、。、ーシャがら。ところが、きのう貴兄のお手紙を落掌しましたけれど、 リの無心をしたではありませんか ! ) ところカノ カトコフのところへ、実に多忙をきわめている最中に現われ日付は書いてありませんでしたが、封筒には二月の二十六日 て、滔々としゃべりだしたうえ、ことによったら失礼なことにペテルプルグの本局で受けたスタンプがありました。この ーシャの事件はひとことも書いてありません。 をいうかもしれない、それはもちろん、小生を根限り悪者に手紙には、。、 して見ると、あるいははんとうでないかもしれません。しか しながらです、 こういうことを想像する小生の気持ちは どうでしよう ! 最後に、小生は昨日たった一枚の外套を質し、妻の母ははっきりとそう知らせているのです。そうして に入れましたが、手もとにはたった三十フランしかないので見ると、やつばりほんとうのことで、ただ貴兄がごぞんじな ーシャが事実そうす す。しかも、 garde ・ malade ( 看護人 ) に四十フラン、産婆に いだけかもしれません ( というのは、。、 百フランやらなければなりませんし、部屋代と召使の礼が百る決心をしたとすれば、たしかに貴兄の目にふれるのを避け たに相違ないから、まったく貴兄には知れなかったわけで 二十フラン、それが三月二十日、つまり六日さきに迫ってい るのです ( 今月は臨時の相場なのです ) 、おまけに、入質しす ) 。 てある品物の借りが三百フランあります。かっきり六日たっ いま小生は打ちひしがれ、たたきのめされて呆然とし、ど うしていいやらわからないでいます。今日すぐにもカトコフ たら小生の三十フランはすんでしまって、その時こそは一コ ペイカもないし、質に入れようにもなに一つなく、信用借りのへ手紙をだして、いっさいの事情を明かしたうえ、謝罪しょ 法も冬きてしまいます。小生の希望のいっさいは、カトコフうかと思いました。なぜなら、まったく穴があれば入りた が五百ループリの無心を承知して、貴兄に二百ループリ ( 前いほど、彼に対して恥ずかしく、Ü彼が腹を立てて、金を送 ってくれないかと心配だからです。が、また一方、もしその に書いたとおり ) 、当地の小生へ三百ループリ送ってくれ、 しかもその三百ループリ が、ちょうど三月二十日、つまり六手紙をだして、話が何もかも違っていたらどうでしよう ? シャがカトしかし、だすはうがいいと、いにきめました、明日だすことに 日後につくということです。さて、今度もしバ コフを怒らせて、最後に堪忍袋の緒を切らせ ( なにぶんに します ( カトコフへの手紙を ) 。もし何かの便りが小生の心 も、どんな人だって、事情によっては忍耐を失うことがありを照らしてくれたら ! ところが、どこからも便りがありま ますからね ) 、カトコフが拒絶の返事をよこしたら、どうでせん。待っているのは危険ですし、それに苦しいのです。 簡しよう。その時はまあ、いったいどうなるのでしよう ? まずれにせよ、お願いです愛する友よ、この件を調べて、早速 ったく単に小生が破滅するだけでなく、三重に破滅するのでご報知を願います、小生は悩ましさに死にそうなのですか ーシャはただいっただけ 書す。なぜなら、妻はもうお産をして、病床にあるのですから。もしそれがほんとうでなく、パ
とったのです。今のところ一分の暇さえないのです。仕事はヘ行 0 てロシャ新聞を読みますが、その新聞が小生にどうい う印象を与えるか、想像もおっきにならないでしよう。『モ していますが、何ひとつできあがりません。ただ破るばかり です。小生はおそろしく意気消沈しています。なんにも出てスグワ報知』はまだいいですが、「ゴーロス』と『ペテルプ いやな感じなしには読めませ こないのです。雑誌のほうでは、四月号に続きが載ると予告ルグ新聞』は恐るべきですー しましたが、小 生のところでは、なんの意味もない一章よりん。それから、この陰鬱な、風の多い町を、沈んだ、ほとん ほか、なんにもできておりません。