへも行っていません。ャズイコフは事務所 なかったので、よく知りませんが、これもきっとうまくいつを開いて、看板をかけました。おそろしい雨で、外出が大変 てるのでしよう。ところで、一つニュースがあります。ばくです。ばくはまだ、トウ ルトーフスキイのところにいます。 はネグラーソフの住所をきくために、プロコボヴィチのとこ が、明日はいよいよ引っ越します。外套のことはどうも交 5 ろへ行ったところ、ネクラーソフがレ 1 ・ヴルへ出かけた理する暇がありません、雑用が多いのと、雨のために。できるだ 由を話してくれました。彼はその事情を秘密にして、プロコ けつましい生活がしたいです。兄さんのためにもそれを望み ポヴィチにさえ黙っていたのですが、プロコボヴィチはいろます。仕事はばつばつやったほうがいいです。もう少し生き スイン・ んなことから察してしまったのです。ネグラーソフは「祖ていたら、それがわかるでしよう。では、これで失礼しま オチェーチコストウ 国の子』を買収するために、マサーリスキイに会いに行っす。急ぎますから。いろいろたくさん書きたいのですが、時 たのです。話はどうやらうまくいったらしく、新年にはおそには何もいわないほうがいいことがありますね。どうか手紙 簡らく新しい雑誌が一つふえることでしよう。 をください。大至急、返事を待っています。子供たちに接吻 ゴーゴリのことは何もいいませんが、ここに一つの事実がしてやってください。エミリヤ・フヨードロヴナに、よろし ソヴレメンニク 書あります。「現代人』の来月号に、ゴーゴリの論文が載るは く。それから、しかるべき人々にもよしなにご伝言を。次の よ 0 ~
して聞かせましたが、見事な話ぶりでした。その晩は二人で最後に、長い漂泊ののちトヴェーリにたどり着き、旅館に落 相当飲みました。いろいろ話し合って、面白い話もたくさんちつきましたが、目の玉が飛び出るような値段なのです。家 出ました。 を借りなければなりません。貸家はたくさんあるけれども、 やがてヴラジーミルを出発しました。一番ちかいのはモス家具つきが一つもないのです。わすか三、四か月のために家 クワへ向けることですが、小生は第一、モスクワへは公式に具を買うのは具合がわるい。とどのつまり、何日かさがした は立入禁止となっていますし、第二には、モスクワへ行ってあげく、やっと一軒みつけましたが、貸家ともっかなければ 妹たちに会いながら、一週間も暮らさずにいるのは不可能でアパートともっかぬ家で、家具つきの部屋三つで、月に銀貨 す。それにはいろいろめんどうも起こりそうなので、小生は十一ループリ、これはまだありがたい仕儀なのです。そこで 決心しました。しかし、セミパラチンスグで予定した道程に兄を待ちはじめました。兄はその前に病気をして、死にかけ よると、ヤロスラーヴリへ出るはずでしたが、それをやめていたのです。ようやく旅支度をして、当地へ着きました。 て、セルプホフスカヤ寺院を通過して、モスグワ県を横断そのうれしさはなんともいわれません。汽車は午前二時過ぎ に着くので、しかも停車場はトヴェーリ の街から三露里も離 し、トヴェーリ県へ入るのです。ところが、そう決心して、 れているのです。小生は夜中に駅へ出迎えに行きました。い 後悔しました。大街道がないのです。馭者は自由労働者で、 ろいろ話し合いましたが、こんなことをいったって仕方があ 百五十露里の道に、官設駅逓の三倍もふんだくられました。 しかし、その代わりセルギエフ僧院は、十分にその償をしてりません ! こういう瞬間は言葉で表わせるものではありま くれました。小生は二十三年ぶりにそこへ寄ったのです。なせんから。兄は小生のもとに五日間滞在して、それからモス グワへおもむきましたが、帰途また二日泊まって行きまし んという建築でしよう、なんという数々の記念物でしよう、 、生は兄と二人で何もかも手はすをきめました、 ヴィサンチンふうの大広間、教会 ! 聖器所はわたしを驚嘆た。 させました。聖器所の中には桝で量るような真珠 ( しかも素生のことです。第一段として、九月の八日まで待っことにき 一めました ( だれもかれも大赦令のうわさをして、みんながそ 晴らしい ) 、五分くらいも寸法のありそうなエメラルド、 っ五十万ループリもするダイヤモンドがあります。おのおれを待っていたのです ) 。しかし、いろいろ特赦はあったに の世紀を異にするさまざまな衣裳、ロシャ皇帝の妃や王女たもかかわらす、大赦令は出ませんでした。その時、小生は当 ちの手縫いのもの、イヴァン雷帝の不断着、貨幣、古い書地の憲兵大佐を訪ねて、その忠言を求めたところ、大佐はド いつまでもそこから出た ルゴルーキイ公爵 ( 憲兵総監 ) に手紙をだすのが、いちばん 籍、ありとあらゆる珍品奇品、 くないほどでした。 早道だというのです。で、そういうことにきめて、小生は手
るかもしれません。ネグラーソフのとこへ行って、家にい いうちに鍛えなくてはなりません。自分の状況に付随してい るいっさいの利益、一般に許されているすべての狡手段を利るところをつかまえて、こういうのです。「ニコライ・ア 川しなくちゃなりません。そのためには、ばくの意見を採用レグセイチ、あの時あなたは宅へお寄りくださいましたが、 して、考えてください。よっく考えてもらいたいのです。そちょうど留守にしておりまして、たいへん残念でございまし れはこうです。 た。弟にもそのことを申してやりましたところ、弟もわたし ほかでもありませんが、原稿がグラエーフスキイの手にあがあなたにお会いできなかったことを、はなはだ遺憾にそん じております。