何を送ることになるのど気の狂いそうな気持ちで家へ帰ると、家ではまた仕事で か、見当もっきません ! 一昨日はとてもひどい発作がありす、ものにならない仕事です。ただ子供だけが小生の気を紛 ました。しかし、昨日はそれでも気ちがいに近い状態で書きらしてくれます、それからアーニヤと。しかし、その紛らせ あ ました。が、少しもできません。どういってカトコフに謝ってくれ方も苦しいものです。さきのことを考えると、 たものか、とほうにくれています。ところで、もう四月号のあー そういったようなわけですから、貴兄の手紙が小生にとっ 出る期日も迫っています。せめて二台分でも送ることができ たら。いすれにしても書いて見ます。しかし、それでも小生てどういう意味を持っているか、ご判断がおっきになるでし よう ? どうかお便りをください。小生もたえすお便りを差 はもうカトコフに、ヴヴェーへ引っ越す費用を無心してやり ました。彼はそんな金を送らない十分な権利、十分すぎるほし上げます。小生はもうなるようにしかならないのです。そ きっと紛失した手 どの権利を持っています ! 小生が彼の立場にいたら、きつれから、洗礼のことを知らせてください。 と面当てにでも送らないでしよう。しかし、もしそうだった紙の中に書いてくだすったのでしよう。今日はただ様子をお ら、われわれはどうなるでしよう ? 知らせするために、たったひとことと思ってペンを取りまし た。アーニヤがよろしくと申し出ました。常に忠実なる貴兄 愛する友よ、そちらの様子をなんでもいいから知らせてく ださい。小生は新聞を読んでいます。それはほんとうですの友 ・ドストエーフスキイ 、しかし、新聞は生きた友だち同士の話と違いますから ね。想像がおっきになるでしようが、小生の過ごしている時この手紙は封筒に入れません、二通の手紙を一つの封筒に 間は退屈なものです。小生はどこで暮らしても、苦しい労作入れるので厄介ですから。どうかお咎めのないよう。母は一 行も読みません。 の時を過ごすことになるので、したがって退屈で、しかも、 いらいらしてばかりいます。小生はいつも家の中にこもって 4 ・ Z ・マイコフへ いて、外へ出るのは一日のうち二時間半だけです。カフェー
いと結論した ( それはまったく確かなことだ ) 。で、この問を本で占って見た。つまり、本を開いて、右側のページの第 題は片づいたものと見なせるわけで、わたしは実にうれし一行目を読むのだが、とても意味深長な、しかもびったりは お前と結婚するという話はカトコフのほうがうまくいきまった文句が出た。さよなら、かわいいアーニヤ、近き再会 そうな見込みがあり次第、親戚一同に披露するつもりだ。最の日まで。お前のかわいい手と唇を千度キスする ( 唇をよく 初の日、つまり昨日はいちんち歯が痛んで、夜中には頬が腫思い浮かべるのだ ) 。気が沈む、何もかも厄介だ、何かしら れあが 0 たが、そのために今日はもう痛まない。今日はリ = すべての印象がちぎれちぎれなのだ。マーセンカ ( ハの次女 そしてまだ子供だ。フェージャ兄ミ ( イ ビーモフを訪ねるが、いずれにしても、カトコフのところへはかわいい、 男 ) もや 0 は行かないだろうと思う。概して、まだ行動のプランがわかて来た。そのはかの子供たちも実に愛くるしくて、喜んでく らないのだ。その時の様子で判断しよう。一刻も早くお前のれた。ュ ーリヤ ( イヴ ' ーノ ) は出御の光栄を与えてくれなか 0 た。ところが、晩には別の部屋から使いをよこして、わたし そばへ帰るよう、極力骨を折るつもりだ。無駄には一日も逗 ーリヤのと ) しし力とキ、 / 、いしゃよ、、。 留しない。わたしはよく気が沈むことがある。何かしらえたのことを占っても、 には女友だちが集って、鏡の占をしているのだ。わたしはど いのわからぬ憂愁で、寸るでだれかに対して罪でも犯したよ うそと答えた。やがて白い服を着たプリュネットの娘が出て うな気持ちなのだ。お前の面影を思い浮かべ、たえずお前の ことを空想している。ああ、アーニヤ、わたしは熱烈にお前来た。わたしは、何もかも出たらめだ。当らなかった、とい を愛している。ソーニヤもまたお前を愛していて、とてもおわせてやった。 かわいいアーニヤ、。、 ーシャに会わなかったかしら ? わ 前に会いたがっている。わくわくして、興味に燃えている。 では、お前を固く抱擁し、接吻する、 この次の手紙またしからよろしくといっておくれ。それからサーシェンカ とフムイロフ で、近い再会の時まで。二、三日たったら、何か用事をすま 未米の夫 ) かいろいろパーシャのこ フの長ノ ) とをきいて、モスクワへやって来ないのを残念がっているこ すや否や、もっと詳しい、もっといい手紙を書いて上げる。 とこもかしこも遅れとを伝えてほしい。みんながとてもあの子を待っていて、来 今はできるだけ急がなくちゃならない。、、 そうな気がする ( それこそたいへんだ ! ) どうも仕方がなるか来ないかと占をしたくらいだ。 数限りなくお前を接吻する。新年おめでとう、新しい幸福 、どこの家もお祭騒ぎで、どこへ行っても不断と違ってい を祈る。わたしの天使、わたしたちの結婚を神様に祈ってお 簡るのだ。 くれ。いよいよここまで来てしまったので、わたしは心配で お前は昨日の日をどんなに過ごしたかしらん ? 夢にお前 ならない。 しかし、とはいうものの、全力をあげて骨を折 書を見たいと思ったが、見られなかった。そこで、お前のこと
なります。夜でも二十七度、二十八度、やっと朝、明け方のけになりませんか、いずれにしても委員会から招待をお受け田 になったかどうか、ご一報ねがいます。 四時頃になって二十六度です。ところが、どうでしよう、小 さて、伯母の遺言ですが ( また話が前に戻りますが ) 、こ 生の立っ最後まで、往来でイギリス、フランス、それどころ か、ロシャの旅行者にさえ出会いました。われわれはヴェニの事件が小生 ( ドストエーフスキイ一族 ) にとってきわめて ス、トリエスト ( 海路 ) 、ウーーン、プラーハ経由でまいり有利に展開するにしても、目下のところ小生にとってはいず ました。ヴェニスとウィ】ンは恐ろしく妻の気に入りましたれにもせよ、なんらかの希望や目的をいだくためには、あま りにも遠く隔てたものしか想像に浮かんできません。どんな ( 独自の意味で ) 。われわれはドレスデンでなく、プラー にうまく展開しても、三年くらい経たなければ解決しない、 落ちつきたいと思い、かっそう決定したのでした。ところ 、どうでしよう ? 三日間プラーハに暮らして、住居をさそれ以下ではありません。小生としては ( たとい債務監獄へ がしたのですが、見つからなかったので、そのまま立ってし入るにしても ) 、来年はロシャへ帰らなくてはなりません。 まいました。それはわかり切った話で、この街には外国の旅それどころか、いまは事情が変わってきて、小生としては外国 に残っているよりも、ロシャで債務監獄へ入ったほうが有利 行者がやって来ないので、家具・女中付の住居というものが になったのです。小生の健康は、もし発作のことをいわなけ ないのです。ただ大学生むきの ( 一人住いの ) 小さな部屋し かありません。かといって、ホテルや何かはお歯に合いませれば、きわめて堅固で、どんな不自山にでも堪えられます。 ん。ただ残るのは空家 ( つまり壁ばかりの ) を借りて、家具しかし、もう一年もこちらに残っていたら、何か書くことが いものどころか、どうにか見られる いっさい、勝手用の道具一式買い整え、少女を雇い、六か月できるかどうか、 の契約を結ぶことです ( というのは、この街ではすべて借家ものでさえ、書くことができるかどうか、わからないくらい をするのは、六か月の契約をしなければならないからです ) 。です。それほどロシャというものから離れてしまいました。 結局、われわれはまた旅を続けて、もう馴染みのあるドレス小生はそれを感じます。一方からいっても、妻はロシャから デンさして行きました。