あなたはおそらくあの長編のことでお立ち寄 って、まだ最後の言葉が発せられていない間に、つまりまだ りくだすったので、何か新しい提案をなさるおつもりだった 手遅れにならないうちに、競争者をこしらえて彼らを脅かし てやったらどうでしよう ? 彼らはあの長編をほとんど没に ことと思います。ところが、実はあの長編はグラエーフスキ なったもののように見ています ( 話の間に、きっとそういう イの手もとにあって、わたしは彼と最後の条件を締結する一 様子を見せるに相違ありません ) 。そこで断じて、あの長編歩手前のところですが、しかし、まだ彼 ( すなわちクラエー は没などになったものではないということを、彼らに証明しフスキイ ) に対して、何も自己を束縛するようなことはして おりません。だから、もしあなたが何かおっしやりたいこと てやる必要があります。その時は、彼らも値切るどころか、 かえって相場を上げるでしよう。それに対する第一の手段がおありでしたら、今すぐおっしやってください。わたしは は、ネグラーソフです。彼はあなたを訪ねて来て、あなたが いつでも好きな時に契約を結ぶ全権を弟からもらっています し、そのうえ、詳細をきわめた指令も受けております。の 留守だったものだから、また寄るといって帰ったわけでしょ う。してみると、何かいいたかったに相違ありません。だかみならず、うち明けたお話をしますが、弟はいつでも現代 ら、あなたが自分のほうから彼のところへ行ってはならぬと人』に優先権を認めるでしよう。それは弟が自分でわたしに いう法はないでしよう ( 手紙などだすのじゃありません。手申したことです。そういうわけで、あなたはわたしにどうい う話をなさりたかったのでしようか ? 』もしかしたら、ネグ 紙は返事を待たなくちゃなりませんから。時間の無駄という ことです ) 。いきなり自分で訪問するのです。なにしろ、『現ラーソフはすぐ返事をするかもしれませんが、またもしかし 代人』とは話はおしまいになっているのだから、その点からたら、返事のために一定の期日を請求するかもしれません。 その場合には、ただ一日だけの期間を与えることです。そ 、えば何も待っことはなく、したがって、何も失うこともな して、それ以上はもう少しも待たれないと声明してくださ いわけです。だから、訪問するのは差し支えないどころか、 その結果がどうなるか、おわかりでしよう。もしネグラ 書必要なくらいです。ひょっとしたら、偶然なにかにぶつつか
書 は期待し、悩んでいるのです。しかし、も少し待ってごらん のでしようか ? ( あまり事が外へ洩れないようにして。 ) ・ なさい。生活は最後の勝利を博します、ばくはそれを確信し ルゴルーキイに照会したものでしようか ? なんと思案した ものか、まるきり見当がっきません。善良無比なアレグサンています。多くのものはまだ前にあるのです : : : それにして ドル・エゴーロヴィチ、もし何か聞き込んだら、後生ですからも、ばくはきみに会って、話がしたくてたまりません ! ポ ろ、ろ、、うわさを聞いてい 知らせてください、お願いします。ほんとうにもう待ちきれロンスキイ ( 詩 ) こっ、てま、、 トミートリイ・ポルホフスキイこま、こ ) ません。まるで鉄道の駅で暮らしているような気持ちです。 ます。きみの知人・ 無駄に時を浪費して、仕事のほうも損ばかりしています。ばで会いました。しかし、リヴォアのことは、まるでだれのこ とかわかりません。 ーデンの出来事というのは、なんのこ くの仕事というのは、著作集を売ることで、つまり、金の問 とですか ? まったく初耳です。ああ、なんということでし 題です、したがって、ばくにとっては重大なことなのです。 きみもばくも だって、ばくはただそれだけで食ってるんですからね。しか きみと別れて何年になることやら , しかし、多くの体験を積んだわけです。 し、そうはいっても、まだ希望を失ってはいません。神様と年をとりましたが、 トヴェーリには二、三の知人がいますが、ばくは退屈でた 皇帝は、おめぐみぶかいのですから : 非常に大きな関心をいだきながら、きみの手紙を通読しままりません。きみの書物は輸送中いくらか摺れましたが、中 には助かったものもあります。鉱物のコレグションは、ばく した。貴き友よ、きみは自分の心について、いったいなんと いうことを書いて来られたのです、もう前のように生きて行のところには表があるだけで ( それも今はどこにあるかわか くことはできないなんて ? しかも、それはいつのことなのりません ) 、そのほかには、やっと鉱石標本が三つか四つ です ? たった二十六歳じゃありませんか。いったいそんならいなものです。ばくはそれをセミパラチンスグに置いて来 ことがあっていいものでしようか ? ただもうきみは自分のました。コレグション全体はどこへ行ったものやら、ばくは あいくち 知りません。獲物袋と小さい匕首 ( カ・ハンの中に入っていた 力を知らないのです。二度こころの熱病を経験しただけで、 もの ) は、ばくの私有物ということにしました。というのは、 もうすべてを消耗しつくしたと思っていられるのです。もっ とも、そう考えるのも無理はないです。新しいものがない時きみが何もかもばくに贈ってくだすったからです。ばくもま / ーノフに贈りまし たあそこを発っ時、小さな匕首をヴァリ、 は、もうすっかり死んでしまったような気がするものですか た。その点はどうぞおゆるしを。ヴァリ、 / ーノフは実に愛す 簡ら、みんなそんなふうに考えるものです。しかし、人間の心 は生きもので、生を欲します。きみの心もやはり生を欲してべき、また実に注目すべき人物です。どうやらペテルプルグ にいるようですね ? きみにあの男のことを書いてやりまし います、 それは心の新鮮さとカのしるしです。きみの心