そこならどの建物にも、家具・女中離れてとても淋しいのです、小生にはそれがわかっていま 付の貸ア。ハートがあるはすです。それが商売なのですからー す。のみならず、われわれが子供をなくしたのも ( あの子 ところで、小生はプラーハ滞在の有利なことを空想していた は、健康からいっても、美しさからいっても、理解カからい っても、感じ方からいっても、あれほどのものはまたと二人 のです。それどころか、近く開催されるはずの祝祭 ( ャン・フ 祭年 ) で、多くのロシャ人のなかに貴兄をも見つけうるかもし見たことがありません ) 、ただただ外国ふうの育て方を身に れぬ、などという空想さえ浮かんだ次第です。貴兄はお出かつけることができなかったからです。もしいま、待っている
んでした。もう三号目が出ています。四月号、五月号、そしてすったら、わたしの無沙汰をたいして責めはなさらないだろ 今度が六月号です。ところが、わたしはいつも少しずつ断片うと思います。わたしはだれにも返事を出さなかったので 的に載せるので、いまだにや 0 と第二編が続いている始末です。しかし、ヴァー = ヤ・ス = ートキンの ) の手紙で、あ す。わたしは金をたくさん前借りしました。社のはうではわなた方がもう田舎へ行っていらっしやることを、承知しまし たしを当てにして、予定を組んでいたのです。『ロシャ報知』た。ソーネチカ、わたしはあなたから、ほかならぬあなたか の毎号の編集振りから見ると、社のはうではもちろん、いつらの手紙を待っているのです。沈黙がちの、とはいえ誠実な もわたしから大量の原稿がもらえるものと思って、創作欄のる友、何か書いてよこしてください。そうでしよう ? そう 原稿をほとんど少しも準備していなかったのです。ところでしよう ? あなたは誠実なる友ですね ! わたしとあなた が、こんどわたしは編集部をまごっかせてしまったわけでは決して、決して心の中で離れることはないでしよう。うち す ! あの長編はとても長くて、まだあと三十台分も書かなのソーニヤも、あなたにあやかってソーニヤとつけたのです くてはならないのですから、なんとか取り戻しをつけて、少から。なっかしい友、あなたはわたしにとって、じつに大事 な人なんです。手紙をください ( わたしはぜひともいっさい なくとも結末を少しずつ送って、いい仕事にしなくちゃなり ません。これがわたしにとってどんなに重大だかということのことを知りたいのです ) 、あなた方、つまりあなたとヴェ 想像がつくでしよう。というのは、今あの長編に、未来ーロチカ ( 、 ヤの母力、いっモスクワへ帰るつもりか、どこで にたいするわたしの希望の全部が集中されているからです。暮らすつもりか、そんなことをすっかり知らせてください。 第一にちゃんとしたものに仕上げなくてはなりませんし、第わたしは冬までにロシャへ帰るように、一生懸命努力します が、それはどうしても新年を迎える頃か、それとも一月に入 二には『ロシャ報知』の前借りを返さなければなりませんし、 第三には社のほうがわたしに腹を立てないで、これからも気ってから、ということになるでしよう。その時はもちろん、 持ちよく金を送ってくれるようにしなければなりません。とすぐモスグワへ行きます。いろいろと腹に足りるだけ話しま いうのは、わたしはただあの社の送金たけで生活しているのしよう。速記術のことについては、あなたとしていま決定的 ですから。そういうわけで、さしあたっての見通しは、一歩なことを、はっきりいうわけにいかないのは、もっともで も外へ出ないで、昼も夜もずっと一ところにすわって、何ひす。わたしはただ一つの案としていっただけなのです。その とっ気晴らしめいたことも考えないで書くことです、胸に憂決定は将来のことですが、わたしはいま、あなたが案として 愁をいだき、妻の苦しみを見ながら、自分でも苦しむことで頭におさめていてくださるようにと田 5 って、ちょっと書き加 す。ソーネチカ、やさしいわたしの天使、これを読んでくだえたまでです。速記術については、もう一つ付け加えること
も、あなたの住所が社のほうでわかっていたら、この手紙を お礼の言葉を申しながら、若干の事情を説明していただきた いという依頼で、ご迷惑をおかけすることに対して、ご立腹転送してくれるよう、とくに依頼状をだします。これがどう ないことと、みずから慰めている次第です。もしわれわれに なるか知りませんが、それよりほかにはあなたに手紙をだす 権利があって、われわれの側に勝算があるとすれば、どうし方法がないのです。というのは、田舎のほうからはもうお帰 りになったでしようし、前の住所は、お手紙によれば、越す てそれを利用せず、事を始めないという法がありましよう ! ということでしたから、あるいはもう越してしまわれたかも これが小生の意見です。 しれません。十中の八九はわたしの知らない新しい住居にお 小生のアドレスは次の通りです。 Allemagne, Saxe, Dres ・ られるのでしよう。したがって、わたしとしてはほかにしょ den. å Mr Téodore Dostoiewsky, poste restante. うがなかったのです。 心から貴下を尊敬する フヨードル・ドストエーフスキイ 手短に近状をお知らせします。この手紙はなんとかしてあ ・小生はいろいろの事情でかなり長く、少なくとも なたをさがしだし、あらたに関係を結ぶためにだすのです。 この冬のあいだじゅうドレスデンに滞在します。 ただ断わっておきますが、あなたがた一同は、この間じゅう ずっとわたしの記憶にあり、心にあったのです。わたしとア 6 姪ソーニヤ・イヴァーノヴァへ ニヤは、ロシャを思うたびに、ほとんど毎日のようにあな ドレスデン、一八六九年八月二十九日 ( 九月十日 ) た方のことをうわさしていますが、わたしたち夫婦は一日に なっかしいかけがえのない友ソーネチカ、やっとあなたに幾度もロシャのことを思いだすのです。わたしがフローレン 手紙を書くことになりました。あなたはわたしの無沙汰をなスに腰を据えてしまったのは、ただ引っ越しの金がいつもな んと思いました ? 今この手紙を、あなたの住所を知らない かったからに過ぎません。『ロシャ報知』社からは、わたし ままに書いているのです。モスクワには、あなたをさがしてが金を送ってほしいと矢のように催促したにもかかわらず、 くれと頼む人がだれもないので、この手紙を渡してもらうた三月以上なんの返事もありませんでした ( これはここだけの だんま めに、あえて『ロシャ報知』社へあてることにしました ( あ話ですが、社には余分の金がなかったので、それで黙りをき なたは同社で翻訳の仕事をしていると、自身で書いてよこさめこんでいたのだと、こう想像する確かな根拠があります ) 。 れました ) 。それといっしょに「ロシャ報知』へは、「小生にやっとのことで ( 五週間まえに ) 、七百ループリだけフロ とってきわめて重大な」この手紙をあなたに届けるか、さもレンスへ送ってくれました。さて、なっかしき友、六月、七 なくば、あなたが社へ来られたとき手渡しするか、それと月、そして八月の半ばを ( 新暦で ) 、フローレンスに踏みと
寝ないで苦しんでいるんだって。それを読むわたしの気持ちが、そんなはすは絶対にないのだ ! 人は盲目な偶然に従っ はどうだろう ? まだ五日にしかならないのに、今お前はどているのだが、わたしには計算がある。だからわたしのほう により多く勝算があるわけだ。ところが普通どんなことにな うしたのだろう ? かわいいアーニヤ、かけがえのないわた っただろう ? わたしはたいてい四十グルデンから始めるの しの天使、わたしの宝、わたしはお前を責めているのではな だ。それをポケットから取り出して、台の前に腰を下ろし、 いよ。それどころか、そんなに思ってくれるお前が、もっと 一グルデンか二グルデンずつ賭けるのだ。十五分ばかりの後 もっとかわいく、もっともっとありがたい。わたしにはよく には、わたしはたいてい ( いつも ) 二倍儲けている。その時 わかる。お前がわたしの留守を我慢できなくなって、わたし のことをそんなに疑うのなら、仕方がない ( くり返していうやめて帰るといいのだ、少なくとも晩までくらい、興奮した が、わたしはお前を責めてなんかいない、そのためにもっと神経を鎮めるためにね ( そればかりでなく、わたしはこうい お前を愛しているのだ、もしこのうえ二倍も愛することがでうことに気がついた。わたしが勝負をはじめて冷静でいられ るのは、わすか三十分間ばかりなのだ。これは間違いない ) 。 きたなら。わたしはその気持ちをありがたく思っている ) 。 しかし、かわいいアーニヤ、それと同時に、わかっておくしかし、わたしは台を離れて、ただ煙草を一本すっただけで、 れ、お前の気持ちをよく確かめもしないで、ここへ来てしままたすぐ駆け出して勝負をはじめるのだ。自分は持ちこたえ ったのは、なんて気ちがいじみたことだったろう。わたしのられない、つまり、負けるということを、ほとんど正確に知 大事なアーニヤ、よく考えておくれ。第一に、わたし自身っていながら、なぜこんなことをするのだろう ? ほかでも ない、わたしは毎朝、べッドから起きる時、これがホンプル が、お前を恋しく思う気持ちが、このいまいましい勝負をう グにおける最後の日で、明日は立ってしまう、だからルレッ まく片づけて、お前のところへ帰る邪魔をしたのだ。そうい ト場でもぐずぐすしてはいられない、と腹を決めるわけなの うわけで、わたしは精神的に自由でなかったのだ。第二に、 一日のうちに少しも早く、できるだけ多く勝とうと、や お前の様子を聞いてから、ここに残るわたしの気持ちはどう たら無性にあせる ( なぜって、明日は出発だからね ) 。冷静 だろう ! わたしの天使、堪忍しておくれ、お前がはっきり さはどこかへ行ってしまって、神経はいら立ってくる。冒険 わかるように、わたしは自分の仕事、つまりこの勝負につい て、少し詳しく説明する。わたしはもうこれで二十度も、ルをするようになり、腹を立て、もう計算も何もなしに賭けは レット台に近寄るたびに、こういう実験をしたものだ。もしじめ、こうして負けてしまうのだ ( なぜって、計算もなしに、 ただの偶然をたよりに勝負をするものは、気ちがいだから 冷静に、落ちついて、はっきり胸算用しながら勝負をした 誓っていうね ) 。間違いのもとは、わたしたちが別れたからだ、わたし ら、負けるなんてことは絶対にあり得ない !
長いあいだ非常な財政破綻をつづけて来たので ( 貴兄自身本的な問題は、「ザリャー』に金があるか、ということです。 はかってそういう経験をお持ちになりませんが、きっと理解しかし、小生の意見、というより確信によれば、雑誌に一番た してくださることと思います ) 、長い困苦の後に、時としてくさん金があるのは、十二月の二十日頃でなくていつでしょ は、事態を回復するために、まとまった援助を一時に受けるう ? 小生はここにいて、あの社と・ハズーノフの契約がどう ということがどうしても必要です。小生は三百六十ターレル なっているのか知りませんが、それでも常識でたしかにこう 品物を質に入れていますが ( 今となっては、何もかも白状し考えます、 もし・ハズーノフが十一月に「ザリャー』の金 ます ) 、それは四百ループリよりずっと多くなるのです。そを「ザリャー』に納めることができなかったとしても、十二 の入質にたいして、月五分の利息を払っていますので、いち月中旬以後になれば、二万か三万かの金を手もとに押えてお どきにみんな受け出すのが、とても有利なのです。 くことは、どうしてもできないはずです。その頃には予約申 第二には、根本的い修理しなければならぬもの、まったく 込みで、それくらいの額は蓄まっていなければならないは なくてかなわぬものがうんと溜りましたし、小生のためにずです。そういうわけで、『ザリヤ にはたしかに幾らか も、妻のためにも、暖かいものを買わなければならず、リュ の金があるわけですから、その中から小生にお裾分けができ ーパのためにも同様、等々という事情です。最後にもう一つ、るに違いありません。小生に要求する権利のないことはわか リ . ュ 1 ー ハの洗礼をしなければなりません。あの子は今までま っていますが、これは要求ではなくて、折り入ってのお願い だ洗礼を受けていないのです、ーー金がないものですから。 です。 要するに、ト生は「ザリャー もし「ザリャー 』に今すぐ百ルいプリ送っ 』が、いま百ループリ、十二月二十五日に て、残りの四百ルいプリをロシャのグリスマスまでに送るよ四百ループリというふうにできないなら、小生からカシ = ピ うに頼みます。つまり露暦の十二月二十五日までには、その リョフに書いてやったとおり、いま二百ループリ送るように 四百ループリが小生の手もとへ届くようにしてほしいのでしていただきましよう。どうかお願いです、話してみてくだ す。 さいー いま問題の全部は、それができるかどうかということで もしステローフスキイとの契約が成立したら、、 生の財政 す。どうかカシュピリョフと話し合ってください ! 小生は状態は素晴らしく立ち直ることでしよう ! 小生は『ザリヤ これをとてつもない話とは思いません。小生は三千ループリ ー』の中編を完結しようと思って、とても急いだものですか ずつも前借りしていましたが ( 『ロシャ報知』から ) 、これはほら、ステローフスキイのことは、ほとんど考える暇がなかっ とんど前借りといわれないくらいです。もちろん、ここで根 たのです。ところが今となって、これが熱病やみのように気 290
、その相違にはっきり気がついている。わたしはその原因ヤ人はもうあの人に金を貸さなくなったのだ ) 。ひょっとし 、つ亠まノ、しノ、、か、レ」、フ を編集の仕事のせいにしている。たえずこまごました心配がたら、八十ループリだすかもしれないー イヴァン・グリゴーリエヴィチのことにい かわからないー あって、わたしには不向きな奔走などが伴うので、まったく たっては、あの人にもお母さんにもよく会う。昨日はオリ へし潰されそうだ。このいまいましい一年をすましたら、 カそういう時がくるだろうガ・キリーロヴナの命名日だったので、別莊を訪ねようと思 長く休まなくちゃならない。ま、 っていたが、 雨天になったのでやめた。あの人はわたしから 七十五ループリ借りただけだが、病的なほど恐ろしく興奮し お前の手紙はわたしを満足させてくれた。お前の手紙はい つもわたしを喜ばしてくれるのに、なんだって書くことがなて、オプラスツオフのことについてまるつきり何も消息がな いので不安がっている。二、三日まえ四十行の電報を打っ いなどといいわけするのだね ? 何かしら書いてくれたら、 それでたくさんだ。さて、用事にかかろう。アーニヤ、わたて、訴訟を起こすといって脅かしている。 しは今とてもつらいのだ。明後日、いや、それどころか日曜もっとも、わたしは二、三の根拠があるので、オプラスッ オフは数日のうちにやってくると確信している。そして、イ 日にも、お前のところへ行けそうな見込みがまるでない。 しかしたら、いつまでそれが続くかわからない。なにもかもヴァン・グリゴーリエヴィチにも、できるだけ力をつけてやっ ている。昨日はあの家では命名日の祝いがあったが、今日は お金がもとなのだ。わたしの手もとには一切合切で五十ルー プリしかない。ところが、『グラジダニン』はとても金がかお母さんがうちへやって来た。ついその前に品物を質に入れ かるようになってきた。つぎの月曜には百三十ループリ ( ミ に行ったのだ。イヴァン・グリゴーリエヴィチは ( あの人は ニマム ) 支出しなければならないのだが、それをどこで手になにもかも質に入れてしまって、なにかしら恐ろしく古びた 入れたらいいのだろう ? しかし、支出しないわけには絶対ものを着て歩いている ) 、自分の燕尾服とチョッキを、オリ しかない。もし相手が新しい執筆者だったら、不払いで雑誌ガ・キリーロヴナはコルセットを二つ入質して、それだけで に泥を塗るわけにはいかないからね。 (5 知齣強 ) それに概し十五ループリ借りたそうだ。あの人たちがどれだけ困 0 てい て、だれにも借金してはいけない。すぐさま『グラジダニン』るかわかるだろう。まあ、今のところ、こういったふうのあ んばいだ。しかし、なによりもわたしにつらいのは、どうし は金を払わないといううわさがひろがるから。明日までは、 簡つまり原稿を書き終わるまでは、このことは考えないようにてもそちらへ行けないということだ。この次の土曜日にも行 けるかどうかわからない。そのわけは前の手紙に書いてやっ するが、明日からイヴァン・グリゴーリエヴィチの知ってい 書るユダヤ人のところへ、時計を質に入れてみよう ( そのユダたね。 493
なり近しいご様子ですから、この手紙ご落掌次第、さっそく も、少しも早く最後の手段をとりたいから、と書き添えまし た ( この最後の手段という点で、小生はカシュピリョフあてカシ = ビリョフのところへ行って、折り返し返事をくれとい う小生の頼みを実行するよう、催促してくださいませんか。 の手紙で、二度目のうそをつきました。小生は、こんなふう 冫説明しました。自分は今すぐ、最後の所持品、なくてかな肝要なのは、折り返し返事をする、ということです。これが わぬ品を売らなくてはならぬ。しかも、百ターレルの値打ち貴兄に対する小生のご依頼です。しかし、これが目下の境遇 のあるものを、二十ターレルで手放すことになるが、もし貴にある小生にとって、どれだけ重大であるかは、ご賢察くだ さることと思いますー 下がたとえ承諾の意味のものにもせよ、返事を猶予されたら、 ( とくに貴兄のために付け加えますが、これはこの場きりの もちろん、それを実行せざるを得ない、もし金が手に入らな かったら、一週間後には、最後の所持品を売りはじめる、そ話ですが、小生はほとんど自分の金を要求しているのです。 なにしろひと月たったら、中編の原稿料でぜんぶ消却できる れはまったくほんとうのことで、それよりほかには方法がな いのだ、といったわけですが、百ループリからのものを売るのですからね。もっとも、小生は前借りを権利として要求し というのは、うそだったのです。百ループリからの品物はているのではありませんが、しかし、それくらいの寛大さは、 二、三点もっていましたが、それはもうとっくの昔、ドレスどんなつまらない文学者だって享受しています。そういうわ デンへ来ると早々、質に入れてしまいました。また実際、百けで、もう今度『ザリャー』が拒絶したら、小生が文学者と してどれだけの水準に置かれているか、わかりすぎるはどわ ループリのかわりに、二十ループリに値踏みされたのです。 . 生の手紙の強調された慇懃さを、 しかし、今度は肌着も、外套も、おそらくフロッグさえも売かる次第です。それに、、 。ナし力と心配しています。どんな人物 ることになるでしよう。カトコフには手紙を書きますが、そ皮肉のようにとりよしよ、、 かわからないですからね。小生は彼について直接なんの知識 れにしてもあちらから金が届くのには、ひと月かかります、 も持っていません。簡単にいってしまえば、ト生は尻くすぐ もっとも、たしかに届くでしようけれど ) 。 カシュピリョフあての手紙の内容をお伝えした後で、小生ったい事柄について、未知の人に手紙を書くすべを知らない 一個として貴兄に折り入って、特別にお願いしたいことがあのです。自分の手で清書してから、もういちど読み返してみ るのです。どうかキリスト教徒として、親友として、同輩とて、どうもあまり慇懃すぎるような気がしました。 ) 、。まんとの走り書きです。妻がよろ どうか返事をくださしー どうか厄介がらないでください 簡してお助けくださいー れが最後のご迷惑です。お願いというのは次のことです。スしく申しています。小生夫婦は、大喜びです。今日で三昼夜 トラーホフの手紙によりますと、貴兄はカシ = ピリ , フとか目ですが、いま一番あぶない時です。小生の健康は、ドレス 書